Science
VOL 339, ISSUE 6127, PAGES 1477-1648 (29 MARCH 2013)
Editors' Choice
Explaining Rapid Climate Fluctuations
急激な気候の振動を説明する
Paleoceanography 10.1029/2012PA002364 (2013)
氷期に起きたダンシュガード・オシュガー・サイクルはおおよそ1,000年間継続した急激な気候の温暖化(亜氷期;interstadialと表現される)を指す。しかしそのメカニズムについてはいくつか仮説が提唱されているものの、完全には理解されていない。そのノコギリ状の気候変動(急激な温暖化と、その後の緩やかな戻り)を説明する新たな仮説として、「北極海の海氷と棚氷の相互作用」が提唱された。薄い海氷は急速に応答するが、一方棚氷はゆっくりと応答する、という知見に基づいている。
>問題の論文
A new mechanism for Dansgaard-Oeschger cycles
S. V. Petersen, D. P. Schrag, P. U. Clark
北半球高緯度域で顕著に確認されるDOサイクル(氷期に急速な温暖化とゆるやかな寒冷化が何度も繰り返されたこと)を説明する新たな仮説を提唱。棚氷と海氷の変動がDOサイクルの遅い・早い変動において重要であると考えられる。この仮説は北大西洋とNordic Seaの間接指標によって支持される。
Fine-Tuning a Tart Grape
すっぱいブドウを良く調整する
Plant J. 73, 1006 (2013).
ワインは様々な香りが複雑にブレンドされたものであるが、その中にはブドウの酸味に起因する香りもある。ブドウの酸味はカリウムの濃度に依存し、ブドウが熟れ、糖度が増すとともにカリウムの濃度も増す。しかし、ブドウにおけるカリウムの挙動はよく分かっていない。カリウム・チャネルにはVvK1.2と呼ばれる遺伝子が大きく関与しており、「ブドウの熟成」や「乾燥化ストレス下」においてこの遺伝子がよく発現することが示された。カリウム濃度やVvK1.2をうまくコントロールすることがいいブドウ作りの鍵になる?
News of the Week
German Scientists Pull Out Of Oil Sands Project
ドイツの科学者が石油砂プロジェクトから手を引く
Albertaの石油砂の採掘によって引き起こされる環境への影響を最低限にしようという目的で、カナダとの共同研究からドイツは手を引いた。その背景にはEU内で汚染が大きい石油の使用を禁じる動きがある。ドイツはイギリスとともにこれまで反対を押し切ってきたが、近年ますますAlbertaの石油を輸入することに対して反感が高まっている。
>より詳細な記事(OPEN)
German Researchers Withdraw From Canadian Oil Sands Project
ドイツの研究者がカナダの石油砂プロジェクトから手を引く
Jennifer Carpenter and Gretchen Vogel
Japan Reports Rare Find Of Rare Earths
日本がレアアースの珍しい発見を報告
日本は先週、南鳥島の近くの深海底堆積物に高濃度のレアアースが含まれていることを公表した。レアアースは多くの電子製品において重要な原料となっており、現在世界生産の95%は中国が握っており、他の先進国は新たな資源を追い求めている。その濃度は6,500ppmと中国の陸地や他の太平洋地域のものと比べるとはるかに高濃度だが、5,800mもの深海に存在するため、経済的に採掘可能かどうかが今後の焦点となる。
News & Analysis
A Midcourse Correction For U.S. Missile Defense System
アメリカのミサイル防衛システムの中間軌道修正
Eliot Marshall
アメリカ国防省は国内のミサイル防衛システムをさらに強化し、議論を呼んでいる迎撃機計画を事実上終わらせる、という驚くべき公表を行った。
Universe's High-Def Baby Picture Confirms Standard Theory
宇宙の子供の高解像度画像が基本的な理論を確証する
Adrian Cho
宇宙がどのように生まれ、そしてそれは何でできていたのか、についての理論的な基本モデルがデータによって裏付けられた。しかし、未だ多くの謎が残されている。
News Focus
Decade of the Monster
モンスターの10周年記念
Ron Cowen
重力降下するガス雲の存在と新たなプローブから、天の川銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールが近くお披露目されそうである。
As Threats to Corals Grow, Hints of Resilience Emerge
サンゴの成長の脅威とともに、耐性へのヒントが現れる
Charles Schmidt
サンゴ礁の中にはダメージを耐えたり、回復したりするのに驚くべき能力を発揮するものもいる。そうした耐性は急速に変化する海洋環境においてサンゴが生き残る手助けとなるだろうか?
Letters
Misuse of Scientific Data in Wolf Policy
オオカミ保護政策における科学データの濫用
Guillaume Chapron, José Vicente López-Bao, Petter Kjellander, and Jens Karlsson
科学的な知見は必ずしも生物多様性の保全・保護の役に立たない。スウェーデンのオオカミの例の紹介。
Biodiversity Depends on Logging Recovery Time
生物多様性は木の伐採から回復する時間に依存する
Fernanda Michalski and Carlos A. Peres
「適切な管理の下では木の伐採によっても生物多様性はもとと同じほど維持される」とするD. P. EdwardsとW. F. Lauranceの主張は、「森林が伐採後、長い時間をかけて元のレベルに戻るかどうか」という問題を低く評価している。
>問題になっている記事
Biodiversity Despite Selective Logging
選択的な伐採にも負けない生物多様性
David P. Edwards and William F. Laurance
熱帯雨林は生物多様性を育む場所であるが、急速にその範囲が縮小しつつある。それに伴って生じる切り開かれた森林(logged forest)は短期的には手つかずの熱帯雨林と同程度の炭素保有力や生物多様性があるため、保護政策の対象として認識すべきである。ただし、それらは砂漠化や森林火災の誘因にもなるため、さらなる拡大は当然ながら防ぐべきである。
Comment on “Nuclear Genomic Sequences Reveal that Polar Bears Are an Old and Distinct Bear Lineage”
”シロクマは遠くはなれた熊の親戚であることを核遺伝子シーケンスが明らかにする”に対するコメント
Shigeki Nakagome, Shuhei Mano, Masami Hasegawa
Response to Comment on “Nuclear Genomic Sequences Reveal that Polar Bears Are an Old and Distinct Bear Lineage”
Frank Hailer, Verena E. Kutschera, Björn M. Hallström, Steven R. Fain, Jennifer A. Leonard, Ulfur Arnason, Axel Janke
コメントに対する応答
Policy Forum
Measuring China's Circular Economy
中国の循環的な経済を推し量る
Yong Geng, Joseph Sarkis, Sergio Ulgiati, and Pan Zhang
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Research
Perspectives
Fungal Carbon Sequestration
真菌類の炭素蓄積
Kathleen K. Treseder and Sandra R. Holden
植物の根につく菌根菌が土壌中の炭素貯蔵に寄与しているかもしれない。
The Global Plight of Pollinators
全球的な花粉運搬者の窮状
Jason M. Tylianakis
全球的に花粉運搬者が減少しつつある。そしてミツバチを管理してもその減少に歯止めがかからない。
Toward a Green Internet
グリーン・インターネットに向けて
Diego Reforgiato Recupero
増加し続けるインターネット利用需要に応えるためにも、エネルギーを効果的に節約する方法が必要とされている。
Research Articles
Dust and Biological Aerosols from the Sahara and Asia Influence Precipitation in the Western U.S.
サハラとアジアのダストと生物源エアロゾルがアメリカ西部の降水に影響する
Jessie M. Creamean, Kaitlyn J. Suski, Daniel Rosenfeld, Alberto Cazorla, Paul J. DeMott, Ryan C. Sullivan, Allen B. White, F. Martin Ralph, Patrick Minnis, Jennifer M. Comstock, Jason M. Tomlinson, and Kimberly A. Prather
カリフォルニア州シエラネバダにおいては冬の低気圧が山岳地帯に雪を降らせ、その雪解け水が年間の水資源をまかなっているため、この地域の降水メカニズムは何十年も研究されてきた。アジアから飛来するダストが雲の形成と降水に重要であることは示唆されていたが、新たに遠く離れたサハラを起源とするような生物源エアロゾルも凝結核として重要であることが示された。
Reports
Direct Observations of the Evolution of Polar Cap Ionization Patches
Qing-He Zhang, Bei-Chen Zhang, Michael Lockwood, Hong-Qiao Hu, Jøran Moen, J. Michael Ruohoniemi, Evan G. Thomas, Shun-Rong Zhang, Hui-Gen Yang, Rui-Yuan Liu, Kathryn A. McWilliams, and Joseph B. H. Baker
太陽バーストの際には磁気嵐の引き起こす電波障害により高周波コミュニケーションやレーダー、人工衛星ナビゲーションシステムに悪影響が起きる。しかしその電離圏への擾乱メカニズムについてはよく分かっていない。磁気嵐の際に確認されるパッチの時間進化を直接観測し、そのメカニズムを考察。
Wild Pollinators Enhance Fruit Set of Crops Regardless of Honey Bee Abundance
野生の受粉者がミツバチの豊富さ抜きに作物の実の成りを強化する
Lucas A. Garibaldi et al.
世界中の41の作物の調査から、野生の昆虫が花を訪れることで実の生産が強化されていることが示された。そのうちミツバチの影響はわずか14%にすぎず、副次的なものであることが示された。将来野生動物・ミツバチの管理を適切に行うことで、作物生産性が向上するものと期待される。
Plant-Pollinator Interactions over 120 Years: Loss of Species, Co-Occurrence, and Function
過去120年間の植物-受粉者の相互作用:種の損失、共存、そして機能
Laura A. Burkle et al.
120年間にわたる北米イリノイ州の温帯林における長期記録から、全球的な環境変化によって植物-受粉者の相互ネットワークが大きく減少していることが示されている。植物と受粉者の季節学的な変化、種の選択的な絶滅、土地改変による共存状態の変化などが原因として考えられる。将来のさらなる変化に対してもより脆弱である可能性がある。
Roots and Associated Fungi Drive Long-Term Carbon Sequestration in Boreal Forest
植物の根とそれにつく菌が北半球の森林における長期的な炭素貯留を引き起こす
K. E. Clemmensen, A. Bahr, O. Ovaskainen, A. Dahlberg, A. Ekblad, H. Wallander, J. Stenlid, R. D. Finlay, D. A. Wardle, and B. D. Lindahl
北半球の森林の土壌は全球的な炭素循環において吸収源として寄与していると考えられている。核実験由来の14Cを利用した研究から、土壌に固定されている有機物の50-70%が植物の根や根につく微生物からもたらされていることが示された。中でも菌根菌の存在が極めて重要であるらしい。
Technical Comments
Comment on “Nuclear Genomic Sequences Reveal that Polar Bears Are an Old and Distinct Bear Lineage”
”シロクマは遠くはなれた熊の親戚であることを核遺伝子シーケンスが明らかにする”に対するコメント
Shigeki Nakagome, Shuhei Mano, and Masami Hasegawa
Response to Comment on “Nuclear Genomic Sequences Reveal that Polar Bears Are an Old and Distinct Bear Lineage”
コメントに対する返答
Frank Hailer, Verena E. Kutschera, Björn M. Hallström, Steven R. Fain, Jennifer A. Leonard, Ulfur Arnason, and Axel Janke
地球の「過去」「現在」「未来」の気候変動・環境問題などを書き綴ります。人為的気候変化への適応・緩和が緊急性を帯びている昨今、人間活動の影響がない地質時代の古気候・古海洋研究もまた多くの知見を提供しています。
2013年3月29日金曜日
2013年3月28日木曜日
新着論文(Nature#7442)
Nature
Volume 495 Number 7442 pp409-544 (28 March 2013)
EDITORIALS
Push the boat out
船を漕ぎ出す
アメリカでは研究機関が船を使って研究をできる期間は非常に限られており、予算削減の関係で縮小しつつある。そうした事情のもと、建造された非営利団体Schmidt Ocean Instituteの研究船Falkorは無料で(!)研究船を研究者に貸し出している(Googleの元社長Eric Schmidtが資金援助している。ただし乗船時や下船後の研究などの補助はなし)。ただしあくまでGoogleの船であるため、研究者の自由にならない部分も多く、研究計画の認可にもバイアスがかかる可能性があるなど、懸念も多い。
また、映画監督のJams Cameronも自ら開発した有人潜水艇DEEPSEA CHALLENGERをウッズホール海洋研究所に寄付することを今週宣言したらしい(!)。
RESEARCH HIGHLIGHTS
Trilobite fossil spotted
斑点のある三葉虫の化石
Geology http://dx.doi. org/10.1130/G34158.1 (2013)
ニューヨーク州で発見された390Maの三葉虫(Eldredgeops rana)の化石には、外骨格の表面に規則正しく並ぶ数多くの斑点が確認されている。斑点の化学組成は外骨格のそれと同じであることから、埋没後にできたものではないと考えられている。無脊椎動物にカムフラージュするためのものではないかと考えられている。
Primates hunting leaves forest scar
霊長類ハンティングが森に傷を残す
Proc. R. Soc. B 280, 20130246 (2013)
ナイジェリアにおける野外調査から、霊長類の狩りが行われている森とそうでない森とを比較した場合、後者の方が3倍ほど霊長類の種数が多く、さらに3倍ほど実のなる木が出芽しやすいことが分かった。多くの霊長類がいたほうが種が拡散されやすいことが原因と考えられる。逆に霊長類がいないと死にゆく木は子孫を残しにくくななり、さらに霊長類が餌を探しにくくなるという悪循環に陥るのかもしれない。。
Long DNA-like chains assemble
長いDNA状の鎖状の集合体
J. Am. Chem. Soc. 135, 2447−2450 (2013)
2つのヌクレオ塩基から成る化学物質から自発的に長鎖構造ができることが実験によって確認された。水素結合やモノマーの連続など、DNAやRNAに見られる構造に類似しており、生命が生まれた際の自発的化学進化に対して新たな知見が得られた。
Migrating planets sped up collisions
移動する惑星が衝突を加速する
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1769 (2013)
木星や土星などの巨大ガス惑星の軌道は41億年前に現在の位置に移動したと考えられている。「この時に生じた大きな重力変化が太陽系の小惑星の軌道を大きく変え、その結果衝突が盛んになり、惑星の化学組成にも変化が生じた」という仮説がSimone Marchiにより提唱された。この仮説は何故Vestaが41-34億年前に頻繁に衝突を経験したかを説明するという。さらにモデルシミュレーションから、こうした状況は従来考えられていたよりもはるかに隕石を加速させ、衝突が頻繁な期間も数億年継続した可能性を示唆している。
SEVEN DAYS
Apollo engines rise from the deep
アポロのエンジンが深海から引き上げられる
アポロを月へと届けたSaturn Vロケットのエンジンの一部がJeff Bezos率いるチームによって大西洋から引き上げられた。Jeff Bezosはアマゾンの創始者である。
Solar bankruptcy
太陽の倒産
世界最大の太陽光発電パネルの生産を手がける中国の会社の子会社(Suntech Power Holdings)が倒産した。
JAPAN’S FOSSIL-FUEL RELIANCE
日本の化石燃料依存
原子力発電所の停止を受けて、2012年の日本の化石燃料に対する依存度は21%増加し、全体の発電量の90%を占めていた。3.11以降稼働している原発は2基のみで、日本は海外から液体天然ガスを輸入して、ほぼ火力発電だけで(水力発電が5%ほど)国内の電力需要を賄っている。
NEWS IN FOCUS
Planck snaps infant Universe
Planckが初期宇宙を捉える
Mark Peplow
Private research ship makes waves
私的な研究船が波を作り出す
Alexandra Witze
Googleの資金を用いた海洋研究の新たな構想を研究船Falkorが練っている。
FEATURES
The future of publishing: A new page
出版の未来:新たなページ
先日アメリカ政府が「公的資金がもとになってなされた研究の論文は1年以内に無料で公開しなければならない」と宣言し、さらに4/1からはイギリスでも同様に政府の資金援助を受けた論文のオープン・アクセスが開始する。Natureでは特集号を組み、オープン・アクセスの利点・欠点や出版資金・特許に関する問題など、専門家に意見を伺いながら問題を掘り下げる。
以下は引用
Science itself is changing rapidly; the means by which it is shared must keep up.
Open access: The true cost of science publishing
オープン・アクセス:科学的な出版の新のコスト
Richard Van Noorden
安いオープン・アクセスの科学雑誌が出版社が与える付加価値に関する疑問を浮上させている。
Publishing frontiers: The library reboot
出版の最前線:図書館の再起動
Richard Monastersky
科学論文の出版がオープン化されるという動きに、司書や研究者も追いつこうとしている。
Investigating journals: The dark side of publishing
雑誌を調査する:出版のダークサイド
Declan Butler
オープン・アクセス型の雑誌の急増が怪しい出版元をさらに増やしている。
COMMENT
How to hasten open access
どうやってオープン・アクセス化を急ぐか
オープン・アクセス化に賛同する3人(Alma Swan、Matthew Cockerill、Douglas Sipp@RIKEN)に、今後の流れを押し進める方法、見つけやすさの問題、翻訳の必要性(非英語圏の日本人にとっての英語で書かれた科学雑誌のオープン化とは、など)などについて意見を述べてもらう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
Is the ocean food provision index biased?
海洋食料供給指数はバイアスがかかっている?
Trevor A. Branch, Daniel J. Hively & Ray Hilborn
Halpern et al. reply
Branchほかの意見に対するHalpernほかによる返答
Benjamin S. Halpern, Steven D. Gaines, Kristin Kleisner, Catherine Longo, Daniel Pauly, Andrew A. Rosenberg, Jameal F. Samhouri & Dirk Zeller
NEWS & VIEWS
How the ocean exhales
どのようにして海は息を吐くのか
Elisabeth Sikes
Tubular worms from the Burgess Shale
バージェス頁岩から発見されたチューブワーム
Henry Gee
LETTERS
Carbon monoxide in clouds at low metallicity in the dwarf irregular galaxy WLM
小型の不規則銀河WLMの低金属量ガス雲における一酸化炭素
Bruce G. Elmegreen, Monica Rubio, Deidre A. Hunter, Celia Verdugo, Elias Brinks & Andreas Schruba
Deglacial pulses of deep-ocean silicate into the subtropical North Atlantic Ocean
最終退氷期北大西洋亜熱帯域への深層からのケイ素のパルス状の注入
A. N. Meckler, D. M. Sigman, K. A. Gibson, R. François, A. Martínez-García, S. L. Jaccard, U. Röhl, L. C. Peterson, R. Tiedemann & G. H. Haug
氷期の大気中CO2濃度の低下は南大洋で深層水に隔離された溶存炭素の蓄積によって起きたという仮説の証拠がどんどん増えている。最終退氷期の初期にはAMOCが弱化し、それがCO2放出の原因と考えられているが、それがどのように南大洋とテレコネクションしたのかについてはよく分かっていない。
アフリカ北西部から得られた堆積物コア中の生物源オパールの分析から、そのフラックスが過去550kaの6度のターミネーションのときに極大となることが分かった。氷期のNAIW(氷期には現在のNADWがより浅く沈み込んでいたと考えられているので、深層水;Deep Waterではなく、中層水;Intermediate Waterになっていたと考えられている)の弱化時期に相当し、ケイ酸に富んだ深層水との混合がより活発になっていたことを物語っている。しかしターミネーション時には南大洋における低ケイ酸濃度で特徴付けられるSAMW/AAIWの形成も強まっていた可能性が指摘されているが、大西洋の温度躍層水に希釈の効果は見られていないため、CO2放出には何か別のメカニズムが存在するのかもしれない。GNAIWの低下が深層混合を活発化させたとすると、低密度の表層水が深層にもたらされたことになり、AMOCをより不安定化させ、それがCO2を大気に放出した?
※コメント
この新たな仮説についてはにわかには信じがたいですが、詳細に読んでみたいと思います。ちなみに先日Scienceにも同じ研究グループから似たテーマを扱う論文が公表されています。
>問題の論文
Two Modes of Change in Southern Ocean Productivity Over the Past Million Years
過去数百万年間の南大洋の生物生産性の変化の2つのモード
S. L. Jaccard, C. T. Hayes, A. Martínez-García, D. A. Hodell, R. F. Anderson, D. M. Sigman, and G. H. Haug
氷期には南大洋のAntarctic Zoneの有機物輸送量は低下しており、大気中のCO2濃度の低下期に一致していた。逆にSubantarctic Zoneの粒子状有機物量は氷期へと向かう際に増加しており、ダストフラックスが増加する時期と一致しており、鉄肥沃が起きていた可能性が示唆される。南大洋の高時間解像度の堆積物コアを新たにまとめたところ、南大洋におけるこれら2つのモードが大気中のCO2濃度の変動を決定していたことが示唆される。
Electrical image of passive mantle upwelling beneath the northern East Pacific Rise
東太平洋海膨北部の地下の受動的なマントル上昇の電気的画像
Kerry Key, Steven Constable, Lijun Liu & Anne Pommier
東太平洋海台北部の海底におけるマグネトテルリック探査から、深さ20-90kmに対称形の高い電気伝導度を持った三角構造が見つかった。受動的な流れの予測と一致し、海嶺へのメルトの集中が、リソスフェアの底ではなく空隙のある融解した領域で起きていることを示唆している。
Tubicolous enteropneusts from the Cambrian period
カンブリア紀に見つかったチューブ状の腸鰓類
Jean-Bernard Caron, Simon Conway Morris & Christopher B. Cameron
カンブリア紀のバージェス頁岩から発見された腸鰓類のSpartobranchus tenuisの詳細な調査から、現在チューブの中に生息する翼鰓類との類似点が確認された。
Preservation of ovarian follicles reveals early evolution of avian reproductive behaviour
卵包の保存から明らかになる鳥類の生殖行動の初期進化
Xiaoting Zheng, Jingmai O’Connor, Fritz Huchzermeyer, Xiaoli Wang, Yan Wang, Min Wang & Zhonghe Zhou
中国から発掘された初期の鳥の化石から、機能していた卵巣は一つだけであったことが示された。現生鳥類と比べて代謝速度が低かったために原始的形態を保持していたことを示している。
Volume 495 Number 7442 pp409-544 (28 March 2013)
EDITORIALS
Push the boat out
船を漕ぎ出す
アメリカでは研究機関が船を使って研究をできる期間は非常に限られており、予算削減の関係で縮小しつつある。そうした事情のもと、建造された非営利団体Schmidt Ocean Instituteの研究船Falkorは無料で(!)研究船を研究者に貸し出している(Googleの元社長Eric Schmidtが資金援助している。ただし乗船時や下船後の研究などの補助はなし)。ただしあくまでGoogleの船であるため、研究者の自由にならない部分も多く、研究計画の認可にもバイアスがかかる可能性があるなど、懸念も多い。
また、映画監督のJams Cameronも自ら開発した有人潜水艇DEEPSEA CHALLENGERをウッズホール海洋研究所に寄付することを今週宣言したらしい(!)。
RESEARCH HIGHLIGHTS
Trilobite fossil spotted
斑点のある三葉虫の化石
Geology http://dx.doi. org/10.1130/G34158.1 (2013)
ニューヨーク州で発見された390Maの三葉虫(Eldredgeops rana)の化石には、外骨格の表面に規則正しく並ぶ数多くの斑点が確認されている。斑点の化学組成は外骨格のそれと同じであることから、埋没後にできたものではないと考えられている。無脊椎動物にカムフラージュするためのものではないかと考えられている。
Primates hunting leaves forest scar
霊長類ハンティングが森に傷を残す
Proc. R. Soc. B 280, 20130246 (2013)
ナイジェリアにおける野外調査から、霊長類の狩りが行われている森とそうでない森とを比較した場合、後者の方が3倍ほど霊長類の種数が多く、さらに3倍ほど実のなる木が出芽しやすいことが分かった。多くの霊長類がいたほうが種が拡散されやすいことが原因と考えられる。逆に霊長類がいないと死にゆく木は子孫を残しにくくななり、さらに霊長類が餌を探しにくくなるという悪循環に陥るのかもしれない。。
Long DNA-like chains assemble
長いDNA状の鎖状の集合体
J. Am. Chem. Soc. 135, 2447−2450 (2013)
2つのヌクレオ塩基から成る化学物質から自発的に長鎖構造ができることが実験によって確認された。水素結合やモノマーの連続など、DNAやRNAに見られる構造に類似しており、生命が生まれた際の自発的化学進化に対して新たな知見が得られた。
Migrating planets sped up collisions
移動する惑星が衝突を加速する
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1769 (2013)
木星や土星などの巨大ガス惑星の軌道は41億年前に現在の位置に移動したと考えられている。「この時に生じた大きな重力変化が太陽系の小惑星の軌道を大きく変え、その結果衝突が盛んになり、惑星の化学組成にも変化が生じた」という仮説がSimone Marchiにより提唱された。この仮説は何故Vestaが41-34億年前に頻繁に衝突を経験したかを説明するという。さらにモデルシミュレーションから、こうした状況は従来考えられていたよりもはるかに隕石を加速させ、衝突が頻繁な期間も数億年継続した可能性を示唆している。
SEVEN DAYS
Apollo engines rise from the deep
アポロのエンジンが深海から引き上げられる
アポロを月へと届けたSaturn Vロケットのエンジンの一部がJeff Bezos率いるチームによって大西洋から引き上げられた。Jeff Bezosはアマゾンの創始者である。
Solar bankruptcy
太陽の倒産
世界最大の太陽光発電パネルの生産を手がける中国の会社の子会社(Suntech Power Holdings)が倒産した。
JAPAN’S FOSSIL-FUEL RELIANCE
日本の化石燃料依存
原子力発電所の停止を受けて、2012年の日本の化石燃料に対する依存度は21%増加し、全体の発電量の90%を占めていた。3.11以降稼働している原発は2基のみで、日本は海外から液体天然ガスを輸入して、ほぼ火力発電だけで(水力発電が5%ほど)国内の電力需要を賄っている。
NEWS IN FOCUS
Planck snaps infant Universe
Planckが初期宇宙を捉える
Mark Peplow
Private research ship makes waves
私的な研究船が波を作り出す
Alexandra Witze
Googleの資金を用いた海洋研究の新たな構想を研究船Falkorが練っている。
FEATURES
The future of publishing: A new page
出版の未来:新たなページ
先日アメリカ政府が「公的資金がもとになってなされた研究の論文は1年以内に無料で公開しなければならない」と宣言し、さらに4/1からはイギリスでも同様に政府の資金援助を受けた論文のオープン・アクセスが開始する。Natureでは特集号を組み、オープン・アクセスの利点・欠点や出版資金・特許に関する問題など、専門家に意見を伺いながら問題を掘り下げる。
以下は引用
Science itself is changing rapidly; the means by which it is shared must keep up.
Open access: The true cost of science publishing
オープン・アクセス:科学的な出版の新のコスト
Richard Van Noorden
安いオープン・アクセスの科学雑誌が出版社が与える付加価値に関する疑問を浮上させている。
Publishing frontiers: The library reboot
出版の最前線:図書館の再起動
Richard Monastersky
科学論文の出版がオープン化されるという動きに、司書や研究者も追いつこうとしている。
Investigating journals: The dark side of publishing
雑誌を調査する:出版のダークサイド
Declan Butler
オープン・アクセス型の雑誌の急増が怪しい出版元をさらに増やしている。
COMMENT
How to hasten open access
どうやってオープン・アクセス化を急ぐか
オープン・アクセス化に賛同する3人(Alma Swan、Matthew Cockerill、Douglas Sipp@RIKEN)に、今後の流れを押し進める方法、見つけやすさの問題、翻訳の必要性(非英語圏の日本人にとっての英語で書かれた科学雑誌のオープン化とは、など)などについて意見を述べてもらう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
Is the ocean food provision index biased?
海洋食料供給指数はバイアスがかかっている?
Trevor A. Branch, Daniel J. Hively & Ray Hilborn
Halpern et al. reply
Branchほかの意見に対するHalpernほかによる返答
Benjamin S. Halpern, Steven D. Gaines, Kristin Kleisner, Catherine Longo, Daniel Pauly, Andrew A. Rosenberg, Jameal F. Samhouri & Dirk Zeller
NEWS & VIEWS
How the ocean exhales
どのようにして海は息を吐くのか
Elisabeth Sikes
Tubular worms from the Burgess Shale
バージェス頁岩から発見されたチューブワーム
Henry Gee
LETTERS
Carbon monoxide in clouds at low metallicity in the dwarf irregular galaxy WLM
小型の不規則銀河WLMの低金属量ガス雲における一酸化炭素
Bruce G. Elmegreen, Monica Rubio, Deidre A. Hunter, Celia Verdugo, Elias Brinks & Andreas Schruba
Deglacial pulses of deep-ocean silicate into the subtropical North Atlantic Ocean
最終退氷期北大西洋亜熱帯域への深層からのケイ素のパルス状の注入
A. N. Meckler, D. M. Sigman, K. A. Gibson, R. François, A. Martínez-García, S. L. Jaccard, U. Röhl, L. C. Peterson, R. Tiedemann & G. H. Haug
氷期の大気中CO2濃度の低下は南大洋で深層水に隔離された溶存炭素の蓄積によって起きたという仮説の証拠がどんどん増えている。最終退氷期の初期にはAMOCが弱化し、それがCO2放出の原因と考えられているが、それがどのように南大洋とテレコネクションしたのかについてはよく分かっていない。
アフリカ北西部から得られた堆積物コア中の生物源オパールの分析から、そのフラックスが過去550kaの6度のターミネーションのときに極大となることが分かった。氷期のNAIW(氷期には現在のNADWがより浅く沈み込んでいたと考えられているので、深層水;Deep Waterではなく、中層水;Intermediate Waterになっていたと考えられている)の弱化時期に相当し、ケイ酸に富んだ深層水との混合がより活発になっていたことを物語っている。しかしターミネーション時には南大洋における低ケイ酸濃度で特徴付けられるSAMW/AAIWの形成も強まっていた可能性が指摘されているが、大西洋の温度躍層水に希釈の効果は見られていないため、CO2放出には何か別のメカニズムが存在するのかもしれない。GNAIWの低下が深層混合を活発化させたとすると、低密度の表層水が深層にもたらされたことになり、AMOCをより不安定化させ、それがCO2を大気に放出した?
※コメント
この新たな仮説についてはにわかには信じがたいですが、詳細に読んでみたいと思います。ちなみに先日Scienceにも同じ研究グループから似たテーマを扱う論文が公表されています。
>問題の論文
Two Modes of Change in Southern Ocean Productivity Over the Past Million Years
過去数百万年間の南大洋の生物生産性の変化の2つのモード
S. L. Jaccard, C. T. Hayes, A. Martínez-García, D. A. Hodell, R. F. Anderson, D. M. Sigman, and G. H. Haug
氷期には南大洋のAntarctic Zoneの有機物輸送量は低下しており、大気中のCO2濃度の低下期に一致していた。逆にSubantarctic Zoneの粒子状有機物量は氷期へと向かう際に増加しており、ダストフラックスが増加する時期と一致しており、鉄肥沃が起きていた可能性が示唆される。南大洋の高時間解像度の堆積物コアを新たにまとめたところ、南大洋におけるこれら2つのモードが大気中のCO2濃度の変動を決定していたことが示唆される。
Electrical image of passive mantle upwelling beneath the northern East Pacific Rise
東太平洋海膨北部の地下の受動的なマントル上昇の電気的画像
Kerry Key, Steven Constable, Lijun Liu & Anne Pommier
東太平洋海台北部の海底におけるマグネトテルリック探査から、深さ20-90kmに対称形の高い電気伝導度を持った三角構造が見つかった。受動的な流れの予測と一致し、海嶺へのメルトの集中が、リソスフェアの底ではなく空隙のある融解した領域で起きていることを示唆している。
Tubicolous enteropneusts from the Cambrian period
カンブリア紀に見つかったチューブ状の腸鰓類
Jean-Bernard Caron, Simon Conway Morris & Christopher B. Cameron
カンブリア紀のバージェス頁岩から発見された腸鰓類のSpartobranchus tenuisの詳細な調査から、現在チューブの中に生息する翼鰓類との類似点が確認された。
Preservation of ovarian follicles reveals early evolution of avian reproductive behaviour
卵包の保存から明らかになる鳥類の生殖行動の初期進化
Xiaoting Zheng, Jingmai O’Connor, Fritz Huchzermeyer, Xiaoli Wang, Yan Wang, Min Wang & Zhonghe Zhou
中国から発掘された初期の鳥の化石から、機能していた卵巣は一つだけであったことが示された。現生鳥類と比べて代謝速度が低かったために原始的形態を保持していたことを示している。
2013年3月27日水曜日
「北極圏のサイエンス」(赤祖父俊一、2006年)
北極圏のサイエンス〜オーロラ、地球温暖化の謎にせまる
赤祖父 俊一
誠文堂 新光社 2006年12月
著者はアラスカ大学名誉教授の赤祖父俊一 氏。
オーロラの専門家で、地球温暖化をはじめとする環境問題は日頃耳にしていたような事実をもとに記述している感が否めない。
人名を検索した際に、温暖化懐疑派として名を連ねていて驚いた。読んでみて納得。
北極圏ほど、地球温暖化が増幅され、顕著に見られる地域である。それは’アイス・アルベド・フィードバック’によるところが大きい。
著者が現役だった頃、アラスカでは顕著な温暖化は確認されていなかった。
さらにマスコミ等でさかんに氷河の後退・崩壊など、馴染み深い地域の科学が歪められて取り上げられていたことに強い反感を抱いたのだろう。地球温暖化問題は統計的にも、物理的にもまだ十分な確証が得られていなかったため、一貫して懐疑的な立場を取っていたようだ(というよりはエセ科学全般に対して)。
温度上昇が単に氷河を融解させるという理解は危険であり、あまりに短絡的だと指摘している。
その姿勢自体、なんら間違っていないし、僕ら若手もその姿勢から学ばなければならない。
もしかすると地球を分かった気でいる気候学者こそが間違っていることがいつの日か示される可能性だってある。
結局そのときにならなければ結果が分からないことが多いのが地球科学である。
時代背景は人の考え方に大きく影響する。
僕らはまさに気候変動の最中にいて、日々気候変動に関するニュースを目にする(マスコミが取り上げることはなくても、インターネットを探せば腐る程出てくる)。
一方、1980年代頃にはまだ温暖化が顕在化しておらず、自然変動と区別することが難しい段階にあった。
現在、温暖化に懐疑的な立場の論文が気候変動関連の話題を扱う科学雑誌に載ることは非常に稀だ。ある意味でそれは偏りが大きく危険なことであると、常に肝に銘じる必要がありそうだ。。
温暖化よりも寒冷化のほうが重大だという指摘は基本的には正しい。生物の代謝は往々にして温度が高いほど活発化する。植物・植物プランクトンの中には高いCO2濃度を好むものもいる。
筆者に一つ欠落している視点があれるとすれば、それは’変化の速度’に対する視点だろう。背景が地質学でないので、進化・淘汰・絶滅・適応といった生態系における時間的概念をあまりに軽視していると考えられる。
さらに、ヒトは300万年前に誕生して以来、何度も氷期-間氷期を体験してきたし…という記述も見られる。原始人と現代人にとっての気候変動の意味を同等に考えることは適切ではない。
また温暖化により北極圏の航路やこれまで手の届かなかった資源が出てくるのは事実だ。これを受けて筆者は温暖化にあまりに悲観的になるべきでないと指摘するが、これは新たな国際問題の種になる感が否めない。
また、いずれ次の氷期が来るのだから…という記述も目立つ。おおよそ政策決定者や現在地上に暮らす人にとっての関心は、せいぜい100年ほど先までに限定されると考えたほうが良い。あまりに先のことを心配するのは科学者かSF作家くらいである。
本は高校生以下を主たる対象にしており、しかも1冊の本のために執筆したのではなく、これまでにコラムなどに掲載した記事をコンパイルしたような物になっているため、繰り返される文章が多く、やや冗長に感じる。
しかしその分、平易な文章で「北極圏の暮らし」や「北極圏の一般的な気候」、「これまでの北極探検史」などが記述されているため、教科書としてでなく、軽い読み物として推奨する。
気になった文言等はこちらにまとめた。
赤祖父 俊一
誠文堂 新光社 2006年12月
著者はアラスカ大学名誉教授の赤祖父俊一 氏。
オーロラの専門家で、地球温暖化をはじめとする環境問題は日頃耳にしていたような事実をもとに記述している感が否めない。
人名を検索した際に、温暖化懐疑派として名を連ねていて驚いた。読んでみて納得。
北極圏ほど、地球温暖化が増幅され、顕著に見られる地域である。それは’アイス・アルベド・フィードバック’によるところが大きい。
著者が現役だった頃、アラスカでは顕著な温暖化は確認されていなかった。
さらにマスコミ等でさかんに氷河の後退・崩壊など、馴染み深い地域の科学が歪められて取り上げられていたことに強い反感を抱いたのだろう。地球温暖化問題は統計的にも、物理的にもまだ十分な確証が得られていなかったため、一貫して懐疑的な立場を取っていたようだ(というよりはエセ科学全般に対して)。
温度上昇が単に氷河を融解させるという理解は危険であり、あまりに短絡的だと指摘している。
その姿勢自体、なんら間違っていないし、僕ら若手もその姿勢から学ばなければならない。
もしかすると地球を分かった気でいる気候学者こそが間違っていることがいつの日か示される可能性だってある。
結局そのときにならなければ結果が分からないことが多いのが地球科学である。
時代背景は人の考え方に大きく影響する。
僕らはまさに気候変動の最中にいて、日々気候変動に関するニュースを目にする(マスコミが取り上げることはなくても、インターネットを探せば腐る程出てくる)。
一方、1980年代頃にはまだ温暖化が顕在化しておらず、自然変動と区別することが難しい段階にあった。
現在、温暖化に懐疑的な立場の論文が気候変動関連の話題を扱う科学雑誌に載ることは非常に稀だ。ある意味でそれは偏りが大きく危険なことであると、常に肝に銘じる必要がありそうだ。。
温暖化よりも寒冷化のほうが重大だという指摘は基本的には正しい。生物の代謝は往々にして温度が高いほど活発化する。植物・植物プランクトンの中には高いCO2濃度を好むものもいる。
筆者に一つ欠落している視点があれるとすれば、それは’変化の速度’に対する視点だろう。背景が地質学でないので、進化・淘汰・絶滅・適応といった生態系における時間的概念をあまりに軽視していると考えられる。
さらに、ヒトは300万年前に誕生して以来、何度も氷期-間氷期を体験してきたし…という記述も見られる。原始人と現代人にとっての気候変動の意味を同等に考えることは適切ではない。
また温暖化により北極圏の航路やこれまで手の届かなかった資源が出てくるのは事実だ。これを受けて筆者は温暖化にあまりに悲観的になるべきでないと指摘するが、これは新たな国際問題の種になる感が否めない。
また、いずれ次の氷期が来るのだから…という記述も目立つ。おおよそ政策決定者や現在地上に暮らす人にとっての関心は、せいぜい100年ほど先までに限定されると考えたほうが良い。あまりに先のことを心配するのは科学者かSF作家くらいである。
本は高校生以下を主たる対象にしており、しかも1冊の本のために執筆したのではなく、これまでにコラムなどに掲載した記事をコンパイルしたような物になっているため、繰り返される文章が多く、やや冗長に感じる。
しかしその分、平易な文章で「北極圏の暮らし」や「北極圏の一般的な気候」、「これまでの北極探検史」などが記述されているため、教科書としてでなく、軽い読み物として推奨する。
気になった文言等はこちらにまとめた。
気になった一文集(日本語 ver. No. 10)
北極圏のサイエンス〜オーロラ、地球温暖化の謎にせまる
赤祖父 俊一
誠文堂 新光社 2006年12月
もっとも大切なことは、地球は人間のためにあるのではなく、人間の存在とは無関係に地球は変動を続けているということなのだ。(pp. 58)
北極海を中心として約半分の領域は依然、海氷に覆われている。この海氷の話は、どこか遠い国の物語でなく、地球の将来に重要な関係を持っている。(pp. 69)
北半球を鍋に例えれば、赤道は鍋の底に相当し、北極海の海氷は鍋のふたに当たる。湯の沸き具合がふたの有無で異なるように、海は赤道付近で受けた太陽熱を北極圏まで運ぶが、海氷はその太陽熱が北極の大気に逃げるのをコントロールしている。(pp. 69)
氷河は、文字通り氷の河のことである。氷河は日本にはない。しかし、極地の氷河は中緯度帯の日本はもちろん、世界中の人間のあらゆる生活、経済に大きな影響を及ぼす。(pp. 88)
気候変動は北極圏に最も重大な影響を持っていると同時に、それは北極圏を越えて地球全体に影響を及ぼす。氷河の崩壊、それに伴う海水準の上昇、森林線の変化に伴う農作地帯の移動、永久凍土が融けることによる数多くの問題がその例である。(pp. 97)
一般に科学の真理とは、複雑な形をした物体のようなもので、科学者一人一人は、その物体の一部分しか見ることができない。(pp. 102)
地球では植物がすばらしい「炭酸同化作用」という過程をつくりだし、炭酸ガスと水から炭水化物(我々の食糧)を作った。その「遺骨」が石炭と石油である。(pp. 104)
黒点とは別に、太陽の上層大気(コロナ)で暗い所(コロナホールと呼ぶ)からも強い太陽風が吹き出しており、太陽は地球から見て27日間に1回自転するので、オーロラが27日ごとに活発になる。これは黒点の最盛期を過ぎてから数年後に起きやすい。(pp. 124)
もし、太陽系外の惑星に植物があれば、その惑星の光は乳白色のはずである。したがってオーロラの研究は宇宙の生命探査にも役立つはずである。(pp. 125)
私にとって全く専門外の極地探検史をひもとくことは楽しみの一つである。(pp. 132)
熱帯に入る太陽エネルギーは第一近似として一定であるので、対流は北極圏の大気の状態に強くコントロールされる。日本での日常生活に北極圏がいかに重要な役割を果たしているかが、これで分かる。(pp. 156)
例えば北極の氷が完全に融けると、これまで大気と隔絶されていた’暖かい’海との間に熱のやり取りが生じ、北極圏はさらに温暖化する。それは中緯度の大気海洋循環(黒潮や低気圧など)にも影響すると予想される。
気温1度の変化は日常生活はもとより、日本全体のエネルギー消費(電力、石油、天然ガス)、経済(衣類、電気器具)、ひいては社会問題にも関係している。(pp. 158)
北極圏研究は経済的にも日本にとって重要である。(pp. 160)
スエズ運河を通るよりも、北極圏を通ったほうが航路がはるかに短く、それだけ重油を節約できるからである。ただし、現在は海氷が大きな障壁となっている。
先進国である日本が、自分たちの日常生活に直結する問題を他人、他国まかせにはできない。(pp. 160)
赤祖父 俊一
誠文堂 新光社 2006年12月
もっとも大切なことは、地球は人間のためにあるのではなく、人間の存在とは無関係に地球は変動を続けているということなのだ。(pp. 58)
北極海を中心として約半分の領域は依然、海氷に覆われている。この海氷の話は、どこか遠い国の物語でなく、地球の将来に重要な関係を持っている。(pp. 69)
北半球を鍋に例えれば、赤道は鍋の底に相当し、北極海の海氷は鍋のふたに当たる。湯の沸き具合がふたの有無で異なるように、海は赤道付近で受けた太陽熱を北極圏まで運ぶが、海氷はその太陽熱が北極の大気に逃げるのをコントロールしている。(pp. 69)
氷河は、文字通り氷の河のことである。氷河は日本にはない。しかし、極地の氷河は中緯度帯の日本はもちろん、世界中の人間のあらゆる生活、経済に大きな影響を及ぼす。(pp. 88)
気候変動は北極圏に最も重大な影響を持っていると同時に、それは北極圏を越えて地球全体に影響を及ぼす。氷河の崩壊、それに伴う海水準の上昇、森林線の変化に伴う農作地帯の移動、永久凍土が融けることによる数多くの問題がその例である。(pp. 97)
一般に科学の真理とは、複雑な形をした物体のようなもので、科学者一人一人は、その物体の一部分しか見ることができない。(pp. 102)
地球では植物がすばらしい「炭酸同化作用」という過程をつくりだし、炭酸ガスと水から炭水化物(我々の食糧)を作った。その「遺骨」が石炭と石油である。(pp. 104)
黒点とは別に、太陽の上層大気(コロナ)で暗い所(コロナホールと呼ぶ)からも強い太陽風が吹き出しており、太陽は地球から見て27日間に1回自転するので、オーロラが27日ごとに活発になる。これは黒点の最盛期を過ぎてから数年後に起きやすい。(pp. 124)
もし、太陽系外の惑星に植物があれば、その惑星の光は乳白色のはずである。したがってオーロラの研究は宇宙の生命探査にも役立つはずである。(pp. 125)
私にとって全く専門外の極地探検史をひもとくことは楽しみの一つである。(pp. 132)
熱帯に入る太陽エネルギーは第一近似として一定であるので、対流は北極圏の大気の状態に強くコントロールされる。日本での日常生活に北極圏がいかに重要な役割を果たしているかが、これで分かる。(pp. 156)
例えば北極の氷が完全に融けると、これまで大気と隔絶されていた’暖かい’海との間に熱のやり取りが生じ、北極圏はさらに温暖化する。それは中緯度の大気海洋循環(黒潮や低気圧など)にも影響すると予想される。
気温1度の変化は日常生活はもとより、日本全体のエネルギー消費(電力、石油、天然ガス)、経済(衣類、電気器具)、ひいては社会問題にも関係している。(pp. 158)
北極圏研究は経済的にも日本にとって重要である。(pp. 160)
スエズ運河を通るよりも、北極圏を通ったほうが航路がはるかに短く、それだけ重油を節約できるからである。ただし、現在は海氷が大きな障壁となっている。
先進国である日本が、自分たちの日常生活に直結する問題を他人、他国まかせにはできない。(pp. 160)
2013年3月26日火曜日
海水のpHの定義(改)
前回の記事から約1年が経過し、あれから新たに得た知識も多くあるので、改めて海水のpHの定義をまとめておきます。
海水の「pH」は、「DIC」「TA」「pCO2」とともに炭酸系を記述する上で重要な変数の一つですが、その取り扱いや、理論的背景が複雑で、また様々なスケールが様々な研究者や研究機関ごとに扱われていることなどもあり、非常に捉えにくいものとなっています。
求めたいものが海水のpHなのか、石灰化流体のpHなのかなどでも推奨されるpHのスケールは異なり、海水化学コミュニティーや生理学コミュニティーなど、異なるコミュニティーで異なるスケールが採用されてきたという背景があります。
現在の海水化学コミュニティーや海洋酸性化研究では「全水素イオン濃度スケール;pHtotal」が広く採用されていますが、
例えばかつての国際海洋観測プロジェクトのうち、
GEOSECS(Geochemical Ocean Section Study)のときには「NBSスケール;pHNBS」、
WOCE(World Ocean Circulation Experiment)のときには「海水スケール;pHSWS」
が一般的だったなど、時代によっても変化してきました。
ここでは’海水’のpHを中心にまとめます。
参考文献は最後にまとめて記しておきます。
海水の「pH」は、「DIC」「TA」「pCO2」とともに炭酸系を記述する上で重要な変数の一つですが、その取り扱いや、理論的背景が複雑で、また様々なスケールが様々な研究者や研究機関ごとに扱われていることなどもあり、非常に捉えにくいものとなっています。
求めたいものが海水のpHなのか、石灰化流体のpHなのかなどでも推奨されるpHのスケールは異なり、海水化学コミュニティーや生理学コミュニティーなど、異なるコミュニティーで異なるスケールが採用されてきたという背景があります。
現在の海水化学コミュニティーや海洋酸性化研究では「全水素イオン濃度スケール;pHtotal」が広く採用されていますが、
例えばかつての国際海洋観測プロジェクトのうち、
GEOSECS(Geochemical Ocean Section Study)のときには「NBSスケール;pHNBS」、
WOCE(World Ocean Circulation Experiment)のときには「海水スケール;pHSWS」
が一般的だったなど、時代によっても変化してきました。
ここでは’海水’のpHを中心にまとめます。
参考文献は最後にまとめて記しておきます。
新着論文(Geology, PO)
Geology
1 April 2013; Vol. 41, No. 4
Articles
CO2 sequestration in a UK North Sea analogue for geological carbon storage
Niklas Heinemann, Mark Wilkinson, R. Stuart Haszeldine, Anthony E. Fallick, and Gillian E. Pickup
Man-made versus natural CO2 leakage: A 400 k.y. history of an analogue for engineered geological storage of CO2
Neil M. Burnside, Zoe K. Shipton, Ben Dockrill, and Rob M. Ellam
CO2捕獲貯留を実現するには、地質構造に注入されたCO2がどのように固定され、或いは動くのかを正確に予測する必要がある。アメリカ西部のUtahは自然にCO2が漏れ出している地域の一つであるが、過去400kaにわたってその漏出の位置がkmというスケールで繰り返し変化し続けていたことが示された。また不完全に開発された掘削井からの漏出量が極めて多く、断層や流体から放出される量を遥かに凌ぐことが分かった。
Establishment of euxinic conditions in the Holocene Black Sea
Sebastian Eckert, Hans-Jürgen Brumsack, Silke Severmann, Bernhard Schnetger, Christian März, and Henning Fröllje
Research Focus (OPEN)
Reconstructing the history of euxinia in a coastal sea
Caroline P. Slomp
Lessons in carbon storage from geological analogues
Mike Bickle and Niko Kampman
Paleoceanography
Assessing spatial variability in El Niño–Southern Oscillation event detection skill using coral geochemistry
Kelly A. Hereid, Terrence M. Quinn, Yuko M. Okumura
サンゴ骨格δ18OがENSOの指標になるかどうかを評価。WPWPのサンゴはエルニーニョにより感度が高く、SPCZ域のサンゴはラニーニャにより感度が高いことが示された。逆に東太平洋のサンゴの感度は極めて低いことが示された。
Response of Iberian Margin sediments to orbital and suborbital forcing over the past 420 ka
David Hodell, Simon Crowhurst, Luke Skinner, Polychronis C. Tzedakis, Vasiliki Margari, James E. T. Channell, George Kamenov, Suzanne Maclachlan, Guy Rothwell
Iberian Margin南西部で得られた堆積物コアの色の変化や地球化学プロキシから過去420kaにわたる古環境と軌道要素との位相関係を評価。歳差運動が支配的であり、低緯度への影響が風成循環を通して堆積物に変動を記録していると考えられる(風成塵、湧昇、降水など)。地軸傾動に対しては7-8ka遅れて変動している。
The dynamics of the marine nitrogen cycle across the last deglaciation
Olivier Eugster, Nicolas Gruber, Curtis Deutsch, Samuel L. Jaccard, Mark R. Payne
地球化学ボックスモデルを用いて過去30kaに確認されている海洋堆積物中のδ15Nの変化をもたらす窒素固定・脱窒の変動を評価した。最終退氷期の初期にダスト起源の鉄の供給が低下し、窒素固定が抑制されると、よく観測事実を説明できることが示された。15ka頃のδ15Nの戻りは貧酸素水塊の広がりによる脱窒の増加と考えると説明できる。
Testing hypotheses about glacial cycles against the observational record
Robert K. Kaufmann, Katarina Juselius
identified cointegrated vector autoregression model(?)を用いて氷期・間氷期サイクルをもたらす物理メカニズムを考察。大気中のCO2濃度の変動には「南大洋の温度」、「海氷」、「生物活動」が重要であることが示された。生物活動は鉄の供給によってコントロールされ、さらに生物活動は大気中のCO2濃度を変動させる。氷床量変動は「大気中CO2濃度の変化」「日射量の変化」「日射の緯度方向の強度変化」で説明される。
A new mechanism for Dansgaard-Oeschger cycles
S. V. Petersen, D. P. Schrag, P. U. Clark
北半球高緯度域で顕著に確認されるDOサイクル(氷期に急速な温暖化とゆるやかな寒冷化が何度も繰り返されたこと)を説明する新たな仮説を提唱。棚氷と海氷の変動がDOサイクルの遅い・早い変動において重要であると考えられる。この仮説は北大西洋とNordic Seaの間接指標によって支持される。
Calibration and application of B/Ca, Cd/Ca and δ11B in Neogloboquadrina pachyderma (sinistral) to constrain CO2 uptake in the subpolar North Atlantic during the last deglaciation
Jimin Yu, David J.R. Thornalley, James W.B. Rae, I. Nick McCave
北大西洋の堆積物コア中のN. PacydermaのB/Caとδ11Bから海洋表層水のpHとpCO2を復元。最終退氷期においてはおおまかに大気のpCO2の変化に従っていることが示された。Cd/Caを栄養塩の指標とすると、北大西洋の表層水のpCO2は現在と同じく栄養塩によって強く支配されていることも示された。N. pacydermaが石灰化を行う時期においては、北大西洋は常にCO2のシンクとして振る舞っていたと考えられる。
Millennial-scale climate change and intermediate water circulation in the Bering Sea from 90 ka: A high-resolution record from IODP Site U1340
Shiloh A. Schlung, A. Christina Ravelo, Ivano W. Aiello, Dyke H. Andreasen, Mea S. Cook, Michelle Drake, Kelsey A. Dyez, Thomas P. Guilderson, Jonathan P. LaRiviere, Zuzanna Stroynowski, Kozo Takahashi
北太平洋における千年スケールの気候変動は主にNPIWの変動によって支配されている。IODP U1340堆積物コアの密度変化などから、過去90kaの環境復元を行ったところ、D/Oサイクルに類似した変動が見られ、3-5℃の温度上昇、湧昇強化に伴う一次生産の強化、底層水の酸素濃度の上昇などが亜間氷期に起きていたことが示唆される。60-20ka頃には現在よりも酸素濃度が高く、低塩分のNPIWが存在していた。またB/Aには酸素濃度が最低値に達していた。
Lithium in the aragonite skeletons of massive Porites corals: A new tool to reconstruct tropical sea surface temperatures
Ed C. Hathorne, Thomas Felis, Atsushi Suzuki, Hodaka Kawahata, Guy Cabioch
ハマサンゴ骨格中のLi/CaはSST指標になる可能性があることが小笠原諸島とタヒチで採取された2つの現生ハマサンゴの分析から明らかに。しかし最近25年間のうち、1979-1980の間だけはSST依存性が消えており、同時にMg/Caも変な変動を示すことから、何かしらの生体効果が及んでいたものと考えられる。より多くのキャリブレーション研究が必要。
Warming of surface waters in the mid-latitude North Atlantic during Heinrich events
B. D. A. Naafs, J. Hefter, J. Grützner, R. Stein
ハインリッヒ・イベント時には北大西洋を中心に急激な寒冷化が起きていたことが知られているが、大西洋中緯度域の温度変化についてはよく分かっていない。IODP U1313堆積物コアのアルケノン分析からSSTを復元したところ、IRDが到達する南限においては数千年間にわたって表層温度が2-4℃上昇していたことが分かった。中緯度と高緯度では逆の変化が起きていた可能性がある。
1 April 2013; Vol. 41, No. 4
Articles
CO2 sequestration in a UK North Sea analogue for geological carbon storage
Niklas Heinemann, Mark Wilkinson, R. Stuart Haszeldine, Anthony E. Fallick, and Gillian E. Pickup
Man-made versus natural CO2 leakage: A 400 k.y. history of an analogue for engineered geological storage of CO2
Neil M. Burnside, Zoe K. Shipton, Ben Dockrill, and Rob M. Ellam
CO2捕獲貯留を実現するには、地質構造に注入されたCO2がどのように固定され、或いは動くのかを正確に予測する必要がある。アメリカ西部のUtahは自然にCO2が漏れ出している地域の一つであるが、過去400kaにわたってその漏出の位置がkmというスケールで繰り返し変化し続けていたことが示された。また不完全に開発された掘削井からの漏出量が極めて多く、断層や流体から放出される量を遥かに凌ぐことが分かった。
Establishment of euxinic conditions in the Holocene Black Sea
Sebastian Eckert, Hans-Jürgen Brumsack, Silke Severmann, Bernhard Schnetger, Christian März, and Henning Fröllje
Research Focus (OPEN)
Reconstructing the history of euxinia in a coastal sea
Caroline P. Slomp
Lessons in carbon storage from geological analogues
Mike Bickle and Niko Kampman
Paleoceanography
Assessing spatial variability in El Niño–Southern Oscillation event detection skill using coral geochemistry
Kelly A. Hereid, Terrence M. Quinn, Yuko M. Okumura
サンゴ骨格δ18OがENSOの指標になるかどうかを評価。WPWPのサンゴはエルニーニョにより感度が高く、SPCZ域のサンゴはラニーニャにより感度が高いことが示された。逆に東太平洋のサンゴの感度は極めて低いことが示された。
Response of Iberian Margin sediments to orbital and suborbital forcing over the past 420 ka
David Hodell, Simon Crowhurst, Luke Skinner, Polychronis C. Tzedakis, Vasiliki Margari, James E. T. Channell, George Kamenov, Suzanne Maclachlan, Guy Rothwell
Iberian Margin南西部で得られた堆積物コアの色の変化や地球化学プロキシから過去420kaにわたる古環境と軌道要素との位相関係を評価。歳差運動が支配的であり、低緯度への影響が風成循環を通して堆積物に変動を記録していると考えられる(風成塵、湧昇、降水など)。地軸傾動に対しては7-8ka遅れて変動している。
The dynamics of the marine nitrogen cycle across the last deglaciation
Olivier Eugster, Nicolas Gruber, Curtis Deutsch, Samuel L. Jaccard, Mark R. Payne
地球化学ボックスモデルを用いて過去30kaに確認されている海洋堆積物中のδ15Nの変化をもたらす窒素固定・脱窒の変動を評価した。最終退氷期の初期にダスト起源の鉄の供給が低下し、窒素固定が抑制されると、よく観測事実を説明できることが示された。15ka頃のδ15Nの戻りは貧酸素水塊の広がりによる脱窒の増加と考えると説明できる。
Testing hypotheses about glacial cycles against the observational record
Robert K. Kaufmann, Katarina Juselius
identified cointegrated vector autoregression model(?)を用いて氷期・間氷期サイクルをもたらす物理メカニズムを考察。大気中のCO2濃度の変動には「南大洋の温度」、「海氷」、「生物活動」が重要であることが示された。生物活動は鉄の供給によってコントロールされ、さらに生物活動は大気中のCO2濃度を変動させる。氷床量変動は「大気中CO2濃度の変化」「日射量の変化」「日射の緯度方向の強度変化」で説明される。
A new mechanism for Dansgaard-Oeschger cycles
S. V. Petersen, D. P. Schrag, P. U. Clark
北半球高緯度域で顕著に確認されるDOサイクル(氷期に急速な温暖化とゆるやかな寒冷化が何度も繰り返されたこと)を説明する新たな仮説を提唱。棚氷と海氷の変動がDOサイクルの遅い・早い変動において重要であると考えられる。この仮説は北大西洋とNordic Seaの間接指標によって支持される。
Calibration and application of B/Ca, Cd/Ca and δ11B in Neogloboquadrina pachyderma (sinistral) to constrain CO2 uptake in the subpolar North Atlantic during the last deglaciation
Jimin Yu, David J.R. Thornalley, James W.B. Rae, I. Nick McCave
北大西洋の堆積物コア中のN. PacydermaのB/Caとδ11Bから海洋表層水のpHとpCO2を復元。最終退氷期においてはおおまかに大気のpCO2の変化に従っていることが示された。Cd/Caを栄養塩の指標とすると、北大西洋の表層水のpCO2は現在と同じく栄養塩によって強く支配されていることも示された。N. pacydermaが石灰化を行う時期においては、北大西洋は常にCO2のシンクとして振る舞っていたと考えられる。
Millennial-scale climate change and intermediate water circulation in the Bering Sea from 90 ka: A high-resolution record from IODP Site U1340
Shiloh A. Schlung, A. Christina Ravelo, Ivano W. Aiello, Dyke H. Andreasen, Mea S. Cook, Michelle Drake, Kelsey A. Dyez, Thomas P. Guilderson, Jonathan P. LaRiviere, Zuzanna Stroynowski, Kozo Takahashi
北太平洋における千年スケールの気候変動は主にNPIWの変動によって支配されている。IODP U1340堆積物コアの密度変化などから、過去90kaの環境復元を行ったところ、D/Oサイクルに類似した変動が見られ、3-5℃の温度上昇、湧昇強化に伴う一次生産の強化、底層水の酸素濃度の上昇などが亜間氷期に起きていたことが示唆される。60-20ka頃には現在よりも酸素濃度が高く、低塩分のNPIWが存在していた。またB/Aには酸素濃度が最低値に達していた。
Lithium in the aragonite skeletons of massive Porites corals: A new tool to reconstruct tropical sea surface temperatures
Ed C. Hathorne, Thomas Felis, Atsushi Suzuki, Hodaka Kawahata, Guy Cabioch
ハマサンゴ骨格中のLi/CaはSST指標になる可能性があることが小笠原諸島とタヒチで採取された2つの現生ハマサンゴの分析から明らかに。しかし最近25年間のうち、1979-1980の間だけはSST依存性が消えており、同時にMg/Caも変な変動を示すことから、何かしらの生体効果が及んでいたものと考えられる。より多くのキャリブレーション研究が必要。
Warming of surface waters in the mid-latitude North Atlantic during Heinrich events
B. D. A. Naafs, J. Hefter, J. Grützner, R. Stein
ハインリッヒ・イベント時には北大西洋を中心に急激な寒冷化が起きていたことが知られているが、大西洋中緯度域の温度変化についてはよく分かっていない。IODP U1313堆積物コアのアルケノン分析からSSTを復元したところ、IRDが到達する南限においては数千年間にわたって表層温度が2-4℃上昇していたことが分かった。中緯度と高緯度では逆の変化が起きていた可能性がある。
気になった一文集(English ver. No. 11)
Global temperature, therefore, has risen from near the coldest to the warmest levels of the Holocene within the past century, reversing the long-term cooling trend that began ~5000 yr B.P.
従って、全球温度は完新世における最も寒い状態から最も暖かい状態へと過去1世紀の間に増加してきたのであり、5,000年前から始まる長期的な寒冷化の傾向に逆行している。
「A Reconstruction of Regional and Global Temperature for the Past 11,300 Years」
Marcott et al., 2013, Science (vol. 339, pp. 1201)
完新世の温度復元と現在の地球温暖化の特異性
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It found that not only does the uptake of CO2 from the atmosphere into the ocean increase seawater CO2 levels and reduce pH in the ocean, it also causes a reduction in the ability of the ocean to buffer natural changes.
大気からCO2が海に取り込まれることで海水中のCO2濃度が増しpHが低下するだけでなく、海が自然の変化を緩衝する能力も低下させることが分かった。
It is important to consider that the current rate of increase in ocean acidity is 100 times faster than the rate of change in the last million years of earth’s history.
現在の海の酸性化の速度は地球の歴史の過去100万年間の変化速度の100倍早く起きていることを考慮することは重要である。
If we allow CO2 emissions to increase unabated it will likely take thousands of years for chemical changes in the ocean to return to conditions like those today.
もし我々がCO2の排出を衰えさせずに増加させれば、海の化学変化が現在のような状態に戻るまでには数千年もの時間がかかる。
If you go to the Great Barrier Reef today you won’t see any visible warning sign of ocean acidification. By the time changes can be clearly seen on the reef, it will likely be too late to reverse them.
いまグレートバリアリーフに行っても目に見えて海洋酸性化の影響は見られないだろう。サンゴ礁でその変化が明らかになる頃には、それらを打ち消すにはもう手遅れとなっている。
「Jumps in ocean acidity put coral in more peril」Emily Shaw, The Conversation, 5 March 2013.
海洋酸性化とサンゴへの影響
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As the Western Australian ocean heatwave showed us two years ago when it devastated fish stocks, it can be the extreme end of the spectrum that can cause the most damage, and these damages may be irreversible over our lifetimes in the case of ocean acidification.
2年前に西オーストラリアの海水温の異常昇温が魚の資源量を破壊したように、海洋酸性化は最も大きなダメージをもたらす現象の中でも極端なものとなる可能性があり、我々の生涯の中で元通りにはならないだろう。
「Global warming could corrode shallow reefs sooner」EPOCAブログ(1 Mar 2013)
地球温暖化・海洋酸性化とサンゴ礁の減退
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We particularly cannot afford that view when our planet is being propelled by human action into another climate regime with incalculable social and environmental costs. The only way to figure out what is happening to our planet is to measure it, and this means tracking changes decade after decade and poring over the records.
But in the case of a program aimed at long-term change, "research" and "operations" cannot be separated cleanly. Finding and correcting for the inevitable systematic biases is a job for scientists who understand the measurement technology, are passionate about data integrity, and are motivated to unravel how the Earth system operates.
「Science podcast (28 Mar 2008)」Ralph Keeling
マウナロアにおける大気中CO2濃度連続観測50周年記念インタビュー
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Smallholders often purchase stocks on credit that is repaid at the end of the season, so the loss of a crop or livestock in one bad year can put the farmer into debt for many years, condemning generations to poverty.
To lessen the impacts of adverse weather, networks must be established between the forecasters of global weather and climate in the developed world, and research, governmental and non-governmental organizations in the less-developed world.
Paradoxically, as forecasts become better and their resolution grows, it becomes more difficult for developing countries to access them.
Faced with possible climate change, societies that learn to cope with and mitigate hazards now will be most adept at dealing with more frequent and intense hazards in the future.
「Improve weather forecasts for the developing world」Nature 493, 17–19 (03 January 2013)
発展途上国に先進国の気象予測サービスを提供することで、経済的・人的被害をもっと減らせる。バングラディシュ・ミャンマーの洪水の例を紹介。
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The implication is simple: Even if consumption is held constant, ecological impact can increase—not only for energy but also for other resources.
By law, land cleared for an oil well must be reclaimed after abandonment, but the ecological value of reclaimed sites is not equivalent to their pre-development condition.
A recent study found that emission levels in oil-sands mines are 23 times that of conventional production. Because less than 20% of the deposit can be accessed from the surface, production will soon be dominated by in situ drilling, substantially increasing cumulative land disruption: Three times as much land is disturbed to produce the natural gas required for oil-sand drilling as is consumed by the wells themselves.
Declining conventional fossil fuel reserves have motivated much more investment in nonconventional fossil fuel enterprises than in renewable alternatives, representing a global trend toward increased ecological impact per unit of fuel produced. Coal production, which is growing at a faster rate than any other fossil fuel, is increasingly dominated by surface (including mountain-top) mining, which allows more efficient extraction of lower-density deposits but is also more ecologically disruptive than underground mining.
Even if consumption leveled off, increases in ecological impact could result as global reserves become depleted. The question is not when resources will run out, but how much ecological impact we can tolerate.
「Not all about consumption」Science (15 Mar 2013)
資源が枯渇すればするほど、採掘にかかるエネルギー・資源が増し、結果的に多くの生態系が破壊される
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We must prepare young people to address this issue: The problem of preserving a habitable planet will engage present and future generations. Scientists must improve communication if research is to inform the public and policy makers better.
「Development and application of earth system models」Ronald G. Prinn, PNAS (26 February 2013; Vol. 110, No. Supplement 1)
地球システムモデルは現在の気候を理解するだけでなく、将来の気候変動予測にも力を発揮する。
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More than 80% of the biomass used for energy comes from forests, in the form of logs, wood chips, wood pellets, sawdust, bark and other by-products. Just one-third of the world’s 4 billion hectares of forest is used for wood production or other commercial purposes. And those that are managed have room to grow more feedstock than they currently do.
...better use of low-yielding grasslands, sparse woodlands and degraded land could deliver more biofuels without encroaching on food production.
Planting 170 million hectares of this with energy crops could deliver 15 exa-joules, and still leave space for feeding rising populations, urban development and biodiversity protection, and new forests.
In the Northern Hemisphere, fossil fuels still dominate the heat market, even though biomass is half the price of oil.
北半球では、バイオマスの値段は石油の半分でしかないのにも関わらず、未だに化石燃料が熱市場を支配している。
For electricity production, biofuels supply around 2% of the world’s needs
The top priority should be heating: improving efficiency in developing countries and using biomass and district heating, rather than fossil fuels and electricity, in developed countries.
最も優先度が高いのは熱である。途上国における熱効率を上げ、バイオマスを使い、先進国のような化石燃料や電力の使用ではなく熱を使わせる。
Without targeted, long-term government policies, bioenergy will develop too slowly to help in the mitigation of climate change.
Without targeted, long-term government policies, bioenergy will develop too slowly to help in the mitigation of climate change.
目標にされる長期的な政府の政策がなければ、バイオエネルギーは遅く発展しすぎて気候変動緩和には役に立たないであろう。
「Build a biomass energy market」Nature (7 Feb 2013, vol. 494, 29-31)
バイオ燃料を先進国の電力生産というよりもむしろ途上国の熱生産(料理の火、暖房、浴室など)に用いることで、化石燃料や木材などの使用を軽減させる必要がある。
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「Build a biomass energy market」Nature (7 Feb 2013, vol. 494, 29-31)
バイオ燃料を先進国の電力生産というよりもむしろ途上国の熱生産(料理の火、暖房、浴室など)に用いることで、化石燃料や木材などの使用を軽減させる必要がある。
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The controversy over these technologies in general has translated into a controversy over the regulation of research that has the effect right now that a lot of research that’s really needed isn’t going ahead.
こうした技術を巡る議論は、一般的に、現在効果を発揮する研究の規制を巡る議論に読み替えられてきた。そのため、多くの本当に必要な研究が前進しなかった。
...we argue that there needs to be consultations and discussions between governments and scientists to help develop the outlines of near-term research programs that would be low in risk, high in scientific value, and socially and publicly and politically acceptable.
…we propose a couple of specific initiatives to help map out the outlines of that governance system.
Because if future climate change turns out really badly, we may find ourselves in a situation in a few decades where it’s really essential to begin deploying climate engineering technologies to slow or stop or reverse bad changes that are underway.
もし将来の気候変化が本当に悪いものだと判明したときに、私たちは自分達が気候工学技術を用いて起こりつつある悪い方向への変化を遅くする、止める、或いは打ち消す手段を開始することが本当に必要な状況に立たされていることを数十年内に実感するかもしれないからである。
…we think it’s crucial that they start talking to each other early on while the stakes are low so that if we do come to such a frightening climate future, there will be cooperative decision-making channels established, and it won’t be a cascade of provocative actions taken by one great power or another, because the risks of that would be terrible.
…もし我々が将来恐ろしい気候に直面しなければならないのであれば、危険性が低いうちに政策決定者と科学者はお互いに会話を始める必要があり、そうすることで政策決定の協力的な流れが構築され、一つか或いはいくつかの大きな力による物議をかもすような行動の連鎖がなくなる、と私たちは考える。そのリスクは恐ろしいものになり得るからである。
Science Podcast (15 Mar 2013)
地球工学(geoengineering)の予備実験の可否を巡る議論について。気候変動緩和に寄与すると思われる低リスクな地球工学は実験をしておかなければ、いざ実行に移したい時に判断ができない。
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It is, simply put, the largest chemistry experiment ever attempted. It is happening now, and it has real impacts on people and local economies today
単純に言うと、それ(海洋酸性化)はこれまでに試みられた中で最大の化学実験である。それは現在進行中であり、今日人や地域経済に真の影響を及ぼしている。
「The ocean in a high carbon dioxide world」EPOCA海洋酸性化ブログ
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Ecosystems that will most likely be affected include coral reefs, open ocean environments, high-latitude oceans, and deep-sea regions. Susceptible species provide human communities with many goods and services, so human communities may feel the effects of ocean acidification in several ways.
もっとも影響を被りそうな生態系はサンゴ礁、外洋、高緯度の海、深海などを含む。影響を被りやすい生物種は人間に多くの商品やサービスをもたらしているため、多くの方法で海洋酸性化の影響を感じることができるだろう。
「Ocean acidification」EPOCA海洋酸性化ブログ(Cooley & Doney, 2013, Encyclopedia of Environmetrics)
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It is, simply put, the largest chemistry experiment ever attempted. It is happening now, and it has real impacts on people and local economies today
単純に言うと、それ(海洋酸性化)はこれまでに試みられた中で最大の化学実験である。それは現在進行中であり、今日人や地域経済に真の影響を及ぼしている。
「The ocean in a high carbon dioxide world」EPOCA海洋酸性化ブログ
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Ecosystems that will most likely be affected include coral reefs, open ocean environments, high-latitude oceans, and deep-sea regions. Susceptible species provide human communities with many goods and services, so human communities may feel the effects of ocean acidification in several ways.
もっとも影響を被りそうな生態系はサンゴ礁、外洋、高緯度の海、深海などを含む。影響を被りやすい生物種は人間に多くの商品やサービスをもたらしているため、多くの方法で海洋酸性化の影響を感じることができるだろう。
「Ocean acidification」EPOCA海洋酸性化ブログ(Cooley & Doney, 2013, Encyclopedia of Environmetrics)
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2013年3月25日月曜日
新着論文(QSR, EPSL, GCA, PALAEO3)
QSR
Southern Hemisphere westerly wind changes during the Last Glacial Maximum: paleo-data synthesis
K.E. Kohfeld, R.M. Graham, A.M. de Boer, L.C. Sime, E.W. Wolff, C. Le Quéré, L. Bopp
氷期-間氷期という時間スケールで南半球の偏西風は変動していたと考えられるが、プロキシやモデル間で一致した見解(強度や位置など)はLGMというよく研究されている時代でも得られていない。LGMの風の指標と考えられているプロキシをコンパイルし、陸の湿度、ダスト沈着、SST、海洋前線、海洋一次生産などの変化を考察。偏西風が「赤道側にシフトし強化されていた」、「何も変化していなかった」のいずれでも観測に対して整合的な結果が得られた。前者の説明が観測により整合的とも言えなくはないが、海氷範囲・浮力フラックスの変化などがプロキシの解釈に影響してしまうことを考えると、断定できない。従って、データ復元だけでは偏西風の位置や強さについて制約を与えることは難しい。
EPSL
Is the marine osmium isotope record a probe for CO2 release from sedimentary rocks?
R.B. Georg, A.J. West, D. Vance, K. Newman, A.N. Halliday
海洋のオスミウムの同位体が氷期-間氷期スケールの陸の風化を反映して変動するかについて、モデルシミュレーションを用いて検証。オスミウムを多く含むような、有機物や硫黄に富んだ堆積岩の風化速度を変えてシミュレーションを行うことにより、海洋のオスミウム同位体の変動をうまく説明できることが示された。さらに風化速度は大気中のCO2濃度にも影響するため、海洋のオスミウム同位体が長期的な大気CO2-大陸風化プロセスの指標になる可能性がある。
GCA
Sr/Ca profile of long-lived Tridacna gigas bivalves from South China Sea: a new high-resolution SST proxy
Hong Yan, Da Shao, Yuhong Wang, Liguang Sun
南シナ海から得られたオオジャコガイ(Tridacna gigas)の殻のSr/CaがSSTの指標になる可能性を提案。δ18Oや現場のSST変動などと照合して検証。Srはサンゴのように結晶格子に入っているわけではなく、有機物に入っており、結晶/有機物の割合の変化が季節変動を生むもとになっていると考えられる。そのためICP-OESでは測定可能だが、LA-ICPMSでは明瞭な季節変化は見られなかった。
PALAEO3
Comparison and implication of TEX86 and U37K ′ temperature records over the last 356 kyr of ODP Site 1147 from the northern South China Sea
Dawei Li, Meixun Zhao, Jun Tian, Li Li
南シナ海においてはSSTのより長期的な復元が得られていない。TEX86は熱帯域ではよく応用されるが、南シナ海でそれが利用可能かどうかはよく分かっていない。過去356kaのTEX86とアルケノンの測定結果は、どちらの指標も氷期-間氷期の気候変動に似た変動を示している。2つの指標の温度差は混合層の深さを反映していると考えられているが、間氷期には温度差が大きくなり、氷期には小さくなるという変動を示している。
Organic Geochemistry
Alkenone and tetraether lipids reflect different seasonal seawater temperatures in the coastal northern South China Sea
Jie Zhang, Yang Bai, Shendong Xu, Fei Lei, Guodong Jia
南シナ海北部の大陸棚で得られた堆積物コアを用いて、アルケノンとTEX86温度計がSSTを反映するかを評価。アルケノンは春・夏の南西モンスーンの時期の有光層内のSSTを反映し、一方でTEX86は冬の北東モンスーンの時期の深い混合層のSSTを反映していることが示された。2つの指標から復元されるSSTの違いはそれぞれのバイオマーカーを生産する生物が成長する時期の違いによる。
2013年3月24日日曜日
新着論文(GRL, PO, JGR, CP, BG)
GRL
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。
Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。
Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。
Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。
Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。
The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。
Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。
Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。
JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。
Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。
Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。
Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。
Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。
Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。
Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。
Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。
Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。
Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。
Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。
Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。
Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。
Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。
Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。
The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。
Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。
Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。
JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。
Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。
Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。
Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。
Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。
Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。
Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。
Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。
Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。
Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。
Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。
2013年3月22日金曜日
新着論文(Science#6126)
Science
VOL 339, ISSUE 6126, PAGES 1349-1476 (22 MARCH 2013)
Editors' Choice
The Effects of Land-Use Change
土地利用変化の影響
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50206; 10.1002/grl.50159 (2013).
土地利用の変化は地域的・全球的なスケールで気候に影響するが、そうした変化のパターンについてはよく分かっていない。
ブラジル中部・南部のサトウキビ栽培が現在盛んで、今後もますます盛んになると考えられる地域で水気候がどのように変化するかをモデルを用いて評価した。他の作物栽培地やサバンナがサトウキビ畑に変わった場合、収穫期には1℃寒冷化し、収穫後には1℃温暖化すること、土壌からの蒸発散量が低下して降水量が減少することが示された。
また別の研究からは、土地利用形態が全球的な気候変動(熱波など)に与える影響は他の人間活動の影響に比べると小さいことも示された。
News of the Week
Japanese Draw Methane From Sea Floor
日本の海底からのメタンの引き上げ
世界で初めて、渥美半島沖80kmの1,000m深の海底下のメタンハイドレートから天然ガスが採取された。堆積物を330m掘削し、60mの厚さの砂岩層から水を抜くことで減圧することで得られた。JOGMECによると、試験掘削地には日本が現在輸入している天然ガスの11年分に相当する量が眠っているという。しかし、一方で環境保護主義者はメタンの漏れや海洋環境への影響を懸念している。
Obama Touts Energy Research Plan at Argonne
アルゴンヌにてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
Energy Security Trustと呼ばれるエネルギ研究基金を設立するよう、オバマ大統領はエネルギー局のArgonne National Laboratoryにて声高に主張した。海岸沖の石油掘削に充てられていた予算を分配し、エネルギー研究と技術発展に年間20億ドルを10年間にわたって充てる計画となっている。
>より詳細な記事(OPEN)
Obama Touts Energy Research at Argonne National Laboratory
アルゴンヌ国立研究所にてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
David Malakoff
Intel Top Prize to Algae Biofuel Study
インテルのトップが藻バイオ燃料研究に賞金を与える
1位の賞:バイオ燃料に有望な油を生産する藻類のうち、より多くの油を生産する藻類の飼育を行った17歳の少女に10万ドル(!)
2位の賞:薬の治療の際にタンパク質がどのように結合するかを予測するバイオインフォーマティクス研究を行った17歳の少年に7万5千ドル
3位の賞:低価格・低エネルギーのプラズマ発生装置を考案し作成した17歳の少年に5万ドル
News & Analysis
A Rescue Mission for Amphibians at the Brink of Extinction
絶滅の瀬戸際の両生類を救済するミッション
Richard Stone
両生類研究センターがパナマに設立される予定となっており、研究者は絶滅した種の組織から胚を作成している。
A More Modest Climate Agenda for Obama's Second Term?
オバマの第二期の気候変動の課題はより控えめ?
Eli Kintisch
ホワイトハウスの科学評議会が、オバマ大統領が地球温暖化の原因と結果を評価する上で必要な道筋を示してきた。
Life Could Have Thrived on Mars, but Did It? Curiosity Still Has No Clue
生命は火星にいたに違いないが、本当にいたのだろうか?キュリオシティーはまだ証拠を得ていない
Richard A. Kerr
初めて、科学者は火星に生命がいたかもしれない証拠を示したが、火星の生命はまだ完全には見つかっていない。
News Focus
Battle for the Barrel
バレルのための闘い
Robert F. Service
政府が自動車用燃料としてどちらにより権限を与えるかを巡って、石油会社とエタノール業界が議論を繰り広げているが、今年はトウモロコシの茎や農業廃棄物を原料にしたセルロース・エタノールが決定的になりつつある。
Letters
China's Food Security Soiled by Contamination
汚染された中国の食品安全
Yaolin Liu, Cheng Wen, and Xingjian Liu
中国においては、作物用の土地が急速に失われているだけでなく、土壌の汚染もまた食品安全の上で重大な問題となっている。耕作地の8.3%が鉱業やゴミの埋め立て、殺虫剤などによってひどく汚染されている。カドミウムや鉛などの重金属が食卓に並ぶ食品に混入しており、汚染による健康被害は鉱業地帯で顕著である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Resesarch
Perspectives
Probing an Extrasolar Planet
系外惑星を検出する
Mark S. Marley
系外惑星の大気の高解像度のスペクトル観測によって、その起源を制約することができる。
Characterizing Giant Landslides
巨大地滑りを特徴付ける
David N. Petley
全球の地震データを分析することで、岩石なだれを分類し、どのようにしてそれらが起きるのかを理解できるかもしれない。
Reports
Detection of Carbon Monoxide and Water Absorption Lines in an Exoplanet Atmosphere
系外惑星の大気の一酸化炭素と水の吸収帯の検出
Quinn M. Konopacky, Travis S. Barman, Bruce A. Macintosh, and Christian Marois
HR8799から40AUのところを公転する系外惑星の大気中の一酸化炭素と水の吸収バンドをスペクトル分析した。惑星の大気の構造や表面の重力などが分かり、若い星であることが分かった。
Simple Scaling of Catastrophic Landslide Dynamics
破滅的な地滑りの力学の単純なスケーリング
Göran Ekström and Colin P. Stark
地震波データの逆解析から破滅的な地滑りに繋がる力が明らかに。
Two Modes of Change in Southern Ocean Productivity Over the Past Million Years
過去数百万年間の南大洋の生物生産性の変化の2つのモード
S. L. Jaccard, C. T. Hayes, A. Martínez-García, D. A. Hodell, R. F. Anderson, D. M. Sigman, and G. H. Haug
氷期には南大洋のAntarctic Zoneの有機物輸送量は低下しており、大気中のCO2濃度の低下期に一致していた。逆にSubantarctic Zoneの粒子状有機物量は氷期へと向かう際に増加しており、ダストフラックスが増加する時期と一致しており、鉄肥沃が起きていた可能性が示唆される。南大洋の高時間解像度の堆積物コアを新たにまとめたところ、南大洋におけるこれら2つのモードが大気中のCO2濃度の変動を決定していたことが示唆される。
Export of Algal Biomass from the Melting Arctic Sea Ice
融解する北極の海氷から運ばれる藻類バイオマス
Antje Boetius, Sebastian Albrecht, Karel Bakker, Christina Bienhold, Janine Felden, Mar Fernández-Méndez, Stefan Hendricks, Christian Katlein, Catherine Lalande, Thomas Krumpen, Marcel Nicolaus, Ilka Peeken, Benjamin Rabe, Antonina Rogacheva, Elena Rybakova, Raquel Somavilla, Frank Wenzhöfer, and RV Polarstern ARK27-3-Shipboard Science Party
北極においては夏の間氷の下の一次生産は抑えられているが、それは氷や雪によって覆われているからだけでなく、成層化が栄養塩の混合を抑えているからでもある。2012年夏の北極の海氷が史上最低となったときに行われた観測航海の際のデータから、北極海中央部の海底に平均して1m2あたり9gの藻類バイオマスが堆積していることが分かった。この航海で得られたデータは気候変化が北極の一次生産、生物多様性、生態機能にどのように影響するかを評価するのに役に立つかもしれない。
VOL 339, ISSUE 6126, PAGES 1349-1476 (22 MARCH 2013)
Editors' Choice
The Effects of Land-Use Change
土地利用変化の影響
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50206; 10.1002/grl.50159 (2013).
土地利用の変化は地域的・全球的なスケールで気候に影響するが、そうした変化のパターンについてはよく分かっていない。
ブラジル中部・南部のサトウキビ栽培が現在盛んで、今後もますます盛んになると考えられる地域で水気候がどのように変化するかをモデルを用いて評価した。他の作物栽培地やサバンナがサトウキビ畑に変わった場合、収穫期には1℃寒冷化し、収穫後には1℃温暖化すること、土壌からの蒸発散量が低下して降水量が減少することが示された。
また別の研究からは、土地利用形態が全球的な気候変動(熱波など)に与える影響は他の人間活動の影響に比べると小さいことも示された。
News of the Week
Japanese Draw Methane From Sea Floor
日本の海底からのメタンの引き上げ
世界で初めて、渥美半島沖80kmの1,000m深の海底下のメタンハイドレートから天然ガスが採取された。堆積物を330m掘削し、60mの厚さの砂岩層から水を抜くことで減圧することで得られた。JOGMECによると、試験掘削地には日本が現在輸入している天然ガスの11年分に相当する量が眠っているという。しかし、一方で環境保護主義者はメタンの漏れや海洋環境への影響を懸念している。
Obama Touts Energy Research Plan at Argonne
アルゴンヌにてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
Energy Security Trustと呼ばれるエネルギ研究基金を設立するよう、オバマ大統領はエネルギー局のArgonne National Laboratoryにて声高に主張した。海岸沖の石油掘削に充てられていた予算を分配し、エネルギー研究と技術発展に年間20億ドルを10年間にわたって充てる計画となっている。
>より詳細な記事(OPEN)
Obama Touts Energy Research at Argonne National Laboratory
アルゴンヌ国立研究所にてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
David Malakoff
Intel Top Prize to Algae Biofuel Study
インテルのトップが藻バイオ燃料研究に賞金を与える
1位の賞:バイオ燃料に有望な油を生産する藻類のうち、より多くの油を生産する藻類の飼育を行った17歳の少女に10万ドル(!)
2位の賞:薬の治療の際にタンパク質がどのように結合するかを予測するバイオインフォーマティクス研究を行った17歳の少年に7万5千ドル
3位の賞:低価格・低エネルギーのプラズマ発生装置を考案し作成した17歳の少年に5万ドル
News & Analysis
A Rescue Mission for Amphibians at the Brink of Extinction
絶滅の瀬戸際の両生類を救済するミッション
Richard Stone
両生類研究センターがパナマに設立される予定となっており、研究者は絶滅した種の組織から胚を作成している。
A More Modest Climate Agenda for Obama's Second Term?
オバマの第二期の気候変動の課題はより控えめ?
Eli Kintisch
ホワイトハウスの科学評議会が、オバマ大統領が地球温暖化の原因と結果を評価する上で必要な道筋を示してきた。
Life Could Have Thrived on Mars, but Did It? Curiosity Still Has No Clue
生命は火星にいたに違いないが、本当にいたのだろうか?キュリオシティーはまだ証拠を得ていない
Richard A. Kerr
初めて、科学者は火星に生命がいたかもしれない証拠を示したが、火星の生命はまだ完全には見つかっていない。
News Focus
Battle for the Barrel
バレルのための闘い
Robert F. Service
政府が自動車用燃料としてどちらにより権限を与えるかを巡って、石油会社とエタノール業界が議論を繰り広げているが、今年はトウモロコシの茎や農業廃棄物を原料にしたセルロース・エタノールが決定的になりつつある。
Letters
China's Food Security Soiled by Contamination
汚染された中国の食品安全
Yaolin Liu, Cheng Wen, and Xingjian Liu
中国においては、作物用の土地が急速に失われているだけでなく、土壌の汚染もまた食品安全の上で重大な問題となっている。耕作地の8.3%が鉱業やゴミの埋め立て、殺虫剤などによってひどく汚染されている。カドミウムや鉛などの重金属が食卓に並ぶ食品に混入しており、汚染による健康被害は鉱業地帯で顕著である。
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Resesarch
Perspectives
Probing an Extrasolar Planet
系外惑星を検出する
Mark S. Marley
系外惑星の大気の高解像度のスペクトル観測によって、その起源を制約することができる。
Characterizing Giant Landslides
巨大地滑りを特徴付ける
David N. Petley
全球の地震データを分析することで、岩石なだれを分類し、どのようにしてそれらが起きるのかを理解できるかもしれない。
Reports
Detection of Carbon Monoxide and Water Absorption Lines in an Exoplanet Atmosphere
系外惑星の大気の一酸化炭素と水の吸収帯の検出
Quinn M. Konopacky, Travis S. Barman, Bruce A. Macintosh, and Christian Marois
HR8799から40AUのところを公転する系外惑星の大気中の一酸化炭素と水の吸収バンドをスペクトル分析した。惑星の大気の構造や表面の重力などが分かり、若い星であることが分かった。
Simple Scaling of Catastrophic Landslide Dynamics
破滅的な地滑りの力学の単純なスケーリング
Göran Ekström and Colin P. Stark
地震波データの逆解析から破滅的な地滑りに繋がる力が明らかに。
Two Modes of Change in Southern Ocean Productivity Over the Past Million Years
過去数百万年間の南大洋の生物生産性の変化の2つのモード
S. L. Jaccard, C. T. Hayes, A. Martínez-García, D. A. Hodell, R. F. Anderson, D. M. Sigman, and G. H. Haug
氷期には南大洋のAntarctic Zoneの有機物輸送量は低下しており、大気中のCO2濃度の低下期に一致していた。逆にSubantarctic Zoneの粒子状有機物量は氷期へと向かう際に増加しており、ダストフラックスが増加する時期と一致しており、鉄肥沃が起きていた可能性が示唆される。南大洋の高時間解像度の堆積物コアを新たにまとめたところ、南大洋におけるこれら2つのモードが大気中のCO2濃度の変動を決定していたことが示唆される。
Export of Algal Biomass from the Melting Arctic Sea Ice
融解する北極の海氷から運ばれる藻類バイオマス
Antje Boetius, Sebastian Albrecht, Karel Bakker, Christina Bienhold, Janine Felden, Mar Fernández-Méndez, Stefan Hendricks, Christian Katlein, Catherine Lalande, Thomas Krumpen, Marcel Nicolaus, Ilka Peeken, Benjamin Rabe, Antonina Rogacheva, Elena Rybakova, Raquel Somavilla, Frank Wenzhöfer, and RV Polarstern ARK27-3-Shipboard Science Party
北極においては夏の間氷の下の一次生産は抑えられているが、それは氷や雪によって覆われているからだけでなく、成層化が栄養塩の混合を抑えているからでもある。2012年夏の北極の海氷が史上最低となったときに行われた観測航海の際のデータから、北極海中央部の海底に平均して1m2あたり9gの藻類バイオマスが堆積していることが分かった。この航海で得られたデータは気候変化が北極の一次生産、生物多様性、生態機能にどのように影響するかを評価するのに役に立つかもしれない。
2013年3月21日木曜日
新着論文(Nature#7441)
Nature
Volume 495 Number 7441 pp281-404 (21 March 2013)
EDITORIALS
Wasted energy
捨てられるエネルギー
石油を採掘する際にガスを燃やして大気に捨てることは、環境(温暖化や空気汚染)に良くないだけでなく、もはや過去と違い正当化されない。特に石油採掘技術が世界で最も成熟したアメリカこそ、この天然資源を活用する手段を模索すべきである。
現在アメリカのノースダコタ州でシェール・ガスの集中的な採掘がなされているが、2012年に大気中に放出されたCO2の量は390万トンであり、さらに悪いことに、CO2よりも温室効果の大きいメタンが大量に大気に漏れ出していると考えられている。
「燃やされるガスにも課税する」「石油・ガス産業により厳しい規制を設ける」などの措置を施すことで、この動きを止める手だてとなるかもしれない。
As a result, the public gets a smaller return on the environmental price being paid to recover this oil — the inevitable impacts on public infrastructure, air and water resources, and on the landscape itself.
結果として、この石油を採掘するのに犠牲となる環境の価値に対して民衆が得られる見返りはより少なくなる。公共インフラ、大気・水資源、景観そのものへの避け難い悪影響など。
But it will be up to scientists to pin down the full suite of impacts from the new oil and gas developments and to help policy-makers better understand the choices that they are making.
しかし、新たな石油やガスの発展がもとで生じる一連の影響を分かりやすく説明し、政策決定者が自らの選択をより理解する手助けをするのが科学者の役割であろう。
CITES for sore eyes
先週の野生生物貿易条約締結会議の成功は行動でもってバックアップされなければならない。
RESEARCH HIGHLIGHTS
Fibres toughen when stretched
伸ばされて強くなる繊維
ACS Nano http://dx.doi.org/10.1021/nn400028p (2013)
ほとんどの繊維は伸ばすと脆くなるが、新たに開発されたポリアクリロニトリル繊維は細くなるほどにその強度が増す。エレクトロスピニングという技術で作るらしい。
Life on the seabed, and below
海底面の、海底下の、生命
Nature Geosci. http://dx.doi.org/ 10.1038/ngeo1773 (2013); Science 339, 1305–1308 (2013)
無人探査機を用いたマリアナ海溝の調査から、11kmの超深海における微生物による活発な酸素消費が確認された。わずかな有機物を分解して生活しているらしい。
また北米西海岸沖の海底地殻の深部にも水素菌が生活しており、鉄と海水の化学反応から得られるエネルギーを用いているらしいことが分かった。
>より詳細な記事(OPEN)
Life found deep under the sea
海の深くで見つかった生命
Ed Yong
Mobile worm microscope
持ち運べる寄生虫顕微鏡
Am. J. Trop. Med. Hyg. http:// dx.doi.org/10.4269/ajtmh.12- 0742 (2013)
カナダの研究グループはiPhone搭載のカメラを顕微鏡へと早変わりさせ、発展途上国の人々の腸内に巣食う寄生虫(Ascaris lumbricoides)をかなり高い割合で検出できることを野外で実証した。
Quakes shake the gold out
地震が金を振り出す
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1759 (2013)
オーストラリアの研究グループが、地震の際に亀裂ができ急速に流体が冷却・減圧されると、貴金属類が急速に沈殿することを突き止めた。金がよく産出するようなインドネシアや南アフリカなどでは、地震が繰り返されることで金が蓄積する機能(flash vaporization)が働いているらしい。
>より詳細な記事(OPEN)
Earthquakes make gold veins in an instant
地震が金の鉱脈を一瞬で作る
Richard A. Lovett
Frog feet share human hair origin
カエルの足は人間の髪と起源を同じくする
Biol. Lett. 9, 20130051 (2013)
カエルの一種(tree frog)が滑りやすい面に留まるのを可能にしている足の吸盤は人間の髪の毛と起源を同じくしているらしい。
SEVEN DAYS
Mars find
火星の発見
火星探査機キュリオシティーは火星の岩の掘削から、中性の塩水で生成したと考えられる粘土鉱物を見つけた。数十億年前に生命が存在した可能性がある。
>より詳細な記事(OPEN)
Mars rover finds evidence of ancient habitability
火星の探査機が古代の生命存在可能性の証拠を見つける
Alexandra Witze
Methane success
メタンの成功
日本は3/12に海底下300mのメタンハイドレート層からメタンを採取したと発表した。日本の新たなエネルギー源として、経済的に採掘が実現可能かどうかがこれから評価される。
Seabed mining
海底の鉱業
イギリスのLockheed Martin UKの子会社であるUK Seabed Resourcesはメキシコの南東1,500kmの海底において海底の金属資源を採掘する許可を得たと3/14に公表した。
Plague graves unearthed in London
ペストの墓がロンドンで発掘される
イギリス・ロンドンにて、ペストによる大量の死者が葬られた墓が鉄道建設の最中に発掘された。
Energy fund
エネルギー基金
オバマ大統領は低炭素輸送手段の開発に向けた研究を支援するEnergy Security Trustを設立するよう提案した。将来10年間にわたって毎年20億ドルが充てられるという構想になっている。
Species protection
種の保護
先週バンコクにて行われた会議:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)にて、多くの生物の保護ランクが引き上げられた。サメ、エイ、熱帯の硬木、象牙など。しかしシロクマについてはランクは引き上げられなかった。
Mars mission boost
火星の探査が加熱
ロシアはヨーロッパの次の火星ミッションにパートナー参加する。2016年の軌道衛星、2018年の地上探査機を送り込むロケット、搭載する機器類などで協力する。
NEWS IN FOCUS
Oil boom raises burning issues
石油ブームが燃焼問題を生み出す
Jeff Tollefson
ノースダコタにおけるガス燃焼の環境影響に「燃やされないメタン」がさらに加わる可能性がある。
Mars rover under pressure to reach mountain goal
火星探査機は山積みになった目標を達成するプレッシャーを負っている
Alexandra Witze
UK company pursues deep-sea bonanza
イギリスの企業は深海の大当たりを追い求める
Mark Schrope
数十年の準備を経て、イギリスの企業が鉱物に富んだ塊を海底から引き上げる計画をスタートさせる。
COMMENT
Sustainable development goals for people and planet
人間と地球にとっての持続的発展目標
「国連が貧困と健康に立ち向かう目標と、地球の安定性は統合されなければならない」とDavid Griggsほかは主張する。
A global map for road building
道路建設の全球地図
「地球全体で道路が急増している。賢くデザイン・建設されることで環境被害以外の結果に繋がる」と、William F. LauranceとAndrew Balmfordは主張する。
CORRESPONDENCE
Broaden the arguments
論争を広げよ
Alistair J. Hobday, Rodrigo H. Bustamante & Éva E. Plagányi
漁獲量から水産資源量を推定する方法の問題について。
Manage declines
減少を管理する
Brian R. MacKenzie & Mark R. Payne
資源量が低下する中、努力によって漁獲量を一時的に回復させることは可能だが、まずは漁業資源が減少した原因を調べる必要がある。
Outdated taxonomy blocks conservation
時代遅れの分類学が保護を妨げる
Eliécer E. Gutiérrez & Kristofer M. Helgen
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
A Late Eocene date for Late Triassic bird tracks
Ricardo N. Melchor, Robert Buchwaldt & Samuel Bowring
NEWS & VIEWS
Mainly in the plain
主に平原で
James W. Kirchner & Ken L. Ferrier
「地表の質量損失は山ではなく、主に平原地帯の物理浸食・化学風化によって生じている」という新たな発見が、我々の地球表層がどのように進化したかの理解に問題を投げかけている。
The ALMA telescope shows its true colours
ALMA望遠鏡がその真の色を見せる
Andrew W. Blain
アタカマ砂漠に建設された宇宙望遠鏡が、銀河の赤方変位と内部構造を明らかにするのに大きな力を発揮した。
Detecting selection
選別を検出する
Gregory S. Barsh & Leif Andersson
Erik Axelsson et al.の解説記事。
LETTERS
Dusty starburst galaxies in the early Universe as revealed by gravitational lensing
重力レンズによって明らかになる初期宇宙の埃っぽいスターバースト銀河
J. D. Vieira et al.
Changes in global nitrogen cycling during the Holocene epoch
完新世時代の全球の窒素サイクルの変化
Kendra K. McLauchlan, Joseph J. Williams, Joseph M. Craine & Elizabeth S. Jeffers
人類による反応性の窒素の利用は産業革命以降倍増しており、今後も加速的に増加すると考えられている。しかし、自然界が反応性の窒素を緩衝できる能力がどれほどかはよく分かっていない。6大陸にまたがる湖の堆積物から過去15kaのδ15Nを復元した。15-7kaにδ15Nが減少するが、このとき大気中のCO2濃度は増加しており、陸域の炭素蓄積量も増加している。窒素利用効率が低下したことが原因と考えられる。過去500年間にはδ15Nに似た変化は見られず、大気中のCO2濃度増加と陸域生物圏の炭素貯留が近年の反応性の窒素の増加を打ち消す働きを負っている可能性がある。
Melt-rich channel observed at the lithosphere–asthenosphere boundary
リソスフェア–アセノスフェア境界で観察されたメルトに富んだチャネル
S. Naif, K. Key, S. Constable & R. L. Evans
ニカラグア沖の海底の地磁気地電流測定から、リソスフェア/アセノスフェア境界の電気的伝導度が撮像された。45-70km深に高い伝導度の層が見られ、部分溶融した低密度のチャネルであると考えられる。
The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet
犬の家畜化の遺伝的な特徴がでんぷんを多く含んだ食事への適応を明らかにする
Erik Axelsson et al.
人類文明の発展の中で、犬の家畜化は重要な出来事の1つであった。犬とオオカミの全ゲノム解析から、犬の家畜化の過程で選別のターゲットとなったと考えられるゲノム領域が特定された。デンプンの消化と脂質代謝に重要な遺伝子にも選別が起きていたと考えられる。オオカミの肉食中心の食事から、デンプンの多い食事でも大丈夫になったことが、犬の家畜化の初期段階で重要であったことを物語っている。
Volume 495 Number 7441 pp281-404 (21 March 2013)
EDITORIALS
Wasted energy
捨てられるエネルギー
石油を採掘する際にガスを燃やして大気に捨てることは、環境(温暖化や空気汚染)に良くないだけでなく、もはや過去と違い正当化されない。特に石油採掘技術が世界で最も成熟したアメリカこそ、この天然資源を活用する手段を模索すべきである。
現在アメリカのノースダコタ州でシェール・ガスの集中的な採掘がなされているが、2012年に大気中に放出されたCO2の量は390万トンであり、さらに悪いことに、CO2よりも温室効果の大きいメタンが大量に大気に漏れ出していると考えられている。
「燃やされるガスにも課税する」「石油・ガス産業により厳しい規制を設ける」などの措置を施すことで、この動きを止める手だてとなるかもしれない。
As a result, the public gets a smaller return on the environmental price being paid to recover this oil — the inevitable impacts on public infrastructure, air and water resources, and on the landscape itself.
結果として、この石油を採掘するのに犠牲となる環境の価値に対して民衆が得られる見返りはより少なくなる。公共インフラ、大気・水資源、景観そのものへの避け難い悪影響など。
But it will be up to scientists to pin down the full suite of impacts from the new oil and gas developments and to help policy-makers better understand the choices that they are making.
しかし、新たな石油やガスの発展がもとで生じる一連の影響を分かりやすく説明し、政策決定者が自らの選択をより理解する手助けをするのが科学者の役割であろう。
CITES for sore eyes
先週の野生生物貿易条約締結会議の成功は行動でもってバックアップされなければならない。
RESEARCH HIGHLIGHTS
Fibres toughen when stretched
伸ばされて強くなる繊維
ACS Nano http://dx.doi.org/10.1021/nn400028p (2013)
ほとんどの繊維は伸ばすと脆くなるが、新たに開発されたポリアクリロニトリル繊維は細くなるほどにその強度が増す。エレクトロスピニングという技術で作るらしい。
Life on the seabed, and below
海底面の、海底下の、生命
Nature Geosci. http://dx.doi.org/ 10.1038/ngeo1773 (2013); Science 339, 1305–1308 (2013)
無人探査機を用いたマリアナ海溝の調査から、11kmの超深海における微生物による活発な酸素消費が確認された。わずかな有機物を分解して生活しているらしい。
また北米西海岸沖の海底地殻の深部にも水素菌が生活しており、鉄と海水の化学反応から得られるエネルギーを用いているらしいことが分かった。
>より詳細な記事(OPEN)
Life found deep under the sea
海の深くで見つかった生命
Ed Yong
Mobile worm microscope
持ち運べる寄生虫顕微鏡
Am. J. Trop. Med. Hyg. http:// dx.doi.org/10.4269/ajtmh.12- 0742 (2013)
カナダの研究グループはiPhone搭載のカメラを顕微鏡へと早変わりさせ、発展途上国の人々の腸内に巣食う寄生虫(Ascaris lumbricoides)をかなり高い割合で検出できることを野外で実証した。
Quakes shake the gold out
地震が金を振り出す
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1759 (2013)
オーストラリアの研究グループが、地震の際に亀裂ができ急速に流体が冷却・減圧されると、貴金属類が急速に沈殿することを突き止めた。金がよく産出するようなインドネシアや南アフリカなどでは、地震が繰り返されることで金が蓄積する機能(flash vaporization)が働いているらしい。
>より詳細な記事(OPEN)
Earthquakes make gold veins in an instant
地震が金の鉱脈を一瞬で作る
Richard A. Lovett
Frog feet share human hair origin
カエルの足は人間の髪と起源を同じくする
Biol. Lett. 9, 20130051 (2013)
カエルの一種(tree frog)が滑りやすい面に留まるのを可能にしている足の吸盤は人間の髪の毛と起源を同じくしているらしい。
SEVEN DAYS
Mars find
火星の発見
火星探査機キュリオシティーは火星の岩の掘削から、中性の塩水で生成したと考えられる粘土鉱物を見つけた。数十億年前に生命が存在した可能性がある。
>より詳細な記事(OPEN)
Mars rover finds evidence of ancient habitability
火星の探査機が古代の生命存在可能性の証拠を見つける
Alexandra Witze
Methane success
メタンの成功
日本は3/12に海底下300mのメタンハイドレート層からメタンを採取したと発表した。日本の新たなエネルギー源として、経済的に採掘が実現可能かどうかがこれから評価される。
Seabed mining
海底の鉱業
イギリスのLockheed Martin UKの子会社であるUK Seabed Resourcesはメキシコの南東1,500kmの海底において海底の金属資源を採掘する許可を得たと3/14に公表した。
Plague graves unearthed in London
ペストの墓がロンドンで発掘される
イギリス・ロンドンにて、ペストによる大量の死者が葬られた墓が鉄道建設の最中に発掘された。
Energy fund
エネルギー基金
オバマ大統領は低炭素輸送手段の開発に向けた研究を支援するEnergy Security Trustを設立するよう提案した。将来10年間にわたって毎年20億ドルが充てられるという構想になっている。
Species protection
種の保護
先週バンコクにて行われた会議:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)にて、多くの生物の保護ランクが引き上げられた。サメ、エイ、熱帯の硬木、象牙など。しかしシロクマについてはランクは引き上げられなかった。
Mars mission boost
火星の探査が加熱
ロシアはヨーロッパの次の火星ミッションにパートナー参加する。2016年の軌道衛星、2018年の地上探査機を送り込むロケット、搭載する機器類などで協力する。
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Oil boom raises burning issues
石油ブームが燃焼問題を生み出す
Jeff Tollefson
ノースダコタにおけるガス燃焼の環境影響に「燃やされないメタン」がさらに加わる可能性がある。
Mars rover under pressure to reach mountain goal
火星探査機は山積みになった目標を達成するプレッシャーを負っている
Alexandra Witze
UK company pursues deep-sea bonanza
イギリスの企業は深海の大当たりを追い求める
Mark Schrope
数十年の準備を経て、イギリスの企業が鉱物に富んだ塊を海底から引き上げる計画をスタートさせる。
COMMENT
Sustainable development goals for people and planet
人間と地球にとっての持続的発展目標
「国連が貧困と健康に立ち向かう目標と、地球の安定性は統合されなければならない」とDavid Griggsほかは主張する。
A global map for road building
道路建設の全球地図
「地球全体で道路が急増している。賢くデザイン・建設されることで環境被害以外の結果に繋がる」と、William F. LauranceとAndrew Balmfordは主張する。
CORRESPONDENCE
Broaden the arguments
論争を広げよ
Alistair J. Hobday, Rodrigo H. Bustamante & Éva E. Plagányi
漁獲量から水産資源量を推定する方法の問題について。
Manage declines
減少を管理する
Brian R. MacKenzie & Mark R. Payne
資源量が低下する中、努力によって漁獲量を一時的に回復させることは可能だが、まずは漁業資源が減少した原因を調べる必要がある。
Outdated taxonomy blocks conservation
時代遅れの分類学が保護を妨げる
Eliécer E. Gutiérrez & Kristofer M. Helgen
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
A Late Eocene date for Late Triassic bird tracks
Ricardo N. Melchor, Robert Buchwaldt & Samuel Bowring
NEWS & VIEWS
Mainly in the plain
主に平原で
James W. Kirchner & Ken L. Ferrier
「地表の質量損失は山ではなく、主に平原地帯の物理浸食・化学風化によって生じている」という新たな発見が、我々の地球表層がどのように進化したかの理解に問題を投げかけている。
The ALMA telescope shows its true colours
ALMA望遠鏡がその真の色を見せる
Andrew W. Blain
アタカマ砂漠に建設された宇宙望遠鏡が、銀河の赤方変位と内部構造を明らかにするのに大きな力を発揮した。
Detecting selection
選別を検出する
Gregory S. Barsh & Leif Andersson
Erik Axelsson et al.の解説記事。
LETTERS
Dusty starburst galaxies in the early Universe as revealed by gravitational lensing
重力レンズによって明らかになる初期宇宙の埃っぽいスターバースト銀河
J. D. Vieira et al.
Changes in global nitrogen cycling during the Holocene epoch
完新世時代の全球の窒素サイクルの変化
Kendra K. McLauchlan, Joseph J. Williams, Joseph M. Craine & Elizabeth S. Jeffers
人類による反応性の窒素の利用は産業革命以降倍増しており、今後も加速的に増加すると考えられている。しかし、自然界が反応性の窒素を緩衝できる能力がどれほどかはよく分かっていない。6大陸にまたがる湖の堆積物から過去15kaのδ15Nを復元した。15-7kaにδ15Nが減少するが、このとき大気中のCO2濃度は増加しており、陸域の炭素蓄積量も増加している。窒素利用効率が低下したことが原因と考えられる。過去500年間にはδ15Nに似た変化は見られず、大気中のCO2濃度増加と陸域生物圏の炭素貯留が近年の反応性の窒素の増加を打ち消す働きを負っている可能性がある。
Melt-rich channel observed at the lithosphere–asthenosphere boundary
リソスフェア–アセノスフェア境界で観察されたメルトに富んだチャネル
S. Naif, K. Key, S. Constable & R. L. Evans
ニカラグア沖の海底の地磁気地電流測定から、リソスフェア/アセノスフェア境界の電気的伝導度が撮像された。45-70km深に高い伝導度の層が見られ、部分溶融した低密度のチャネルであると考えられる。
The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet
犬の家畜化の遺伝的な特徴がでんぷんを多く含んだ食事への適応を明らかにする
Erik Axelsson et al.
人類文明の発展の中で、犬の家畜化は重要な出来事の1つであった。犬とオオカミの全ゲノム解析から、犬の家畜化の過程で選別のターゲットとなったと考えられるゲノム領域が特定された。デンプンの消化と脂質代謝に重要な遺伝子にも選別が起きていたと考えられる。オオカミの肉食中心の食事から、デンプンの多い食事でも大丈夫になったことが、犬の家畜化の初期段階で重要であったことを物語っている。
2013年3月20日水曜日
「南極・北極の気象と気候」(山内恭、2009年)
南極・北極の気象と気候
山内恭
気象ブックス(成山堂書店)2009年
著者は国立極地研究所・教授の山内恭 氏。
あまり一般向けではないけれど、極域の気候変動や気象を網羅的に書き記した半・教科書。
とても勉強になったので、そのうち購入しようと思っています(今回は図書館でレンタル)。
普段温帯に住んでいるだけに、馴染みのない気象現象の紹介がほとんどですが、「強烈な接地逆転層」「カタバ風」「ダイヤモンド・ダスト」「オゾンホール」など、非常に興味深く感じました。
本人自体が本の中で断っていますが、アイスコアには研究者としてほとんど携わっていなかったようです。僕自身一番知りたかったのはアイスコアに関することだったので、また別の本にあたろうと思います。
以下はピックアップした引用文。個人的なメモの色が強いです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「南極は気候変動のカナリアである」(pp. 13)
二酸化炭素濃度そのものの絶対値は、南極は北極に比べ4ppmvほど低めになっており、人為起源の発生源が北半球にあることを語っている。(pp. 56)
オゾンホールは長い目では解消に向かっており、自然環境を改変してしまうフロンを発生させたという人類の失敗を訂正することができた、地球環境問題を解決することができた、貴重な例として誇れる事象になりそうである。(pp. 149)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第10章 氷床コアと古気候
時間軸の設定は各コア解析において周到に評価されてはいるが、なかなか統一的に共通にはならず、独自の時間軸となってしまう。(pp. 171)
南北両極でのメタン濃度変動の相似性に驚くが、こうして時間を合わせ同期された両コアからの酸素同位体比のグラフは、両極における気候の恐ろしいまでのつながりを語っている。(pp. 172)
ヨーロッパグループ(EPICA: European Project for Ice Coring in Antarctica)によるもので、より目的を鮮明に、グリーンランドのコアとの対比を容易にすべく、時間分解能を上げた、必ずしも長い年代をねらわない、年層の厚い、すなわち年涵養量の多いコア掘削を海に近いドローニング・モードランド(DML:南緯75度、東経0度、標高2829m:現在の年涵養量6.4cm)にて、また、時間分解能は犠牲にしても、より長い時間記録を求めて、涵養量の少ない場所での掘削としてドームC(南緯75度、東経123度、標高3233m:現年涵養量2.5cm)での掘削を、ちょうど日本のドームふじコアの前後に実現した。(pp. 174)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第11章 温暖化と極域
温暖化の影響をみるモデル計算でも海氷域の減少は計算されているが、それをはるかに上回る早さで、2040年頃に実現すると予測されている面積に既に減少しているのである。北極がまさに温暖化していることを示しているが、現在いわれている(例えばIPCC第4次報告書)地球温暖化だけでは説明しきれない急激な変化が現れている。(pp. 177-178)
地球温暖化に伴う南極域での変化として、棚氷の崩壊がしばしばニュースになっている。最大の話題は、人工衛星Terraに搭載されたMODIS画像により捉えられた南極半島東側のラーセン棚氷の崩壊で、2002年ラーセンB棚氷の大部分が崩れて崩壊してしまった。(pp. 184)
最大の温暖化は、観測のある1951〜2000年の全期間では半島西側のファラデー/ベルナルツキー基地での、10年間で0.56℃が最大である。(pp. 188)
南極の気象データ集(READER)より
成層圏の寒冷化はオゾンホールの形成に陰に陽に影響を与えている。元々、南極上空の気温が低いために極成層圏雲が発達し成層圏のオゾンが破壊されオゾンホールが形成されているところ、さらに温度低下がおこるとオゾン破壊はさらに促進されることになるからである。(pp. 189)
極域における地球規模の循環場にはさまざまな偏差パターン、気候モードが言われている。あらゆる気候変動にこれらのモードが原因になっているような議論もみられるが、気候モードとの関連づけができたことで必ずしも問題が解決するわけではなく、ある種の記述ができたというだけに過ぎないことも多い。(pp. 195)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
学問は、科学は裾野が広いことがまず大事である。広い裾野があって初めて山も高くなる。(pp. 198)
本書のもとになった研究は、50次にわたる南極観測隊員の、そして目に見えない北極観測に携わってきた面々の努力、汗と油の、いや寒さと凍傷の結晶である。(pp. 199)
新着論文(BG, CP)
Biogeosciences
An assessment of the Atlantic and Arctic sea–air CO2 fluxes, 1990–2009
U. Schuster, G. A. McKinley, N. Bates, F. Chevallier, S. C. Doney, A. R. Fay, M. González-Dávila, N. Gruber, S. Jones, J. Krijnen, P. Landschützer, N. Lefèvre, M. Manizza, J. Mathis, N. Metzl, A. Olsen, A. F. Rios, C. Rödenbeck, J. M. Santana-Casiano, T. Takahashi, R. Wanninkhof, and A. J. Watson
pCO2観測及びモデル結果から、1990年から2009年にかけての大西洋・北極海の大気-海洋CO2フラックスを推定。人為起源のCO2の取り込みは、大西洋で「-0.49 PgC/yr」、北極海で「-0.12 PgC/yr」と推定される。大西洋全体では、手法によって結果が整合的であるもの、食い違うものが見られた。
Breakdown of the coral-algae symbiosis: towards formalising a linkage between warm-water bleaching thresholds and the growth rate of the intracellular zooxanthellae
S. A. Wooldridge
サンゴの白化現象は褐虫藻との共生関係の崩壊を意味するが、最初にダメージを受ける部位や動力学についてはよく分かっていない。考えられるプロセスを提唱。
Controls on the spatial distribution of oceanic δ13CDIC
P. B. Holden, N. R. Edwards, S. A. Müller, K. I. C. Oliver, R. M. Death, and A. Ridgwell
産業革命以降の海水中のDOCのδ13C分布をEMICsを用いて再現。人為起源のδ13CDICの不確実性を生み出す原因は、大気-海洋におけるガス交換がその大半を担っていることが示された。
Climate of the Past
Southern westerlies in LGM and future (RCP4.5) climates
Y. Chavaillaz, F. Codron, and M. Kageyama
LGMと将来の南半球の偏西風の位置をモデルを用いて評価したところ、南極の高度や海氷範囲の変化によって、期待とは違い、極方向への変化は確認されなかった。
Iron fluxes to Talos Dome, Antarctica, over the past 200 kyr
P. Vallelonga, C. Barbante, G. Cozzi, J. Gabrieli, S. Schüpbach, A. Spolaor, and C. Turetta
南極Talos Domeアイスコアから、過去200kaの酸で溶出するFeの濃度を復元。Dome Cと比べて濃度が高く、特に間氷期においてその特徴が顕著であった。また最終退氷期や完新世初期にも違いが見られ、ダストの供給源や大気循環の違いを反映しているものと考えられる。従って、Fe(とCa)はダストの間接指標として使うのは適切でないことが示唆される。鉄肥沃によるCO2低下の寄与はLGMの際に最大で20ppmvと考えられる。
A multi-model assessment of last interglacial temperatures
D. J. Lunt, A. Abe-Ouchi, P. Bakker, A. Berger, P. Braconnot, S. Charbit, N. Fischer, N. Herold, J. H. Jungclaus, V. C. Khon, U. Krebs-Kanzow, P. M. Langebroek, G. Lohmann, K. H. Nisancioglu, B. L. Otto-Bliesner, W. Park, M. Pfeiffer, S. J. Phipps, M. Prange, R. Rachmayani, H. Renssen, N. Rosenbloom, B. Schneider, E. J. Stone, K. Takahashi, W. Wei, Q. Yin, and Z. S. Zhang
最終間氷期は軌道要素が現在と異なり、北極圏は現在よりも遥かに暖かく、全球の海水準も上昇していたと考えられている。最終間氷期をターゲットにしたモデルシミュレーション結果をまとめ、間接指標による復元結果と比較を行った。温暖化/寒冷化の傾向は比較的よく一致したが、定量的な一致はほとんどしていなかった。
Quantification of the Greenland ice sheet contribution to Last Interglacial sea level rise
E. J. Stone, D. J. Lunt, J. D. Annan, and J. C. Hargreaves
最終間氷期には海水準は現在よりも6.6m高かったと考えられている。しかしそのもととなった融水がどこからもたらされたのかについては意見が分かれている。モデルシミュレーションの結果と氷床モデルを組み合わせて、あり得そうな氷床融解のシナリオを推定したところ、グリーンランド氷床の融解による寄与は90%の確率で0.6m程度であったと推定される。ただし、モデルでは降水・大気循環・基底部の滑り・表面融解などがまだうまく取り入れられていないことに注意する必要がある。
Last interglacial temperature evolution – a model inter-comparison
P. Bakker, E. J. Stone, S. Charbit, M. Gröger, U. Krebs-Kanzow, S. P. Ritz, V. Varma, V. Khon, D. J. Lunt, U. Mikolajewicz, M. Prange, H. Renssen, B. Schneider, and M. Schulz
最終間氷期における地表温度のコンセンサスは得られていない。様々なモデルシミュレーションの結果から、背後に隠れているフォーシングやフィードバックのメカニズムを考察。北極の海氷・AMOC・大陸に融け残った氷など、モデル間で食い違うものがモデル間の各地域の温度の食い違いに繋がっている。
An assessment of the Atlantic and Arctic sea–air CO2 fluxes, 1990–2009
U. Schuster, G. A. McKinley, N. Bates, F. Chevallier, S. C. Doney, A. R. Fay, M. González-Dávila, N. Gruber, S. Jones, J. Krijnen, P. Landschützer, N. Lefèvre, M. Manizza, J. Mathis, N. Metzl, A. Olsen, A. F. Rios, C. Rödenbeck, J. M. Santana-Casiano, T. Takahashi, R. Wanninkhof, and A. J. Watson
pCO2観測及びモデル結果から、1990年から2009年にかけての大西洋・北極海の大気-海洋CO2フラックスを推定。人為起源のCO2の取り込みは、大西洋で「-0.49 PgC/yr」、北極海で「-0.12 PgC/yr」と推定される。大西洋全体では、手法によって結果が整合的であるもの、食い違うものが見られた。
Breakdown of the coral-algae symbiosis: towards formalising a linkage between warm-water bleaching thresholds and the growth rate of the intracellular zooxanthellae
S. A. Wooldridge
サンゴの白化現象は褐虫藻との共生関係の崩壊を意味するが、最初にダメージを受ける部位や動力学についてはよく分かっていない。考えられるプロセスを提唱。
Controls on the spatial distribution of oceanic δ13CDIC
P. B. Holden, N. R. Edwards, S. A. Müller, K. I. C. Oliver, R. M. Death, and A. Ridgwell
産業革命以降の海水中のDOCのδ13C分布をEMICsを用いて再現。人為起源のδ13CDICの不確実性を生み出す原因は、大気-海洋におけるガス交換がその大半を担っていることが示された。
Climate of the Past
Southern westerlies in LGM and future (RCP4.5) climates
Y. Chavaillaz, F. Codron, and M. Kageyama
LGMと将来の南半球の偏西風の位置をモデルを用いて評価したところ、南極の高度や海氷範囲の変化によって、期待とは違い、極方向への変化は確認されなかった。
Iron fluxes to Talos Dome, Antarctica, over the past 200 kyr
P. Vallelonga, C. Barbante, G. Cozzi, J. Gabrieli, S. Schüpbach, A. Spolaor, and C. Turetta
南極Talos Domeアイスコアから、過去200kaの酸で溶出するFeの濃度を復元。Dome Cと比べて濃度が高く、特に間氷期においてその特徴が顕著であった。また最終退氷期や完新世初期にも違いが見られ、ダストの供給源や大気循環の違いを反映しているものと考えられる。従って、Fe(とCa)はダストの間接指標として使うのは適切でないことが示唆される。鉄肥沃によるCO2低下の寄与はLGMの際に最大で20ppmvと考えられる。
A multi-model assessment of last interglacial temperatures
D. J. Lunt, A. Abe-Ouchi, P. Bakker, A. Berger, P. Braconnot, S. Charbit, N. Fischer, N. Herold, J. H. Jungclaus, V. C. Khon, U. Krebs-Kanzow, P. M. Langebroek, G. Lohmann, K. H. Nisancioglu, B. L. Otto-Bliesner, W. Park, M. Pfeiffer, S. J. Phipps, M. Prange, R. Rachmayani, H. Renssen, N. Rosenbloom, B. Schneider, E. J. Stone, K. Takahashi, W. Wei, Q. Yin, and Z. S. Zhang
最終間氷期は軌道要素が現在と異なり、北極圏は現在よりも遥かに暖かく、全球の海水準も上昇していたと考えられている。最終間氷期をターゲットにしたモデルシミュレーション結果をまとめ、間接指標による復元結果と比較を行った。温暖化/寒冷化の傾向は比較的よく一致したが、定量的な一致はほとんどしていなかった。
Quantification of the Greenland ice sheet contribution to Last Interglacial sea level rise
E. J. Stone, D. J. Lunt, J. D. Annan, and J. C. Hargreaves
最終間氷期には海水準は現在よりも6.6m高かったと考えられている。しかしそのもととなった融水がどこからもたらされたのかについては意見が分かれている。モデルシミュレーションの結果と氷床モデルを組み合わせて、あり得そうな氷床融解のシナリオを推定したところ、グリーンランド氷床の融解による寄与は90%の確率で0.6m程度であったと推定される。ただし、モデルでは降水・大気循環・基底部の滑り・表面融解などがまだうまく取り入れられていないことに注意する必要がある。
Last interglacial temperature evolution – a model inter-comparison
P. Bakker, E. J. Stone, S. Charbit, M. Gröger, U. Krebs-Kanzow, S. P. Ritz, V. Varma, V. Khon, D. J. Lunt, U. Mikolajewicz, M. Prange, H. Renssen, B. Schneider, and M. Schulz
最終間氷期における地表温度のコンセンサスは得られていない。様々なモデルシミュレーションの結果から、背後に隠れているフォーシングやフィードバックのメカニズムを考察。北極の海氷・AMOC・大陸に融け残った氷など、モデル間で食い違うものがモデル間の各地域の温度の食い違いに繋がっている。
2013年3月19日火曜日
新着論文(QSR, PNAS)
Quaternary Science Reviews
☆In Press, Accepted Manuscript
Inverse modelling of the 14C bomb pulse in stalagmites to constrain the dynamics of soil carbon cycling at selected European cave sites
D. Rudzka-Phillips, F. McDermott, A. Jackson, D. Fleitmann
土壌中の有機物は温度が上がるほど多く分解されてCO2を放出するため、温暖化の正のフィードバックとして寄与すると考えられているものの、温度感度を定量的に評価することは難しい。ヨーロッパ中の鍾乳石のボムピーク14Cを用いて、土壌における炭素循環の近年の変化を考察。土壌の厚さや土壌水分量・温度などに応じて、14Cの減衰が鍾乳石ごとに違うことが示された。
☆Volume 68, 15 May 2013, Pages 43–58
Stomatal proxy record of CO2 concentrations from the last termination suggests an important role for CO2 at climate change transitions
Margret Steinthorsdottir, Barbara Wohlfarth, Malin E. Kylander, Maarten Blaauw, Paula J. Reimer
ノルウェーから得られた堆積物中の植物の葉の化石の気孔密度を用いて、大気中のCO2濃度を復元したところ、最終退氷期にアイスコアから復元されているものよりも大きな振動でCO2濃度が変化していることが確認された。見直す必要あり?
Proceedings of the National Academy of Sciences
☆19 February 2013; Vol. 110, No. 8
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Subtropical High predictability establishes a promising way for monsoon and tropical storm predictions
Bin Wang, Baoqiang Xiang, and June-Yi Lee
モンスーンと熱帯低気圧がもたらす雨は社会にとって重要であるが、季節予報をすることは困難である。北太平洋の亜熱帯高気圧の変動が「東アジアの夏モンスーンの強度」や「北西太平洋に到達する熱帯低気圧の日数」などとよく相関していることが見いだされた。亜熱帯高気圧に関してはかなり予測が可能であることがモデルから示されたため、予測精度が向上することが期待される。
☆26 February 2013; Vol. 110, No. Supplement 1
Fostering advances in interdisciplinary climate science
Jeffrey Shaman, Susan Solomon, Rita R. Colwell, and Christopher B. Field
Rise of interdisciplinary research on climate
Spencer Weart
20世紀半ばまで気候学は統計の分野であった。第二次世界大戦後、気象物理学が現れたことで急速に発展しはじめた。1960-70年代にかけて気候変動への懸念が出始め、そして21世紀には学術領域を横断した協力体制が出来上がった。
Evolution of natural and social science interactions in global change research programs
Harold A. Mooney, Anantha Duraiappah, and Anne Larigauderie
地球をシステムとして捉える動きは1980年代半ば頃から始まった。そして今、新たにFuture Earth国際計画がスタートした。
Development and application of earth system models
Ronald G. Prinn
地球環境はあらゆるサブシステムから構成される複雑で動的なシステムである。統合された地球システムモデル(integrated global system model; IGSM)は我々が将来どのような気候変動を経験するかの予測や、気候工学が実行可能かどうかの評価を可能にしてくれる重要なツールの一つである。IGSMによると、もし政策によって排出規制がなされなかった場合、「2100年には全球の平均気温は3.5〜7.4℃上昇し、北極の気温は6.4〜14℃上昇する」と予想されている。
Interdisciplinary approaches to understanding disease emergence: The past, present, and future drivers of Nipah virus emergence
Peter Daszak, Carlos Zambrana-Torrelio, Tiffany L. Bogich, Miguel Fernandez, Jonathan H. Epstein, Kris A. Murray, and Healy Hamilton
新種の感染症(Emerging infectious diseases; EIDs)の出現について。
The El Niño–Southern Oscillation (ENSO)–pandemic Influenza connection: Coincident or causal?
Jeffrey Shaman and Marc Lipsitch
最近の4回のインフルエンザ・パンデミックはラニーニャの時期(1918、1957、1968、2009)に相当していたことが分かった。「ラニーニャがパンデミックを引き起こす」という仮説を紹介し、検証。鳥の渡りがカギ?
Estimating the sources of global sea level rise with data assimilation techniques
Carling C. Hay, Eric Morrow, Robert E. Kopp, and Jerry X. Mitrovica
全球的な海水準変動の観測ネットワークを設けることで、融水のフラックスを推定するのに役に立つ。検潮所の記録をもとに、全球の海水準変動を引き起こす融水の供給源を考察。
☆26 February 2013; Vol. 110, No. 9
Retrospective
The kingdoms of Carl Woese
Larry Gold
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Probabilistic framework for assessing the ice sheet contribution to sea level change
Christopher M. Little, Nathan M. Urban, and Michael Oppenheimer
従来の海水準上昇予測ではグリーンランド氷床・南極氷床の動的な融解の可能性を除外していたが、最近の予測では南極の氷が早く消失している地域(Basin 15)の観測をもとに海水準上昇の最大値が求められている。南極の氷の質量収支をもとに、将来の海水準変動予測を行い、予測の確率密度などを評価。
Ecology
Surface exposure to sunlight stimulates CO2 release from permafrost soil carbon in the Arctic
Rose M. Cory, Byron C. Crump, Jason A. Dobkowski, and George W. Kling
近年の温暖化によって北極圏の永久凍土の土壌温度が上昇しており、微生物呼吸によって炭素が放出されている。永久凍土の融解はそれまで埋没していた炭素が表面に露出することにつながる。暗い状態と紫外線に曝された状態とでは、後者の方が炭素が微生物によってより分解されやすいことが示された。日光が土壌中の炭素を大気へと放出させる働きを持っているらしい。
☆5 March 2013; Vol. 110, No. 10
Commentaries
Inviable immigrants drive diversification in the sea
David W. Pfennig
☆12 March 2013; Vol. 110, No. 11
Letters (Online Only)
Organic farming gives no climate change benefit through soil carbon sequestration
Jens Leifeld, Denis A. Angers, Claire Chenu, Jürg Fuhrer, Thomas Kätterer, and David S. Powlson
「有機農法が従来の農法よりも炭素を蓄積する効果があり、気候変動緩和に寄与する」というGattinger et al.の解釈にバイアスがかかっていることを指摘。
Reply to Leifeld et al.: Enhanced top soil carbon stocks under organic farming is not equated with climate change mitigation
Andreas Gattinger, Adrian Muller, Matthias Haeni, Colin Skinner, Andreas Fließbach, Nina Buchmann, Paul Mäder, Matthias Stolze, Pete Smith, Nadia El-Hage Scialabba, and Urs Niggli
Leifeld et al.に対する返答。
Ecology
Green-up dates in the Tibetan Plateau have continuously advanced from 1982 to 2011
Geli Zhang, Yangjian Zhang, Jinwei Dong, and Xiangming Xiao
地球の第三の極(third pole)であるチベット高原はここ数十年間の間に大きく温暖化しており、さらに植物が生育する時期が1982年〜1990年代には早まっていたものの、1982年〜2011年には逆に遅くなっており、謎とされている。GMMS、SPOT-VGT、MODISなどのデータセットを用いて再評価したところ、データセット間のバイアスがあることが示された。GMMSとSPOT-VGTを組み合わせたデータセットでは1982年〜2011年にかけて植物の生育時期は早まっていることが示され、春と冬の気温が増加していることと整合的である。ただしデータが不足しており、決定的な結果とは言えないらしい。
☆In Press, Accepted Manuscript
Inverse modelling of the 14C bomb pulse in stalagmites to constrain the dynamics of soil carbon cycling at selected European cave sites
D. Rudzka-Phillips, F. McDermott, A. Jackson, D. Fleitmann
土壌中の有機物は温度が上がるほど多く分解されてCO2を放出するため、温暖化の正のフィードバックとして寄与すると考えられているものの、温度感度を定量的に評価することは難しい。ヨーロッパ中の鍾乳石のボムピーク14Cを用いて、土壌における炭素循環の近年の変化を考察。土壌の厚さや土壌水分量・温度などに応じて、14Cの減衰が鍾乳石ごとに違うことが示された。
☆Volume 68, 15 May 2013, Pages 43–58
Stomatal proxy record of CO2 concentrations from the last termination suggests an important role for CO2 at climate change transitions
Margret Steinthorsdottir, Barbara Wohlfarth, Malin E. Kylander, Maarten Blaauw, Paula J. Reimer
ノルウェーから得られた堆積物中の植物の葉の化石の気孔密度を用いて、大気中のCO2濃度を復元したところ、最終退氷期にアイスコアから復元されているものよりも大きな振動でCO2濃度が変化していることが確認された。見直す必要あり?
Proceedings of the National Academy of Sciences
☆19 February 2013; Vol. 110, No. 8
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Subtropical High predictability establishes a promising way for monsoon and tropical storm predictions
Bin Wang, Baoqiang Xiang, and June-Yi Lee
モンスーンと熱帯低気圧がもたらす雨は社会にとって重要であるが、季節予報をすることは困難である。北太平洋の亜熱帯高気圧の変動が「東アジアの夏モンスーンの強度」や「北西太平洋に到達する熱帯低気圧の日数」などとよく相関していることが見いだされた。亜熱帯高気圧に関してはかなり予測が可能であることがモデルから示されたため、予測精度が向上することが期待される。
☆26 February 2013; Vol. 110, No. Supplement 1
Fostering advances in interdisciplinary climate science
Jeffrey Shaman, Susan Solomon, Rita R. Colwell, and Christopher B. Field
Rise of interdisciplinary research on climate
Spencer Weart
20世紀半ばまで気候学は統計の分野であった。第二次世界大戦後、気象物理学が現れたことで急速に発展しはじめた。1960-70年代にかけて気候変動への懸念が出始め、そして21世紀には学術領域を横断した協力体制が出来上がった。
Evolution of natural and social science interactions in global change research programs
Harold A. Mooney, Anantha Duraiappah, and Anne Larigauderie
地球をシステムとして捉える動きは1980年代半ば頃から始まった。そして今、新たにFuture Earth国際計画がスタートした。
Development and application of earth system models
Ronald G. Prinn
地球環境はあらゆるサブシステムから構成される複雑で動的なシステムである。統合された地球システムモデル(integrated global system model; IGSM)は我々が将来どのような気候変動を経験するかの予測や、気候工学が実行可能かどうかの評価を可能にしてくれる重要なツールの一つである。IGSMによると、もし政策によって排出規制がなされなかった場合、「2100年には全球の平均気温は3.5〜7.4℃上昇し、北極の気温は6.4〜14℃上昇する」と予想されている。
Interdisciplinary approaches to understanding disease emergence: The past, present, and future drivers of Nipah virus emergence
Peter Daszak, Carlos Zambrana-Torrelio, Tiffany L. Bogich, Miguel Fernandez, Jonathan H. Epstein, Kris A. Murray, and Healy Hamilton
新種の感染症(Emerging infectious diseases; EIDs)の出現について。
The El Niño–Southern Oscillation (ENSO)–pandemic Influenza connection: Coincident or causal?
Jeffrey Shaman and Marc Lipsitch
最近の4回のインフルエンザ・パンデミックはラニーニャの時期(1918、1957、1968、2009)に相当していたことが分かった。「ラニーニャがパンデミックを引き起こす」という仮説を紹介し、検証。鳥の渡りがカギ?
Estimating the sources of global sea level rise with data assimilation techniques
Carling C. Hay, Eric Morrow, Robert E. Kopp, and Jerry X. Mitrovica
全球的な海水準変動の観測ネットワークを設けることで、融水のフラックスを推定するのに役に立つ。検潮所の記録をもとに、全球の海水準変動を引き起こす融水の供給源を考察。
☆26 February 2013; Vol. 110, No. 9
Retrospective
The kingdoms of Carl Woese
Larry Gold
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Probabilistic framework for assessing the ice sheet contribution to sea level change
Christopher M. Little, Nathan M. Urban, and Michael Oppenheimer
従来の海水準上昇予測ではグリーンランド氷床・南極氷床の動的な融解の可能性を除外していたが、最近の予測では南極の氷が早く消失している地域(Basin 15)の観測をもとに海水準上昇の最大値が求められている。南極の氷の質量収支をもとに、将来の海水準変動予測を行い、予測の確率密度などを評価。
Ecology
Surface exposure to sunlight stimulates CO2 release from permafrost soil carbon in the Arctic
Rose M. Cory, Byron C. Crump, Jason A. Dobkowski, and George W. Kling
近年の温暖化によって北極圏の永久凍土の土壌温度が上昇しており、微生物呼吸によって炭素が放出されている。永久凍土の融解はそれまで埋没していた炭素が表面に露出することにつながる。暗い状態と紫外線に曝された状態とでは、後者の方が炭素が微生物によってより分解されやすいことが示された。日光が土壌中の炭素を大気へと放出させる働きを持っているらしい。
☆5 March 2013; Vol. 110, No. 10
Commentaries
Inviable immigrants drive diversification in the sea
David W. Pfennig
☆12 March 2013; Vol. 110, No. 11
Letters (Online Only)
Organic farming gives no climate change benefit through soil carbon sequestration
Jens Leifeld, Denis A. Angers, Claire Chenu, Jürg Fuhrer, Thomas Kätterer, and David S. Powlson
「有機農法が従来の農法よりも炭素を蓄積する効果があり、気候変動緩和に寄与する」というGattinger et al.の解釈にバイアスがかかっていることを指摘。
Reply to Leifeld et al.: Enhanced top soil carbon stocks under organic farming is not equated with climate change mitigation
Andreas Gattinger, Adrian Muller, Matthias Haeni, Colin Skinner, Andreas Fließbach, Nina Buchmann, Paul Mäder, Matthias Stolze, Pete Smith, Nadia El-Hage Scialabba, and Urs Niggli
Leifeld et al.に対する返答。
Ecology
Green-up dates in the Tibetan Plateau have continuously advanced from 1982 to 2011
Geli Zhang, Yangjian Zhang, Jinwei Dong, and Xiangming Xiao
地球の第三の極(third pole)であるチベット高原はここ数十年間の間に大きく温暖化しており、さらに植物が生育する時期が1982年〜1990年代には早まっていたものの、1982年〜2011年には逆に遅くなっており、謎とされている。GMMS、SPOT-VGT、MODISなどのデータセットを用いて再評価したところ、データセット間のバイアスがあることが示された。GMMSとSPOT-VGTを組み合わせたデータセットでは1982年〜2011年にかけて植物の生育時期は早まっていることが示され、春と冬の気温が増加していることと整合的である。ただしデータが不足しており、決定的な結果とは言えないらしい。
2013年3月16日土曜日
Evernoteの辞書機能が英英辞書になったり英和辞書になったりする
EvernoteでPDFを読んでいると、ときどき辞書機能を使った際に英英辞書になったり英和辞典になったりします。
以前書いた記事の中で、解決策を紹介しましたが、もう一つの解決法があったのでメモしときます。
1の方法は1〜2分を要しますが、2の方法ならすぐに解決!
解決策1:
いったん言語設定を英語にし、再び元に戻す
>appleサポート「ios6にアップしてから、辞書機能がおかしい」
解決策2:
キーボードを英語から日本語に変える
>外部ブログ「iOS6の内蔵辞書が英英辞書になったり英和辞書になったりする」
PDFをいったん閉じて、ノートの文字入力のところでキーボードを切り替えればOK。
キーボードが’英語’のとき |
キーボードが’日本語’のとき |
最近はたまに辞書機能そのものが使えなくなったりしますが(文字がハイライト表示されない)、PDF自体が壊れているのが原因だったりするんですかねえ。。
新着論文(Science#6125)
Science
VOL 339, ISSUE 6125, PAGES 1245-1348 (15 MARCH 2013)
EDITORIAL:
Am I Wrong?
私は間違っていたのか?
Bruce Alberts
アメリカの経済発展の停滞は重大である。2013年のGDPはわずか0.87%で、科学に充てられる予算の削減を受けて、NSFも今年度1,000件の科学助成を削減することを決定した。
寿命は順調に延びているが、一方で85歳以上の5人に1人が認知症で、それを支えるための費用も2050年には年間1.1兆ドルに膨れ上がるとの試算もある。
>以下は引用
I HAVE SEVEN GRANDCHILDREN, AND I WORRY ABOUT THEIR FUTURE.
私には孫が7人いるが、彼らの将来を深く心配している。
the United States is living off its past.
アメリカは過去に頼って生計を立てている。
Editors' Choice
Getting It Just Right
Curr. Biol. 10.1016/j.cub.2013.01.052 (2013).
渡りをする蝶(North American monarch butterflies)がどのようにして体内時計を調整して渡りの時期を決定し、方向を決定しているかについて。
Mercury Gas in Neptune Grass
Neptune Grassの中の水銀ガス
Global Biogeochem. Cycles 27, 10.1029/2012GB004296 (2013).
地中海沿岸部に生息する海草の一種(Posidonia oceanica; Neptune grass)は水銀を濃集するが、それらが根付く堆積物には過去2,500年にわたる人類の水銀採掘の歴史が刻まれている。
>問題の論文
Millennial scale impact on the marine biogeochemical cycle of mercury from early mining on the Iberian Peninsula
O. Serrano, A. Martínez-Cortizas, M.A. Mateo, H. Biester, and R. Bindler
地中海北西部から得られた海草マットから過去4,315年間の人間活動による水銀の流入量を復元。およそ2,500年前から人為起源の影響が出始め、スペインで鉱業が開始した時期と整合的。歴史上何度か水銀の濃度が急増する時期があり、過去1000年間が最も高い。生物濃集の程度が環境記録を歪めてしまう可能性があるが、非常にユニークな水銀濃度の復元ツールとなることが期待される。
News of the Week
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
シロクマの貿易を厳しくする試みが失敗する
北極の海氷が融けることでシロクマが絶滅の危機にさらされているが、一方でシロクマの身体の一部(毛皮など)を扱う貿易もまたシロクマの脅威となっている。先日バンコクで行われたInternational Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)の会議にて、現在シロクマはCITESのリスト1に載っているが、より厳しいリスト2へ移すことをアメリカとロシアが提案した。しかし、カナダ・グリーンランド・ノルウェーなどの反対に遭い、提案は棄却された。
>より詳細な記事(OPEN)
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
Erik Stokstad
You Are What You Like
あなたはあなたが好きなもの
毎日数百万人の人がFacebookのlikeボタンを押すが、それは自分の本や動画に対する嗜好を示すだけでなく、もっと多くの情報(性的嗜好、宗教など)を示していることが新たな研究から分かった(PNASに論文)。被験者に対して心理学的なテストを行って特徴を浮き彫りにしたのち、Facebookのlikeボタンを押した情報をもとにプロファイリングした人格と照合したところ、極めて良く一致したという。特にホモ・セクシャル、宗教、支持する政治団体、タバコ・アルコール・ドラッグの習慣もよく予測された。
News & Analysis
Dramatic Fossils Suggest Early Birds Were Biplanes
印象深い化石は初期の鳥が複葉であったことを示唆している
Michael Balter
綺麗な状態で復元された初期の鳥の化石は、それが2つではなく4つの羽を持っていたことを示している。
News Focus
War Stories
戦記物語
Martin Enserink
2003年、世界は世界的な破滅を招きかねない新病SARSを見事に撃退したが、それから10年、私たちはどれくらい安全なのだろうか?
SARS: Chronology of the Epidemic
SARS: 感染症の年代記
Martin Enserink
感染症の開始から終わりまでを紹介。
Understanding the Enemy
敵を理解する
Dennis Normile
SARSの発症によって、新しい病気を理解する研究が進んだが、まだ学ぶべきことは多く残っている。
The Metropole, Superspreaders, and Other Mysteries
主要都市、他人に対して強力な感染源となる患者、そしてその他の謎
Dennis Normile
10年間SARSの研究がなされてきたが、まだ謎が残されている。2003年2月21日、香港のホテルで何が起きたのだろう?Amoy Gardenの高層ビル群でどのように病気は広がったのだろう?どのようにして感染源となる患者が生まれたのだろう?
Letters
University Rankings Could Bias Funding
大学ランキングが助成の偏りを生む可能性がある
Philipe de Souto Barreto
The Race to Name Earth's Species
地球の生物に名前を与えるレース
William F. Laurance
M. J. Costelloは「絶滅よりも早く人類は生物に名前を与えられる」とレビューの中で主張しているが、あまりそうは思えない。真核生物の大半は昆虫類であるが、他の動物群(線虫、菌類、無脊椎動物など)もまた多様であり、中には限られた地域にしかいないもの、隠れるのが上手いもの、顕微鏡の下でしか確認できない小さいもの、など多くのものがある。また生物多様性が高い途上国などで将来十分な資金が得られ、生物に名前を与えることができるかどうかも怪しい。さらに外来種の侵入や環境変化・気候変動ストレスの影響、人間活動の影響などが生物多様性を減少させていることは事実であり、現在の生物多様性の理解だけでなく、それが将来どうなるかの予測にも大きな不確実性があることに注意しなければならない。
Policy Forum
End the Deadlock on Governance of Geoengineering Research
地球工学研究の管理を巡る膠着状態を終わらせよ
Edward A. Parson and David W. Keith
科学界の自粛だけで小さなスケールの研究は抑えられるだろうか?それとも政府による規制が必要なのだろうか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
Perspectives
Cracking the Mercury Methylation Code
水銀のメチル化の暗号を解く
Alexandre J. Poulain and Tamar Barkay
水銀のメチル化に関与している遺伝子の発見は、環境中の水銀汚染を追跡し、モニタリングするバイオマーカーの開発の助けとなるかもしれない。
Not All About Consumption
消費のことだけを考えないで
Debra J. Davidson and Jeffrey Andrews
たとえ消費レベルが同じであったとしても、資源開発は生態系に大きな影響を与える。
The SARS Wake-Up Call
SARSの警告
Isabelle Nuttall and Christopher Dye
10年前のSARSの発生によって、健康に対する脅威に対する各国の対応を改善するためのWHOの努力が強化された。
Reports
Evidence for Microbial Carbon and Sulfur Cycling in Deeply Buried Ridge Flank Basalt
深く埋没した海嶺の脇の玄武岩における微生物による炭素・硫黄サイクルの証拠
Mark A. Lever, Olivier Rouxel, Jeffrey C. Alt, Nobumichi Shimizu, Shuhei Ono, Rosalind M. Coggon, Wayne C. Shanks III, Laura Lapham, Marcus Elvert, Xavier Prieto-Mollar, Kai-Uwe Hinrichs, Fumio Inagaki, and Andreas Teske
玄武岩質の海洋地殻(~3.5Ma)にもメタンと硫黄を利用する微生物の活動が存在することが、Juan de Fuca海嶺で証明された。
Hind Wings in Basal Birds and the Evolution of Leg Feathers
根本的な鳥の尾翼と脚の羽の進化
Xiaoting Zheng, Zhonghe Zhou, Xiaoli Wang, Fucheng Zhang, Xiaomei Zhang, Yan Wang, Guangjin Wei, Shuo Wang, and Xing Xu
11の初期の鳥の化石の調査から、すべての四肢に羽があり、現在の羽が2つである状態は後からできたものであることが分かった。また硬い皮膚で覆われた後ろ足も後から獲得したらしい。
The Genetic Basis for Bacterial Mercury Methylation
バクテリアの水銀メチル化に対する遺伝的な基本
Jerry M. Parks, Alexander Johs, Mircea Podar, Romain Bridou, Richard A. Hurt Jr, Steven D. Smith, Stephen J. Tomanicek, Yun Qian, Steven D. Brown, Craig C. Brandt, Anthony V. Palumbo, Jeremy C. Smith, Judy D. Wall, Dwayne A. Elias, and Liyuan Liang
VOL 339, ISSUE 6125, PAGES 1245-1348 (15 MARCH 2013)
EDITORIAL:
Am I Wrong?
私は間違っていたのか?
Bruce Alberts
アメリカの経済発展の停滞は重大である。2013年のGDPはわずか0.87%で、科学に充てられる予算の削減を受けて、NSFも今年度1,000件の科学助成を削減することを決定した。
寿命は順調に延びているが、一方で85歳以上の5人に1人が認知症で、それを支えるための費用も2050年には年間1.1兆ドルに膨れ上がるとの試算もある。
>以下は引用
I HAVE SEVEN GRANDCHILDREN, AND I WORRY ABOUT THEIR FUTURE.
私には孫が7人いるが、彼らの将来を深く心配している。
the United States is living off its past.
アメリカは過去に頼って生計を立てている。
Editors' Choice
Getting It Just Right
Curr. Biol. 10.1016/j.cub.2013.01.052 (2013).
渡りをする蝶(North American monarch butterflies)がどのようにして体内時計を調整して渡りの時期を決定し、方向を決定しているかについて。
Mercury Gas in Neptune Grass
Neptune Grassの中の水銀ガス
Global Biogeochem. Cycles 27, 10.1029/2012GB004296 (2013).
地中海沿岸部に生息する海草の一種(Posidonia oceanica; Neptune grass)は水銀を濃集するが、それらが根付く堆積物には過去2,500年にわたる人類の水銀採掘の歴史が刻まれている。
>問題の論文
Millennial scale impact on the marine biogeochemical cycle of mercury from early mining on the Iberian Peninsula
O. Serrano, A. Martínez-Cortizas, M.A. Mateo, H. Biester, and R. Bindler
地中海北西部から得られた海草マットから過去4,315年間の人間活動による水銀の流入量を復元。およそ2,500年前から人為起源の影響が出始め、スペインで鉱業が開始した時期と整合的。歴史上何度か水銀の濃度が急増する時期があり、過去1000年間が最も高い。生物濃集の程度が環境記録を歪めてしまう可能性があるが、非常にユニークな水銀濃度の復元ツールとなることが期待される。
News of the Week
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
シロクマの貿易を厳しくする試みが失敗する
北極の海氷が融けることでシロクマが絶滅の危機にさらされているが、一方でシロクマの身体の一部(毛皮など)を扱う貿易もまたシロクマの脅威となっている。先日バンコクで行われたInternational Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)の会議にて、現在シロクマはCITESのリスト1に載っているが、より厳しいリスト2へ移すことをアメリカとロシアが提案した。しかし、カナダ・グリーンランド・ノルウェーなどの反対に遭い、提案は棄却された。
>より詳細な記事(OPEN)
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
Erik Stokstad
You Are What You Like
あなたはあなたが好きなもの
毎日数百万人の人がFacebookのlikeボタンを押すが、それは自分の本や動画に対する嗜好を示すだけでなく、もっと多くの情報(性的嗜好、宗教など)を示していることが新たな研究から分かった(PNASに論文)。被験者に対して心理学的なテストを行って特徴を浮き彫りにしたのち、Facebookのlikeボタンを押した情報をもとにプロファイリングした人格と照合したところ、極めて良く一致したという。特にホモ・セクシャル、宗教、支持する政治団体、タバコ・アルコール・ドラッグの習慣もよく予測された。
News & Analysis
Dramatic Fossils Suggest Early Birds Were Biplanes
印象深い化石は初期の鳥が複葉であったことを示唆している
Michael Balter
綺麗な状態で復元された初期の鳥の化石は、それが2つではなく4つの羽を持っていたことを示している。
News Focus
War Stories
戦記物語
Martin Enserink
2003年、世界は世界的な破滅を招きかねない新病SARSを見事に撃退したが、それから10年、私たちはどれくらい安全なのだろうか?
SARS: Chronology of the Epidemic
SARS: 感染症の年代記
Martin Enserink
感染症の開始から終わりまでを紹介。
Understanding the Enemy
敵を理解する
Dennis Normile
SARSの発症によって、新しい病気を理解する研究が進んだが、まだ学ぶべきことは多く残っている。
The Metropole, Superspreaders, and Other Mysteries
主要都市、他人に対して強力な感染源となる患者、そしてその他の謎
Dennis Normile
10年間SARSの研究がなされてきたが、まだ謎が残されている。2003年2月21日、香港のホテルで何が起きたのだろう?Amoy Gardenの高層ビル群でどのように病気は広がったのだろう?どのようにして感染源となる患者が生まれたのだろう?
Letters
University Rankings Could Bias Funding
大学ランキングが助成の偏りを生む可能性がある
Philipe de Souto Barreto
The Race to Name Earth's Species
地球の生物に名前を与えるレース
William F. Laurance
M. J. Costelloは「絶滅よりも早く人類は生物に名前を与えられる」とレビューの中で主張しているが、あまりそうは思えない。真核生物の大半は昆虫類であるが、他の動物群(線虫、菌類、無脊椎動物など)もまた多様であり、中には限られた地域にしかいないもの、隠れるのが上手いもの、顕微鏡の下でしか確認できない小さいもの、など多くのものがある。また生物多様性が高い途上国などで将来十分な資金が得られ、生物に名前を与えることができるかどうかも怪しい。さらに外来種の侵入や環境変化・気候変動ストレスの影響、人間活動の影響などが生物多様性を減少させていることは事実であり、現在の生物多様性の理解だけでなく、それが将来どうなるかの予測にも大きな不確実性があることに注意しなければならない。
Policy Forum
End the Deadlock on Governance of Geoengineering Research
地球工学研究の管理を巡る膠着状態を終わらせよ
Edward A. Parson and David W. Keith
科学界の自粛だけで小さなスケールの研究は抑えられるだろうか?それとも政府による規制が必要なのだろうか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
Perspectives
Cracking the Mercury Methylation Code
水銀のメチル化の暗号を解く
Alexandre J. Poulain and Tamar Barkay
水銀のメチル化に関与している遺伝子の発見は、環境中の水銀汚染を追跡し、モニタリングするバイオマーカーの開発の助けとなるかもしれない。
Not All About Consumption
消費のことだけを考えないで
Debra J. Davidson and Jeffrey Andrews
たとえ消費レベルが同じであったとしても、資源開発は生態系に大きな影響を与える。
The SARS Wake-Up Call
SARSの警告
Isabelle Nuttall and Christopher Dye
10年前のSARSの発生によって、健康に対する脅威に対する各国の対応を改善するためのWHOの努力が強化された。
Reports
Evidence for Microbial Carbon and Sulfur Cycling in Deeply Buried Ridge Flank Basalt
深く埋没した海嶺の脇の玄武岩における微生物による炭素・硫黄サイクルの証拠
Mark A. Lever, Olivier Rouxel, Jeffrey C. Alt, Nobumichi Shimizu, Shuhei Ono, Rosalind M. Coggon, Wayne C. Shanks III, Laura Lapham, Marcus Elvert, Xavier Prieto-Mollar, Kai-Uwe Hinrichs, Fumio Inagaki, and Andreas Teske
玄武岩質の海洋地殻(~3.5Ma)にもメタンと硫黄を利用する微生物の活動が存在することが、Juan de Fuca海嶺で証明された。
Hind Wings in Basal Birds and the Evolution of Leg Feathers
根本的な鳥の尾翼と脚の羽の進化
Xiaoting Zheng, Zhonghe Zhou, Xiaoli Wang, Fucheng Zhang, Xiaomei Zhang, Yan Wang, Guangjin Wei, Shuo Wang, and Xing Xu
11の初期の鳥の化石の調査から、すべての四肢に羽があり、現在の羽が2つである状態は後からできたものであることが分かった。また硬い皮膚で覆われた後ろ足も後から獲得したらしい。
The Genetic Basis for Bacterial Mercury Methylation
バクテリアの水銀メチル化に対する遺伝的な基本
Jerry M. Parks, Alexander Johs, Mircea Podar, Romain Bridou, Richard A. Hurt Jr, Steven D. Smith, Stephen J. Tomanicek, Yun Qian, Steven D. Brown, Craig C. Brandt, Anthony V. Palumbo, Jeremy C. Smith, Judy D. Wall, Dwayne A. Elias, and Liyuan Liang
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