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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年3月21日木曜日

新着論文(Nature#7441)

Nature
Volume 495 Number 7441 pp281-404 (21 March 2013)

EDITORIALS
Wasted energy
捨てられるエネルギー
 石油を採掘する際にガスを燃やして大気に捨てることは、環境(温暖化や空気汚染)に良くないだけでなく、もはや過去と違い正当化されない。特に石油採掘技術が世界で最も成熟したアメリカこそ、この天然資源を活用する手段を模索すべきである。
 現在アメリカのノースダコタ州でシェール・ガスの集中的な採掘がなされているが、2012年に大気中に放出されたCO2の量は390万トンであり、さらに悪いことに、CO2よりも温室効果の大きいメタンが大量に大気に漏れ出していると考えられている。
 「燃やされるガスにも課税する」「石油・ガス産業により厳しい規制を設ける」などの措置を施すことで、この動きを止める手だてとなるかもしれない。

As a result, the public gets a smaller return on the environmental price being paid to recover this oil — the inevitable impacts on public infrastructure, air and water resources, and on the landscape itself.
結果として、この石油を採掘するのに犠牲となる環境の価値に対して民衆が得られる見返りはより少なくなる。公共インフラ、大気・水資源、景観そのものへの避け難い悪影響など。

But it will be up to scientists to pin down the full suite of impacts from the new oil and gas developments and to help policy-makers better understand the choices that they are making.

しかし、新たな石油やガスの発展がもとで生じる一連の影響を分かりやすく説明し、政策決定者が自らの選択をより理解する手助けをするのが科学者の役割であろう。

CITES for sore eyes
先週の野生生物貿易条約締結会議の成功は行動でもってバックアップされなければならない。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Fibres toughen when stretched
伸ばされて強くなる繊維

ACS Nano http://dx.doi.org/10.1021/nn400028p (2013)
ほとんどの繊維は伸ばすと脆くなるが、新たに開発されたポリアクリロニトリル繊維は細くなるほどにその強度が増す。エレクトロスピニングという技術で作るらしい。

Life on the seabed, and below
海底面の、海底下の、生命
Nature Geosci. http://dx.doi.org/ 10.1038/ngeo1773 (2013); Science 339, 1305–1308 (2013)
 無人探査機を用いたマリアナ海溝の調査から、11kmの超深海における微生物による活発な酸素消費が確認された。わずかな有機物を分解して生活しているらしい。
 また北米西海岸沖の海底地殻の深部にも水素菌が生活しており、鉄と海水の化学反応から得られるエネルギーを用いているらしいことが分かった。
>より詳細な記事(OPEN)
Life found deep under the sea
海の深くで見つかった生命
Ed Yong

Mobile worm microscope
持ち運べる寄生虫顕微鏡
Am. J. Trop. Med. Hyg. http:// dx.doi.org/10.4269/ajtmh.12- 0742 (2013)
カナダの研究グループはiPhone搭載のカメラを顕微鏡へと早変わりさせ、発展途上国の人々の腸内に巣食う寄生虫(Ascaris lumbricoides)をかなり高い割合で検出できることを野外で実証した。

Quakes shake the gold out
地震が金を振り出す
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1759 (2013)
オーストラリアの研究グループが、地震の際に亀裂ができ急速に流体が冷却・減圧されると、貴金属類が急速に沈殿することを突き止めた。金がよく産出するようなインドネシアや南アフリカなどでは、地震が繰り返されることで金が蓄積する機能(flash vaporization)が働いているらしい。
>より詳細な記事(OPEN)
Earthquakes make gold veins in an instant
地震が金の鉱脈を一瞬で作る
Richard A. Lovett

Frog feet share human hair origin
カエルの足は人間の髪と起源を同じくする
Biol. Lett. 9, 20130051 (2013)
カエルの一種(tree frog)が滑りやすい面に留まるのを可能にしている足の吸盤は人間の髪の毛と起源を同じくしているらしい。

SEVEN DAYS
Mars find
火星の発見
火星探査機キュリオシティーは火星の岩の掘削から、中性の塩水で生成したと考えられる粘土鉱物を見つけた。数十億年前に生命が存在した可能性がある。
>より詳細な記事(OPEN)
Mars rover finds evidence of ancient habitability
火星の探査機が古代の生命存在可能性の証拠を見つける
Alexandra Witze

Methane success
メタンの成功
日本は3/12に海底下300mのメタンハイドレート層からメタンを採取したと発表した。日本の新たなエネルギー源として、経済的に採掘が実現可能かどうかがこれから評価される。

Seabed mining
海底の鉱業
イギリスのLockheed Martin UKの子会社であるUK Seabed Resourcesはメキシコの南東1,500kmの海底において海底の金属資源を採掘する許可を得たと3/14に公表した。

Plague graves unearthed in London
ペストの墓がロンドンで発掘される
イギリス・ロンドンにて、ペストによる大量の死者が葬られた墓が鉄道建設の最中に発掘された。

Energy fund
エネルギー基金
オバマ大統領は低炭素輸送手段の開発に向けた研究を支援するEnergy Security Trustを設立するよう提案した。将来10年間にわたって毎年20億ドルが充てられるという構想になっている。

Species protection
種の保護
先週バンコクにて行われた会議:Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)にて、多くの生物の保護ランクが引き上げられた。サメ、エイ、熱帯の硬木、象牙など。しかしシロクマについてはランクは引き上げられなかった。

Mars mission boost
火星の探査が加熱
ロシアはヨーロッパの次の火星ミッションにパートナー参加する。2016年の軌道衛星、2018年の地上探査機を送り込むロケット、搭載する機器類などで協力する。

NEWS IN FOCUS
Oil boom raises burning issues
石油ブームが燃焼問題を生み出す
Jeff Tollefson
ノースダコタにおけるガス燃焼の環境影響に「燃やされないメタン」がさらに加わる可能性がある。

Mars rover under pressure to reach mountain goal
火星探査機は山積みになった目標を達成するプレッシャーを負っている
Alexandra Witze

UK company pursues deep-sea bonanza
イギリスの企業は深海の大当たりを追い求める
Mark Schrope
数十年の準備を経て、イギリスの企業が鉱物に富んだ塊を海底から引き上げる計画をスタートさせる。

COMMENT
Sustainable development goals for people and planet
人間と地球にとっての持続的発展目標
「国連が貧困と健康に立ち向かう目標と、地球の安定性は統合されなければならない」とDavid Griggsほかは主張する。

A global map for road building
道路建設の全球地図
「地球全体で道路が急増している。賢くデザイン・建設されることで環境被害以外の結果に繋がる」と、William F. LauranceとAndrew Balmfordは主張する。


CORRESPONDENCE
Broaden the arguments
論争を広げよ
Alistair J. Hobday, Rodrigo H. Bustamante & Éva E. Plagányi
漁獲量から水産資源量を推定する方法の問題について。

Manage declines
減少を管理する
Brian R. MacKenzie & Mark R. Payne
資源量が低下する中、努力によって漁獲量を一時的に回復させることは可能だが、まずは漁業資源が減少した原因を調べる必要がある。

Outdated taxonomy blocks conservation
時代遅れの分類学が保護を妨げる
Eliécer E. Gutiérrez & Kristofer M. Helgen

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Research
BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
A Late Eocene date for Late Triassic bird tracks
Ricardo N. Melchor, Robert Buchwaldt & Samuel Bowring

NEWS & VIEWS
Mainly in the plain
主に平原で
James W. Kirchner & Ken L. Ferrier
「地表の質量損失は山ではなく、主に平原地帯の物理浸食・化学風化によって生じている」という新たな発見が、我々の地球表層がどのように進化したかの理解に問題を投げかけている。

The ALMA telescope shows its true colours
ALMA望遠鏡がその真の色を見せる
Andrew W. Blain
アタカマ砂漠に建設された宇宙望遠鏡が、銀河の赤方変位と内部構造を明らかにするのに大きな力を発揮した。

Detecting selection
選別を検出する
Gregory S. Barsh & Leif Andersson
Erik Axelsson et al.の解説記事。

LETTERS
Dusty starburst galaxies in the early Universe as revealed by gravitational lensing
重力レンズによって明らかになる初期宇宙の埃っぽいスターバースト銀河
J. D. Vieira et al.

Changes in global nitrogen cycling during the Holocene epoch
完新世時代の全球の窒素サイクルの変化
Kendra K. McLauchlan, Joseph J. Williams, Joseph M. Craine & Elizabeth S. Jeffers
人類による反応性の窒素の利用は産業革命以降倍増しており、今後も加速的に増加すると考えられている。しかし、自然界が反応性の窒素を緩衝できる能力がどれほどかはよく分かっていない。6大陸にまたがる湖の堆積物から過去15kaのδ15Nを復元した。15-7kaにδ15Nが減少するが、このとき大気中のCO2濃度は増加しており、陸域の炭素蓄積量も増加している。窒素利用効率が低下したことが原因と考えられる。過去500年間にはδ15Nに似た変化は見られず、大気中のCO2濃度増加と陸域生物圏の炭素貯留が近年の反応性の窒素の増加を打ち消す働きを負っている可能性がある。

Melt-rich channel observed at the lithosphere–asthenosphere boundary
リソスフェア–アセノスフェア境界で観察されたメルトに富んだチャネル
S. Naif, K. Key, S. Constable & R. L. Evans
ニカラグア沖の海底の地磁気地電流測定から、リソスフェア/アセノスフェア境界の電気的伝導度が撮像された。45-70km深に高い伝導度の層が見られ、部分溶融した低密度のチャネルであると考えられる。

The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet
犬の家畜化の遺伝的な特徴がでんぷんを多く含んだ食事への適応を明らかにする
Erik Axelsson et al.
人類文明の発展の中で、犬の家畜化は重要な出来事の1つであった。犬とオオカミの全ゲノム解析から、犬の家畜化の過程で選別のターゲットとなったと考えられるゲノム領域が特定された。デンプンの消化と脂質代謝に重要な遺伝子にも選別が起きていたと考えられる。オオカミの肉食中心の食事から、デンプンの多い食事でも大丈夫になったことが、犬の家畜化の初期段階で重要であったことを物語っている。