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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年3月12日火曜日

新着論文(GBC, SR, Ncom, Ngeo)

GBC (Global Biogeochemical Cycles)
Seasonal variability of the carbon cycle in subantarctic surface water in the South West Pacific
Holger Brix, Kim I. Currie, Sara E. Mikaloff Fletcher
広大であるにもかかわらず、南太平洋の炭素・栄養塩循環についてはよく分かっていないことが多い。1998 - 2010年にかけてのニュージーランド沖の長期観測結果を報告。pCO2変動は多くがDICによって駆動されているが、一部温度も寄与している。人為CO2のわずかなシンクとして寄与している。

Decadal changes in dissolved inorganic carbon in the Pacific Ocean
Shinya Kouketsu, Akihiko Murata, Toshimasa Doi
WOCEとWOCEの再訪のデータを使って、太平洋における人為CO2と自然CO2の変動を分けて議論。数十年規模の変動が見られ、例えば40ºN付近では人為CO2の取り込みは相殺されている。また両半球で亜熱帯循環における人為CO2の取り込みは増加しており、モード水に炭素が蓄積している。人為と自然起源の炭素の吸収量はそれぞれ「8.4 ± 0.5」「0.6 ± 0.4」PgCと推定される。

Nature Communications
☆2013年3月4日号
Nitrogen cycle feedbacks as a control on euxinia in the mid-Proterozoic ocean
原生代中期の海洋におけるユーキシニアの制御機構としての窒素循環フィードバック
R.A. Boyle, J.R. Clark, S.W. Poulton, G. Shields-Zhou, D.E. Canfield and T.M. Lenton
原生代中期の海洋の状態をモデリング。

☆Current month
Mid-Pliocene warm-period deposits in the High Arctic yield insight into camel evolution
高緯度の北極圏の鮮新世中期の温暖期に相当する堆積物がラクダの進化に知見を与える
Natalia Rybczynski, John C. Gosse, C. Richard Harington, Roy A. Wogelius, Alan J. Hidy & Mike Buckley
カナダの北極圏(Ellesmere Island, Nunavut)の堆積物から当時の古環境を復元したところ、そこは鮮新世中期(mid-Pliocene)の温暖期には豊かな森林であり、さらに産出した脚の化石のコラーゲン抽出からそれがラクダのものであることが世界で初めて示されたラクダは北米の森林起源で、ベーリング陸峡を渡ってユーラシア大陸に渡ったものと考えられる。

The origins of the enigmatic Falkland Islands wolf
謎に満ちたフォークランド島オオカミの起源
Jeremy J. Austin, Julien Soubrier, Francisco J. Prevosti, Luciano Prates, Valentina Trejo, Francisco Mena & Alan Cooper
既に絶滅したフォークランドオオカミ(Falkland Islands wolf; Dusicyon australis)の起源は17世紀の発見以来ずっと謎のままであった。アルゼンチンから460kmも離れており、ヒトがもたらしたものでも、海を渡ったわけでもなかったからである。近縁種のDusicyon avusの化石のDNA分析から、フォークランドオオカミが孤立したのは8 - 31kaの最終氷期であったことが示された。おそらく海水準の低下と海氷による道ができたことで、フォークランド島に歩いて渡ったものと推測される

Scientific Reports
☆2013年3月5日号
Seabird diets provide early warning of sardine fishery declines in the Gulf of California
海鳥の食餌がカリフォルニア湾のイワシ漁獲量減少の初期警報を与える
Enriqueta Velarde, Exequiel Ezcurra, Daniel W. Anderson
外洋性の魚は海洋の変動を反映して大きく変動することが知られている。カリフォルニア湾に生息する海鳥の餌のイワシとカタクチイワシの割合とcatches-per-unit-effort (CPUEs)との間に良い相関が見られることが分かった。漁獲量のコントロールなどに重要な知見を与えることが期待される。

Nature Geosciences
☆advance online publication
Greenland meltwater as a significant and potentially bioavailable source of iron to the ocean
重要でおそらく生物が利用可能な鉄の海への供給源としてのグリーンランドの融水
Maya P. Bhatia, Elizabeth B. Kujawinski, Sarah B. Das, Crystaline F. Breier, Paul B. Henderson & Matthew A. Charette
グリーンランド氷床は「氷河性堆積物の輸送」や「ダストの生成」を通してだけでなく、融水を通しても鉄を海へと供給する役割を担っていることが、氷床南西部の融水の直接測定から分かった。粒子状の鉄が溶存鉄よりもはるかに多く存在し、さらにその半分は生物が利用可能な形で存在している。氷床全体に拡大することが可能であれば、およそ0.3Tgの鉄が北大西洋にもたらされていることになり、温暖化とともにその量は増加することが示唆される。

Simulated resilience of tropical rainforests to CO2-induced climate change
シミュレーションされた熱帯雨林のCO2による気候変動に対する回復力
Chris Huntingford et al.
将来の気候変動に対して熱帯雨林の炭素量がどのように変化するかはよく分かっていない。不確実性はモデルにおける植生の表現と将来の温度・降水変化予測の2つに集約される。22のモデルを用いて様々な排出シナリオに従って将来予測を行ったところ、1つのモデルだけが21世紀末に炭素を失うことを予測した。中・南米の熱帯雨林を除いて、森林は将来の気候変動に対しても耐えることが示唆される。