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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年11月29日金曜日

新着論文(Science#6162)

Science
VOL 342, ISSUE 6162, PAGES 1013-1132 (29 NOVEMBER 2013)

Editors' Choice
Relationship Trajectories
関係性の軌跡
PlOS Biol. 11, e1001685; e1001705 (2013).
 気候変化によって生物の種数だけでなく、繁殖の時期やタイミングなどにも変化が生じることが期待される。それはさらに、生態系全体の相互作用にも影響する可能性がある。
 気候変化が様々な方法で相互作用する生物同士に影響を及ぼした際の、競合・補食・変異などに及ぶ影響をモデリング。熱帯に棲むアリ (Azteca sp) と植物(Cordia alliodora)に関しては、水ストレスによる影響が大きく、水が不足するほど依存関係が強まることなどが示された。

Teasing Out the Plume
プリュームをかき分ける
Nat. Commun. 4, 2620 (2013).
2009年10月9日、月の観測衛星が月の南極にあるCabeusクレーターに突入した。その際に巻き上がった破片のプリューム、塵、水を含む揮発性物質などが後続のLunar Crater ObservationとSensing Satellite(LCROSS)によって観測された。これまでに地上からの検出は報告されていなかったが、ニューメキシコの3.5m望遠鏡の可視観測記録からプリュームを上手く検出できていたことが示された。また衝突サイトのレゴリスの氷量は質量比で6%と推定された。

News of the Week
‘Dueling Dinos’ Fail to Sell
’闘う恐竜’が売買に失敗
ニューヨークのオークションにかけられていた、闘いの末命を落とした2頭の恐竜の化石が希望価格の最小値(550万ドル)を上回らずに売れずに終わった。古生物学的観点から非常に価値があり、売れずに研究に捧げられることが期待されるが、直に売れてしまうだろうと考えられている。
>より詳細な記事(Science Insider)
Not Sold! 'Dueling Dinos' Flop at Auction

Science Museum in Tiff Over Climate Change Film
気候変化の映画をめぐって諍いに巻き込まれている科学博物館
ノースカロライナ州立博物館は海水準上昇を伝える気候変化の映画の放映を拒否し、大きな話題を呼んでいる。一つの理由には同州が気候変化の対策行動に対して否定的であることが関係していると思われるが、博物館側は非常に慎重な対応をしている。
>より詳細な記事(Science Insider)
Science Museum Declines to Show Climate Change Film

ESA Targets Magnetic Mysteries
ヨーロッパ宇宙局が磁場の謎解明を目指す
地球磁場をこれまでにない精度で観測するためのトリオ人工衛星(Swarm)がヨーロッパ宇宙局により、11/22に打ち上げられた。地球磁場は絶えず変動しており、その大半は融けた鉄の外核のダイナモが原因と考えられているが、地殻の岩石・海流・大気の粒子の流れなどによってもわずかながら発生している。Swarmは全球の磁場変動をくまなく観測する。より詳細な磁場の理解は地球の気候・宇宙気候・人工衛星ナビゲーションなどに関して重要なデータを提供すると思われる。
>関連した記事(Nature#7477 "SEVEN DAYS")
Swarm takes flight
群れが打ち上がる
ヨーロッパ宇宙局が地球の磁場観測を行うための3つの衛星を11/22に打ち上げた。これまでにない精度で磁場の時空間変動が観測される。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
ESA’s Swarm mission launches successfully
Quirin Schiermeier
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Mission to map Earth's magnetic field readies for take-off
Quirin Schiermeier

News & Analysis
Chinese Mission Ushers in New Era of Lunar Exploration
中国のミッションが月探査の新時代の到来を告げる
Jane Qiu and Richard Stone
1976年以来となるChang'e-3の軟着陸が成功すれば、月の地殻と月から見られる星の観測がスタートすることになる。

Clues to Supertyphoon's Ferocity Found in the Western Pacific
西太平洋で見つかったスーパー台風の獰猛さのヒント
Dennis Normile
異常に高温だった太平洋の亜表層水が、先日フィリピンを起こったスーパー台風ハイエン(Haiyan)が観測史上最大の勢力を維持したまま上陸したことの原因だったと思われる。

Policy Forum
International Cooperation on Human Lunar Heritage
人類の月遺産に関する国際間協力
Henry R. Hertzfeld and Scott N. Pace
アポロ着陸サイトの保護は賞賛に値するが、アメリカの国立公園化はいただけない。

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Research
Perspectives
Calibrating Asteroid Impact
天体衝突を較正する
Clark R. Chapman
Popova et al.の解説記事。
今年始めにロシアのチェリヤビンスクで起きた小天体の空中爆発イベントは、天体衝突に対するリスク評価のキャリブレーションポイントとなった。

Research Articles
Chelyabinsk Airburst, Damage Assessment, Meteorite Recovery, and Characterization
チェリヤビンスク空中爆発、被害評価、隕石回収、そして特徴化
Olga P. Popova et al.
1908年のツングースカ大爆発以来、人類が目撃したものとしては最大の隕石空中分解イベントが2013年2月15日にロシアのチェリヤビンスクにて起きた。国際的な学術横断研究グループによって出来事の詳細が調査された。このイベントの詳細な理解は地球近傍物質の研究や地球防護のための戦略にも影響を与えると思われる。

Reports
Regular Patterns in Frictional Resistance of Ice-Stream Beds Seen by Surface Data Inversion
表層データのインバージョンに見られる氷流の底の摩擦耐性の規則的なパターン
Olga V. Sergienko and Richard C. A. Hindmarsh
氷河は南極の内部から沿岸部の棚氷へと氷を運んでいるが、氷と基盤岩の状態によってその速度は強くコントロールされている。最近得られたデータとモデリングから、近年加速度的に質量を失っているPine Island・Thwaites氷河の基底部の圧力分布を推定。

2013年11月28日木曜日

新着論文(Nature#7477)

Nature
Volume 503 Number 7477 pp437-562 (28 November 2013)

EDITORIALS
Nailing fingerprints in the stars
星の中の証拠を突き止める
最新鋭の宇宙望遠鏡によるスペクトル・データが急増していることを補うためにも、室内実験が強く必要とされている。

WORLD VIEW
Football fever could be a dose of dengue
サッカー熱はデング熱かもしれない
「来年のブラジルワールドカップを観戦するファンは、大変で、治療ができない熱帯病に侵される可能性がある」とSimon Hayは警告する。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Crusty alga uncovers sea-ice loss
固い藻類が海氷の消失を明らかにする
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/p6g (2013)
木の年輪のように、北極海の藻類は過去の気候記録を保存している。Clathromorphum compactumの年輪の厚さとMg/Ca(温度や光量に関係していると考えられる)から得られた646年間にわたる過去の温度記録から、最近のカナダ北極圏の海氷量は過去150年間で劇的に減少し、646年で最低の値となっていることが示された。現在、人工衛星によって海氷のモニタリングが行われているが、それはたかだか1970年代までしか遡れない。この大発見は、北極海の海氷の復元に新たな道を切り開くものとなると期待される。
>話題の論文
Arctic sea-ice decline archived by multicentury annual-resolution record from crustose coralline algal proxy
Jochen Halfar, Walter H. Adey, Andreas Kronz, Steffen Hetzinger, Evan Edinger, and William W. Fitzhugh

Dung reveals goats’ last days
糞がヤギの最後の日を明らかに
Quat. Res. http://doi.org/p6b (2013)
スペインのバレアレス諸島に生息していた山ヤギは人類が5,000年前にこの島に到達してすぐに姿を消した。研究者の中にはそれが人類による狩りのせいだと考えるものもいたが、ヤギの化石化した糞の中の植物のDNA分析から、当時ヤギが低木の一種(Buxus balearica)に依存しており、その低木が4,000-5,000年前の乾燥化によって急速に減少していたことが示された。したがって、気候の変化がヤギの絶滅の原因だったと考えられる。

Mother frogs arm their tadpoles
母ガエルが子供を武装化する
Ecology http://doi.org/p59 (2013)
毒を持った生物の中には食料からその毒を創り出すものが多く知られているが、イチゴドクガエル(strawberry poison frog; Oophaga pumilio)は、無精卵を子に食べさせることで、アルカロイド系の物質を供給していることが明らかに。親はアルカロイドを蟻やダニなどから得ているらしい。他の種のカエルの無精卵で育てられた子ガエルは化学的な防御力が不足することも分かった。

Anatomy of an ice shelf’s demise
棚氷の消失の解剖学
Geophys. Res. Lett. http://doi. org/p6c (2013)
2012年3月の南極ラーセンB棚氷の急激な崩壊は数千の小さな氷河湖からの排水の急激な増加が原因だった可能性がある。南極半島には3,000個ほどの液体の水を擁する小さな湖があったが、崩壊の数日前に急速に姿を消した。モデルシミュレーションから、ある一つの湖の排水によって生じた割れ目が連鎖反応によって次々と他の湖の排水を促したことが再現された。

SEVEN DAYS
UN climate talks
国連の気候の話
11/23の国連気候サミットにて森林の保全に関するランドマーク的な同意が得られた。貧困国の気候変化の支出を助けるための’損失とダメージ’メカニズムも新たに創り出された。2015年のパリでの新たな気候条約のサインに向けた進展はほとんどなかったが、各国は2015年の始めには公約を公表することに同意している。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
UN climate talks conclude with a whimper, and a new forest policy
Jeff Tollefson

Science ship boost
科学調査船の後援
アメリカ科学財団は今後5年間にわたって、掘削船ジョイデス・レゾリューション号に対する2億5千万ドルの助成を獲得した。さらに国際パートナーシップによって8,750万ドルが得られる予定。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
US ocean drilling ship gets a new lease on life
Alexandra Witze

Eruption raises Japanese island
噴火が日本の島を生み出す
海底火山の噴火によって、日本の1,000km南の太平洋に新たな島ができた。日本列島を含む環太平洋造山帯は火山活動が非常に活発で、以前にも日本の近くに小さな島が出現したことがある(波で浸食されてしまった)。ちょっと前にはパキスタンの沖にも泥火山による島が出現した。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
小笠原諸島、西之島沖に“新島”

Solar sensor launch
太陽センサーの打ち上げ
Total Solar Irradiance Calibration Transfer Experiment (TCTE)が11/19にNASAによって打ち上げられた。太陽が気候に与える影響などを評価する。10年以上にわたって似たミッションを続けてきたSolar Radiation and Climate Experimentの仕事を引き継ぐ。

Swarm takes flight
群れが打ち上がる
ヨーロッパ宇宙局が地球の磁場観測を行うための3つの衛星を11/22に打ち上げた。これまでにない精度で磁場の時空間変動が観測される。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
ESA’s Swarm mission launches successfully
Quirin Schiermeier
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Mission to map Earth's magnetic field readies for take-off
Quirin Schiermeier

NEWS IN FOCUS
China aims for the Moon
中国が月を目指す
Alexandra Witze
中国による月の探査機の打ち上げ計画について。

China battles army of invaders
中国が外来種の軍隊と戦う
Jane Qiu

Nations fight back on ivory
国家が象牙を守る
Daniel Cressey
象牙の押収数が過去最大となったことを受け、政治家たちはアフリカの象の密猟への対処を始めた。

CORRESPONDENCE
Mitigate damage risk from bush fires
野火からのリスクを軽減せよ
Katharine Haynes, Deanne Bird & John McAneney

OBITUARY
George Herbig (1920–2013)
Bo Reipurth
若い星のパイオニア的研究を行った天文学者の哀悼

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Ecology: A leak in the loop
生態学:ループのほころび
Katharine N. Suding
Yelenik & D’Antonioの解説記事。
外来種のイネ科植物の侵入を受けている森林地帯では、正・負のフィードバックの性質がシフトすることが分かった。自然の生態系を管理することの複雑さが浮き彫りに。

Planetary science: A chunk of ancient Mars
惑星科学:古代火星のひとかけら
Harry Y. McSween
Humayun et al.の解説記事。
便宜上、NWA 7533という名が与えられた北西アフリカで見つかった隕石の解析から、これが火星のレゴリス(土壌)の初の試料であることが明らかに。これまで見つかった中で最古の、火成岩地殻に由来するものとなった。

Astrophysics: Exception tests the rules
宇宙物理学:例外が規則を検証する
K. D. Kuntz
Liu et al.の解説記事。
間欠的に明るくなるX線源の詳細な観測から、その放射が、以前に考えられていたように中程度の質量を持ったブラックホールへの質量降着からエネルギーを得ている可能性が低いことが示された。

LETTERS
Puzzling accretion onto a black hole in the ultraluminous X-ray source M 101 ULX-1
超高輝度X線源M 101 ULX-1におけるブラックホールへの不可解な降着
Ji-Feng Liu, Joel N. Bregman, Yu Bai, Stephen Justham & Paul Crowther
>Natureハイライト
降着がエネルギーを供給する超高輝度X線源

Origin and age of the earliest Martian crust from meteorite NWA 7533
NWA 7533隕石から明らかになる火星の最も初期の地殻の起源と年代
M. Humayun, A. Nemchin, B. Zanda, R. H. Hewins, M. Grange, A. Kennedy, J.-P. Lorand, C. Göpel, C. Fieni, S. Pont & D. Deldicque
NWA 7533隕石は火星のレゴリス起源である可能性がある。もしそうなら、火星ではその歴史の最初の1億年間に地殻が形成されたことになる。
>Natureハイライト
火星高地から来たことの「石のように硬い」証拠

Self-reinforcing impacts of plant invasions change over time
植物侵入の自己増強的な影響は時とともに変化する
Stephanie G. Yelenik & Carla M. D’Antonio
>Natureハイライト
侵入種の交代

新着論文(NCC#Dec 2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 12 (December 2013)
Editorial
On message
方針を遵守する
政治家や一般の人に気候科学の進展を正しく理解してもらうためにも、こうしたプロセスに社会科学者が活発に関与することが重要である。

Correspondence
Advanced flood risk analysis required
進展した洪水リスク分析が必要とされている
Sebastiaan N. Jonkman

Reply to 'Advanced flood risk analysis required'
'進展した洪水リスク分析が必要とされている'に対する返答
Stephane Hallegatte, Colin Green, Robert J. Nicholls & Jan Corfee-Morlot

Emissions from Amazonian dams
アマゾンのダムからの排出
Rafael M. Almeida, Nathan Barros, Jonathan J. Cole, Lars Tranvik & Fábio Roland

Commentaries
Challenges for New Zealand's carbon market
ニュージーランドの炭素市場の挑戦
Luis Mundaca & Jessika Luth Richter
ニュージーランドは環境政策に関してリーダー的立場として扱われることが多いが、その温室効果ガス排出量削減にはより多くの努力が必要である。

Carbon tax needs thresholds to reach its full potential
炭素税はそのすべてのポテンシャルを発揮するには閾値が必要
John C. V. Pezzey & Frank Jotzo
炭素税をかける際に、排出量全体に対してというよりは、まずはある固定された値との差分に対して行うことによって、より効果的な排出削減を行うことができる。

Snapshot
Public support
公共の支持
Bronwyn Wake

Interview
State of the science
科学の状態
今年9/27にIPCC第5次報告書が公表された。それにあたって報告書の作業部会の責任者も務めるThomas Stockerにインタビューを行った。

Market Watch
A Calderónian commission

Research Highlights
Types or traits?
タイプそれとも特性?
Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 18180–18184 (2013)
 気候変化に対する植物の応答を評価する際に、例えば草・低木などといった機能のタイプに基づいてシンプルな分類が行われることが多い。しかしながらこうした分類は植物の特性や機能をうまく考慮できていない。
 ロシアのCaucasus山にて行われた研究では、特に「葉の水利用に影響するような特性(葉の質量、土壌水分量など)」がもっとも温度上昇に対する種数の変化を予測するのに使えることが示された。

Historical ocean heat
歴史的な海洋の熱
Science 342, 617–621 (2013)
近年の温暖化は予測されていたものより小さいことが知られている。堆積物コアを用いて過去1万年間の太平洋の中層水の温度を推定した研究では、7,000年前から前の世紀まではおよそ2℃で温度が低下しつつあったが、最近では急速な温度上昇に転じていることが示された。人為起源の影響に対して海が応答した結果と考えられる。
>話題の論文
Pacific Ocean Heat Content During the Past 10,000 Years
過去1万年間の太平洋の熱容量
Yair Rosenthal, Braddock K. Linsley, and Delia W. Oppo
過去数十年間に海洋の熱容量が増加しているという観測事実は温暖化の重要な指標となっている。赤道西太平洋から得られた堆積物コア中の底性有孔虫Mg/Ca温度計を用いて温度・塩分復元を行ったところ、太平洋における過去1万年間(完新世)における北太平洋と南極の中層水(それぞれNPIWとAAIW)の温度は、完新世の再温暖期においては過去数100年間よりもそれぞれ2.1 ± 0.4 ℃、1.5 ± 0.4 ℃高かったことが示された。近年の中層水の温暖化は表層水のそれと比較するとそれほど大きくないが、熱容量には小さくない変化が生じつつある。

Translations matter
翻訳が問題になる
Climatic Change http://doi.org/pzb (2013)
IPCCによるリスク評価や誤差は確率密度に基づいた表現となっているが、非専門家がそれをどう解釈するかは異なる可能性がある。例えば’likely(可能性が高い)’といった表現が持つ確率は値が報告書の中で正確に定められているものの、人によって受け取り方はマチマチである。英語から異なる言語への翻訳もまた文化的な解釈の違いを生み出すこととなる。
 中国人とイギリス人とで表現だけでその表現の持つ確率がどれくらいかをアンケート調査したところ、IPCCのそれとは大きく違うことが示され、さらに中国人の方がより大きい範囲の解釈をする傾向があることが分かった。

Ending nuclear power
原子力を終わらせる
Clim. Policy http://doi.org/pzc (2013)
 福島第一原発の事故は原子力エネルギーに対する大きな社会的関心を生み出したが、原子力エネルギーの制限若しくは利用停止は気候政策のコストを増やすことに繋がる。全球のエネルギー・システム・モデルによる推計から、原子力エネルギーから完全に撤退した際の気候変化緩和策のコストが見積もられた。コペンハーゲンの合意を満たすための京都議定書アネックス1国のコストは2020年には28%増加することが示され、特に日本とアメリカが大きな影響を被ることが分かった。 

Natural aerosols
自然エアロゾル
Nature 503, 67–71 (2013)
 変化しつつある大気中のエアロゾルが雲の形成過程やそれに伴う放射強制力に与える影響はよく分かっていない。そうした不確実性が我々の温室効果ガス増加による気候感度の推定をも不確かなものとしている。
 全球エアロゾルモデルを用いた研究から、火山・海・バイオマス火災などからの自然エアロゾルがもたらす不確実性が1750年以降で45%を占めていることが分かった。人為起源の不確実性は34%を担うと推定された。これは産業革命以前の、純粋な大気の過程をより深く知る必要性を浮き彫りにしている。
>話題の論文
Large contribution of natural aerosols to uncertainty in indirect forcing
間接的強制力における不確実性に対する自然エアロゾルの大きな寄与
K. S. Carslaw, L. A. Lee, C. L. Reddington, K. J. Pringle, A. Rap, P. M. Forster, G. W. Mann, D. V. Spracklen, M. T. Woodhouse, L. A. Regayre & J. R. Pierce
人為起源エアロゾルを理解できればエアロゾルが気候に与える放射強制力をよりよく理解できると考えられてきた。しかしながら、エアロゾルが雲に与える放射強制力的な影響のうち半分は、人為ではなく自然エアロゾルによるものであることが示された。すなわち、現在の汚染された大気における’疑似’エアロゾルの測定や評価だけでは、真のエアロゾルの放射強制力の不確実性が必ずしも低減されないことを意味している。
>Nature ハイライト
気候強制力は自然起源と人為起源のエアロゾルのどちらが大きいか
>関連した記事(Nature#7474 "NEWS & VIEWS")
Climate science: Uncertain then, irrelevant now
気候科学:当時は不確かだったが、現在は的外れ
Bjorn Stevens
Carslaw et al.の解説記事。
気候へのエアロゾルがどれほど影響しているかの推定の不確実性は、過去の汚染されていない大気についての知識が不足していることに由来する。そのため影響の理解がさらに進んでも、気候の理解には従来考えられてきたほど役に立たないかもしれない。

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Research
News and Views
Local noise and global confidence
地域的なノイズと全球の確信度
Markus G. Donat
Fischer et al.の解説記事。
地域的な異常気象の変化の分析は、気候そのものの変動性の大きな不確実性によって影響されてしまう。より広い範囲を統合した新たな研究から、近未来の異常熱波と降水の強化が共通して見られることが示された。

Strategy conservation
戦略保全
Michael Dunlop
Johnston et al.の解説記事。
現在あるいくつかの保全戦略は、気候変化に応答して生物の生息域が移動してもなお、生物の安全を保証できるかもしれない。

Perspective
The role of short-lived climate pollutants in meeting temperature goals
温度の目標を達成するために短寿命の汚染物質が果たす役割
Niel H. A. Bowerman, David J. Frame, Chris Huntingford, Jason A. Lowe, Stephen M. Smith & Myles R. Allen
メタンやブラックカーボンといった、短寿命の気候汚染物質の排出を軽減するという初期の行動の重要性を議論。こうした物質の排出を減らすことが短期的には重要であるが、より長期的な気候変化の危険性を軽減するためには、同時にCO2を減らすことが差し迫って必要とされている。

Letters
Intra- and intergenerational discounting in the climate game
気候ゲームにおける世代内-世代間のディスカウント
Jennifer Jacquet, Kristin Hagel, Christoph Hauert, Jochem Marotzke, Torsten Röhl & Manfred Milinski

Water–CO2 trade-offs in electricity generation planning
発電計画における水-CO2トレードオフ
Mort Webster, Pearl Donohoo & Bryan Palmintier
CO2排出量が低下するほど発電に必要とされる水は増加すると予想されている。テキサスの電力網の拡大モデルによると、CO2排出量と水利用との間にトレード・オフが存在することが実証された。

Robust spatially aggregated projections of climate extremes
空間的に集約した気候異常の厳密な予測
E. M. Fischer, U. Beyerle & R. Knutti
気候の異常の予測には大きな不確実性がある。新たな研究から、不確実性は主として気候そのものの変動が原因であることが示された。しかしながら、地域間の平均を取ると、モデルの予測結果は一致することが示され、将来の異常気候の予測の厳密さが保証されることが示された。
>Nature関連誌 ハイライト
極端な気候の予測を確実なものとする方法

Hybridization may facilitate in situ survival of endemic species through periods of climate change
ハイブリッド化が気候変化時の固有種の生存を容易にするのかもしれない
Matthias Becker, Nicole Gruenheit, Mike Steel, Claudia Voelckel, Oliver Deusch, Peter B. Heenan, Patricia A. McLenachan, Olga Kardailsky, Jessica W. Leigh & Peter J. Lockhart
生物が気候変化の下で生き残れるかどうかを予測するには、適応の可能性がどれほどかを理解する必要がある。適応メカニズムの一端を担うハイブリッド化(hybridization)を評価した研究から、植物の一種(Pachycladon)は、ハイブリッド化によって遺伝情報を輸送することによって、最終氷期を生き延びたことが示された。

Digestion in sea urchin larvae impaired under ocean acidification
海洋酸性化の下ではウニの幼生の消化が悪化する
Meike Stumpp, Marian Hu, Isabel Casties, Reinhard Saborowski, Markus Bleich, Frank Melzner & Sam Dupont
生物の幼生は環境の変化に対して脆弱である。酸性化実験から、ウニの消化効率が低下することが示された。ウニの胃のpHはアルカリ性であり、酸性化でpHの低下が確認された。この減少は消化効率の低下とそれに伴う食事エネルギーの補強を意味する。これまでに見過ごされてきた側面の一つと思われる。

Articles
Attributing mortality from extreme temperatures to climate change in Stockholm, Sweden
スウェーデンのストックホルムにおける異常高温による死者は気候変化のせいと考えられる
Daniel Oudin Åström, Bertil Forsberg, Kristie L. Ebi & Joacim Rocklöv
異常気候が増加傾向にある。ストックホルムにおいて行われた調査から、1980-2009年の異常な暑さによる死亡率が、気候変化がない場合の2倍になっていた可能性が示唆。冬の気温は上昇傾向にあるものの、異常な寒波の頻度もわずかに増加しており、結果として冬季の死亡率もわずかに増加している。
>Nature関連誌 ハイライト
酷暑による死者の増加

Observed and predicted effects of climate change on species abundance in protected areas
気候変化が保護区の生物数に与える観察された、予想される影響
Alison Johnston et al.
生物の保護区の設定は気候変化に対しても効果的かどうかが問題とされている。ヨーロッパにおける鳥を対象にした研究から、多くの種で気候変化によって個体数が減少することが予測されたものの、EUが設定するイギリスの保護区の多くで保全の価値が維持されることが示された。

2013年11月25日月曜日

新着論文(Science#6161)

Science
VOL 342, ISSUE 6161, PAGES 901-1012 (22 NOVEMBER 2013)
Editors' Choice
Uptake Uptick
取り込みの急激な増加
Biogeosciences 10.5194/bg-10-6759-2013 (2013).
有孔虫の殻の元素の取り込みを評価するために飼育実験を行ったところ、Caと異なり、MgやSrは受動的なイオン輸送が大きく寄与していることが示された。
>話題の論文
A new model for biomineralization and trace-element signatures of Foraminifera tests
G. Nehrke, N. Keul, G. Langer, L. J. de Nooijer, J. Bijma, and A. Meibom
 有孔虫殻のMg/Caは過去の水温計として広く用いられている者の、炭酸塩の沈殿メカニズムはあまりよく分かっていない。従来考えられているメカニズムでは、カルシウムは海水から取り込まれていると考えられている。
 底性有孔虫Ammonia aomoriensisを44Caラベリングした海水で飼育し、NanoSIMSを用いて殻の元素比を測定した。カルシウムイオンは膜透過輸送(trans-membrane transport)を通して大部分が供給されていることが示された。

News of the Week
Climate Negotiators Pressed About Ocean Acidification
気候の協議者が海洋酸性化について強く主張する
ワルシャワにて行われている気候変動枠組み条約の会議の場において、研究者らは高い確信度で海洋酸性化が熱帯域のサンゴ礁を劣化させるであろうことを主張した。軟体動物や他の殻を持った生物もまた影響を受けるが、その経済損失を推定するのは困難である。二酸化炭素排出量を減らすことで海洋酸性化を止めることはできないが、少なくとも抑えることは可能であると報告している。
>より詳細な記事(ScienceShot)
Scientists Warn of Significant Harm From Ocean Acidification
科学者らは海洋酸性化によるかなりの害を警告している
>関連した記事(Nature#7476 “SEVEN DAYS”)
Acidic waters
酸性的な水
’the Ocean in a High-CO2 World’によるシンポジウムの報告書によると、海洋は前例のない速度で酸性化しており、それは人間にも悲惨な結果を与えると考えられている。将来多くの生物種が海に棲みにくくなると警告している。さらに海洋はCO2吸収能を次第に失い、気候変化を緩和する能力を失っていく。さらに、沿岸部の貝類の収穫量は減少し、サンゴ礁は失われるだろうと付け加えている。
>より詳細な記事(Nature News Blog)
Ocean acidification could trigger economic devastation
海洋酸性化が経済的破壊の引き金となるかもしれない
Daniel Cressey

News & Analysis
Humans Fueled Global Warming Millennia Ago
人類が千年前の地球温暖化を助けた
Richard A. Kerr
 氷期が終わり、間氷期に入る際に大気中のメタン濃度が増加したことが知られているが、その後完新世を通じて減少傾向にあった。それが5,000年前に増加に転じ、その理由はこれまでに説明できていなかった。
 西南極から得られたアイスコアの分析から、メタン濃度の増加のタイミングと、人類の米作の開始時期とが一致していることが示された。William Ruddimanらは、さらに8,000年前からCO2濃度が増加する理由が、古代人が農地用に森林を焼いたことが原因と仮説を立てている。2つの温室効果ガスの温暖化効果は全球を0.8℃暖めたと推定されている。このときの温暖化速度は過去100-200年間の温暖化の速度と同程度だという。

Letters
Atlantic Rainforest's Jaguars in Decline
大西洋熱帯雨林のジャガーが減少しつつある
Mauro Galetti et al.

Capping Progress on Invasive Species?
外来種に対する進展が頭打ちに?
C. Carboneras, P. Walton, and M. Vilà

Drilling Plans Endanger Yasuní's Biodiversity
掘削計画がYasuniの生物多様性を脅かす
Juan José Alava and Nastenka Calle

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Research
Reports
Imaging of a Circumsolar Dust Ring Near the Orbit of Venus
金星の軌道に近いダストの太陽軌道輪の画像化
M. H. Jones, D. Bewsher, and D. S. Brown
惑星の周囲にはダストの輪が存在することが期待されるが、これまで地球以外で直接確認されたものはない。STEREO計画による撮像から、金星の周囲にダストの輪が存在することが明らかに。2つの際立った密度に別れており、一つは金星の外側、もう一つは内側に位置している。

Constraints on the Late Holocene Anthropogenic Contribution to the Atmospheric Methane Budget
大気中のメタン収支に対する後期完新世の人類の寄与の制約
Logan Mitchell, Ed Brook, James E. Lee, Christo Buizert, and Todd Sowers
産業革命以前の大気中メタン濃度の変動が人為起源の影響を含むものか、或いは自然変動だけであるかが長く議論されている。グリーンランドと南極から得られた高時間解像度のアイスコア記録から、濃度の差を求めた。モデルを用いて放出減を特定したところ、特に熱帯域からの放出量が大きく、次いで北半球の亜熱帯域から放出されていた。両方の寄与がなければうまく説明がつかないことが分かった。

2013年11月24日日曜日

新着論文(Nature#7476)

Nature
Volume 503 Number 7476 pp311-432 (21 November 2013)

EDITORIALS
Climate negotiations soldier on

気候交渉が困難に持ちこたえる
ワルシャワにおいて行われている国連の気候変化に関する会議の中で、各国は排出削減に対して様々な態度を示している。日本は削減の約束を取り下げ、オーストラリアは自国の炭素税を無効にしようとしている。
[以下は抜粋]
Japan’s announcement was not entirely surprising, given the shutdown of its nuclear industry following the 2011 tsunami and the resulting nuclear disaster at Fukushima. At times it has been a struggle to keep the lights on. Regardless of the course that Japan ultimately takes with regard to nuclear power, however, the country cannot simply abdicate from its climate responsibilities. Whereas Japan had previously committed to reduce emissions to 25% below 1990 levels by 2020, its new commitment would allow emissions to rise by 3.1%. An analysis by an international team of scientists that produces the Climate Action Tracker suggests that Japan could still reduce emissions by at least 17% below 1990 levels if it simply replaced all the missing nuclear power with its current blend of fossil fuels. By this measure, Fukushima is more an excuse than a justification.

Collective action is needed, both to reduce global emissions and to reassure individual countries that their pain will not be in vain.

It should go without saying that an expansion of coal-fired power, regardless of efficiency, will not protect the climate unless coupled with —currently unavailable — technologies that enable carbon to be economically captured and buried.

Each of these cases reflects the serious challenges ahead, but there is also reason for hope. Carbon emissions fell in the United States and Europe again last year, and the rate of growth in China dropped sharply as well. Globally, carbon emissions increased by just 1.1% in 2012 compared with an average annual growth of nearly 3% over the past decade.

The temptation to abandon the effort and drift back into business-as-usual will always be there.

>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
石炭依存と環境保護に揺れるポーランド

The new zoo
新たな動物園
異議は続いているものの、新たな生物名の国際的な表記法が歓迎されようとしている。

Space spectacular
宇宙の壮大さ
Nature誌はめったに映画のレビューをしないが、それにしてもGravity(ゼロ・グラビティー)は本当に素晴らしい。

WORLD VIEW
Thrill of space exploration is a universal constant
宇宙探査のスリルはユニバーサルな定数だ
映画Gravity(ゼロ・グラビティー)の中でSandra Bullockは普通の女性を演じているが、Colin Macilwainに「いかに科学と発見が依然として知的好奇心に満ちたものであるか」を思い出させる。
※Colin Macilwainは国際科学政策に関するコラムをNature誌に定期的に掲載している。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Nutrient threat of seafood farms
魚介類牧場の栄養塩の脅威
Environ. Res. Lett. 8, 044026 (2013)
国連の世界の栽培漁業に関するデータの解析から、窒素やリンといった栄養塩類が沿岸部の栽培漁業から流出する量が見積もられた。ほとんどの栄養塩類は河川から流入しているが、近年栽培漁業からの栄養塩流出が増えているという。

Teeth nibble away at invasion theory
歯が侵入理論を少しずつ齧る
J. Arch. Sci. http://doi.org/p4j (2013)
5世紀のヨーロッパにおいてはアングロサクソン族が土着の人々を排したと考えられてきたが、古代人の歯の同位体分析によって彼らが何を食べていたかを明らかにした研究が、その侵入理論を脅かしている。その研究によれば、アングロサクソン族は次第に土地に馴染んでいったことが示唆される。

Fish babies bigger in toxic waters
魚の子供は毒された水の中では大きくなる
Ecol. Lett. http://doi.org/p5h (2013)
グッピーなどを含む9種の魚を対象にした実験から、硫黄の湧き水が魚の受精率には直接的には影響していないが、その代わりにより大きく、より少ない子孫を生むことに繋がっていることが示された。身体が大きいほど毒を体外に排出しやすいことが原因と考えられる。

SEVEN DAYS
Fukushima fuel
フクシマの燃料
東京電力は福島第一原発の燃料棒の取り出しを開始した。施設は地震では直接的にはダメージを受けなかったものの、落下物によって燃料棒を施設内に恒久的に保管することが不可能になったためである。

MAVEN launch
MAVENの打ち上げ
NASAの火星軌道周回衛星MAVENが11/18にケープ・カナベルから打ち上げられた。
>関連した記事(Nature#7475 “NEWS IN FOCUS”)
Mars mission set for launch
火星のミッションが打ち上げ準備に
Alexandra Witze
NASAのMAVEN探査機は火星にはもうほとんどない大気の謎を解き明かすことを目的としている。
>関連した記事(Science#6159 "News & Analysis")
Orbiting MAVEN Mission Set to Trace a Planet's History in Thin Martian Air
薄い火星の大気で惑星の過去を辿るためのMAVEN軌道ミッションが始まる
Yudhijit Bhattacharjee
今月末、NASAが火星に送ろうとしている探査機(MAVEN)は火星の大気を観測することにより、注意深く火星の数十億年間の歴史を紐解くことを目標としている。

Japan emissions
日本の排出
日本は温室効果ガスの排出に関する約束事を引き下げることを11/15に公表した。2020年までに1990年比で25%の削減を目標としていたが、新たな約束では2005年比で3.8%減としており、1990年の排出量よりも3.1%高い値となっている。
>関連した記事(Nature#7475 “Nature NEWS”)
Warsaw talks to thrash out UN climate roadmap
ワルシャワでの会合は国連の気候ロードマップを徹底的に議論する
Jeff Tollefson
排出削減のコストが2015年のパリ条約への道の引火点となるだろう。

Biofuel rules
バイオ燃料のルール
アメリカ合衆国環境保護庁は、現在の基準を満たすには技術的困難があるとして、バイオ燃料の使用に対する需要を減らすことを提案した。アメリカの公共輸送に占めるバイオ燃料の比率を2014年に9.2%にするという目標となった(2013年に9.74%と見込んでいた)。

Acidic waters
酸性的な水
’the Ocean in a High-CO2 World’によるシンポジウムの報告書によると、海洋は前例のない速度で酸性化しており、それは人間にも悲惨な結果を与えると考えられている。将来多くの生物種が海に棲みにくくなると警告している。さらに海洋はCO2吸収能を次第に失い、気候変化を緩和する能力を失っていく。さらに、沿岸部の貝類の収穫量は減少し、サンゴ礁は失われるだろうと付け加えている。
>より詳細な記事(Nature News Blog)
Ocean acidification could trigger economic devastation
海洋酸性化が経済破綻の引き金となるかもしれない
Daniel Cressey

Heat tracking
熱の追跡
世界気象機関が11/13に公表した報告書によると、1850年以来行われている全球の気候記録の中で、今年は7番目に暖かかった年になる道筋を辿っているらしい。
>より詳細な記事(Nature News Blog)
WMO: 2013 among the ten warmest years on record
Quirin Schiermeier
世界気象機関の報告書によると、今年の1〜9月の平均地表気温は、1961-1990年のそれよりも0.48℃高かった。このまま変な気温とならなければ、2013年の年平均地表気温は2001-2010年平均と同程度になる見込みであり、観測史上最も暑い10年間となる。またCO2換算した温室効果ガスの量、海水準上昇速度はともに観測史上もっとも高い値となっている。
[以下は抜粋]
Despite the slow-down in the rise of the average global temperature in recent years, nothing suggests that global warming might not continue, the WMO warns. The atmospheric concentration of heat-trapping greenhouse gases, which in 2012 reached a record high carbon dioxide equivalent of 476 parts per million, is expected to reach a new record high in 2013 and will likely climb further in the forthcoming years, says the report.

The global sea level, which currently rises by around 3 millimetres per year, has also reached a new record high.

>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
温室効果ガス、2012年は過去最高値

NEWS IN FOCUS
Budget crunch hits Keeling’s curves
予算の危機がキーリング曲線にぶち当たる
Jeff Tollefson
研究者らは、予算削減の状況下で、これまでで最も長い大気中の二酸化炭素濃度の観測と比較的最近始まった酸素濃度の観測を継続しようと苦心している。
[以下は抜粋]
The complement to the Keeling curve is Ralph Keeling’s atmospheric-oxygen record, which NOAA does not replicate. Keeling has documented a decrease in oxygen levels that is due to fossil-fuel combustion, which uses up oxygen and releases CO2. By accounting for both CO2 and oxygen levels in the atmosphere, scientists have calculated that oceans and plants each absorb roughly one-quarter of humanity’s CO2 emissions, leaving half to build up in the atmosphere.

Fences divide lion conservationists
フェンスがライオンの保全者を二分する
Traci Watson
囲い込みは保護になるという人もいれば、脅威になると主張する人もいる。

Haiyan prompts risk research
ハイエンがリスク研究を誘発する
Sarah Zhang
ハイエン(Hyan; 台風30号)による甚大な被害に対して、地質学者・技術者・社会学者は町の再建が始まる前に、現地入りする準備ができている。

Astronomers call for X-ray polarimeter
天文学者はX線旋光計を必要としている
Eugenie Samuel Reich
パルサーやブラックホールから放出される光の方向を観測するためのNASAの観測計画が始まる。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Extrasolar planets: An infernal Earth
太陽系外惑星:地獄の地球
Drake Deming
Pepe et al.とHoward et al.の解説記事。
太陽に似た星の半径のわずか2倍のところを周回する地球と同程度のサイズの系外惑星Kepler-78bは地獄の環境である。しかし、その存在が観測されたことは、生命存在可能な惑星の発見と特定への前触れとなるかもしれない。
>関連した記事(Science# “News of the Week”)
Most Earth-Like Exoplanet Yet
これまででもっとも地球に似た系外惑星
これまでにケプラー宇宙望遠鏡が発見してきた系外惑星は、地球とはほど遠い巨大ガス惑星などがほとんどであったが、最近発見されたKepler-78bはこれまでで最もサイズと組成が地球に類似している。地上望遠鏡からさらにKepler-78bについて観測を行ったところ、惑星の質量は80%、半径は20%地球よりも大きいことが示された。密度は地球とほぼ同じであり、岩石と鉄から成っていると想像される。ただし、軌道があまりに恒星に近いため、地球の’双子’というよりは、熱い’いとこ’といったところかもしれない。
>Natureハイライト
地球に似ているが、暑過ぎる

Biogeochemistry: Conduits of the carbon cycle
生物地球化学:炭素循環の導線
Bernhard Wehrli
Raymond et al.の解説記事。
全球の河川のCO2排出に関する統括的な解析から、排出量が従来考えられていたよりもかなり大きいことが明らかに。

Climate science: The challenge of hot drought
気候科学:暑い干ばつの課題
Jonathan T. Overpeck
過去1,000年間の北米大陸における干ばつの変動は、広い範囲の干ばつが数年間継続することは稀であることを示している。そうした気候状態に対処する能力について考える必要性に迫られている。
>話題の論文
Pan-continental droughts in North America over the last millennium
Benjamin I. Cook, Jason E. Smerdon, Richard Seager, Edward R. Cook

ARTICLES
Global carbon dioxide emissions from inland waters
陸水からの全球の二酸化炭素排出
Peter A. Raymond, Jens Hartmann, Ronny Lauerwald, Sebastian Sobek, Cory McDonald, Mark Hoover, David Butman, Robert Striegl, Emilio Mayorga, Christoph Humborg, Pirkko Kortelainen, Hans Dürr, Michel Meybeck, Philippe Ciais & Peter Guth
 全球の炭素循環のうち、地表水から大気へのCO2の輸送は重要な役割を担っている。しかし、水の表面積とガス輸送速度の見積もりの推定に枠組みが存在しないこと、データベースの不足などが原因で、推定はこれまで難しかった。
 小川や河川からのCO2の排出量が年間1.8PgC、湖などの滞留している水からの排出量が年間0.32PgCと推定される。合計年間2.1PgCという数値はこれまでの推定値よりもはるかに高い。排出にはホットスポットが存在し、地表面積のわずか20%で70%の排出が生じている。地域ごとの排出のメカニズムについては分からないことが依然多く、今後の研究が待たれる。
>Natureハイライト
陸水からの二酸化炭素輸送

LETTERS
An Earth-sized planet with an Earth-like density
地球様の密度を持った地球サイズの惑星
Francesco Pepe et al.

A rocky composition for an Earth-sized exoplanet
地球サイズの系外惑星の岩石的な組成
Andrew W. Howard et al.

2013年11月22日金曜日

新着論文(NCC#Nov 2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 11 (November 2013)

Editorial
Adapting to a changing climate
変化する気候に適応する
気候変化の影響に対処することは何もせずにすべてを受け止め苦しむことよりもマシである。しかしながら、どの程度そうすべきなのだろうか?

Correspondence
Observational challenges in evaluating climate models
気候モデルを評価するための観測的な課題
Mat Collins, Krishna AchutaRao, Karumuri Ashok, Satyendra Bhandari, Ashis K. Mitra, Satya Prakash, Rohit Srivastava & Andrew Turner

Prudence on solar climate engineering
太陽気候工学に対する慎重さ
Ken Caldeira & Katharine L. Ricke
太陽放射管理(SRM)に関する野外実験は歓迎すべきかもしれないが、それを行う上では定義や目的が曖昧になってはならない。

Beyond vulnerability assessment
脆弱さの評価の先
Rob Swart, Sabine Fuss, Michael Obersteiner, Paolo Ruti, Claas Teichmann & Robert Vautard

Commentaries
Private-sector adaptation to climate risk
気候リスクに対する私的セクターの適応
Swenja Surminski
小さいながらも、ますます多くの企業が気候変化のリスクを評価しつつある。しかしながら、特に発展途上国において、私的な適応努力(private-sector adaptation efforts)にはさまざまな障壁がある。

Flooding the market
市場に殺到する
Diane Horn & Michael McShane
イギリスにおける洪水に対する保険と気候変化に対する適応に関して。

Loss and damage
損失とダメージ
Saleemul Huq, Erin Roberts & Adrian Fenton
「損失とダメージ」は気候変化アジェンダにおいては比較的新しい考えである。それには今ある緩和・適応策を再度活性化させられる可能性があるが、究極的には発展途上国からのリーダーシップが必要となり、また「適応策の限界」といったいくつかの重要課題に対する理解の助けとなるかもしれない。

Feature
Rain from space
宇宙からの雨
Bronwyn Wake
NASAとJAXAが共同で、人工衛星を用いて全球の降水をモニタリングする計画(Global Precipitation Measurement; GPM)が来年始まろうとしている。全球を観測するためには従来の赤外線を用いた雲の上面の温度測定ではダメで、マイクロ波による放射の測定が適している。

Policy Watch
A business case for green fuels
グリーンな燃料に対するビジネス・ケース
発電セクターにおける天然ガス・シェールガスの成功と異なり、石油メインの輸送セクターは気候政策決定者の頭を悩ませている最大の問題である。「輸送だけを見てみても、さまざまなタイプの燃料が現れつつあること事態が問題である」と、Sonja van Renssenは説明する。

Research Highlights
Ecosystem transformation
生態系の変革
Earth Syst. Dynam. 4, 347–357 (2013)
 気候変化は生態系を根本から変革させる可能性を秘めており、それは人類に対する食料や水といった生態系サービスにも影響することを意味する。どれほどの変化が予測されるかを知ることは我々が「どれほどの緩和策を必要とするのか」や「どれほどの適応が必要とされるのか」といった判断にも影響する。
 全球の温度が1.5-5.0℃上昇した場合の生態系の変化と、その影響を評価した研究から、2℃の温暖化以下に抑えられなければ、陸上の5分の1の生態系は根本から変化することが示された。

Climate policy benefits
気候政策の恩恵
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/n7p (2013)
気候変化緩和策がとられ、大気中の温室効果ガス濃度が低下しても、それが地表気温の低下にまで繋がるにはある程度の時間的ラグがあると期待される。モデルシミュレーションから、RCP2.6シナリオの温室効果ガスを最も排出しないシナリオであったとしても、少なくとも25年間は目に見えて地表気温は低下せず、地域によってはそれよりも長くなることが示された。大気中CO2濃度自体は緩和策から10年間で目に見えて減少すると思われる。
>話題の論文
Delayed detection of climate mitigation benefits due to climate inertia and variability
Claudia Tebaldi and Pierre Friedlingstein
気候変化の緩和や或いは逆転が議論されているが、人為的な放射強制力を減少させたとしても、気候や炭素循環の慣性によって、すぐには効果が目に見える可能性は低い。地球システムモデルを用いて様々なシナリオのもとでそうした効果が見え始める年代を推定。RCP2.6シナリオの場合、排出ピークを越してから25-30年後であることが示された。

Boundary agency
境界機関
J. Environ. Sci. Policy http://doi.org/n7j (2013)
クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)は多く排出する新興国(中国やブラジル)には恩恵が大きいが、あまり発展していない国々(カンボジア・ボリビア・ウガンダなど)には恩恵が小さい。国連環境計画の一環で行われたデンマークRisø Centreにおける成功例の分析結果について。

Ice retreat
氷の後退
Cryosphere 7, 1565–1577 (2013)
世界中のほとんどの氷河と氷帽は温暖化の結果後退している。1971-2010年の観測記録から、全球の積雪面積比(Accumulation-area ratio)を求めたところ、氷河量は以前言われていたような、平衡状態には到底ないことが示された。氷河に関しては、気候が現在の状態で維持された場合、32±12%の面積が、38%±16%の体積が失われると予測された。特に未開の地で、より多くの観測が行われることで、誤差は小さくなると思われる。

Forest flattening
森林が平らに
Proc. R. Soc. B 280, 20131581 (2013)
通常気候の変化というと緯度や高度に関する変化が思い浮かぶが、熱帯雨林の高い木々においては、高さ方向の変化もまた、温度プロファイルや種組成に影響している。フィリピンとシンガポールにおけるカエルの調査から、高度が増してより寒くなるのを補うために、木々の上の方に移動していることが見いだされた。この結果は、気候変化を補うために、高度・緯度方向の変化以外にも高さ方向の変化によっても生物が適応する可能性を物語っている。熱帯雨林で温暖化が生じると、生物がより地面に集中することで生態系がより’平らに’なり、生態系機能や種の存続に影響する可能性があることを暗示している。

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Research
News and Views
Some phytoplankton like it hot
植物プランクトンの中には暑いのを好むものもいる
Jack A. Gilbert
A. Toseland et al.の解説記事。
海洋の一次生産を担う植物プランクトンは温度に対しても敏感である。海水温を上昇させた実験から、どのようにして細胞が応答するかの知見が得られた。

Big data insights into pest spread
巨大データが害虫の蔓延に関する知見を与える
Karen A. Garrett
Daniel P. Bebber et al.の解説記事。
害虫と病気は農業生産を減らすという点で、さらに将来の気候影響を考える上でも重要なテーマである。それらのユニークな全球記録から、その分布が次第に極側に移動しつつあることの証拠が得られた。

Bottom up in the tropics
熱帯におけるボトムアップ
Qiang Fu
新たな研究から、インド・太平洋暖水域(Indo-Pacific warm pool)における地表付近の過去30年間の温暖化が、対流圏界面付近の寒冷化を招いていることが明らかに。太平洋の東部や中部にはあまり顕著に見られず、西部にのみ顕著に見られるらしい。成層圏に入る水蒸気量が低下することに繋がる(全球のわずかな寒冷化に繋がる)。さらに成層圏を介した全球物質循環(ブリューワー・ドブソン循環)や赤道の惑星規模波動にも影響すると思われる。
>話題の論文
Temperature trends in the tropical upper troposphere and lower stratosphere: Connections with sea surface temperatures and implications for water vapor and ozone
C. I. Garfinkel, D. W. Waugh, L. D. Oman, L. Wang, M. M. Hurwitz
J. Geophys. Res. (2013)

The complexity of climate justice
気候の正義の複雑さ
Benjamin K. Sovacool
気候変化がそれに脆弱なコミュニティーに与える影響が、「誰が対処に協力するのか・どうやって極力するのか」などといった道徳上の関心を生み出している。新たな研究は、平等で恩恵のある解決は可能だが、それには常にリスクが伴うことを示唆している。
>話題の論文
Local level climate justice? Adaptation finance and vulnerability reduction
Sam Barrett
Global Environmental Change (in press)

Review
The role of coastal plant communities for climate change mitigation and adaptation
気候変化緩和・適応に対する沿岸部の植物群集の役割
Carlos M. Duarte, Iñigo J. Losada, Iris E. Hendriks, Inés Mazarrasa & Núria Marbà
海洋沿岸部の植物コミュニティーは海洋表層面積のほんのわずかしか占めていないにもかかわらず、海洋堆積物に保存される炭素の50%を担っている。「そうした沿岸部植物群集を保護・保全することの恩恵」、「沿岸保護や気候変化緩和のための利用」などをレビュー。

Letters
Challenges in quantifying Pliocene terrestrial warming revealed by data–model discord
データとモデルの不一致に示される鮮新世の陸域の温暖化を定量化することの課題
Ulrich Salzmann, Aisling M. Dolan, Alan M. Haywood, Wing-Le Chan, Jochen Voss, Daniel J. Hill, Ayako Abe-Ouchi, Bette Otto-Bliesner, Frances J. Bragg, Mark A. Chandler, Camille Contoux, Harry J. Dowsett, Anne Jost, Youichi Kamae, Gerrit Lohmann, Daniel J. Lunt, Steven J. Pickering, Matthew J. Pound, Gilles Ramstein, Nan A. Rosenbloom, Linda Sohl, Christian Stepanek, Hiroaki Ueda & Zhongshi Zhang
鮮新世のプロキシに基づいた温度復元や種組成に基づいた温度復元結果を8つの気候モデルがシミュレートできているかどうかを評価。モデルは北半球を過度に寒く見積もっていることが示された。感度実験から、モデルとプロキシとの時間軸の違いが浮き彫りに。

Global warming amplified by reduced sulphur fluxes as a result of ocean acidification
海洋酸性化の結果として減少した硫黄のフラックスによって増幅される地球温暖化
Katharina D. Six, Silvia Kloster, Tatiana Ilyina, Stephen D. Archer, Kai Zhang & Ernst Maier-Reimer
地球システムモデルを用いたシミュレーションから、海洋酸性化が海洋からのDMS生産に与える影響を評価。メソコスモ実験による結果をパラメタリゼーションに利用。全球的なDMS生産量は2100年には産業革命前のレベルに比べておよそ18±3%減少すると思われる。それに伴う放射強制力の変化は、うち83%が海洋酸性化によるものであり、温度に換算して0.23-0.48℃の温度上昇に相当するものである。
>Nature姉妹紙 ハイライト
海洋の酸性化による気候温暖化の促進

The impact of temperature on marine phytoplankton resource allocation and metabolism
温度が海洋植物プランクトンの資源分配と代謝に与える影響
A. Toseland, S. J. Daines, J. R. Clark, A. Kirkham, J. Strauss, C. Uhlig, T. M. Lenton, K. Valentin, G. A. Pearson, V. Moulton & T. Mock
温度が海洋植物プランクトンの成長戦略・代謝・組成に与える影響を評価。生物の資源分配や、植物プランクトンの元素比に与える、これまで認識されていなかった効果が明らかとなった。生物地球化学的循環にも影響すると思われる。
>Nature姉妹紙 ハイライト
プランクトンの代謝に対する海洋温度の影響

Crop pests and pathogens move polewards in a warming world
温暖化した世界では作物害虫と感染症が極側に移動する
Daniel P. Bebber, Mark A. T. Ramotowski & Sarah J. Gurr
新たな研究から、1960年以降、農作物に対する数百種の害虫と感染症が年間2.7kmの速度で極側に移動していることが分かった。気候変化に伴いそれらの緯度範囲が変化するという仮説を裏付けている。
>Nature姉妹紙 ハイライト
極地へ向かう作物害虫

Mapping vulnerability and conservation adaptation strategies under climate change
気候変化下における脆弱性と保全適応戦略をマッピングする
James E. M. Watson, Takuya Iwamura & Nathalie Butt
生態的な損失を最小化するためにも、気候変化が与える影響のリスクマップは大変有用である。新たな研究から、気候変化に対する全球的な生態系の脆弱度が明らかに。
>Nature姉妹紙 ハイライト
世界の生態地域の気候変動に対する脆弱性マップ

Article
Sensitivities of extant animal taxa to ocean acidification
海洋酸性化に対する残存する動物種の感度
Astrid C. Wittmann & Hans-O. Pörtner
 海洋酸性化が海洋生態系(やそれに依存する人類)に与える影響の評価には不確実性が大きい。5つの動物分類(サンゴ、棘皮動物、軟体動物、甲殻類、魚類)に対して、将来の脆弱性を評価した。
 RCP8.5の排出シナリオ(2100年でCO2濃度936ppm)のもとでは、サンゴ、棘皮動物、軟体動物は甲殻類よりも敏感であることが示された。また魚類の幼生はときおり単純な無脊椎動物よりも敏感であることが示されたが、種ごとの感度はよく分からない。
 種間・種内でさまざまな応答を示すことが、メソコスモ実験や過去の環境擾乱などから分かっている。今世紀内には、海洋酸性化が海洋生態系に大きな変化をもたらすと思われ、おそらく長期的には種の組成の変化にまで繋がると考えられる。
>Nature姉妹紙 ハイライト
海洋は住みにくくなる

2013年11月17日日曜日

新着論文(Ngeo#Nov2013)

Nature Geoscience
November 2013 (Volume 6 No 11 pp891-986)

Focus “Economic geology”
フォーカス:経済地質学
>Nature姉妹紙 ハイライト
巨大鉱床の生成

Editorial
Expanding boundaries of exploration <Focus>
探査の範囲を拡大する
新たな鉱物資源の探査は、海よりも先に土壌が優先?

Commentaries
Road map to mineral supply <Focus>
鉱物供給のロードマップ
Richard Herrington

Metals for a low-carbon society <Focus>
低炭素社会のための金属
Olivier Vidal, Bruno Goffé & Nicholas Arndt
再生可能エネルギーにはより多くのエネルギーを抽出に要する金属でできたインフラが必要とされる。より多くの採掘は必要不可欠であるが、その一方でリサイクルを増強し、新たなハイテク装置の代替物と注意深いデザインが増え続ける需要に応えるために必要とされている。

The phosphorus trilemma <Focus>
リンの悩ましい選択
Michael Obersteiner, Josep Peñuelas, Philippe Ciais, Marijn van der Velde & Ivan A. Janssens

In the press
Tilting at Europa
エウロパに対する非難
Emily Lakdawalla

Research Highlights
Shaky caldera
揺れやすいカルデラ
J.Geophys. Res. 118, 4872–4886 (2013)
2010年のイエローストーン国立公園における地盤沈下とそれに続く地震の観測について。

Cloudy Mars
曇った火星
J.Geophys. Res. 118, 1945–1954 (2013).
火星の大気の雲の形成プロセスが地球のそれとは似ても似つかないことに関して。

Nutrients in the wind
風の中の栄養塩
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/n94 (2013)
2.8kaに大気循環が大きく変化したこと、雨の供給量が変化したことが、フロリダの大湿地帯の環境を大きく変えたことが堆積物から明らかに。
>関連した記事(Science#6160 “Editors' Choice”)
Jet Transport
ジェット輸送
フロリダに位置するエヴァグレーズ湿地帯の維持にサハラ砂漠からもたらされるダストが大きな役割を持っていた可能性が、湿地の堆積物コアから明らかに。4.6kaの古環境復元によると、熱帯低気圧の頻度とも関連して、ダストの供給量が過去に大きく変動し、湿地帯の植生、水位、栄養塩供給量などに影響していたらしい。
>話題の論文
Holocene dynamics of the Florida Everglades with respect to climate, dustfall, and tropical storms
Paul H. Glaser, Barbara C. S. Hansen, Joe J. Donovan, Thomas J. Givnish, Craig A. Stricker, and John C. Volin

Physical flux
物理的なフラックス
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/pbx (2013)
 海氷のプロセスを組み込んだモデルシミュレーションから、産業革命以前には、海における表層から深層への炭素輸送は「物理的な過程(移流など)」が「(有機物埋没などの)他の過程」を凌いでいたことが示された。海洋の炭素循環に物理的な輸送が非常に重要であることを物語っている。
 物理的なフラックスの内訳は、溶存無機炭素の場合、混合層を出るものが264.5Pg/yr、入るものが275.5PgC/yrであった。有機炭素の場合、出るものが2.1PgCであった。
>話題の論文
Physical pathways for carbon transfers between the surface mixed layer and the ocean interior
M. Levy, L. Bopp, P. Karleskind, L. Resplandy, C. Ethe, F. Pinsard

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Research
News and Views
Rainfall's oceanic underpinnings
降水の海洋基盤
John Fasullo
Frierson et al.の解説記事。
降水の複雑なプロセスを理解することは重要である。数値シミュレーションから、海洋の熱輸送が降水の空間構造を大きく支配している可能性が示唆。

Magma giant
巨大マグマ
Gabriele Uenzelmann-Neben
Sager et al.の解説記事。
太平洋北西部に位置するシャツキー海台は、単一の巨大火山の繰り返しによって形成された可能性が示唆。

Biodiversity-dominated feedback
生物多様性に支配されたフィードバック
Stefan C. Dekker
Claussen et al.の解説記事。
5.5kaにアフリカのサハラ地域はサバンナ気候から砂漠気候へとシフトした。モデルシミュレーションから、それは植物の多様性に影響された、気候-植生フィードバックによってコントロールされていたことが示唆。

Perspective
Continental-root control on the genesis of magmatic ore deposits <Focus>
大陸の根がマグマ的な鉱床の発生に与える影響
W. L. Griffin, G. C. Begg & Suzanne Y. O'Reilly
巨大鉱床の中にはマグマから形成されたものもあるが、その正確な形成要因はよく分かっていない。ダイアモンド・プラチナ族・金鉱床の形成メカニズムに亜大陸的なリソスフェア的マントルの構造と組成が重要な役割を負っていることが示唆。

Progress Article
Giant ore deposits formed by optimal alignments and combinations of geological processes <Focus>
最適な整列と地質学プロセスの組み合わせによって形成される巨大鉱床
Jeremy P. Richards
世界の巨大な鉱床を形成する、斑岩(porphyry)と浅熱水性堆積物(epithermal deposits)の特性をレビュー。

Review
Triggers for the formation of porphyry ore deposits in magmatic arcs <Focus>
マグマ島弧における斑岩鉱床の形成のトリガー
Jamie J. Wilkinson
人間が利用する銅・モリブデン・金・銀のほとんどが斑岩鉱床(porphyry ore deposits)からきている。斑岩鉱床の形成プロセスをレビュー。

Letters
Experimental evidence for a phase transition in magnesium oxide at exoplanet pressures
系外惑星の圧力におけるマグネシウム酸化物の相転移の実験的な証拠
F. Coppari, R. F. Smith, J. H. Eggert, J. Wang, J. R. Rygg, A. Lazicki, J. A. Hawreliak, G. W. Collins & T. S Duffy
内圧が1,000GPaもの太陽系外のスーパー・アースのマントルの構造や組成はよく分かっていない。地球のマントルの主成分であるマグネシウム酸化物の高温高圧実験から相転移を観測。

Transport-driven formation of a polar ozone layer on Mars
輸送によって駆動される火星の極のオゾン層の形成
Franck Montmessin & Franck Lefèvre
Mars Expressによる大気のスペクトル観測から、火星の南極には夜間にオゾン層が形成されることが示されている。観測と気候モデルから、「酸素の極側輸送」と「水素ラジカルの季節的な変化」とでうまく説明ができることが示された。

Link between Antarctic ozone depletion and summer warming over southern Africa
南極のオゾン低下とアフリカ南部におよぶ夏の温暖化とのリンク
Desmond Manatsa, Yushi Morioka, Swadhin K. Behera, Toshi Yamagata & Caxton H. Matarira
近年のアフリカ南部の温暖化は人為起源の温室効果ガスの増加が原因と考えられてきた。過去40年間の気候データの解析から、それが南極オゾン層の低下による、南半球の循環の変化と関連していることが示唆。
>関連した記事(Nature#4771 “RESEARCH HIGHLIGHTS”)
Ozone hole fans African heat
オゾンホールがアフリカを煽って熱くする
1993年のオゾン層の低下前後のアフリカ南部の気候状態を調べたところ、地表の熱波と大気循環との間に強い相関が認められた。おそらく気圧配置の変化が熱帯の熱をより南へと運んだことが原因と考えられる。2050年にオゾンホールが消滅すれば、地球温暖化を軽減する効果があると期待されている。
>より詳細な記事(Nature News)
Ozone loss warmed southern Africa
オゾンの低下がアフリカ南部を暖める
Hannah Hoag
>Nature姉妹誌 ハイライト
オゾン損失により影響を受けるアフリカの温暖化

Contribution of ocean overturning circulation to tropical rainfall peak in the Northern Hemisphere
海洋子午面循環の北半球熱帯域の降水ピークに対する寄与
Dargan M. W. Frierson, Yen-Ting Hwang, Neven S. Fučkar, Richard Seager, Sarah M. Kang, Aaron Donohoe, Elizabeth A. Maroon, Xiaojuan Liu & David S. Battisti
熱帯域では、赤道のやや北に降水が最も多い場所がある(熱帯収束帯:ITCZ)。衛星観測記録・再解析データ・気候モデルなどを組み合わせることで、海洋の子午面循環が降水バンドに影響していることが示唆。
>Nature姉妹紙 ハイライト
熱帯降雨分布を支配する海洋の熱

Evidence from ice shelves for channelized meltwater flow beneath the Antarctic Ice Sheet
南極氷床の下のチャネル化した融水の流れの棚氷からの証拠
Anne M. Le Brocq, Neil Ross, Jennifer A. Griggs, Robert G. Bingham, Hugh F. J. Corr, Fausto Ferraccioli, Adrian Jenkins, Tom A. Jordan, Antony J. Payne, David M. Rippin & Martin J. Siegert
南極氷床の底には融水の流れが存在するが、その性質や分布はよく分かっていない。リモセンによる観測から、西南極のFilchner–Ronne棚氷の下に永続的なチャネル化した特徴があることが明らかに。
>Nature姉妹紙 ハイライト
南極氷流の下にある融解水の水路

A weak El Niño/Southern Oscillation with delayed seasonal growth around 4,300 years ago
およそ4,300年前に弱かったENSOとそれに伴う遅れた季節成長
H. V. McGregor, M. J. Fischer, M. K. Gagan, D. Fink, S. J. Phipps, H. Wong & C. D. Woodroffe
古気候記録から、完新世中期にはENSOの変動が現在よりも小さくなっていたことが示唆されているが、そのメカニズムはよく分かっていない。NINO3.4地域から得られたハマサンゴの175年間のδ18Oの変動と周期解析から、4.3kaにENSOが弱まっており、それには日射量が重要な役割を負っていた可能性が示唆。

Simulated climate–vegetation interaction in semi-arid regions affected by plant diversity
植物の多様性によって影響される半乾燥地域の気候-植生のシミュレートされた相互作用
M. Claussen, S. Bathiany, V. Brovkin & T. Kleinen
およそ6kaのアフリカ湿潤期の終焉は植生の変化と降水量の低下を伴っていた。モデリングから、植生-気候フィードバックは植物のタイプと多様性に依存していたことが示唆。
>Nature姉妹紙 ハイライト
植物多様性が変化を遅らせる

Meridional shifts of the Atlantic intertropical convergence zone since the Last Glacial Maximum
最終氷期以降の大西洋の熱帯収束帯の緯度方向のシフト
Jennifer A. Arbuszewski, Peter B. deMenocal, Caroline Cléroux, Louisa Bradtmiller & Alan Mix
 熱帯収束帯(ITCZ)は最終氷期以降も冷たい半球から遠ざかるように、その位置を南北に変動させてきたことが知られている。さらにそれは各海盆で同じように変動したと考えられているものの、証拠はそれほど多くない。
 大西洋から得られた堆積物コア中の浮遊性有孔虫Mg/Caとδ18Oから、過去25kaの表層温度と塩分を復元。ITCZは拡大したというよりは、LGMには南側に、完新世初期には北側にその位置を変化させていたと考えられる(南北7ºの位置)。

Hidden hotspot track beneath the eastern United States
アメリカ東部の下に隠れたホットスポットの軌跡
Risheng Chu, Wei Leng, Don V. Helmberger & Michael Gurnis
リソスフェアは非常に厚いため、ホットスポットの軌跡としても知られる、マントル・プリュームの大陸表面への露出が確認されることは稀である。アメリカの地震波データの解析から、ミズーリ州からヴァージニア州にかけて、隠れたホットスポット軌跡が見つかった。
>Nature姉妹紙 ハイライト
アメリカの地下のホットスポット軌跡

Ephemeral isopycnicity of cratonic mantle keels
David W. Eaton & H. K. Claire Perry

Formation of an interconnected network of iron melt at Earth’s lower mantle conditions
Crystal Y. Shi, Li Zhang, Wenge Yang, Yijin Liu, Junyue Wang, Yue Meng, Joy C. Andrews & Wendy L. Mao

Articles
An immense shield volcano within the Shatsky Rise oceanic plateau, northwest Pacific Ocean
William W. Sager, Jinchang Zhang, Jun Korenaga, Takashi Sano, Anthony A. P. Koppers, Mike Widdowson & John J. Mahoney
>Nature姉妹紙 ハイライト
太平洋の巨大火山
>関連した記事(Nature#7566 “RESEARCH HIGHLIGHTS”)
Meet the world’s largest volcano
世界最大の火山に出くわす
太平洋北西部において、単一の火山としては世界最大で、火星のオリンポス山に匹敵するほどの巨大海底火山が発見された。Texas A & M大学にちなんでTamu山塊と名付けられたこの火山は、日本から1,500km東に位置する、シャツキー海台の一部である。地震波探査から、一つの火口から噴出したと思われる溶岩の構造が確認された。1億4,000万年前頃のものと考えられている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Underwater volcano is Earth's biggest
Alexandra Witze
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
太平洋の海底で世界最大の火山を発見か

Helium in Earth’s early core
地球の初期のコアのヘリウム
M. A. Bouhifd, Andrew P. Jephcoat, Veronika S. Heber & Simon P. Kelley

2013年11月16日土曜日

興味深い英語表現(No. 1)


特殊な英語表現や英単語のメモです。
これまで科学英単語などのように辞典形式にまとめていましたが、これからは名言・格言集のようにある程度まとまったら記事として公開する形式にしたいと思います。

「いろいろと面白い表現があるもんだな〜」と感心したものなどの紹介です。順番は適当にしようと思います。

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add insult to injury
(すでに侮辱被害を受けた人を)さらに傷つける、「踏んだりけったり」にする

「傷に塩をすり込む」という日本語の表現そのまま。

get the word out
口に出す

only go so far ~ing
〜するのにあまり大したことはない・できない
「能力・力・物事の限界」を表す言い方で、「まあ良くてもせいぜいその位だろう・その程度までで頭打ちだろう・大したところまでは行かないだろう」といったニュアンス。
[English Room 411]

  ・Let's be clear
はっきりさせておこう

one school of thought
考え[意見]を同じくする人々、学派、流派
ちなみに「魚の群れ」は「a school of fish」ですよね。

・rangeland
放牧地

・test the waters
予備調査を行う

tread a fine line
; be in a difficult or dangerous situation where you could easily make a mistake
困難や危険な立場に自らを置くこと
[NAVER 英語辞書]

the very same
まったく同じ
×very the same
c.f. the very best; 最善、for one's very first time; 生まれて初めて

where with all = wherewithal
〈…する〉(必要な)手段 〈to do〉; (特に)金.
[Weblio辞書]
こういう連語を繋げたような表現も多く見受けられるので、そのうち紹介することになるかと。

have a night cap
寝酒を飲む 
実用的かもしれない表現ということでピックアップ。

・ remove earwax with a Q-tip
綿棒で耳垢を取る
海外ではQ-tipという綿棒のブランドが有名ということで、これで通じるらしい。

a stuffed toy
ぬいぐるみ
スタフド・オリーブみたいなニュアンスで綿を詰めたという感じが面白い。

earthling
地球人、人間
(SF小説の中で, 地球外生物が地球の人間について言及するときによく用いられる言葉)

have too much time to kill
暇を持て余す


keep one's head
少しも慌てない、心の平静を保つ、うろたえない、狼狽しない


bite the hand that feeds one
飼い主の手を噛む、恩を仇で返す


dwarf
[v] 小さく見せる

名詞だけでなく、動詞もあるのですね。

chest of drawers
たんす

chestには胸以外にも箱という意も。引き出しの多い箱・棚ということらしい。

hell and high water
火の中水の中

「Hell and High Water 地獄と高潮」という1954年に公開された映画もあるらしい。

気になった一文集(English ver. No. 18)

...rising carbon dioxide levels will trigger some profound reshuffling of life in the seas as some species are more hurt than others. So it’s likely that there will be long-term shifts in species we see occupying different niches in the oceans.
種ごとに傷つきやすさが違うため、二酸化炭素濃度の上昇は海の生命の大きな改造に繋がると思われる。そのため、海における異なるニッチを占領するような、長期的な種のシフトが起きる可能性が高い。

About the only thing that’s certain is that there will be changes — huge changes — to the seafood section in your store, if there even is one by the year 2100.

一つだけ確かなことは、(それが2100年まで存続していれば)身近な店の鮮魚コーナーに変化があるということである。それは大きな変化である。

Ocean acidification: more than just corals at risk」Larry O’Hanlon, Discovery.com (25 August 2013)
海洋酸性化によって、海洋生態系に大きなシフトが起きる可能性が高い

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Most importantly, the panel has increased its confidence in the underlying message — that greenhouse gases are altering Earth’s climate. No serious politician on the planet can now dispute that.
もっとも重要なことに、パネルはその下に潜む「温室効果ガスが地球の気候を変えている」というメッセージに関する信頼度を増している。地球上においてそれに異を唱える熱心な政治家はもはやいない。


The governments of the world, to whom the IPCC reports, have made precious little headway in reducing emissions. And they appear in little hurry to do so. For all of these reasons, it would seem that a little reform is in order.
IPCCが報告書を提出する先の世界中の政府はほんのちょっとしか排出量を減らす方向へと向かっていない。またそれを急いでいるようにも見えない。こうしたすべての理由から、ほんのちょっとの改革しか準備ができていないように思われる。


The final assessmentNature 501, 281 (19 September 2013)
IPCC第五次報告書が提出された

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The panel had previously projected much higher rates of sea-level rise, but its 2007 assessment admitted that it could not tackle the entire problem: the predictions did not include the possibility of rapid changes in ice cover in Greenland or the Antarctic because the authors had concluded that it was impossible to forecast such behaviour with the knowledge and models then available. Yet as early as 2009, it was clear that real sea-level rise was on pace to exceed the 2007 projections.
パネルは以前もっと早い海水準上昇速度を予測していたが、2007年の報告書では全ての問題を解決できないことを認めていた。つまり、予測にはグリーンランドや南極の氷が急速に変化する可能性を含めておらず、それはさらに、執筆者たちが当時の知識やモデルでそうした振る舞いを予測することは不可能と結論づけたことが原因である。しかしながら、2009年のはじめ頃には、真の海水準上昇速度が2007年に予測されたものを上回るペースであったことが明確になっていた。

Rising tideNature 501, 301–302 (19 September 2013)
海水準上昇の予測が2007年のIPCC第4次報告書から2013年の第5次報告書までの間に大きく進展した。急激な氷床崩壊(特に西南極氷床)の可能性も考慮され始めている。

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Fish are able to adapt to different pH levels better than other species, such as coral. Since coral tends to spend its entire life on one spot, it is not adapted to deal with changes in environment.
サンゴなどといった他の生物種と比較して、魚類は異なるpHに対して適応することができる。サンゴはその生涯をある一地点で過ごす傾向があるため、環境の変化に対して対処するように適応していないためである。

Ocean acidification bad news for future fish, worse for coral; what will the ocean look like in 2100?」Rebekah Marcarelli, HNGN (26 August 2013)
海洋酸性化はさまざまな生物にあらゆる影響を与える

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However, this positive outlook is limited to short- and medium-term survival rates for individuals within a given population of any species. The researchers found, for instance, that ommastrephid squid are highly sensitive to acid-base disturbances as they have a high metabolic rate and an extremely pH-sensitive blood oxygen transport system.
しかしながら、楽観的な見通しはある種のある集団の生物の
短期的・中期的な生存率のみに限られる。例えば、研究者らはommastrephid科のイカが、高い代謝速度とpHに非常に敏感な血液の酸素輸送システムを持っているために、酸-塩基の擾乱に対して敏感であることを見つけた。

Because the ocean is an ecological system, any shift in a single population of inhabitants might directly impact species we currently fish and eat.
海は生態系システムであるため、その住民の1つの集団のシフトだけでも我々が現在釣り、食べている種にも直接的に影響すると思われる。

海洋酸性化と生態系

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Rumours of the impending change have caused uproar among US geoscientists. They have sent a flood of letters to the NSF to high- light the valuable research conducted through ocean drilling — the only way to access con- tinuous geological records older than about a million years

But the Chikyu, like the JOIDES Resolution, has faced higher operating costs than expected; it spends about five months a year on science, and the rest of its time on mostly industry work, to help to pay the bills.

At the same time, the 35-year-old JOIDES Resolution has only so much life left in it. “The community is waking up and seeing that we don’t have this tool forever,” says Bradford Clement.


Drilling hit by budget woesNature 501, 469–470 (26 September 2013)

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Climate change means the coming decades are likely to bring more frequent episodes of severe drought, with potentially devastating impact on the world's ability to feed a growing population. We therefore need a sustainable agricultural system that makes the most efficient use of water and reduces expensive and environmentally challenging inputs such as fertilizer and pesticides.
気候変化が意味するのは、今後数十年間にわたってひどい干ばつが頻発化すること、それが増え続ける人口を養うための農業活動を著しく圧迫する可能性があることである。そのため、水の利用効率を最大化し、肥料や農薬といった高価で環境に影響を与える添加物の使用量を減らすことで、持続可能な農業システムを構築する必要がある。


Agriculture and droughtNature 501, S1 (26 September 2013)

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The ice is also thinning. Overall, its volume declined 36% in autumn and 9% in winter over 2003–12, according to a recent analysis of data collected by the European Space Agency’s Cryosat probe. This past winter, ice volume stood at less than 15,000 cubic kilometres, the lowest value ever recorded by Cryosat, according to results released last week by Andrew Shepherd, an ice expert at the University of Edinburgh, UK.
氷は同時に薄くもなっている。ヨーロッパ宇宙局の雪氷圏観測衛星(Cryosat)が収集したデータの最近の解析によると、全体として、2003年から2012年にかけて秋の体積は36%、冬の体積は9%低下した。イギリス・エディンバラ大学の氷の専門家Andrew Shepherdが先週公表した結果によると、この間の冬は氷の体積は15,000立方キロメートル以下となり、Cryosatが記録してからは最小の値となった。

Arctic sea-ice minimum is sixth smallest on record」Lauren Morello, NATURE NEWS BLOG (18 Sep 2013)
北極の海氷の面積・体積がともに急速に減少している

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Climate change is causing extreme weather and climate events to become more frequent and intense, with this trend expected to continue and, for some kinds of event, to accelerate in the coming years and decades, regardless of attempts to limit the human actions responsible. Such events are occurring not just singly, but also jointly and sequentially, with less time for recovery in between.

As climate-related events become more intense, with less recovery time between them, the damage caused will increasingly exceed the capacity for short-term coping and response and make longer-term recovery more difficult.

Damage is not restricted to the places where extreme events occur. Global supply chains for food, oil and other critical commodities and services can transmit effects internationally.

Anticipatory and iterative risk management, including adaptation and mitigation, is the prudent strategy for reducing climate-related risks. Reducing activities that contribute to climate change is essential, as this will make disruptive events less frequent and costly later in the century. On a shorter time scale, risk management can reduce exposures to unavoidable and potentially damaging events, reduce susceptibilities and increase capacities for coping, response and recovery.

Scientific analysis can inform risk-reduction choices.

Stress tests can identify anticipatory responses to reduce these impacts and improve resilience. Monitoring implemented responses will help identify future adjustments to prepare for additional risks that arise with climate change.


Reducing activities that contribute to climate change is essential, as this will make disruptive events less frequent and costly later in the century. On a shorter time scale, risk management can reduce exposures to unavoidable and potentially damaging events, reduce susceptibilities and increase capacities for coping, response and recovery. 


Managing risk with climate vulnerability scienceNature Climate Change 3, 607–609 (2013)

引用文献の書き方(Nature, Science, PNAS編)

各雑誌で個性があって興味深い。しかし直す方は大変…。。

Elsevier編はこちら

Takahashi et al., 2009, Deep Sea Research part Ⅱ
Horn et al., 2011, Earth and Planetary Science Letters

の2つを例にとると…

◎Nature

Takahashi, T. et al. Climatological mean and decadal change in surface ocean pCO2, and net sea–air CO2 flux over the global oceans. Deep-Sea Res. II 56, 554-577 (2009).


Horn, M. G. et al. Southern ocean nitrogen and silicon dynamics during the last deglaciation. Earth Planet. Sci. Lett. 310, 334-339 (2011).

3人以上はet al.
2人の場合は「人物&人物」

◎Science

T. Takahashi et al. Deep-Sea Res. II 56, 554 (2009).

M. G. Horn et al. Earth Planet. Sci. Lett. 310, 334 (2011).

4人以上はet al.
二人の場合も人物の間に&は使用しない
論文のタイトルは不要

◎PNAS

Takahashi T, et al. (2009) Climatological mean and decadal change in surface ocean pCO2, and net sea–air CO2 flux over the global oceans. Deep-Sea Res II 56(8–10):554–577.

Horn MG, Beucher CP, Robinson RS, Brezeyinski MA (2011) Southern ocean nitrogen and silicon dynamics during the last deglaciation. Earth Planet Sci Lett 310(3–4):334–339.

6人以上はet al.
雑誌名の省略形、著者名のFamilly nameの頭文字に「.」は使用しない
太字は使用しない
最後のページがdoiの場合、doiを抜かした「10.~/」から始める
巻数もある場合は号数の後に括弧書きで記載。Nature・Scienceなども同様