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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年11月28日木曜日

新着論文(NCC#Dec 2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 12 (December 2013)
Editorial
On message
方針を遵守する
政治家や一般の人に気候科学の進展を正しく理解してもらうためにも、こうしたプロセスに社会科学者が活発に関与することが重要である。

Correspondence
Advanced flood risk analysis required
進展した洪水リスク分析が必要とされている
Sebastiaan N. Jonkman

Reply to 'Advanced flood risk analysis required'
'進展した洪水リスク分析が必要とされている'に対する返答
Stephane Hallegatte, Colin Green, Robert J. Nicholls & Jan Corfee-Morlot

Emissions from Amazonian dams
アマゾンのダムからの排出
Rafael M. Almeida, Nathan Barros, Jonathan J. Cole, Lars Tranvik & Fábio Roland

Commentaries
Challenges for New Zealand's carbon market
ニュージーランドの炭素市場の挑戦
Luis Mundaca & Jessika Luth Richter
ニュージーランドは環境政策に関してリーダー的立場として扱われることが多いが、その温室効果ガス排出量削減にはより多くの努力が必要である。

Carbon tax needs thresholds to reach its full potential
炭素税はそのすべてのポテンシャルを発揮するには閾値が必要
John C. V. Pezzey & Frank Jotzo
炭素税をかける際に、排出量全体に対してというよりは、まずはある固定された値との差分に対して行うことによって、より効果的な排出削減を行うことができる。

Snapshot
Public support
公共の支持
Bronwyn Wake

Interview
State of the science
科学の状態
今年9/27にIPCC第5次報告書が公表された。それにあたって報告書の作業部会の責任者も務めるThomas Stockerにインタビューを行った。

Market Watch
A Calderónian commission

Research Highlights
Types or traits?
タイプそれとも特性?
Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 18180–18184 (2013)
 気候変化に対する植物の応答を評価する際に、例えば草・低木などといった機能のタイプに基づいてシンプルな分類が行われることが多い。しかしながらこうした分類は植物の特性や機能をうまく考慮できていない。
 ロシアのCaucasus山にて行われた研究では、特に「葉の水利用に影響するような特性(葉の質量、土壌水分量など)」がもっとも温度上昇に対する種数の変化を予測するのに使えることが示された。

Historical ocean heat
歴史的な海洋の熱
Science 342, 617–621 (2013)
近年の温暖化は予測されていたものより小さいことが知られている。堆積物コアを用いて過去1万年間の太平洋の中層水の温度を推定した研究では、7,000年前から前の世紀まではおよそ2℃で温度が低下しつつあったが、最近では急速な温度上昇に転じていることが示された。人為起源の影響に対して海が応答した結果と考えられる。
>話題の論文
Pacific Ocean Heat Content During the Past 10,000 Years
過去1万年間の太平洋の熱容量
Yair Rosenthal, Braddock K. Linsley, and Delia W. Oppo
過去数十年間に海洋の熱容量が増加しているという観測事実は温暖化の重要な指標となっている。赤道西太平洋から得られた堆積物コア中の底性有孔虫Mg/Ca温度計を用いて温度・塩分復元を行ったところ、太平洋における過去1万年間(完新世)における北太平洋と南極の中層水(それぞれNPIWとAAIW)の温度は、完新世の再温暖期においては過去数100年間よりもそれぞれ2.1 ± 0.4 ℃、1.5 ± 0.4 ℃高かったことが示された。近年の中層水の温暖化は表層水のそれと比較するとそれほど大きくないが、熱容量には小さくない変化が生じつつある。

Translations matter
翻訳が問題になる
Climatic Change http://doi.org/pzb (2013)
IPCCによるリスク評価や誤差は確率密度に基づいた表現となっているが、非専門家がそれをどう解釈するかは異なる可能性がある。例えば’likely(可能性が高い)’といった表現が持つ確率は値が報告書の中で正確に定められているものの、人によって受け取り方はマチマチである。英語から異なる言語への翻訳もまた文化的な解釈の違いを生み出すこととなる。
 中国人とイギリス人とで表現だけでその表現の持つ確率がどれくらいかをアンケート調査したところ、IPCCのそれとは大きく違うことが示され、さらに中国人の方がより大きい範囲の解釈をする傾向があることが分かった。

Ending nuclear power
原子力を終わらせる
Clim. Policy http://doi.org/pzc (2013)
 福島第一原発の事故は原子力エネルギーに対する大きな社会的関心を生み出したが、原子力エネルギーの制限若しくは利用停止は気候政策のコストを増やすことに繋がる。全球のエネルギー・システム・モデルによる推計から、原子力エネルギーから完全に撤退した際の気候変化緩和策のコストが見積もられた。コペンハーゲンの合意を満たすための京都議定書アネックス1国のコストは2020年には28%増加することが示され、特に日本とアメリカが大きな影響を被ることが分かった。 

Natural aerosols
自然エアロゾル
Nature 503, 67–71 (2013)
 変化しつつある大気中のエアロゾルが雲の形成過程やそれに伴う放射強制力に与える影響はよく分かっていない。そうした不確実性が我々の温室効果ガス増加による気候感度の推定をも不確かなものとしている。
 全球エアロゾルモデルを用いた研究から、火山・海・バイオマス火災などからの自然エアロゾルがもたらす不確実性が1750年以降で45%を占めていることが分かった。人為起源の不確実性は34%を担うと推定された。これは産業革命以前の、純粋な大気の過程をより深く知る必要性を浮き彫りにしている。
>話題の論文
Large contribution of natural aerosols to uncertainty in indirect forcing
間接的強制力における不確実性に対する自然エアロゾルの大きな寄与
K. S. Carslaw, L. A. Lee, C. L. Reddington, K. J. Pringle, A. Rap, P. M. Forster, G. W. Mann, D. V. Spracklen, M. T. Woodhouse, L. A. Regayre & J. R. Pierce
人為起源エアロゾルを理解できればエアロゾルが気候に与える放射強制力をよりよく理解できると考えられてきた。しかしながら、エアロゾルが雲に与える放射強制力的な影響のうち半分は、人為ではなく自然エアロゾルによるものであることが示された。すなわち、現在の汚染された大気における’疑似’エアロゾルの測定や評価だけでは、真のエアロゾルの放射強制力の不確実性が必ずしも低減されないことを意味している。
>Nature ハイライト
気候強制力は自然起源と人為起源のエアロゾルのどちらが大きいか
>関連した記事(Nature#7474 "NEWS & VIEWS")
Climate science: Uncertain then, irrelevant now
気候科学:当時は不確かだったが、現在は的外れ
Bjorn Stevens
Carslaw et al.の解説記事。
気候へのエアロゾルがどれほど影響しているかの推定の不確実性は、過去の汚染されていない大気についての知識が不足していることに由来する。そのため影響の理解がさらに進んでも、気候の理解には従来考えられてきたほど役に立たないかもしれない。

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Research
News and Views
Local noise and global confidence
地域的なノイズと全球の確信度
Markus G. Donat
Fischer et al.の解説記事。
地域的な異常気象の変化の分析は、気候そのものの変動性の大きな不確実性によって影響されてしまう。より広い範囲を統合した新たな研究から、近未来の異常熱波と降水の強化が共通して見られることが示された。

Strategy conservation
戦略保全
Michael Dunlop
Johnston et al.の解説記事。
現在あるいくつかの保全戦略は、気候変化に応答して生物の生息域が移動してもなお、生物の安全を保証できるかもしれない。

Perspective
The role of short-lived climate pollutants in meeting temperature goals
温度の目標を達成するために短寿命の汚染物質が果たす役割
Niel H. A. Bowerman, David J. Frame, Chris Huntingford, Jason A. Lowe, Stephen M. Smith & Myles R. Allen
メタンやブラックカーボンといった、短寿命の気候汚染物質の排出を軽減するという初期の行動の重要性を議論。こうした物質の排出を減らすことが短期的には重要であるが、より長期的な気候変化の危険性を軽減するためには、同時にCO2を減らすことが差し迫って必要とされている。

Letters
Intra- and intergenerational discounting in the climate game
気候ゲームにおける世代内-世代間のディスカウント
Jennifer Jacquet, Kristin Hagel, Christoph Hauert, Jochem Marotzke, Torsten Röhl & Manfred Milinski

Water–CO2 trade-offs in electricity generation planning
発電計画における水-CO2トレードオフ
Mort Webster, Pearl Donohoo & Bryan Palmintier
CO2排出量が低下するほど発電に必要とされる水は増加すると予想されている。テキサスの電力網の拡大モデルによると、CO2排出量と水利用との間にトレード・オフが存在することが実証された。

Robust spatially aggregated projections of climate extremes
空間的に集約した気候異常の厳密な予測
E. M. Fischer, U. Beyerle & R. Knutti
気候の異常の予測には大きな不確実性がある。新たな研究から、不確実性は主として気候そのものの変動が原因であることが示された。しかしながら、地域間の平均を取ると、モデルの予測結果は一致することが示され、将来の異常気候の予測の厳密さが保証されることが示された。
>Nature関連誌 ハイライト
極端な気候の予測を確実なものとする方法

Hybridization may facilitate in situ survival of endemic species through periods of climate change
ハイブリッド化が気候変化時の固有種の生存を容易にするのかもしれない
Matthias Becker, Nicole Gruenheit, Mike Steel, Claudia Voelckel, Oliver Deusch, Peter B. Heenan, Patricia A. McLenachan, Olga Kardailsky, Jessica W. Leigh & Peter J. Lockhart
生物が気候変化の下で生き残れるかどうかを予測するには、適応の可能性がどれほどかを理解する必要がある。適応メカニズムの一端を担うハイブリッド化(hybridization)を評価した研究から、植物の一種(Pachycladon)は、ハイブリッド化によって遺伝情報を輸送することによって、最終氷期を生き延びたことが示された。

Digestion in sea urchin larvae impaired under ocean acidification
海洋酸性化の下ではウニの幼生の消化が悪化する
Meike Stumpp, Marian Hu, Isabel Casties, Reinhard Saborowski, Markus Bleich, Frank Melzner & Sam Dupont
生物の幼生は環境の変化に対して脆弱である。酸性化実験から、ウニの消化効率が低下することが示された。ウニの胃のpHはアルカリ性であり、酸性化でpHの低下が確認された。この減少は消化効率の低下とそれに伴う食事エネルギーの補強を意味する。これまでに見過ごされてきた側面の一つと思われる。

Articles
Attributing mortality from extreme temperatures to climate change in Stockholm, Sweden
スウェーデンのストックホルムにおける異常高温による死者は気候変化のせいと考えられる
Daniel Oudin Åström, Bertil Forsberg, Kristie L. Ebi & Joacim Rocklöv
異常気候が増加傾向にある。ストックホルムにおいて行われた調査から、1980-2009年の異常な暑さによる死亡率が、気候変化がない場合の2倍になっていた可能性が示唆。冬の気温は上昇傾向にあるものの、異常な寒波の頻度もわずかに増加しており、結果として冬季の死亡率もわずかに増加している。
>Nature関連誌 ハイライト
酷暑による死者の増加

Observed and predicted effects of climate change on species abundance in protected areas
気候変化が保護区の生物数に与える観察された、予想される影響
Alison Johnston et al.
生物の保護区の設定は気候変化に対しても効果的かどうかが問題とされている。ヨーロッパにおける鳥を対象にした研究から、多くの種で気候変化によって個体数が減少することが予測されたものの、EUが設定するイギリスの保護区の多くで保全の価値が維持されることが示された。