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2018年8月23日木曜日

保存容器に起因するコンタミ

久しぶりの投稿です。

自分の過失というか無知としか言えないのですが、実は保存容器に起因するコンタミが自分の分析に大きく影響する可能性について気づかないままに一年近く実験をやってしまっていました。

具体的に何をしているかというと、
 ▷海底堆積物中の有孔虫の殻(カルサイト、CaCO3)のMg/Ca比(温度指標)やAl/Ca比(汚れの指標)、
 ▷ホウ素(B)の含有量チェック(のちのホウ素同位体分析のため)
を行うためのQ-ICPMSを用いた定量分析です。

実験を始めた当初、Alのカウント数が非常に高く(50,000 cps近く)、「アルミニウムは機械の部品にでも使われているんだろう」と考えた結果見過ごしてしまい、まさか溶液の保存に用いる容器に起因するものとは全く気付かず。
あとになってAlのカウントが低いデータが存在する(例えば、当日調整した酸など)ことに気づき、原因を調べたところ、容器が汚染源であることが分かりました。
場合によってはサンプル中の含有量をはるかに凌ぐ量の元素が容器から汚染されているケースも。ちなみに使っていたのはNalgeneのPP製保存容器です。
Alの含有量は有孔虫殻の洗浄度合い、特に粘土鉱物の除去の程度を知る上で重要であり、特に50,000 cps付近にその判断基準があります。

似たような事例はBやMgにも出ており、幸いにして「取得データをすべて破棄」といった事態にはなっていないものの、今後より良いデータを取得し、測定精度を上げるためにも、こうしたコンタミを徹底的に排除する必要があると感じました。

もちろん各企業が容器の綺麗さを宣伝するために他者製品と比較して、容器中の含有元素データを公表している場合もあります(例えば、ThermoのHDPEボトル(pdf)AgilentによるSeastar社製保存容器の比較)。
しかしながら我々のラボでは必ずしもどの容器がどの分析に適さないのか、についてコンセンサスがありませんでした。
そこで一般的に使用している保存容器について調べてみることにしました。
最も高価なPFA製のNalgeneボトル(1本2万円近く!)がおそらくもっとも綺麗だろうという予想を立てつつ、より安くて綺麗なものがあれば、という期待も込めて実験を行いました。

以下にプラスチック製保存容器を酸で予備洗浄する前後の変化や、各種酸(硝酸・塩酸・フッ酸)を入れた状態で1週間ほど放置した際に保存容器から溶出する各元素について測定した結果について示します。
全元素を測定していますが、今回は上でも述べた3元素だけ。