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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年11月22日金曜日

新着論文(NCC#Nov 2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 11 (November 2013)

Editorial
Adapting to a changing climate
変化する気候に適応する
気候変化の影響に対処することは何もせずにすべてを受け止め苦しむことよりもマシである。しかしながら、どの程度そうすべきなのだろうか?

Correspondence
Observational challenges in evaluating climate models
気候モデルを評価するための観測的な課題
Mat Collins, Krishna AchutaRao, Karumuri Ashok, Satyendra Bhandari, Ashis K. Mitra, Satya Prakash, Rohit Srivastava & Andrew Turner

Prudence on solar climate engineering
太陽気候工学に対する慎重さ
Ken Caldeira & Katharine L. Ricke
太陽放射管理(SRM)に関する野外実験は歓迎すべきかもしれないが、それを行う上では定義や目的が曖昧になってはならない。

Beyond vulnerability assessment
脆弱さの評価の先
Rob Swart, Sabine Fuss, Michael Obersteiner, Paolo Ruti, Claas Teichmann & Robert Vautard

Commentaries
Private-sector adaptation to climate risk
気候リスクに対する私的セクターの適応
Swenja Surminski
小さいながらも、ますます多くの企業が気候変化のリスクを評価しつつある。しかしながら、特に発展途上国において、私的な適応努力(private-sector adaptation efforts)にはさまざまな障壁がある。

Flooding the market
市場に殺到する
Diane Horn & Michael McShane
イギリスにおける洪水に対する保険と気候変化に対する適応に関して。

Loss and damage
損失とダメージ
Saleemul Huq, Erin Roberts & Adrian Fenton
「損失とダメージ」は気候変化アジェンダにおいては比較的新しい考えである。それには今ある緩和・適応策を再度活性化させられる可能性があるが、究極的には発展途上国からのリーダーシップが必要となり、また「適応策の限界」といったいくつかの重要課題に対する理解の助けとなるかもしれない。

Feature
Rain from space
宇宙からの雨
Bronwyn Wake
NASAとJAXAが共同で、人工衛星を用いて全球の降水をモニタリングする計画(Global Precipitation Measurement; GPM)が来年始まろうとしている。全球を観測するためには従来の赤外線を用いた雲の上面の温度測定ではダメで、マイクロ波による放射の測定が適している。

Policy Watch
A business case for green fuels
グリーンな燃料に対するビジネス・ケース
発電セクターにおける天然ガス・シェールガスの成功と異なり、石油メインの輸送セクターは気候政策決定者の頭を悩ませている最大の問題である。「輸送だけを見てみても、さまざまなタイプの燃料が現れつつあること事態が問題である」と、Sonja van Renssenは説明する。

Research Highlights
Ecosystem transformation
生態系の変革
Earth Syst. Dynam. 4, 347–357 (2013)
 気候変化は生態系を根本から変革させる可能性を秘めており、それは人類に対する食料や水といった生態系サービスにも影響することを意味する。どれほどの変化が予測されるかを知ることは我々が「どれほどの緩和策を必要とするのか」や「どれほどの適応が必要とされるのか」といった判断にも影響する。
 全球の温度が1.5-5.0℃上昇した場合の生態系の変化と、その影響を評価した研究から、2℃の温暖化以下に抑えられなければ、陸上の5分の1の生態系は根本から変化することが示された。

Climate policy benefits
気候政策の恩恵
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/n7p (2013)
気候変化緩和策がとられ、大気中の温室効果ガス濃度が低下しても、それが地表気温の低下にまで繋がるにはある程度の時間的ラグがあると期待される。モデルシミュレーションから、RCP2.6シナリオの温室効果ガスを最も排出しないシナリオであったとしても、少なくとも25年間は目に見えて地表気温は低下せず、地域によってはそれよりも長くなることが示された。大気中CO2濃度自体は緩和策から10年間で目に見えて減少すると思われる。
>話題の論文
Delayed detection of climate mitigation benefits due to climate inertia and variability
Claudia Tebaldi and Pierre Friedlingstein
気候変化の緩和や或いは逆転が議論されているが、人為的な放射強制力を減少させたとしても、気候や炭素循環の慣性によって、すぐには効果が目に見える可能性は低い。地球システムモデルを用いて様々なシナリオのもとでそうした効果が見え始める年代を推定。RCP2.6シナリオの場合、排出ピークを越してから25-30年後であることが示された。

Boundary agency
境界機関
J. Environ. Sci. Policy http://doi.org/n7j (2013)
クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)は多く排出する新興国(中国やブラジル)には恩恵が大きいが、あまり発展していない国々(カンボジア・ボリビア・ウガンダなど)には恩恵が小さい。国連環境計画の一環で行われたデンマークRisø Centreにおける成功例の分析結果について。

Ice retreat
氷の後退
Cryosphere 7, 1565–1577 (2013)
世界中のほとんどの氷河と氷帽は温暖化の結果後退している。1971-2010年の観測記録から、全球の積雪面積比(Accumulation-area ratio)を求めたところ、氷河量は以前言われていたような、平衡状態には到底ないことが示された。氷河に関しては、気候が現在の状態で維持された場合、32±12%の面積が、38%±16%の体積が失われると予測された。特に未開の地で、より多くの観測が行われることで、誤差は小さくなると思われる。

Forest flattening
森林が平らに
Proc. R. Soc. B 280, 20131581 (2013)
通常気候の変化というと緯度や高度に関する変化が思い浮かぶが、熱帯雨林の高い木々においては、高さ方向の変化もまた、温度プロファイルや種組成に影響している。フィリピンとシンガポールにおけるカエルの調査から、高度が増してより寒くなるのを補うために、木々の上の方に移動していることが見いだされた。この結果は、気候変化を補うために、高度・緯度方向の変化以外にも高さ方向の変化によっても生物が適応する可能性を物語っている。熱帯雨林で温暖化が生じると、生物がより地面に集中することで生態系がより’平らに’なり、生態系機能や種の存続に影響する可能性があることを暗示している。

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Research
News and Views
Some phytoplankton like it hot
植物プランクトンの中には暑いのを好むものもいる
Jack A. Gilbert
A. Toseland et al.の解説記事。
海洋の一次生産を担う植物プランクトンは温度に対しても敏感である。海水温を上昇させた実験から、どのようにして細胞が応答するかの知見が得られた。

Big data insights into pest spread
巨大データが害虫の蔓延に関する知見を与える
Karen A. Garrett
Daniel P. Bebber et al.の解説記事。
害虫と病気は農業生産を減らすという点で、さらに将来の気候影響を考える上でも重要なテーマである。それらのユニークな全球記録から、その分布が次第に極側に移動しつつあることの証拠が得られた。

Bottom up in the tropics
熱帯におけるボトムアップ
Qiang Fu
新たな研究から、インド・太平洋暖水域(Indo-Pacific warm pool)における地表付近の過去30年間の温暖化が、対流圏界面付近の寒冷化を招いていることが明らかに。太平洋の東部や中部にはあまり顕著に見られず、西部にのみ顕著に見られるらしい。成層圏に入る水蒸気量が低下することに繋がる(全球のわずかな寒冷化に繋がる)。さらに成層圏を介した全球物質循環(ブリューワー・ドブソン循環)や赤道の惑星規模波動にも影響すると思われる。
>話題の論文
Temperature trends in the tropical upper troposphere and lower stratosphere: Connections with sea surface temperatures and implications for water vapor and ozone
C. I. Garfinkel, D. W. Waugh, L. D. Oman, L. Wang, M. M. Hurwitz
J. Geophys. Res. (2013)

The complexity of climate justice
気候の正義の複雑さ
Benjamin K. Sovacool
気候変化がそれに脆弱なコミュニティーに与える影響が、「誰が対処に協力するのか・どうやって極力するのか」などといった道徳上の関心を生み出している。新たな研究は、平等で恩恵のある解決は可能だが、それには常にリスクが伴うことを示唆している。
>話題の論文
Local level climate justice? Adaptation finance and vulnerability reduction
Sam Barrett
Global Environmental Change (in press)

Review
The role of coastal plant communities for climate change mitigation and adaptation
気候変化緩和・適応に対する沿岸部の植物群集の役割
Carlos M. Duarte, Iñigo J. Losada, Iris E. Hendriks, Inés Mazarrasa & Núria Marbà
海洋沿岸部の植物コミュニティーは海洋表層面積のほんのわずかしか占めていないにもかかわらず、海洋堆積物に保存される炭素の50%を担っている。「そうした沿岸部植物群集を保護・保全することの恩恵」、「沿岸保護や気候変化緩和のための利用」などをレビュー。

Letters
Challenges in quantifying Pliocene terrestrial warming revealed by data–model discord
データとモデルの不一致に示される鮮新世の陸域の温暖化を定量化することの課題
Ulrich Salzmann, Aisling M. Dolan, Alan M. Haywood, Wing-Le Chan, Jochen Voss, Daniel J. Hill, Ayako Abe-Ouchi, Bette Otto-Bliesner, Frances J. Bragg, Mark A. Chandler, Camille Contoux, Harry J. Dowsett, Anne Jost, Youichi Kamae, Gerrit Lohmann, Daniel J. Lunt, Steven J. Pickering, Matthew J. Pound, Gilles Ramstein, Nan A. Rosenbloom, Linda Sohl, Christian Stepanek, Hiroaki Ueda & Zhongshi Zhang
鮮新世のプロキシに基づいた温度復元や種組成に基づいた温度復元結果を8つの気候モデルがシミュレートできているかどうかを評価。モデルは北半球を過度に寒く見積もっていることが示された。感度実験から、モデルとプロキシとの時間軸の違いが浮き彫りに。

Global warming amplified by reduced sulphur fluxes as a result of ocean acidification
海洋酸性化の結果として減少した硫黄のフラックスによって増幅される地球温暖化
Katharina D. Six, Silvia Kloster, Tatiana Ilyina, Stephen D. Archer, Kai Zhang & Ernst Maier-Reimer
地球システムモデルを用いたシミュレーションから、海洋酸性化が海洋からのDMS生産に与える影響を評価。メソコスモ実験による結果をパラメタリゼーションに利用。全球的なDMS生産量は2100年には産業革命前のレベルに比べておよそ18±3%減少すると思われる。それに伴う放射強制力の変化は、うち83%が海洋酸性化によるものであり、温度に換算して0.23-0.48℃の温度上昇に相当するものである。
>Nature姉妹紙 ハイライト
海洋の酸性化による気候温暖化の促進

The impact of temperature on marine phytoplankton resource allocation and metabolism
温度が海洋植物プランクトンの資源分配と代謝に与える影響
A. Toseland, S. J. Daines, J. R. Clark, A. Kirkham, J. Strauss, C. Uhlig, T. M. Lenton, K. Valentin, G. A. Pearson, V. Moulton & T. Mock
温度が海洋植物プランクトンの成長戦略・代謝・組成に与える影響を評価。生物の資源分配や、植物プランクトンの元素比に与える、これまで認識されていなかった効果が明らかとなった。生物地球化学的循環にも影響すると思われる。
>Nature姉妹紙 ハイライト
プランクトンの代謝に対する海洋温度の影響

Crop pests and pathogens move polewards in a warming world
温暖化した世界では作物害虫と感染症が極側に移動する
Daniel P. Bebber, Mark A. T. Ramotowski & Sarah J. Gurr
新たな研究から、1960年以降、農作物に対する数百種の害虫と感染症が年間2.7kmの速度で極側に移動していることが分かった。気候変化に伴いそれらの緯度範囲が変化するという仮説を裏付けている。
>Nature姉妹紙 ハイライト
極地へ向かう作物害虫

Mapping vulnerability and conservation adaptation strategies under climate change
気候変化下における脆弱性と保全適応戦略をマッピングする
James E. M. Watson, Takuya Iwamura & Nathalie Butt
生態的な損失を最小化するためにも、気候変化が与える影響のリスクマップは大変有用である。新たな研究から、気候変化に対する全球的な生態系の脆弱度が明らかに。
>Nature姉妹紙 ハイライト
世界の生態地域の気候変動に対する脆弱性マップ

Article
Sensitivities of extant animal taxa to ocean acidification
海洋酸性化に対する残存する動物種の感度
Astrid C. Wittmann & Hans-O. Pörtner
 海洋酸性化が海洋生態系(やそれに依存する人類)に与える影響の評価には不確実性が大きい。5つの動物分類(サンゴ、棘皮動物、軟体動物、甲殻類、魚類)に対して、将来の脆弱性を評価した。
 RCP8.5の排出シナリオ(2100年でCO2濃度936ppm)のもとでは、サンゴ、棘皮動物、軟体動物は甲殻類よりも敏感であることが示された。また魚類の幼生はときおり単純な無脊椎動物よりも敏感であることが示されたが、種ごとの感度はよく分からない。
 種間・種内でさまざまな応答を示すことが、メソコスモ実験や過去の環境擾乱などから分かっている。今世紀内には、海洋酸性化が海洋生態系に大きな変化をもたらすと思われ、おそらく長期的には種の組成の変化にまで繋がると考えられる。
>Nature姉妹紙 ハイライト
海洋は住みにくくなる