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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年3月16日土曜日

新着論文(Science#6125)

Science
VOL 339, ISSUE 6125, PAGES 1245-1348 (15 MARCH 2013)

EDITORIAL:
Am I Wrong?
私は間違っていたのか?
Bruce Alberts
 アメリカの経済発展の停滞は重大である。2013年のGDPはわずか0.87%で、科学に充てられる予算の削減を受けて、NSFも今年度1,000件の科学助成を削減することを決定した。
 寿命は順調に延びているが、一方で85歳以上の5人に1人が認知症で、それを支えるための費用も2050年には年間1.1兆ドルに膨れ上がるとの試算もある。
>以下は引用
I HAVE SEVEN GRANDCHILDREN, AND I WORRY ABOUT THEIR FUTURE.
私には孫が7人いるが、彼らの将来を深く心配している。
the United States is living off its past.
アメリカは過去に頼って生計を立てている。

Editors' Choice
Getting It Just Right
Curr. Biol. 10.1016/j.cub.2013.01.052 (2013).
渡りをする蝶(North American monarch butterflies)がどのようにして体内時計を調整して渡りの時期を決定し、方向を決定しているかについて。

Mercury Gas in Neptune Grass
Neptune Grassの中の水銀ガス
Global Biogeochem. Cycles 27, 10.1029/2012GB004296 (2013).
地中海沿岸部に生息する海草の一種(Posidonia oceanica; Neptune grass)は水銀を濃集するが、それらが根付く堆積物には過去2,500年にわたる人類の水銀採掘の歴史が刻まれている。
>問題の論文
Millennial scale impact on the marine biogeochemical cycle of mercury from early mining on the Iberian Peninsula
O. Serrano, A. Martínez-Cortizas, M.A. Mateo, H. Biester, and R. Bindler
地中海北西部から得られた海草マットから過去4,315年間の人間活動による水銀の流入量を復元。およそ2,500年前から人為起源の影響が出始め、スペインで鉱業が開始した時期と整合的。歴史上何度か水銀の濃度が急増する時期があり、過去1000年間が最も高い。生物濃集の程度が環境記録を歪めてしまう可能性があるが、非常にユニークな水銀濃度の復元ツールとなることが期待される。

News of the Week
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
シロクマの貿易を厳しくする試みが失敗する
北極の海氷が融けることでシロクマが絶滅の危機にさらされているが、一方でシロクマの身体の一部(毛皮など)を扱う貿易もまたシロクマの脅威となっている。先日バンコクで行われたInternational Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)の会議にて、現在シロクマはCITESのリスト1に載っているが、より厳しいリスト2へ移すことをアメリカとロシアが提案した。しかし、カナダ・グリーンランド・ノルウェーなどの反対に遭い、提案は棄却された。
>より詳細な記事(OPEN)
Bid to Restrict Polar Bear Trade Fails
Erik Stokstad

You Are What You Like
あなたはあなたが好きなもの
毎日数百万人の人がFacebookのlikeボタンを押すが、それは自分の本や動画に対する嗜好を示すだけでなく、もっと多くの情報(性的嗜好、宗教など)を示していることが新たな研究から分かった(PNASに論文)。被験者に対して心理学的なテストを行って特徴を浮き彫りにしたのち、Facebookのlikeボタンを押した情報をもとにプロファイリングした人格と照合したところ、極めて良く一致したという。特にホモ・セクシャル、宗教、支持する政治団体、タバコ・アルコール・ドラッグの習慣もよく予測された。

News & Analysis
Dramatic Fossils Suggest Early Birds Were Biplanes
印象深い化石は初期の鳥が複葉であったことを示唆している
Michael Balter
綺麗な状態で復元された初期の鳥の化石は、それが2つではなく4つの羽を持っていたことを示している。

News Focus
War Stories
戦記物語
Martin Enserink
2003年、世界は世界的な破滅を招きかねない新病SARSを見事に撃退したが、それから10年、私たちはどれくらい安全なのだろうか?

SARS: Chronology of the Epidemic
SARS: 感染症の年代記
Martin Enserink
感染症の開始から終わりまでを紹介。

Understanding the Enemy
敵を理解する
Dennis Normile
SARSの発症によって、新しい病気を理解する研究が進んだが、まだ学ぶべきことは多く残っている。

The Metropole, Superspreaders, and Other Mysteries
主要都市、他人に対して強力な感染源となる患者、そしてその他の謎
Dennis Normile
10年間SARSの研究がなされてきたが、まだ謎が残されている。2003年2月21日、香港のホテルで何が起きたのだろう?Amoy Gardenの高層ビル群でどのように病気は広がったのだろう?どのようにして感染源となる患者が生まれたのだろう?

Letters
University Rankings Could Bias Funding
大学ランキングが助成の偏りを生む可能性がある
Philipe de Souto Barreto

The Race to Name Earth's Species
地球の生物に名前を与えるレース
William F. Laurance
M. J. Costelloは「絶滅よりも早く人類は生物に名前を与えられる」とレビューの中で主張しているが、あまりそうは思えない。真核生物の大半は昆虫類であるが、他の動物群(線虫、菌類、無脊椎動物など)もまた多様であり、中には限られた地域にしかいないもの、隠れるのが上手いもの、顕微鏡の下でしか確認できない小さいもの、など多くのものがある。また生物多様性が高い途上国などで将来十分な資金が得られ、生物に名前を与えることができるかどうかも怪しい。さらに外来種の侵入や環境変化・気候変動ストレスの影響、人間活動の影響などが生物多様性を減少させていることは事実であり、現在の生物多様性の理解だけでなく、それが将来どうなるかの予測にも大きな不確実性があることに注意しなければならない。

Policy Forum
End the Deadlock on Governance of Geoengineering Research
地球工学研究の管理を巡る膠着状態を終わらせよ
Edward A. Parson and David W. Keith
科学界の自粛だけで小さなスケールの研究は抑えられるだろうか?それとも政府による規制が必要なのだろうか?

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Research
Perspectives
Cracking the Mercury Methylation Code
水銀のメチル化の暗号を解く
Alexandre J. Poulain and Tamar Barkay
水銀のメチル化に関与している遺伝子の発見は、環境中の水銀汚染を追跡し、モニタリングするバイオマーカーの開発の助けとなるかもしれない。

Not All About Consumption
消費のことだけを考えないで
Debra J. Davidson and Jeffrey Andrews
たとえ消費レベルが同じであったとしても、資源開発は生態系に大きな影響を与える。

The SARS Wake-Up Call
SARSの警告
Isabelle Nuttall and Christopher Dye
10年前のSARSの発生によって、健康に対する脅威に対する各国の対応を改善するためのWHOの努力が強化された。

Reports
Evidence for Microbial Carbon and Sulfur Cycling in Deeply Buried Ridge Flank Basalt
深く埋没した海嶺の脇の玄武岩における微生物による炭素・硫黄サイクルの証拠
Mark A. Lever, Olivier Rouxel, Jeffrey C. Alt, Nobumichi Shimizu, Shuhei Ono, Rosalind M. Coggon, Wayne C. Shanks III, Laura Lapham, Marcus Elvert, Xavier Prieto-Mollar, Kai-Uwe Hinrichs, Fumio Inagaki, and Andreas Teske
玄武岩質の海洋地殻(~3.5Ma)にもメタンと硫黄を利用する微生物の活動が存在することが、Juan de Fuca海嶺で証明された。

Hind Wings in Basal Birds and the Evolution of Leg Feathers
根本的な鳥の尾翼と脚の羽の進化
Xiaoting Zheng, Zhonghe Zhou, Xiaoli Wang, Fucheng Zhang, Xiaomei Zhang, Yan Wang, Guangjin Wei, Shuo Wang, and Xing Xu
11の初期の鳥の化石の調査から、すべての四肢に羽があり、現在の羽が2つである状態は後からできたものであることが分かった。また硬い皮膚で覆われた後ろ足も後から獲得したらしい。

The Genetic Basis for Bacterial Mercury Methylation
バクテリアの水銀メチル化に対する遺伝的な基本
Jerry M. Parks, Alexander Johs, Mircea Podar, Romain Bridou, Richard A. Hurt Jr, Steven D. Smith, Stephen J. Tomanicek, Yun Qian, Steven D. Brown, Craig C. Brandt, Anthony V. Palumbo, Jeremy C. Smith, Judy D. Wall, Dwayne A. Elias, and Liyuan Liang