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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年3月14日木曜日

新着論文(Nature#7440)

Nature
Volume 495 Number 7440 pp141-276 (14 March 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Ancient camels in the Arctic
北極圏の古代のラクダ
Nature Commun. 4, 1550 (2013)
現在ラクダ(Camelus spp.)は暑く乾燥した地域に生息しているが、その祖先は北極圏の森林であったらしい。北極圏カナダから得られた堆積物中の骨のたんぱく質の分析から、それが350万年前のラクダの祖先のものであることが分かった。当時は森林地帯で、今よりもずっと暖かかった。
>問題の論文
Mid-Pliocene warm-period deposits in the High Arctic yield insight into camel evolution
高緯度の北極圏の鮮新世中期の温暖期に相当する堆積物がラクダの進化に知見を与える
Natalia Rybczynski, John C. Gosse, C. Richard Harington, Roy A. Wogelius, Alan J. Hidy & Mike Buckley
カナダの北極圏(Ellesmere Island, Nunavut)の堆積物から当時の古環境を復元したところ、そこは鮮新世中期(mid-Pliocene)の温暖期には豊かな森林であり、さらに産出した脚の化石のコラーゲン抽出からそれがラクダのものであることが世界で初めて示された。ラクダは北米の森林起源で、ベーリング陸峡を渡ってユーラシア大陸に渡ったものと考えられる。

SEVEN DAYS
Life in Lake Vostok
Vostok湖の生命
ロシアの研究グループは昨年南極最大の氷底湖Vostok湖の掘削に成功したが、そこから新種のバクテリアが発見された。
>より詳細な記事(OPEN)
Russian scientist defends Lake Vostok life claims
Quirin Schiermeier

Carbon spike
炭素のスパイク
2012年には大気中のCO2濃度が1年間で2.59ppm上昇し、1998年以来としては最も急激な上昇を見せた。ハワイのマウナロア観測所では2013年1月に395ppmとなり、産業革命以前の値から70%以上増加している。

Antibiotic warning
抗生物質耐性の警告
イギリス政府の医療アドバイザーは、抗生物質に耐性のあるバクテリアを、インフルエンザやテロなどに並んで「国家の安全を脅かすもの」のリストに追加するよう勧告した。
>より詳細な記事(OPEN)
Drug-resistant bacteria and lack of new antibiotics pose ‘catastrophic threat’
Daniel Cressey

SOLAR EXPANSION SLOWS
太陽発電の拡大が失速
European Photovoltaic Industry Associationの出した準備段階の報告書によると、世界全体としての太陽光発電の発電量は100GWに達したが、年間の設置件数はそれまで伸び続けていたものの、2012年度は失速を見せた。特にヨーロッパではスペインとイタリアの減少が顕著であった。ちなみに日本は増加。

NEWS IN FOCUS
Cold telescope faces hot death
冷たい望遠鏡が熱い死に直面する
星の形成を明らかにし、超新星爆発を起源とするダストを追跡したのち、Herschel宇宙観測所に終わりが近づいている。

Australia’s plans for sea havens ‘flawed’
オーストラリアの海の安息所を作る計画が台無しに
海域の保護の程度を巡って疑問が生じている。

FEATURES
Radio astronomy: The patchwork array
放射線天文学:パッチワークの配列
長きにわたる遅延とコストオーバーののち、ついに国際協力が世界で最も高い地(アタカマ砂漠)に放射線望遠鏡の建設を行っている。

COMMENT
Quasars still defy explanation
クエーサーは未だに説明を不可能にしている
発見から50年が経つも、クエーサーが何故そんなにも大きなエネルギーを放つのかは分かっておらず、「天文学者はもっと頑張って考えなければならない」、とRobert Antonucciは言う。

CORRESPONDENCE
Marine monitoring is hard and costly
海洋のモニタリングは大変でコスト高
Miguel Pessanha Pais
漁業資源を管理する目的で、ある種の魚や海洋生態系全体のモニタリングが政策として決定される中、依然として海洋の広い環境・生物プロセスをモニタリングすることは難しく、そしてコストがかさむ。

CAREERS
A calculated risk
計算されたリスク
Bryn Nelson
分析志向の科学者やエンジニアは自然災害リスク評価の分野で引っ張りだこである。

Foreign students wanted
外国の学生求む
オーストラリア政府は国際的な科学の才能を引き寄せるための手段を講じる予定。

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SPECIALS 'GOLD'
特集 ’金’

Gold

Herb Brody
金は科学において重要な役割を担ってきた。金はナノテクノロジーやITの急速な発展も可能にした。金の高騰により、これまで採掘されなかった場所に企業は目を付けはじめ、さらにリサイクル産業によって電子機器類などから金は回収されるようになった。さらに溶存金から固体の金を沈着させるバクテリアも最近発見された。

Resources: Mine, all mine!
資源:私のもの、すべて私のもの!
Neil Savage
歴史上、金は世界中でもっとも崇められ、探求されてきた。しかしそれらはどこから来て、そしてどこへ行くのだろう?

Mining: Extreme prospects
鉱業:異常な期待
Brian Owens
金の価格の高騰により、風変わりな場所でも金探しが始まっている。

Perspective: A glint of the future
視点:未来のきらめき
Anatoly V. Zayats
ナノフォトニクス分野での金の使用法の紹介。

Photonics: Trick of the light
光学:光のトリック
Neil Savage
光工学分野での金の使用法の紹介。

Catalysis: The accelerator
触媒:加速器
Mark Peplow
金はあらゆる化学反応を加速させるが、それが産業界で広く使われていないのは何故だろう?

Microbiology: There's gold in them there bugs
微生物学:ばい菌の中にも金がある
Peter Gwynne
微生物による錬金術が、金の検出や金の生産における新たな道を切り開く。

Biomedicine: The new gold standard
生体医学:新たな基準
Karen Weintraub
医療分野における金の新たな使用法についての紹介。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Core composition revealed
コアの組成が明らかに
Lidunka Vočadlo
実験から、外核に存在する軽元素は、「酸素とケイ素である」という仮説が強化された。

LETTERS
Water and hydrogen are immiscible in Earth’s mantle
地球のマントルにおいて水と水素は混ざらない
Enikő Bali, Andreas Audétat & Hans Keppler
地球のマントルにおいて水と水素は混ざらずに別々の状態で存在していることが実験から示された。マントルの還元的な環境が作り出していると考えられ、さらにコアが形成された際に上部マントルが急速に酸化されたことの説明となるかもしれない。

Naturally occurring allele diversity allows potato cultivation in northern latitudes
自然発生的な対立遺伝子の多様性がじゃがいもの高緯度での耕作を可能に
Bjorn Kloosterman et al.