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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年3月24日日曜日

新着論文(GRL, PO, JGR, CP, BG)

GRL
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。

Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。

Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。

Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。

Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。

Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。

Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。

Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。

JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。

Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。

Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。

Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。

Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。

Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。

Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。

Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。

Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。

Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。

Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。