G3
Westerly jet–East Asian summer monsoon connection during the holocene
Kana Nagashima, Ryuji Tada, Shin Toyoda
日本海から得られた堆積物中のダストの化学分析から、完新世の東アジアモンスーンと偏西風の変動を復元。ゴビ砂漠とタクラマカン砂漠起源のダストが千年〜数千年スケールで変動を示している。偏西風の位置の変動が東アジアモンスーンの降水にも影響をしており、中国大陸の南北での対照的な変動を生み出していると思われる。
GRL
Unprecedented recent summer warmth in Arctic Canada
Gifford H. Miller, Scott J. Lehman, Kurt A. Refsnider, John R. Southon, Yafang Zhong
近年北極海においては海氷・氷河の後退などが報告されているが、それが自然変動の範疇にあるかははっきりとしていない。ツンドラに自生する植物の放射性炭素年代測定から、カナダ北極圏東部においては最近が過去44kaで最も温暖であり、過去5kaの寒冷化の傾向を打ち消していることが示唆された(完新世初期に特に温暖だった)。
Efficient gas exchange between a boreal river and the atmosphere
Jussi Huotari, Sami Haapanala, Jukka Pumpanen, Timo Vesala, Anne Ojala
河川における炭素循環はあまりよく分かっていない。フィンランドにおける30日間に渡る炭酸系の観測から、二酸化炭素に関するガス輸送速度を推定したところ、従来考えられていたよりも高い値が得られ、河川からのCO2フラックスが大きいことが示唆された。
JGR-Oceans
Wave power variability and trends across the North Pacific
Peter D. Bromirski, Daniel R. Cayan, John Helly, Paul Wittmann
1948年以降の北太平洋における波の力(wave power)の変動を議論。ENSO・レジームシフト・PDOなどとの関連性。
New zealand 20th century sea level rise: Resolving the vertical land motion using space geodetic and geological data
Abdelali Fadil, Paul Denys, Robert Tenzer, Hugh R. Grenfell, Pascal Willis
20世紀のニュージーランドの海水準は1.46±0.10 mm/yrで上昇している。潮位計と海水面の衛星観測記録から土地の隆起の影響を評価。海水準上昇には数十年スケールの3つのフェーズが見られることが分かった。
Temporal variability of transformation, formation and subduction rates of upper Southern Ocean waters
Eun Young Kwon
南大洋の表層・中層水の挙動を動力学的・熱力学的に評価し、海洋循環モデルを用いて亜南極モード水(SAMW)の数十年規模のモデリングを行った。冬季に混合層の水が収束し、それに続く春に等密度線に沿って沈み込み、さらに春の表層水の温暖化によって密度的に蓋をされるプロセス(成層化)がSAMWの形成に重要であることが分かった。SAMWは年々変動を示し、主に混合層の深さと関連が大きいことが分かった。また、SAMとは直接的に関係していないものの、エクマン沈降・湧昇プロセスを通じて間接的に関係していると思われる。
Widespread freshening in the seasonal ice zone near 140°E off the Adélie Land Coast, Antarctica, from 1994 to 2012
S. Aoki, Y. Kitade, K. Shimada, K.I. Ohshima, T. Tamura, C.C. Bajish, M. Moteki, S.R. Rintoul
南極沖の140ºE線で行われている1994-2012年の定期観測記録から、近年の表層水から底層水のすべてに淡水化の傾向が見られた。2012年には底層水塊の厚さが異常に薄く、Mertz氷舌(glacier tongue; 氷河末端)の急激な崩壊とそれに伴う海氷形成の減少との関連が示唆される。
Paleoceanography
Influence of seawater exchanges across the Bab-el-Mandab Strait on sedimentation in the Southern Red Sea during the last 60 ka.
Alexandra Bouilloux, Jean-Pierre Valet, Franck Bassinot, Jean-Louis Joron, Fabien Dewilde, Marie-Madeleine Blanc-Valleron, Eva Moreno
紅海の南端で得られた堆積物コアのMS・TOC・浮遊性有孔虫δ13Cなどから、過去60kaの気候変動を復元。氷期-間氷期スケールの変動、D/Oイベント・最終退氷期の海水準上昇に伴う大陸棚の浸水と岩屑物の堆積イベントなどが見られる。
Recovering the true size of an Eocene hyperthermal from the marine sedimentary record
Sandra Kirtland Turner, Andy Ridgwell
地球システムモデル(cGENIE)を用いて小規模なMECO(Cnn2H3; ~49.2Ma)温暖化イベントの規模・継続期間、炭素インプット速度などを推定。さらに堆積プロセスのモデル化も行い、真の炭素擾乱を推定。ODP1258コアの底性有孔虫δ13Cの-0.95‰のエクスカージョンは大気中CO2のδ13Cの-1.45‰の変化があれば説明できることが示された。従来法の推定から得られる量よりも2/3大きい炭素インプットが必要であると思われる。
GBC
Variability of the Oxygen Minimum Zone in the Tropical North Pacific during the Late 20th Century
Takamitsu Ito, Curtis Deutsch
海洋物理・生物地球化学モデルを用いて1980年代以降の東太平洋熱帯域の酸素極小層(OMZ)の拡大の原因を評価。
Climate of the Past
Holocene climate variability in the winter rainfall zone of South Africa
S. Weldeab, J.-B. W. Stuut, R. R. Schneider, and W. Siebel
アフリカ南東部沖で得られた堆積物コアの浮遊性有孔虫δ18O・δ13C・87/86Sr・εNdを用いて完新世の気候変動を復元。小氷期に最も湿潤な期間があり、南半球の偏西風の北方シフトと関連していると思われる。さらにAgulhas leakageや南極氷床へのダスト量などとの関係性も議論。
Pre-LGM Northern Hemisphere ice sheet topography
J. Kleman, J. Fastook, K. Ebert, J. Nilsson, and R. Caballero
地質調査や数値モデルなどを組み合わせてMIS5bとMIS4の北半球氷床の高度・範囲などを推定。MIS5bから徐々に北半球の氷床が成長し4つほどとなり、MIS4には大規模氷床の数はほぼMIS5b時と同じで、その後LGMに北米氷床は一つに融合したと思われる。
Eurasian Arctic climate over the past millennium as recorded in the Akademii Nauk ice core (Severnaya Zemlya)
T. Opel, D. Fritzsche, and H. Meyer
ロシアのセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島において得られたアイスコアのδ18OとNaなどから過去1100年間の気候変動を復元。AD1800頃に最も寒冷であった。20世紀初頭には異常な2つのピークが確認された。δ18Oには小氷期も中世気候変調期の変動も検出されなかったが、他の時期には温暖化・寒冷化イベントなどが確認され、大気循環の変動と関連していると思われる。
Re-evaluation of the age model for North Atlantic Ocean Site 982 – arguments for a return to the original chronology
K. T. Lawrence, I. Bailey, and M. E. Raymo
ODP982の年代モデルの再考。Gauss–Matuyamaクロンの位置には影響はないが、3.2-3.0Maにハイエタスが確認された。
Biogeosciences
Technical Note: Precise quantitative measurements of total dissolved inorganic carbon from small amounts of seawater using a gas chromatographic system
T. Hansen, B. Gardeler, and B. Matthiessen
クロマトグラフィーを用いて海水中の全炭酸を精度良く測ることのできる新手法を開発。
Global atmospheric carbon budget: results from an ensemble of atmospheric CO2 inversions
P. Peylin, R. M. Law, K. R. Gurney, F. Chevallier, A. R. Jacobson, T. Maki, Y. Niwa, P. K. Patra, W. Peters, P. J. Rayner, C. Rödenbeck, I. T. van der Laan-Luijkx, and X. Zhang
大気CO2観測記録から過去20年間の炭素のソース・シンクなどについて議論。
地球の「過去」「現在」「未来」の気候変動・環境問題などを書き綴ります。人為的気候変化への適応・緩和が緊急性を帯びている昨今、人間活動の影響がない地質時代の古気候・古海洋研究もまた多くの知見を提供しています。
2013年10月28日月曜日
2013年9月17日火曜日
新着論文(BG, CP)
◎Biogeosciences
Role of regression model selection and station distribution on the estimation of oceanic anthropogenic carbon change by eMLR
Y. Plancherel, K. B. Rodgers, R. M. Key, A. R. Jacobson, and J. L. Sarmiento
海水中の人為起源のDIC量を正確に推定することは自然変動のために難しい。eMLR法によって、経験的な重回帰分析を行うことでそうした自然変動の影響をなくすことができる(らしい?)。
Summertime calcium carbonate undersaturation in shelf waters of the western Arctic Ocean – how biological processes exacerbate the impact of ocean acidification
N. R. Bates, M. I. Orchowska, R. Garley, and J. T. Mathis
北極海の西部、チュクチ海では2009年〜2011年にかけて底層水の飽和度が季節的に不飽和状態になっていたことが分かっている。カルサイトとアラゴナイトに関する飽和度の季節変化はそれぞれ0.8と0.5で、一年のほとんどを通して底性生物殻や堆積物に影響を与えていると思われる。それを引き起こすメカニズムは大気とのCO2交換、植物プランクトンによる光合成、有機物生成+分解・融水の流入・石灰化などが複雑に関連していると考えられ、(まだ多くのことが不確かなままであるが)、将来も継続して監視する必要がある。
◎Climate of the Past
Mid-pliocene Atlantic Meridional Overturning Circulation not unlike modern
Z.-S. Zhang, K. H. Nisancioglu, M. A. Chandler, A. M. Haywood, B. L. Otto-Bliesner, G. Ramstein, C. Stepanek, A. Abe-Ouchi, W.-L. Chan, F. J. Bragg, C. Contoux, A. M. Dolan, D. J. Hill, A. Jost, Y. Kamae, G. Lohmann, D. J. Lunt, N. A. Rosenbloom, L. E. Sohl, and H. Ueda
PlioMIPによる8つの気候モデルによるPlioceneのAMOCの復元結果を調べたところ、一つとしてプロキシから示唆されているような強化を再現していなかった。共通して確認されたのはAMOCの沈み込みの浅化で、原因としてはNADWの影響が弱くなったことが考えられる。また北向き輸送も現在と同程度と推定され、高緯度域の温暖化を説明するのに「AMOCが強化された」というのは当てはまらないと思われる。
An optimized multi-proxy, multi-site Antarctic ice and gas orbital chronology (AICC2012): 120–800 ka
L. Bazin, A. Landais, B. Lemieux-Dudon, H. Toyé Mahamadou Kele, D. Veres, F. Parrenin, P. Martinerie, C. Ritz, E. Capron, V. Lipenkov, M.-F. Loutre, D. Raynaud, B. Vinther, A. Svensson, S. O. Rasmussen, M. Severi, T. Blunier, M. Leuenberger, H. Fischer, V. Masson-Delmotte, J. Chappellaz, and E. Wolff
NGRIP・TALDICE・EDML・Vostok・EDCのすべてのアイスコアの共通年代モデル(AICC2012)を過去800kaまで延伸。大気中のδ18Oの測定によってアイスコア間の年代を繋ぐことが可能に。他の年代モデル(EDC3・Dome Fなど)との違いはそれほど大きくなかった(例えばMIS5でEDC3との違いが5400年)。
The Antarctic ice core chronology (AICC2012): an optimized multi-parameter and multi-site dating approach for the last 120 thousand years
D. Veres, L. Bazin, A. Landais, H. Toyé Mahamadou Kele, B. Lemieux-Dudon, F. Parrenin, P. Martinerie, E. Blayo, T. Blunier, E. Capron, J. Chappellaz, S. O. Rasmussen, M. Severi, A. Svensson, B. Vinther, and E. W. Wolff
南極アイスコア(TALDICE・EDML・Vostok・EDC)とグリーンランドアイスコア(NGRIP)の共通年代モデルを南極アイスコアをベースに作成(AICC2012)。特に120kaに焦点を当てると、氷期の開始(glacial inception)のタイミングが改善され、さらにδ15N測定によって大気捕獲深度(lock-in depth)が改善した。それによってMIS3のタイミングが改善し、グリーンランドアイスコアのピークよりも数百年先に南極アイスコアのピークが最大となることが示された。60.2kaまではNGRIPの年代モデルはGICC05とAICC2012と同一。
Tropical vegetation response to Heinrich Event 1 as simulated with the UVic ESCM and CCSM3
D. Handiani, A. Paul, M. Prange, U. Merkel, L. Dupont, and X. Zhang
HS1の際の大西洋熱帯域の植生の応答を調べるために、2つの気候モデル(UVic ESCM、CCSM3)を用いて再現実験。AMOCの弱化とITCZの南下がともに再現されている。モデル間の食い違いが確認されたものの、概ねアフリカ西部やブラジル北東部の花粉復元記録と整合的。
A reconstruction of radiocarbon production and total solar irradiance from the Holocene 14C and CO2 records: implications of data and model uncertainties
R. Roth and F. Joos
EMICsにIntCal09/SHCal04のΔ14C・アイスコアCO2・地磁気変動・黒点数などの変数を与え、過去21kaの14Cの大気生成量・太陽活動・総放射量(TSI)などを計算。完新世におけるTSIの変動は1W/m2のオーダーで非常に小さく、マウンダー極小期でも0.85±0.16W/m2程度にしか低下していなかった。また21世紀を通してTSIは完新世の平均値よりも低くなると思われる。
◎その他
Risks to coral reefs from ocean carbonate chemistry changes in recent earth system model projections
K L Ricke, J C Orr, K Schneider and K Caldeira
Environmental Research Letters 8 (2013)
CMIP5に参加した地球システムモデルを用いてアラゴナイト不飽和度の将来予測。産業革命前にはΩが3.5を超すサンゴ礁が99.9%であったものの、RCP8.5排出シナリオのもとでは21世紀末にすべてのサンゴ礁でΩが3を下回り、種ごとの応答の閾値にはほとんど関係がないことが示された。一方CO2排出が管理された場合、閾値を超すかどうかがサンゴ礁の命運を決めることが示された。Ωを3.5以上に維持するにはかなりアグレッシブな削減努力が必要となる。
A high-throughput system for boron microsublimation and isotope analysis by total evaporation thermal ionization mass spectrometry
Yi-Wei Liu, Sarah M. Aciego, Alan D. Wanamaker Jr., Bryan K. Sell
Rapid Communications in Mass Spectrometry 27, 1705–1714 (2013)
超微少量(<1ng)でホウ素同位体を測定する手法について。研究室のサンゴ試料で再現性が1.17‰(2STD, n=14)。
Role of regression model selection and station distribution on the estimation of oceanic anthropogenic carbon change by eMLR
Y. Plancherel, K. B. Rodgers, R. M. Key, A. R. Jacobson, and J. L. Sarmiento
海水中の人為起源のDIC量を正確に推定することは自然変動のために難しい。eMLR法によって、経験的な重回帰分析を行うことでそうした自然変動の影響をなくすことができる(らしい?)。
Summertime calcium carbonate undersaturation in shelf waters of the western Arctic Ocean – how biological processes exacerbate the impact of ocean acidification
N. R. Bates, M. I. Orchowska, R. Garley, and J. T. Mathis
北極海の西部、チュクチ海では2009年〜2011年にかけて底層水の飽和度が季節的に不飽和状態になっていたことが分かっている。カルサイトとアラゴナイトに関する飽和度の季節変化はそれぞれ0.8と0.5で、一年のほとんどを通して底性生物殻や堆積物に影響を与えていると思われる。それを引き起こすメカニズムは大気とのCO2交換、植物プランクトンによる光合成、有機物生成+分解・融水の流入・石灰化などが複雑に関連していると考えられ、(まだ多くのことが不確かなままであるが)、将来も継続して監視する必要がある。
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| Bates et al.を改変。 様々なプロセスがΩの変動に関与しており、まだまだ観測も足りず、分からないことだらけ |
◎Climate of the Past
Mid-pliocene Atlantic Meridional Overturning Circulation not unlike modern
Z.-S. Zhang, K. H. Nisancioglu, M. A. Chandler, A. M. Haywood, B. L. Otto-Bliesner, G. Ramstein, C. Stepanek, A. Abe-Ouchi, W.-L. Chan, F. J. Bragg, C. Contoux, A. M. Dolan, D. J. Hill, A. Jost, Y. Kamae, G. Lohmann, D. J. Lunt, N. A. Rosenbloom, L. E. Sohl, and H. Ueda
PlioMIPによる8つの気候モデルによるPlioceneのAMOCの復元結果を調べたところ、一つとしてプロキシから示唆されているような強化を再現していなかった。共通して確認されたのはAMOCの沈み込みの浅化で、原因としてはNADWの影響が弱くなったことが考えられる。また北向き輸送も現在と同程度と推定され、高緯度域の温暖化を説明するのに「AMOCが強化された」というのは当てはまらないと思われる。
An optimized multi-proxy, multi-site Antarctic ice and gas orbital chronology (AICC2012): 120–800 ka
L. Bazin, A. Landais, B. Lemieux-Dudon, H. Toyé Mahamadou Kele, D. Veres, F. Parrenin, P. Martinerie, C. Ritz, E. Capron, V. Lipenkov, M.-F. Loutre, D. Raynaud, B. Vinther, A. Svensson, S. O. Rasmussen, M. Severi, T. Blunier, M. Leuenberger, H. Fischer, V. Masson-Delmotte, J. Chappellaz, and E. Wolff
NGRIP・TALDICE・EDML・Vostok・EDCのすべてのアイスコアの共通年代モデル(AICC2012)を過去800kaまで延伸。大気中のδ18Oの測定によってアイスコア間の年代を繋ぐことが可能に。他の年代モデル(EDC3・Dome Fなど)との違いはそれほど大きくなかった(例えばMIS5でEDC3との違いが5400年)。
The Antarctic ice core chronology (AICC2012): an optimized multi-parameter and multi-site dating approach for the last 120 thousand years
D. Veres, L. Bazin, A. Landais, H. Toyé Mahamadou Kele, B. Lemieux-Dudon, F. Parrenin, P. Martinerie, E. Blayo, T. Blunier, E. Capron, J. Chappellaz, S. O. Rasmussen, M. Severi, A. Svensson, B. Vinther, and E. W. Wolff
南極アイスコア(TALDICE・EDML・Vostok・EDC)とグリーンランドアイスコア(NGRIP)の共通年代モデルを南極アイスコアをベースに作成(AICC2012)。特に120kaに焦点を当てると、氷期の開始(glacial inception)のタイミングが改善され、さらにδ15N測定によって大気捕獲深度(lock-in depth)が改善した。それによってMIS3のタイミングが改善し、グリーンランドアイスコアのピークよりも数百年先に南極アイスコアのピークが最大となることが示された。60.2kaまではNGRIPの年代モデルはGICC05とAICC2012と同一。
Tropical vegetation response to Heinrich Event 1 as simulated with the UVic ESCM and CCSM3
D. Handiani, A. Paul, M. Prange, U. Merkel, L. Dupont, and X. Zhang
HS1の際の大西洋熱帯域の植生の応答を調べるために、2つの気候モデル(UVic ESCM、CCSM3)を用いて再現実験。AMOCの弱化とITCZの南下がともに再現されている。モデル間の食い違いが確認されたものの、概ねアフリカ西部やブラジル北東部の花粉復元記録と整合的。
A reconstruction of radiocarbon production and total solar irradiance from the Holocene 14C and CO2 records: implications of data and model uncertainties
R. Roth and F. Joos
EMICsにIntCal09/SHCal04のΔ14C・アイスコアCO2・地磁気変動・黒点数などの変数を与え、過去21kaの14Cの大気生成量・太陽活動・総放射量(TSI)などを計算。完新世におけるTSIの変動は1W/m2のオーダーで非常に小さく、マウンダー極小期でも0.85±0.16W/m2程度にしか低下していなかった。また21世紀を通してTSIは完新世の平均値よりも低くなると思われる。
◎その他
Risks to coral reefs from ocean carbonate chemistry changes in recent earth system model projections
K L Ricke, J C Orr, K Schneider and K Caldeira
Environmental Research Letters 8 (2013)
CMIP5に参加した地球システムモデルを用いてアラゴナイト不飽和度の将来予測。産業革命前にはΩが3.5を超すサンゴ礁が99.9%であったものの、RCP8.5排出シナリオのもとでは21世紀末にすべてのサンゴ礁でΩが3を下回り、種ごとの応答の閾値にはほとんど関係がないことが示された。一方CO2排出が管理された場合、閾値を超すかどうかがサンゴ礁の命運を決めることが示された。Ωを3.5以上に維持するにはかなりアグレッシブな削減努力が必要となる。
A high-throughput system for boron microsublimation and isotope analysis by total evaporation thermal ionization mass spectrometry
Yi-Wei Liu, Sarah M. Aciego, Alan D. Wanamaker Jr., Bryan K. Sell
Rapid Communications in Mass Spectrometry 27, 1705–1714 (2013)
超微少量(<1ng)でホウ素同位体を測定する手法について。研究室のサンゴ試料で再現性が1.17‰(2STD, n=14)。
2013年7月15日月曜日
新着論文(BG, PALAEO3, QR)
Biogeosciences
Photosynthate translocation increases in response to low seawater pH in a coral–dinoflagellate symbiosis
P. Tremblay, M. Fine, J. F. Maguer, R. Grover, and C. Ferrier-Pagès
海洋酸性化が温帯サンゴ(Stylophora pistillata)の光合成に与える影響を6ヶ月の酸性化実験から評価。pH=7.2では共生藻密度が低下し、光合成・炭素取り込み量が低下した。しかし、ホストと共生藻1つあたりの炭素の輸送量は増加しており、pHが低下した状態でもサンゴが共生藻から受け取る炭素量自体には変化がないことが示された。ただし必要な炭素量は不足しているため、こうした状態が長期間持続すると悪影響が生じると思われる。観測期間が短く長期的なトレンドははっきりとは見えないが、生物地球化学モデルは10年間に-0.05 PgC/yrの割合でCO2取り込みが増加していることを示唆している(大気pCO2が増加しているため)。
Seasonality of CO2 in coastal oceans altered by increasing anthropogenic nutrient delivery from large rivers: evidence from the Changjiang–East China Sea system
W.-C. Chou, G.-C. Gong, W.-J. Cai, and C.-M. Tseng
モデル研究から沿岸部のCO2の取り込み量は栄養流入量が増えたことによって増加している可能性が指摘されている。長江-東シナ海流域における表層・底層水のpCO2を2008年から2011年にかけて測定した。
pCO2の季節変動は長江の河口付近で最大で、沖に行くにつれて小さくなった。夏には長江からもたらされる栄養に富んだ軽い水のプルームが成層化を促し、また生物生産も盛んになるため表層水のDICは低下し、逆に大陸棚の底層水のDICは増加している。冬には混合が盛んになるため、低層の濃いDICが表層にもたらされている。1990年代の記録と比較すると、pCO2の鉛直構造が変化しており、表層のpCO2は減少傾向、底層のpCO2は増加傾向にある。原因としては富栄養化が考えられ、生物ポンプによるDICの下方輸送が増加していることが考えられる。従って、富栄養化によって沿岸部のCO2の取り込みは必ずしも増加しているわけではなく、「季節ごとのpCO2の差」や「沿岸から沖への輸送」まで含めて総合的に評価する必要があることを物語っている。
Sea–air CO2 fluxes in the Southern Ocean for the period 1990–2009
A. Lenton, B. Tilbrook, R. M. Law, D. Bakker, S. C. Doney, N. Gruber, M. Ishii, M. Hoppema, N. S. Lovenduski, R. J. Matear, B. I. McNeil, N. Metzl, S. E. Mikaloff Fletcher, P. M. S. Monteiro, C. Rödenbeck, C. Sweeney, and T. Takahashi
南大洋における限られたpCO2観測記録、生物地球化学モデル、大気海洋逆解析モデルを用いて1990-2009年における大気-海洋間のフラックスの大きさや変動を推定。44-75ºSではシンクとなっており、pCO2観測からは−0.27 ± 0.13 PgC/yr、モデルからは−0.42 ± 0.07 PgC/yrと推定される。一方、南極周辺の58ºSでは正味のフラックスはゼロに近く、44-58ºSがもっとも大きなシンクであった。58ºS以南ではどのモデルも観測されたpCO2変動(特に南半球の冬)を再現できていなかった。
A novel method for diagnosing seasonal to inter-annual surface ocean carbon dynamics from bottle data using neural networks
T. P. Sasse, B. I. McNeil, and G. Abramowitz
全球の混合層の水温・塩分・溶存酸素・栄養塩から経験的に炭酸系(DOCとTA)を制約できるかどうかを評価。self-organizing multiple linear output (SOMLO)と名付けられたこの手法では、非線形的な炭酸塩の挙動のうち、DICに対して19%の予測精度が実現しているそう(10.9 μmol/Kg以下)。
Air–sea exchange of CO2 at a Northern California coastal site along the California Current upwelling system
H. Ikawa, I. Faloona, J. Kochendorfer, K. T. Paw U, and W. C. Oechel
沿岸湧昇帯ではDICに富んだ深層水がCO2を大気に放出する一方で活発な生物ポンプがCO2を大気から取り込んでおり、正味でCO2のソースになっているか/シンクになっているかがはっきりと分かっていない。2011-2011年においてカリフォルニアのBodega湾で行われたpCO2の測定から、夏の湧昇期にはCO2の大きなソースになっており、秋には弱いソースとなっていたことが示された。水温と塩分変動と関連が大きいことが分かった。
PALAEO3
Mid-late Holocene monsoonal variations from mainland Gujarat, India: A multi-proxy study for evaluating climate culture relationship
Vandana Prasad , Anjum Farooqui , Anupam Sharma , Binita Phartiyal , Supriyo Chakraborty , Subhash Bhandari , Rachna Raj , Abha Singh
インド北西部のWadhwana湖で得られた堆積物コアのプラント・オパール(phytolith)、粘土鉱物、δ13C、残留磁気を測定し、過去8kaの気候変動とインダス文明との関係性を考察。4.2kaにおける環境悪化(乾燥化)とハラッパー文明の後退には関連性があったかも?
Quantification of climate change for the last 20,000 years from Wonderkrater, South Africa: implications for the long-term dynamics of the Intertropical Convergence Zone
Loïc Truc , Manuel Chevalier , Charly Favier , Rachid Cheddadi , Michael E. Meadows , Louis Scott , Andrew S. Carr , Gideon F. Smith , Brian M. Chase
アフリカ南東部のspring moundから得られた花粉を用いて21ka以降の気温・降水量を復元。LGMは降水量が50%低下しており、気温は6℃ほど低かったと考えられる。最終退氷期の気候変動はITCZよりもむしろ水温変動によって支配されていた。
Quaternary Research
100,000-year-long terrestrial record of millennial-scale linkage between eastern North American mid-latitude paleovegetation shifts and Greenland ice-core oxygen isotope trends
Ronald J. Litwin, Joseph P. Smoot , Milan J. Pavich, Helaine W. Markewich, George Brook, Nancy J. Durika
アメリカ北東部のHybla Valleyで得られた堆積物コア記録から過去100kaの陸域の記録を復元。花粉記録から復元される植生の変動は氷期において北半球全体で確認されている千年スケールの気候変動(D/Oサイクル)との同期を示している。
Photosynthate translocation increases in response to low seawater pH in a coral–dinoflagellate symbiosis
P. Tremblay, M. Fine, J. F. Maguer, R. Grover, and C. Ferrier-Pagès
海洋酸性化が温帯サンゴ(Stylophora pistillata)の光合成に与える影響を6ヶ月の酸性化実験から評価。pH=7.2では共生藻密度が低下し、光合成・炭素取り込み量が低下した。しかし、ホストと共生藻1つあたりの炭素の輸送量は増加しており、pHが低下した状態でもサンゴが共生藻から受け取る炭素量自体には変化がないことが示された。ただし必要な炭素量は不足しているため、こうした状態が長期間持続すると悪影響が生じると思われる。観測期間が短く長期的なトレンドははっきりとは見えないが、生物地球化学モデルは10年間に-0.05 PgC/yrの割合でCO2取り込みが増加していることを示唆している(大気pCO2が増加しているため)。
Seasonality of CO2 in coastal oceans altered by increasing anthropogenic nutrient delivery from large rivers: evidence from the Changjiang–East China Sea system
W.-C. Chou, G.-C. Gong, W.-J. Cai, and C.-M. Tseng
モデル研究から沿岸部のCO2の取り込み量は栄養流入量が増えたことによって増加している可能性が指摘されている。長江-東シナ海流域における表層・底層水のpCO2を2008年から2011年にかけて測定した。
pCO2の季節変動は長江の河口付近で最大で、沖に行くにつれて小さくなった。夏には長江からもたらされる栄養に富んだ軽い水のプルームが成層化を促し、また生物生産も盛んになるため表層水のDICは低下し、逆に大陸棚の底層水のDICは増加している。冬には混合が盛んになるため、低層の濃いDICが表層にもたらされている。1990年代の記録と比較すると、pCO2の鉛直構造が変化しており、表層のpCO2は減少傾向、底層のpCO2は増加傾向にある。原因としては富栄養化が考えられ、生物ポンプによるDICの下方輸送が増加していることが考えられる。従って、富栄養化によって沿岸部のCO2の取り込みは必ずしも増加しているわけではなく、「季節ごとのpCO2の差」や「沿岸から沖への輸送」まで含めて総合的に評価する必要があることを物語っている。
Sea–air CO2 fluxes in the Southern Ocean for the period 1990–2009
A. Lenton, B. Tilbrook, R. M. Law, D. Bakker, S. C. Doney, N. Gruber, M. Ishii, M. Hoppema, N. S. Lovenduski, R. J. Matear, B. I. McNeil, N. Metzl, S. E. Mikaloff Fletcher, P. M. S. Monteiro, C. Rödenbeck, C. Sweeney, and T. Takahashi
南大洋における限られたpCO2観測記録、生物地球化学モデル、大気海洋逆解析モデルを用いて1990-2009年における大気-海洋間のフラックスの大きさや変動を推定。44-75ºSではシンクとなっており、pCO2観測からは−0.27 ± 0.13 PgC/yr、モデルからは−0.42 ± 0.07 PgC/yrと推定される。一方、南極周辺の58ºSでは正味のフラックスはゼロに近く、44-58ºSがもっとも大きなシンクであった。58ºS以南ではどのモデルも観測されたpCO2変動(特に南半球の冬)を再現できていなかった。
A novel method for diagnosing seasonal to inter-annual surface ocean carbon dynamics from bottle data using neural networks
T. P. Sasse, B. I. McNeil, and G. Abramowitz
全球の混合層の水温・塩分・溶存酸素・栄養塩から経験的に炭酸系(DOCとTA)を制約できるかどうかを評価。self-organizing multiple linear output (SOMLO)と名付けられたこの手法では、非線形的な炭酸塩の挙動のうち、DICに対して19%の予測精度が実現しているそう(10.9 μmol/Kg以下)。
Air–sea exchange of CO2 at a Northern California coastal site along the California Current upwelling system
H. Ikawa, I. Faloona, J. Kochendorfer, K. T. Paw U, and W. C. Oechel
沿岸湧昇帯ではDICに富んだ深層水がCO2を大気に放出する一方で活発な生物ポンプがCO2を大気から取り込んでおり、正味でCO2のソースになっているか/シンクになっているかがはっきりと分かっていない。2011-2011年においてカリフォルニアのBodega湾で行われたpCO2の測定から、夏の湧昇期にはCO2の大きなソースになっており、秋には弱いソースとなっていたことが示された。水温と塩分変動と関連が大きいことが分かった。
PALAEO3
Mid-late Holocene monsoonal variations from mainland Gujarat, India: A multi-proxy study for evaluating climate culture relationship
Vandana Prasad , Anjum Farooqui , Anupam Sharma , Binita Phartiyal , Supriyo Chakraborty , Subhash Bhandari , Rachna Raj , Abha Singh
インド北西部のWadhwana湖で得られた堆積物コアのプラント・オパール(phytolith)、粘土鉱物、δ13C、残留磁気を測定し、過去8kaの気候変動とインダス文明との関係性を考察。4.2kaにおける環境悪化(乾燥化)とハラッパー文明の後退には関連性があったかも?
Quantification of climate change for the last 20,000 years from Wonderkrater, South Africa: implications for the long-term dynamics of the Intertropical Convergence Zone
Loïc Truc , Manuel Chevalier , Charly Favier , Rachid Cheddadi , Michael E. Meadows , Louis Scott , Andrew S. Carr , Gideon F. Smith , Brian M. Chase
アフリカ南東部のspring moundから得られた花粉を用いて21ka以降の気温・降水量を復元。LGMは降水量が50%低下しており、気温は6℃ほど低かったと考えられる。最終退氷期の気候変動はITCZよりもむしろ水温変動によって支配されていた。
Quaternary Research
100,000-year-long terrestrial record of millennial-scale linkage between eastern North American mid-latitude paleovegetation shifts and Greenland ice-core oxygen isotope trends
Ronald J. Litwin, Joseph P. Smoot , Milan J. Pavich, Helaine W. Markewich, George Brook, Nancy J. Durika
アメリカ北東部のHybla Valleyで得られた堆積物コア記録から過去100kaの陸域の記録を復元。花粉記録から復元される植生の変動は氷期において北半球全体で確認されている千年スケールの気候変動(D/Oサイクル)との同期を示している。
2013年6月24日月曜日
新着論文(BG, EPSL, QSR)
Biogeosciences
Analysis of a 39-year continuous atmospheric CO2 record from Baring Head, New Zealand
B. B. Stephens, G. W. Brailsford, A. J. Gomez, K. Riedel, S. E. Mikaloff Fletcher, S. Nichol, and M. Manning
ニュージーランドのBaring Headで測定されている39年間の長期大気CO2観測記録を用いて、その変動要因を考察。ENSOの変動周期と同期した年々変動が確認された。東西方向の風が強化された結果、南大洋のCO2吸収効率が減少していることが報告されているものの、南半球の中緯度と高緯度の大気CO2濃度の差からは変動が小さすぎて検出できなかった。
A new conceptual model of coral biomineralisation: hypoxia as the physiological driver of skeletal extension
S. Wooldridge
サンゴの骨格成長を決定するのは夜間の貧酸素状態であるという新たな石灰化モデルを提唱。またGBRのハマサンゴの成長速度が1900年代に入って急速に減少していることを新たなモデルを用いて説明。
EPSL
Glacial freshwater discharge events recorded by authigenic neodymium isotopes in sediments from the Mendeleev Ridge, western Arctic Ocean
Kwangchul Jang , Yeongcheol Han , Youngsook Huh , Seung-Il Nam , Ruediger Stein , Andreas Mackensen , Jens Matthiessen
北極海西部のMendeleev Ridgeで採取された堆積物コアの過去75ka分のεNdを測定。Polar Deep Water (PDW)の指標として使え、特にBarents–Kara氷床・ローレンタイド氷床などからの淡水供給の推定に使える。北極海への淡水供給量は大きく変動したが、NADWの形成に影響するほどではなかったと思われる。
Was the Antarctic glaciation delayed by a high degassing rate during the early Cenozoic?
Vincent Lefebvre, Yannick Donnadieu, Yves Goddéris, Frédéric Fluteau, Lucie Hubert-Théou
Eocene/Oligocene境界において南極に氷床が発達し始めた。またその際の全球の寒冷化は南大洋海路が開いたことと、同時に大気中CO2濃度が低下したことがその原因と考えられている。しかし、そうしたCO2減少に至ったメカニズムについては特によく分かっておらず、議論が活発になされている。
結合された気候-炭素循環モデル(GEOCLIM)を用いて、メカニズムを考察。CO2低下に必要だったのは、大陸移動によってITCZの影響下に北アフリカ・南米北部が移動したこと、さらにはEoceneの間にインドア大陸のDeccan玄武岩が風化したこと、OligoceneにEthipian Trapが風化したことによってCO2が吸収されたことと考えられる。またEoceneにおいて南極が氷河化しないようにするためには地球内部からのCO2脱ガスは50%高くなっていなければならなかったと考えられる。E/O境界のCO2濃度低下にはケイ質岩の風化よりもむしろ火山からの脱ガス量が減少したことが効いていたのではないかと思われる。さらに、その後さらにインド亜大陸・アフリカ大陸が移動したことで岩石化学風化が減少し、Mioceneの温暖期(大気中CO2濃度も上昇)が生じたのではないかと考えられる。そしてその後チベット高原の隆起とインド・アジアモンスーンの強化によって岩石風化がさらに促進し、現在のような新生代後期の寒冷気候に至ったと考えられる。
Australasian monsoon response to Dansgaard–Oeschger event 21 and teleconnections to higher latitudes
Michael L. Griffiths, Russell N. Drysdale, Michael K. Gagan, John C. Hellstrom, Isabelle Couchoud, Linda K. Ayliffe, Hubert B. Vonhof, Wahyoe S. Hantoro
氷期のD/Oイベントは主に北半球で見られる急激な気候変動イベントであるが、その際のWPWPやオーストラリア・モンスーンの変動についてはよく分かっていない。インドネシア南部のLiang Luar洞窟から得られた複数の鍾乳石のδ18O・δ13Cおよび流体包有物からD/O21(MIS5の後半)の小温暖期における気候変動を復元。東アジアのモンスーンが強化している一方で、インドネシアの降水量は低下しており、ITCZが北へ移動したと考えられる。さらにその際に気温も2~3℃上昇しており、土壌におけるメタン生成が増加したことが鍾乳石のδ13Cに記録されていると思われる。メタン濃度とCO2濃度の増加は温室効果によって全球の温暖化に寄与したと思われる。
The magnitude, timing and abruptness of changes in North African dust deposition over the last 20,000yr
D. McGee , P.B. deMenocal , G. Winckler , J.B.W. Stuut , L.I. Bradtmiller
北アフリカにおける砂漠起源のダストフラックスは気候にも大きな影響を与えており、過去においても重要であったと思われるが、それを定量的に復元できる高時間解像度の記録は限られている。アフリカ大陸の北西部の海岸に沿って(31ºN〜19ºN)堆積物を採取。粒径と230Thを用いて規格化したダスト・フラックスを組み合わせることで、過去20kaのダスト沈降を復元。HS1とYDにおいてはダスト・フラックスが急増しており、またアフリカの湿潤期(African Humid Period; AHP; ∼11.7–5 ka)には激減していることが分かった。今後のモデル研究に重要なデータとなると期待される。
QSR
Modelling past sea ice changes
H. Goosse , D.M. Roche , A. Mairesse , M. Berger
モデル内の海氷の再現の問題に関するレビュー。特にLGMの南大洋の海氷、完新世初期の北極海の夏の海氷範囲においてモデル間の大きな食い違いが見られるらしい。
Changes in silicate utilisation and upwelling intensity off Peru since the Last Glacial Maximum e insights from silicon and neodymium isotopes
C. Ehlert, P. Grasse, M. Frank
ペルー沖で採取された堆積物コアのεNdとδ30Siから過去20kaのケイ酸塩利用・水塊混合・湧昇の強度を復元。εNdの南北の傾きはローカルな風化による供給源を反映していると思われる。コーティングεNdは過去20kaでほとんど変化せず。一方で砕屑岩εNdは変動が見られ、堆積物の起源や輸送の変化を反映していると思われる。δ30Siの変動は湧昇の強さに変化があり、珪藻によるケイ酸利用が変化していたことを物語っている。特に過去5kaにENSOが強化している。
Role of sea ice in global biogeochemical cycles: emerging views and challenges
Martin Vancoppenolle , Klaus M. Meiners , Christine Michel , Laurent Bopp , Frédéric Brabant , Gauthier Carnat , Bruno Delille , Delphine Lannuzel , Gurvan Madec , Sébastien Moreau , Jean-Louis Tison , Pier van der Merwe
海氷域の生物地球化学循環のレビュー。近年「海氷のbrine(高塩分海水)にも生物が棲息し生物活動を行っていること」「海氷が海への鉄の供給を担っていること」「海氷を介しても大気海洋でCO2が交換されていること」が報告されるなど、大きなパラダイム・シフトが生じている。近年北極域は急速に変化しており、地球システムモデル研究や古気候学研究の重要性は増している。
Analysis of a 39-year continuous atmospheric CO2 record from Baring Head, New Zealand
B. B. Stephens, G. W. Brailsford, A. J. Gomez, K. Riedel, S. E. Mikaloff Fletcher, S. Nichol, and M. Manning
ニュージーランドのBaring Headで測定されている39年間の長期大気CO2観測記録を用いて、その変動要因を考察。ENSOの変動周期と同期した年々変動が確認された。東西方向の風が強化された結果、南大洋のCO2吸収効率が減少していることが報告されているものの、南半球の中緯度と高緯度の大気CO2濃度の差からは変動が小さすぎて検出できなかった。
A new conceptual model of coral biomineralisation: hypoxia as the physiological driver of skeletal extension
S. Wooldridge
サンゴの骨格成長を決定するのは夜間の貧酸素状態であるという新たな石灰化モデルを提唱。またGBRのハマサンゴの成長速度が1900年代に入って急速に減少していることを新たなモデルを用いて説明。
EPSL
Glacial freshwater discharge events recorded by authigenic neodymium isotopes in sediments from the Mendeleev Ridge, western Arctic Ocean
Kwangchul Jang , Yeongcheol Han , Youngsook Huh , Seung-Il Nam , Ruediger Stein , Andreas Mackensen , Jens Matthiessen
北極海西部のMendeleev Ridgeで採取された堆積物コアの過去75ka分のεNdを測定。Polar Deep Water (PDW)の指標として使え、特にBarents–Kara氷床・ローレンタイド氷床などからの淡水供給の推定に使える。北極海への淡水供給量は大きく変動したが、NADWの形成に影響するほどではなかったと思われる。
Was the Antarctic glaciation delayed by a high degassing rate during the early Cenozoic?
Vincent Lefebvre, Yannick Donnadieu, Yves Goddéris, Frédéric Fluteau, Lucie Hubert-Théou
Eocene/Oligocene境界において南極に氷床が発達し始めた。またその際の全球の寒冷化は南大洋海路が開いたことと、同時に大気中CO2濃度が低下したことがその原因と考えられている。しかし、そうしたCO2減少に至ったメカニズムについては特によく分かっておらず、議論が活発になされている。
結合された気候-炭素循環モデル(GEOCLIM)を用いて、メカニズムを考察。CO2低下に必要だったのは、大陸移動によってITCZの影響下に北アフリカ・南米北部が移動したこと、さらにはEoceneの間にインドア大陸のDeccan玄武岩が風化したこと、OligoceneにEthipian Trapが風化したことによってCO2が吸収されたことと考えられる。またEoceneにおいて南極が氷河化しないようにするためには地球内部からのCO2脱ガスは50%高くなっていなければならなかったと考えられる。E/O境界のCO2濃度低下にはケイ質岩の風化よりもむしろ火山からの脱ガス量が減少したことが効いていたのではないかと思われる。さらに、その後さらにインド亜大陸・アフリカ大陸が移動したことで岩石化学風化が減少し、Mioceneの温暖期(大気中CO2濃度も上昇)が生じたのではないかと考えられる。そしてその後チベット高原の隆起とインド・アジアモンスーンの強化によって岩石風化がさらに促進し、現在のような新生代後期の寒冷気候に至ったと考えられる。
Australasian monsoon response to Dansgaard–Oeschger event 21 and teleconnections to higher latitudes
Michael L. Griffiths, Russell N. Drysdale, Michael K. Gagan, John C. Hellstrom, Isabelle Couchoud, Linda K. Ayliffe, Hubert B. Vonhof, Wahyoe S. Hantoro
氷期のD/Oイベントは主に北半球で見られる急激な気候変動イベントであるが、その際のWPWPやオーストラリア・モンスーンの変動についてはよく分かっていない。インドネシア南部のLiang Luar洞窟から得られた複数の鍾乳石のδ18O・δ13Cおよび流体包有物からD/O21(MIS5の後半)の小温暖期における気候変動を復元。東アジアのモンスーンが強化している一方で、インドネシアの降水量は低下しており、ITCZが北へ移動したと考えられる。さらにその際に気温も2~3℃上昇しており、土壌におけるメタン生成が増加したことが鍾乳石のδ13Cに記録されていると思われる。メタン濃度とCO2濃度の増加は温室効果によって全球の温暖化に寄与したと思われる。
The magnitude, timing and abruptness of changes in North African dust deposition over the last 20,000yr
D. McGee , P.B. deMenocal , G. Winckler , J.B.W. Stuut , L.I. Bradtmiller
北アフリカにおける砂漠起源のダストフラックスは気候にも大きな影響を与えており、過去においても重要であったと思われるが、それを定量的に復元できる高時間解像度の記録は限られている。アフリカ大陸の北西部の海岸に沿って(31ºN〜19ºN)堆積物を採取。粒径と230Thを用いて規格化したダスト・フラックスを組み合わせることで、過去20kaのダスト沈降を復元。HS1とYDにおいてはダスト・フラックスが急増しており、またアフリカの湿潤期(African Humid Period; AHP; ∼11.7–5 ka)には激減していることが分かった。今後のモデル研究に重要なデータとなると期待される。
QSR
Modelling past sea ice changes
H. Goosse , D.M. Roche , A. Mairesse , M. Berger
モデル内の海氷の再現の問題に関するレビュー。特にLGMの南大洋の海氷、完新世初期の北極海の夏の海氷範囲においてモデル間の大きな食い違いが見られるらしい。
Changes in silicate utilisation and upwelling intensity off Peru since the Last Glacial Maximum e insights from silicon and neodymium isotopes
C. Ehlert, P. Grasse, M. Frank
ペルー沖で採取された堆積物コアのεNdとδ30Siから過去20kaのケイ酸塩利用・水塊混合・湧昇の強度を復元。εNdの南北の傾きはローカルな風化による供給源を反映していると思われる。コーティングεNdは過去20kaでほとんど変化せず。一方で砕屑岩εNdは変動が見られ、堆積物の起源や輸送の変化を反映していると思われる。δ30Siの変動は湧昇の強さに変化があり、珪藻によるケイ酸利用が変化していたことを物語っている。特に過去5kaにENSOが強化している。
Role of sea ice in global biogeochemical cycles: emerging views and challenges
Martin Vancoppenolle , Klaus M. Meiners , Christine Michel , Laurent Bopp , Frédéric Brabant , Gauthier Carnat , Bruno Delille , Delphine Lannuzel , Gurvan Madec , Sébastien Moreau , Jean-Louis Tison , Pier van der Merwe
海氷域の生物地球化学循環のレビュー。近年「海氷のbrine(高塩分海水)にも生物が棲息し生物活動を行っていること」「海氷が海への鉄の供給を担っていること」「海氷を介しても大気海洋でCO2が交換されていること」が報告されるなど、大きなパラダイム・シフトが生じている。近年北極域は急速に変化しており、地球システムモデル研究や古気候学研究の重要性は増している。
2013年4月21日日曜日
新着論文(BG, CP)
Global ocean storage of anthropogenic carbon
S. Khatiwala, T. Tanhua, S. Mikaloff Fletcher, M. Gerber, S. C. Doney, H. D. Graven, N. Gruber, G. A. McKinley, A. Murata, A. F. Ríos, and C. L. Sabine
Biogeosciences, 10, 2169-2191, 2013
人為起源の二酸化炭素がどのように・どれだけの量、海水に溶けたかを見積もることは重要である。観測・モデルの双方のアプローチによる推定をレビュー。手法ごとに大きく異なること、長期的な観測が依然として必要であること、を強調。最も良い推定値は今のところ2010年までで「155 ± 31 PgC」である。
The non-steady state oceanic CO2 signal: its importance, magnitude and a novel way to detect it
B. I. McNeil and R. J. Matear
Biogeosciences, 10, 2219-2228, 2013
近年の観測から、海が吸収できるCO2の量は減少していることが示されている。現在海が吸収できるCO2を推定する場合、海洋循環や生物活動が安定状態にあることを暗に仮定しているが、それが食い違いの原因と思われる。新たな手法で’安定状態でない’CO2の量を見積もったところ、産業革命以降、全体の9%が海から大気への放出に相当するが、近年(1989-2007年)は18%に増加していることが示された。今後さらなる観測と手法開発が必要。
Impact of global change on coastal oxygen dynamics and risk of hypoxia
L. Meire, K. E. R. Soetaert, and F. J. R. Meysman
Biogeosciences, 10, 2633-2653, 2013
気候変化や人間活動による栄養塩供給の変化の結果、沿岸部の酸素濃度が著しく低下すると考えられているが、次の数十年にそれぞれがどれほど寄与するかはよく分かっていない。北海のカキの産地(Oyster Grounds)でモデルシミュレーションを行ったところ、2100年には夏の終わりの底層水の酸素濃度が24μMまで低下することが示された。その大部分は海の成層化に起因し、続いて温度上昇による酸素の溶存量の低下である。栄養塩の供給量も大きく影響し、流入量を抑えることで貧酸素のリスクを軽減できる。
Climatic impacts of fresh water hosing under Last Glacial Maximum conditions: a multi-model study
M. Kageyama, U. Merkel, B. Otto-Bliesner, M. Prange, A. Abe-Ouchi, G. Lohmann, R. Ohgaito, D. M. Roche, J. Singarayer, D. Swingedouw, and X Zhang
Climate of the Past, 9, 935-953, 2013
将来のグリーンランド氷床融解のAMOCへの影響および過去の千年スケールの気候変動におけるAMOCの重要性を評価するために、北大西洋への’水撒き実験’が頻繁に行われている。6つの異なるモデルによる北大西洋の中〜高緯度域へのLGMの背景場の水撒き実験の結果を評価したところ、共通してみられた特徴として、「北大西洋の寒冷化」「亜熱帯循環の拡大」「ITCZの南下」が確認された。しかし、バイポーラー・シーソーについてはモデル感で結果が大きく食い違った。また北大西洋の変動がインド・アジアやアフリカへとテレコネクションする過程はモデル間で異なった。
Model sensitivity to North Atlantic freshwater forcing at 8.2 ka
C. Morrill, A. N. LeGrande, H. Renssen, P. Bakker, and B. L. Otto-Bliesner
Climate of the Past, 9, 955-968, 2013
モデルシミュレーションで8.2kaイベントを再現。Hudson BayまたはLabrador Seaに年間2.5Svで水撒きを行ったところ、AMOCへの擾乱と全球への気候変動のシグナルの伝播が確認された。しかし温度変化は間接指標の半分程度しか再現されなかった。さらに継続期間も数十年と、間接指標から示されている150年と比べて非常に短かった。食い違いの原因は「完新世初期の気候場の再現」と「水撒きの仕方」にあるかもしれない。
S. Khatiwala, T. Tanhua, S. Mikaloff Fletcher, M. Gerber, S. C. Doney, H. D. Graven, N. Gruber, G. A. McKinley, A. Murata, A. F. Ríos, and C. L. Sabine
Biogeosciences, 10, 2169-2191, 2013
人為起源の二酸化炭素がどのように・どれだけの量、海水に溶けたかを見積もることは重要である。観測・モデルの双方のアプローチによる推定をレビュー。手法ごとに大きく異なること、長期的な観測が依然として必要であること、を強調。最も良い推定値は今のところ2010年までで「155 ± 31 PgC」である。
The non-steady state oceanic CO2 signal: its importance, magnitude and a novel way to detect it
B. I. McNeil and R. J. Matear
Biogeosciences, 10, 2219-2228, 2013
近年の観測から、海が吸収できるCO2の量は減少していることが示されている。現在海が吸収できるCO2を推定する場合、海洋循環や生物活動が安定状態にあることを暗に仮定しているが、それが食い違いの原因と思われる。新たな手法で’安定状態でない’CO2の量を見積もったところ、産業革命以降、全体の9%が海から大気への放出に相当するが、近年(1989-2007年)は18%に増加していることが示された。今後さらなる観測と手法開発が必要。
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| McNeil & Matear (2013)を改変。 安定状態での海によるCO2吸収の推定値(黒)と実際の観測(赤) |
Impact of global change on coastal oxygen dynamics and risk of hypoxia
L. Meire, K. E. R. Soetaert, and F. J. R. Meysman
Biogeosciences, 10, 2633-2653, 2013
気候変化や人間活動による栄養塩供給の変化の結果、沿岸部の酸素濃度が著しく低下すると考えられているが、次の数十年にそれぞれがどれほど寄与するかはよく分かっていない。北海のカキの産地(Oyster Grounds)でモデルシミュレーションを行ったところ、2100年には夏の終わりの底層水の酸素濃度が24μMまで低下することが示された。その大部分は海の成層化に起因し、続いて温度上昇による酸素の溶存量の低下である。栄養塩の供給量も大きく影響し、流入量を抑えることで貧酸素のリスクを軽減できる。
Climatic impacts of fresh water hosing under Last Glacial Maximum conditions: a multi-model study
M. Kageyama, U. Merkel, B. Otto-Bliesner, M. Prange, A. Abe-Ouchi, G. Lohmann, R. Ohgaito, D. M. Roche, J. Singarayer, D. Swingedouw, and X Zhang
Climate of the Past, 9, 935-953, 2013
将来のグリーンランド氷床融解のAMOCへの影響および過去の千年スケールの気候変動におけるAMOCの重要性を評価するために、北大西洋への’水撒き実験’が頻繁に行われている。6つの異なるモデルによる北大西洋の中〜高緯度域へのLGMの背景場の水撒き実験の結果を評価したところ、共通してみられた特徴として、「北大西洋の寒冷化」「亜熱帯循環の拡大」「ITCZの南下」が確認された。しかし、バイポーラー・シーソーについてはモデル感で結果が大きく食い違った。また北大西洋の変動がインド・アジアやアフリカへとテレコネクションする過程はモデル間で異なった。
Model sensitivity to North Atlantic freshwater forcing at 8.2 ka
C. Morrill, A. N. LeGrande, H. Renssen, P. Bakker, and B. L. Otto-Bliesner
Climate of the Past, 9, 955-968, 2013
モデルシミュレーションで8.2kaイベントを再現。Hudson BayまたはLabrador Seaに年間2.5Svで水撒きを行ったところ、AMOCへの擾乱と全球への気候変動のシグナルの伝播が確認された。しかし温度変化は間接指標の半分程度しか再現されなかった。さらに継続期間も数十年と、間接指標から示されている150年と比べて非常に短かった。食い違いの原因は「完新世初期の気候場の再現」と「水撒きの仕方」にあるかもしれない。
2013年3月24日日曜日
新着論文(GRL, PO, JGR, CP, BG)
GRL
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。
Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。
Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。
Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。
Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。
The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。
Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。
Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。
JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。
Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。
Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。
Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。
Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。
Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。
Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。
Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。
Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。
Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。
Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。
Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。
Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。
Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。
Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。
The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。
Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。
Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。
JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。
Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。
Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。
Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。
Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。
Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。
Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。
Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。
Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。
Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。
Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。
2013年3月20日水曜日
新着論文(BG, CP)
Biogeosciences
An assessment of the Atlantic and Arctic sea–air CO2 fluxes, 1990–2009
U. Schuster, G. A. McKinley, N. Bates, F. Chevallier, S. C. Doney, A. R. Fay, M. González-Dávila, N. Gruber, S. Jones, J. Krijnen, P. Landschützer, N. Lefèvre, M. Manizza, J. Mathis, N. Metzl, A. Olsen, A. F. Rios, C. Rödenbeck, J. M. Santana-Casiano, T. Takahashi, R. Wanninkhof, and A. J. Watson
pCO2観測及びモデル結果から、1990年から2009年にかけての大西洋・北極海の大気-海洋CO2フラックスを推定。人為起源のCO2の取り込みは、大西洋で「-0.49 PgC/yr」、北極海で「-0.12 PgC/yr」と推定される。大西洋全体では、手法によって結果が整合的であるもの、食い違うものが見られた。
Breakdown of the coral-algae symbiosis: towards formalising a linkage between warm-water bleaching thresholds and the growth rate of the intracellular zooxanthellae
S. A. Wooldridge
サンゴの白化現象は褐虫藻との共生関係の崩壊を意味するが、最初にダメージを受ける部位や動力学についてはよく分かっていない。考えられるプロセスを提唱。
Controls on the spatial distribution of oceanic δ13CDIC
P. B. Holden, N. R. Edwards, S. A. Müller, K. I. C. Oliver, R. M. Death, and A. Ridgwell
産業革命以降の海水中のDOCのδ13C分布をEMICsを用いて再現。人為起源のδ13CDICの不確実性を生み出す原因は、大気-海洋におけるガス交換がその大半を担っていることが示された。
Climate of the Past
Southern westerlies in LGM and future (RCP4.5) climates
Y. Chavaillaz, F. Codron, and M. Kageyama
LGMと将来の南半球の偏西風の位置をモデルを用いて評価したところ、南極の高度や海氷範囲の変化によって、期待とは違い、極方向への変化は確認されなかった。
Iron fluxes to Talos Dome, Antarctica, over the past 200 kyr
P. Vallelonga, C. Barbante, G. Cozzi, J. Gabrieli, S. Schüpbach, A. Spolaor, and C. Turetta
南極Talos Domeアイスコアから、過去200kaの酸で溶出するFeの濃度を復元。Dome Cと比べて濃度が高く、特に間氷期においてその特徴が顕著であった。また最終退氷期や完新世初期にも違いが見られ、ダストの供給源や大気循環の違いを反映しているものと考えられる。従って、Fe(とCa)はダストの間接指標として使うのは適切でないことが示唆される。鉄肥沃によるCO2低下の寄与はLGMの際に最大で20ppmvと考えられる。
A multi-model assessment of last interglacial temperatures
D. J. Lunt, A. Abe-Ouchi, P. Bakker, A. Berger, P. Braconnot, S. Charbit, N. Fischer, N. Herold, J. H. Jungclaus, V. C. Khon, U. Krebs-Kanzow, P. M. Langebroek, G. Lohmann, K. H. Nisancioglu, B. L. Otto-Bliesner, W. Park, M. Pfeiffer, S. J. Phipps, M. Prange, R. Rachmayani, H. Renssen, N. Rosenbloom, B. Schneider, E. J. Stone, K. Takahashi, W. Wei, Q. Yin, and Z. S. Zhang
最終間氷期は軌道要素が現在と異なり、北極圏は現在よりも遥かに暖かく、全球の海水準も上昇していたと考えられている。最終間氷期をターゲットにしたモデルシミュレーション結果をまとめ、間接指標による復元結果と比較を行った。温暖化/寒冷化の傾向は比較的よく一致したが、定量的な一致はほとんどしていなかった。
Quantification of the Greenland ice sheet contribution to Last Interglacial sea level rise
E. J. Stone, D. J. Lunt, J. D. Annan, and J. C. Hargreaves
最終間氷期には海水準は現在よりも6.6m高かったと考えられている。しかしそのもととなった融水がどこからもたらされたのかについては意見が分かれている。モデルシミュレーションの結果と氷床モデルを組み合わせて、あり得そうな氷床融解のシナリオを推定したところ、グリーンランド氷床の融解による寄与は90%の確率で0.6m程度であったと推定される。ただし、モデルでは降水・大気循環・基底部の滑り・表面融解などがまだうまく取り入れられていないことに注意する必要がある。
Last interglacial temperature evolution – a model inter-comparison
P. Bakker, E. J. Stone, S. Charbit, M. Gröger, U. Krebs-Kanzow, S. P. Ritz, V. Varma, V. Khon, D. J. Lunt, U. Mikolajewicz, M. Prange, H. Renssen, B. Schneider, and M. Schulz
最終間氷期における地表温度のコンセンサスは得られていない。様々なモデルシミュレーションの結果から、背後に隠れているフォーシングやフィードバックのメカニズムを考察。北極の海氷・AMOC・大陸に融け残った氷など、モデル間で食い違うものがモデル間の各地域の温度の食い違いに繋がっている。
An assessment of the Atlantic and Arctic sea–air CO2 fluxes, 1990–2009
U. Schuster, G. A. McKinley, N. Bates, F. Chevallier, S. C. Doney, A. R. Fay, M. González-Dávila, N. Gruber, S. Jones, J. Krijnen, P. Landschützer, N. Lefèvre, M. Manizza, J. Mathis, N. Metzl, A. Olsen, A. F. Rios, C. Rödenbeck, J. M. Santana-Casiano, T. Takahashi, R. Wanninkhof, and A. J. Watson
pCO2観測及びモデル結果から、1990年から2009年にかけての大西洋・北極海の大気-海洋CO2フラックスを推定。人為起源のCO2の取り込みは、大西洋で「-0.49 PgC/yr」、北極海で「-0.12 PgC/yr」と推定される。大西洋全体では、手法によって結果が整合的であるもの、食い違うものが見られた。
Breakdown of the coral-algae symbiosis: towards formalising a linkage between warm-water bleaching thresholds and the growth rate of the intracellular zooxanthellae
S. A. Wooldridge
サンゴの白化現象は褐虫藻との共生関係の崩壊を意味するが、最初にダメージを受ける部位や動力学についてはよく分かっていない。考えられるプロセスを提唱。
Controls on the spatial distribution of oceanic δ13CDIC
P. B. Holden, N. R. Edwards, S. A. Müller, K. I. C. Oliver, R. M. Death, and A. Ridgwell
産業革命以降の海水中のDOCのδ13C分布をEMICsを用いて再現。人為起源のδ13CDICの不確実性を生み出す原因は、大気-海洋におけるガス交換がその大半を担っていることが示された。
Climate of the Past
Southern westerlies in LGM and future (RCP4.5) climates
Y. Chavaillaz, F. Codron, and M. Kageyama
LGMと将来の南半球の偏西風の位置をモデルを用いて評価したところ、南極の高度や海氷範囲の変化によって、期待とは違い、極方向への変化は確認されなかった。
Iron fluxes to Talos Dome, Antarctica, over the past 200 kyr
P. Vallelonga, C. Barbante, G. Cozzi, J. Gabrieli, S. Schüpbach, A. Spolaor, and C. Turetta
南極Talos Domeアイスコアから、過去200kaの酸で溶出するFeの濃度を復元。Dome Cと比べて濃度が高く、特に間氷期においてその特徴が顕著であった。また最終退氷期や完新世初期にも違いが見られ、ダストの供給源や大気循環の違いを反映しているものと考えられる。従って、Fe(とCa)はダストの間接指標として使うのは適切でないことが示唆される。鉄肥沃によるCO2低下の寄与はLGMの際に最大で20ppmvと考えられる。
A multi-model assessment of last interglacial temperatures
D. J. Lunt, A. Abe-Ouchi, P. Bakker, A. Berger, P. Braconnot, S. Charbit, N. Fischer, N. Herold, J. H. Jungclaus, V. C. Khon, U. Krebs-Kanzow, P. M. Langebroek, G. Lohmann, K. H. Nisancioglu, B. L. Otto-Bliesner, W. Park, M. Pfeiffer, S. J. Phipps, M. Prange, R. Rachmayani, H. Renssen, N. Rosenbloom, B. Schneider, E. J. Stone, K. Takahashi, W. Wei, Q. Yin, and Z. S. Zhang
最終間氷期は軌道要素が現在と異なり、北極圏は現在よりも遥かに暖かく、全球の海水準も上昇していたと考えられている。最終間氷期をターゲットにしたモデルシミュレーション結果をまとめ、間接指標による復元結果と比較を行った。温暖化/寒冷化の傾向は比較的よく一致したが、定量的な一致はほとんどしていなかった。
Quantification of the Greenland ice sheet contribution to Last Interglacial sea level rise
E. J. Stone, D. J. Lunt, J. D. Annan, and J. C. Hargreaves
最終間氷期には海水準は現在よりも6.6m高かったと考えられている。しかしそのもととなった融水がどこからもたらされたのかについては意見が分かれている。モデルシミュレーションの結果と氷床モデルを組み合わせて、あり得そうな氷床融解のシナリオを推定したところ、グリーンランド氷床の融解による寄与は90%の確率で0.6m程度であったと推定される。ただし、モデルでは降水・大気循環・基底部の滑り・表面融解などがまだうまく取り入れられていないことに注意する必要がある。
Last interglacial temperature evolution – a model inter-comparison
P. Bakker, E. J. Stone, S. Charbit, M. Gröger, U. Krebs-Kanzow, S. P. Ritz, V. Varma, V. Khon, D. J. Lunt, U. Mikolajewicz, M. Prange, H. Renssen, B. Schneider, and M. Schulz
最終間氷期における地表温度のコンセンサスは得られていない。様々なモデルシミュレーションの結果から、背後に隠れているフォーシングやフィードバックのメカニズムを考察。北極の海氷・AMOC・大陸に融け残った氷など、モデル間で食い違うものがモデル間の各地域の温度の食い違いに繋がっている。
2013年2月19日火曜日
新着論文(GRL, JGR, PO, CP, BG)
○G3
Investigating δ13C and ∆14C within Mytilus californianus shells as proxies of upwelling intensity
J. E. Ferguson, K. R. Johnson, G. Santos, L. Meyer, A. Tripati
カリフォルニア沿岸部に生息するイガイ(Mytilus californianus)の殻のδ13CとΔ14Cが湧昇の指標になるかを評価。Δ14Cは使えそうだが、δ13Cは代謝起源の炭素が入ってくるため解釈が難しそう。
Early Aptian paleoenvironmental evolution of the Bab Basin at the southern Neo-Tethys margin: Response to global carbon-cycle perturbations across Ocean Anoxic Event 1a
Kazuyuki Yamamoto, Masatoshi Ishibashi, Hideko Takayanagi, Yoshihiro Asahara, Tokiyuki Sato, Hiroshi Nishi, Yasufumi Iryu
カタールのBab Basinから得られたOAE-1aの地層のδ13C・δ18O・87/86Sr測定などからOAEのメカニズムを推定。OAEの開始時にδ13C・δ18Oが低下するのは「火山性のCO2が長期的にもたらされ、温暖化が起きた」とする仮説と整合的。同時に起きた温暖化が風化を促進し、Sr同位体比にも影響した。
○GRL
Variability in the Surface Temperature and Melt Extent of the Greenland Ice Sheet from MODIS
Dorothy K. Hall, Josefino C. Comiso, Nicolo E. DiGirolamo, Christopher A. Shuman, Jason E. Box, Lora S. Koenig
近年のグリーンランド氷床の表面温度と氷床量の変化について。南西部がもっとも融解しており、季節を通じて気温の上昇(~0.55℃/10年)が起きている。2000年以降では2002年と2012年の融解が顕著であった。
Terrestrial effects of possible astrophysical sources of an AD 774-775 increase in 14C production
Brian C. Thomas, Adrian L. Melott, Keith R. Arkenberg, Brock R. Snyder
木の年輪に記録されているAD774-775の14C生成率のスパイクの原因を考察。solar proton events (SPEs)も考えられるかも?
The role of land use change in the recent warming of daily extreme temperatures
Nikolaos Christidis, Peter A. Stott, Gabriele C. Hegerl, Richard A. Betts
モデルを用いて近年の異常な暑さの原因を推定。産業革命以降の土地利用変化(森林が減少し、草原が増加)は’寒冷化’の効果があることが示された。
The gravitationally consistent sea-level fingerprint of future terrestrial ice loss
G. Spada, J. L. Bamber, R. T. W. L. Hurkmans
質量収支のバランスを考えることで、各要因の海水準上昇への寄与率を推定。海水準上昇の予測は地域性が大きい。熱帯域の海水準上昇には氷河・氷帽・氷床の融解が大きく寄与する可能性がある。赤道太平洋は熱膨張が、大西洋は海洋表層循環の変化が大きく影響すると考えられる。
Estimating the effect of Earth elasticity and variable water density on tsunami speeds
Victor C. Tsai, Jean-Paul Ampuero, Hiroo Kanamori, David J. Stevenson
津波の到達時刻の予測には通常浅水近似が用いられるが、2011.3.11の東北沖地震では予測に1%もの誤差が伴っていた。原因としてはモデルで考慮されていない地球の弾性変形が考えられる。そうした効果を津波の速度予測にどのように取り入れるべきかを新たに提案。
Equatorial Upwelling Enhances Nitrogen Fixation in the Atlantic Ocean
Ajit Subramaniam, Claire Mahaffey, William Johns, Natalie Mahowald
これまで栄養に富んだ表層水は窒素固定を抑制すると考えられてきた。東赤道大西洋で湧昇と窒素固定の関係を評価したところ、湧昇時に通常時の2〜7倍もの窒素固定が起きていることが確認された。
Anthropogenic Impact on Agulhas Leakage
Arne Biastoch, Claus W. Böning
近年南半球の風の場が変化したことでAgulhas leakageが増加し、大西洋により塩分の濃い海水が流入していることが示されている。モデルを用いて風の場の変化がもたらす影響を評価したところ、「偏西風が7%増加し、軸が2°極側にシフトすることで、現在の流量(4.5Sv)の3分の1ほどの変化が起きる可能性」が示された。ただしAMOCへの影響は小さいらしい。
Triggering of El Niño Onset Through Trade-wind Induced Charging of the Equatorial Pacific
Bruce T. Anderson, Renellys C. Perez, Alicia Karspeck
観測からENSOのメカニズムを推定。熱容量の増加が北大西洋に海面高度の偏差をもたらし、貿易風に影響するという仮説を提唱。モデルでも整合的な結果が得られた。
○JGR-Oceans
On the response of Southern Hemisphere subpolar 1 gyres to climate change in coupled climate models
Zhaomin Wang
CMIP3と5のモデルを用いて21世紀の南半球の亜寒帯流(subporlar gyre)がどのように変化するかを評価。すべてのモデルで偏西風が強化されることが予想されたが、渦の変化は食い違いが見られた。特に南極周回流地域の渦によって駆動される循環を表現することが難しい。現行のモデルでは再現は難しいかもしれない。
Water Column Iron Dynamics in the Subarctic North Pacific Ocean and the Bering Sea
Ren Uchida, Kenshi Kuma, Aya Omata, Satoko Ishikawa, Nanako Hioki, Hiromichi Ueno, Yutaka Isoda, Keiichiro Sakaoka, Yoshihiko Kamei, Shohgo Takagi
47ºN線に沿って北太平洋のFeの水柱分布を調査。西部の深層で溶存Fe濃度が高く、人為起源の鉄が大気と水平輸送でもたらされた結果と考えられる。ベーリング海では中層水(1.5 - 2.25 km)に濃度の極大が見られ、生物生産で生じた有機物が活発に中層で分解されていることが原因と考えられる。また大陸棚の堆積物からもかなりFeが供給されているかも?
Sea level and heat content changes in the western North Pacific
Jae-Hong Moon, Y. Tony Song
1993-2010年にかけて、西太平洋北部(東シナ海や日本沿岸を含む)の海水準は年間5mmの速度で上昇していることが海面高度観測から分かっている(全球平均の1.5倍)。複数の観測データ(熱・重力・海洋物理など)を組み合わせて、モデルでうまく再現することができた。北東貿易風の強化に伴って熱と水塊の分布が変化していることが過去20年間の変化の原因と考えられる。
Increased CO2 outgassing in February-May 2010 in the tropical Atlantic following the 2009 Pacific El Niño
Nathalie Lefèvre, Guy Caniaux, Serge Janicot, Abdou Karim Gueye
2010年春に赤道大西洋でfCO2の大きな増加が確認された。表層水温が上昇し、ITCZがより北に変化し、降水量の変化に伴い塩分が減少したことが原因と考えられ、2009年の太平洋のエルニーニョ強く影響したと考えられる。またNAOの寄与は小さいが、AMOも大きく寄与していたと考えられる。
○Paleoceanography
Late Quaternary climatic and oceanographic changes in the Northeast Pacific as recorded by dinoflagellate cysts from Guaymas Basin, Gulf of California (Mexico)
Andrea M. Price, Kenneth N. Mertens, Vera Pospelova, Thomas F. Pedersen, Raja S. Ganeshram
カリフォルニア湾から採取された堆積物コア中のdinoflagellate cystから過去30kaの生物生産を復元。YDには暖かい環境を好む種が確認された。
Seasonal patterns of shell flux, δ18O and δ13C of small and large N. pachyderma(s) and G. bulloides in the subpolar North Atlantic
Lukas Jonkers, Steven Heuven, Rainer Zahn, Frank J.C. Peeters
北大西洋のセジメント・トラップから、N. pacydermaとG. bulloidesのδ18O・δ13Cの差の原因を考察。深度よりはむしろ成長する季節が大きく影響しているかも。δ13CはDICのδ13C変動とも差が見られるため、温度(代謝)も大きく影響していると考えられる。
○Climate of the Past
Greenland ice sheet contribution to sea level rise during the last interglacial period: a modelling study driven and constrained by ice core data
A. Quiquet, C. Ritz, H. J. Punge, and D. Salas y Mélia
氷床モデルを用いて最終間氷期の温暖期のグリーンランド氷床の応答を調査。グリーンランド氷床はあまり融けておらず、0.7 - 1.5 m程度の寄与であったと考えられる。従って、南極氷床がもっと融解していたということになる。
A new global reconstruction of temperature changes at the Last Glacial Maximum
J. D. Annan and J. C. Hargreaves
MARGOなどを初めとする間接指標に基づいたLGMの全球の表層温度推定と、PMIP2のモデル予測結果とを比較。全球平均気温は「4.0 ± 0.8 ℃」低かったと考えられる。
○Biogeosciences
Glacial-interglacial variability in ocean oxygen and phosphorus in a global biogeochemical model
V Palastanga, C. P. Slomp, and C. Heinze
生物地球化学モデルを用いて、LGMに大陸棚から海へ供給された粒子状有機物が生物地球化学に与えた影響を評価。間氷期と比べて氷期にはリンの埋没量が増加し、深層の酸素濃度は低下する傾向が見られた。ただし酸素濃度の低下は堆積物のリンのサイクルに影響を及ぼすほどのものではなかったと考えられる。
Investigating δ13C and ∆14C within Mytilus californianus shells as proxies of upwelling intensity
J. E. Ferguson, K. R. Johnson, G. Santos, L. Meyer, A. Tripati
カリフォルニア沿岸部に生息するイガイ(Mytilus californianus)の殻のδ13CとΔ14Cが湧昇の指標になるかを評価。Δ14Cは使えそうだが、δ13Cは代謝起源の炭素が入ってくるため解釈が難しそう。
Early Aptian paleoenvironmental evolution of the Bab Basin at the southern Neo-Tethys margin: Response to global carbon-cycle perturbations across Ocean Anoxic Event 1a
Kazuyuki Yamamoto, Masatoshi Ishibashi, Hideko Takayanagi, Yoshihiro Asahara, Tokiyuki Sato, Hiroshi Nishi, Yasufumi Iryu
カタールのBab Basinから得られたOAE-1aの地層のδ13C・δ18O・87/86Sr測定などからOAEのメカニズムを推定。OAEの開始時にδ13C・δ18Oが低下するのは「火山性のCO2が長期的にもたらされ、温暖化が起きた」とする仮説と整合的。同時に起きた温暖化が風化を促進し、Sr同位体比にも影響した。
○GRL
Variability in the Surface Temperature and Melt Extent of the Greenland Ice Sheet from MODIS
Dorothy K. Hall, Josefino C. Comiso, Nicolo E. DiGirolamo, Christopher A. Shuman, Jason E. Box, Lora S. Koenig
近年のグリーンランド氷床の表面温度と氷床量の変化について。南西部がもっとも融解しており、季節を通じて気温の上昇(~0.55℃/10年)が起きている。2000年以降では2002年と2012年の融解が顕著であった。
Terrestrial effects of possible astrophysical sources of an AD 774-775 increase in 14C production
Brian C. Thomas, Adrian L. Melott, Keith R. Arkenberg, Brock R. Snyder
木の年輪に記録されているAD774-775の14C生成率のスパイクの原因を考察。solar proton events (SPEs)も考えられるかも?
The role of land use change in the recent warming of daily extreme temperatures
Nikolaos Christidis, Peter A. Stott, Gabriele C. Hegerl, Richard A. Betts
モデルを用いて近年の異常な暑さの原因を推定。産業革命以降の土地利用変化(森林が減少し、草原が増加)は’寒冷化’の効果があることが示された。
The gravitationally consistent sea-level fingerprint of future terrestrial ice loss
G. Spada, J. L. Bamber, R. T. W. L. Hurkmans
質量収支のバランスを考えることで、各要因の海水準上昇への寄与率を推定。海水準上昇の予測は地域性が大きい。熱帯域の海水準上昇には氷河・氷帽・氷床の融解が大きく寄与する可能性がある。赤道太平洋は熱膨張が、大西洋は海洋表層循環の変化が大きく影響すると考えられる。
Estimating the effect of Earth elasticity and variable water density on tsunami speeds
Victor C. Tsai, Jean-Paul Ampuero, Hiroo Kanamori, David J. Stevenson
津波の到達時刻の予測には通常浅水近似が用いられるが、2011.3.11の東北沖地震では予測に1%もの誤差が伴っていた。原因としてはモデルで考慮されていない地球の弾性変形が考えられる。そうした効果を津波の速度予測にどのように取り入れるべきかを新たに提案。
Equatorial Upwelling Enhances Nitrogen Fixation in the Atlantic Ocean
Ajit Subramaniam, Claire Mahaffey, William Johns, Natalie Mahowald
これまで栄養に富んだ表層水は窒素固定を抑制すると考えられてきた。東赤道大西洋で湧昇と窒素固定の関係を評価したところ、湧昇時に通常時の2〜7倍もの窒素固定が起きていることが確認された。
Anthropogenic Impact on Agulhas Leakage
Arne Biastoch, Claus W. Böning
近年南半球の風の場が変化したことでAgulhas leakageが増加し、大西洋により塩分の濃い海水が流入していることが示されている。モデルを用いて風の場の変化がもたらす影響を評価したところ、「偏西風が7%増加し、軸が2°極側にシフトすることで、現在の流量(4.5Sv)の3分の1ほどの変化が起きる可能性」が示された。ただしAMOCへの影響は小さいらしい。
Triggering of El Niño Onset Through Trade-wind Induced Charging of the Equatorial Pacific
Bruce T. Anderson, Renellys C. Perez, Alicia Karspeck
観測からENSOのメカニズムを推定。熱容量の増加が北大西洋に海面高度の偏差をもたらし、貿易風に影響するという仮説を提唱。モデルでも整合的な結果が得られた。
○JGR-Oceans
On the response of Southern Hemisphere subpolar 1 gyres to climate change in coupled climate models
Zhaomin Wang
CMIP3と5のモデルを用いて21世紀の南半球の亜寒帯流(subporlar gyre)がどのように変化するかを評価。すべてのモデルで偏西風が強化されることが予想されたが、渦の変化は食い違いが見られた。特に南極周回流地域の渦によって駆動される循環を表現することが難しい。現行のモデルでは再現は難しいかもしれない。
Water Column Iron Dynamics in the Subarctic North Pacific Ocean and the Bering Sea
Ren Uchida, Kenshi Kuma, Aya Omata, Satoko Ishikawa, Nanako Hioki, Hiromichi Ueno, Yutaka Isoda, Keiichiro Sakaoka, Yoshihiko Kamei, Shohgo Takagi
47ºN線に沿って北太平洋のFeの水柱分布を調査。西部の深層で溶存Fe濃度が高く、人為起源の鉄が大気と水平輸送でもたらされた結果と考えられる。ベーリング海では中層水(1.5 - 2.25 km)に濃度の極大が見られ、生物生産で生じた有機物が活発に中層で分解されていることが原因と考えられる。また大陸棚の堆積物からもかなりFeが供給されているかも?
Sea level and heat content changes in the western North Pacific
Jae-Hong Moon, Y. Tony Song
1993-2010年にかけて、西太平洋北部(東シナ海や日本沿岸を含む)の海水準は年間5mmの速度で上昇していることが海面高度観測から分かっている(全球平均の1.5倍)。複数の観測データ(熱・重力・海洋物理など)を組み合わせて、モデルでうまく再現することができた。北東貿易風の強化に伴って熱と水塊の分布が変化していることが過去20年間の変化の原因と考えられる。
Increased CO2 outgassing in February-May 2010 in the tropical Atlantic following the 2009 Pacific El Niño
Nathalie Lefèvre, Guy Caniaux, Serge Janicot, Abdou Karim Gueye
2010年春に赤道大西洋でfCO2の大きな増加が確認された。表層水温が上昇し、ITCZがより北に変化し、降水量の変化に伴い塩分が減少したことが原因と考えられ、2009年の太平洋のエルニーニョ強く影響したと考えられる。またNAOの寄与は小さいが、AMOも大きく寄与していたと考えられる。
○Paleoceanography
Late Quaternary climatic and oceanographic changes in the Northeast Pacific as recorded by dinoflagellate cysts from Guaymas Basin, Gulf of California (Mexico)
Andrea M. Price, Kenneth N. Mertens, Vera Pospelova, Thomas F. Pedersen, Raja S. Ganeshram
カリフォルニア湾から採取された堆積物コア中のdinoflagellate cystから過去30kaの生物生産を復元。YDには暖かい環境を好む種が確認された。
Seasonal patterns of shell flux, δ18O and δ13C of small and large N. pachyderma(s) and G. bulloides in the subpolar North Atlantic
Lukas Jonkers, Steven Heuven, Rainer Zahn, Frank J.C. Peeters
北大西洋のセジメント・トラップから、N. pacydermaとG. bulloidesのδ18O・δ13Cの差の原因を考察。深度よりはむしろ成長する季節が大きく影響しているかも。δ13CはDICのδ13C変動とも差が見られるため、温度(代謝)も大きく影響していると考えられる。
○Climate of the Past
Greenland ice sheet contribution to sea level rise during the last interglacial period: a modelling study driven and constrained by ice core data
A. Quiquet, C. Ritz, H. J. Punge, and D. Salas y Mélia
氷床モデルを用いて最終間氷期の温暖期のグリーンランド氷床の応答を調査。グリーンランド氷床はあまり融けておらず、0.7 - 1.5 m程度の寄与であったと考えられる。従って、南極氷床がもっと融解していたということになる。
A new global reconstruction of temperature changes at the Last Glacial Maximum
J. D. Annan and J. C. Hargreaves
MARGOなどを初めとする間接指標に基づいたLGMの全球の表層温度推定と、PMIP2のモデル予測結果とを比較。全球平均気温は「4.0 ± 0.8 ℃」低かったと考えられる。
○Biogeosciences
Glacial-interglacial variability in ocean oxygen and phosphorus in a global biogeochemical model
V Palastanga, C. P. Slomp, and C. Heinze
生物地球化学モデルを用いて、LGMに大陸棚から海へ供給された粒子状有機物が生物地球化学に与えた影響を評価。間氷期と比べて氷期にはリンの埋没量が増加し、深層の酸素濃度は低下する傾向が見られた。ただし酸素濃度の低下は堆積物のリンのサイクルに影響を及ぼすほどのものではなかったと考えられる。
2013年1月20日日曜日
新着論文(PNAS、BG)
Proceedings of the National Academy of Sciences
☆8 January 2013; Vol. 110, No. 2
特になし
☆15 January 2013; Vol. 110, No. 3
Environmental Sciences
Recurrent jellyfish blooms are a consequence of global oscillations
Robert H. Condon et al.
定性的にクラゲの個体数の増加は海の環境悪化と捉えられることが多い。長期間にわたる沿岸部のモニタリングの結果からはクラゲの個体数が全球的に増加しているという傾向は認められない。一方でおよそ20年の周期で個体数が変動していることが認められた。長期傾向についてはまだ何も言えないが、数十年に一度訪れるクラゲの被害(漁業・観光・人への被害など)に対して対策を講じる必要がある。
☆early edition
Impact of seawater acidification on pH at the tissue–skeleton interface and calcification in reef corals
Alexander A. Venn, Eric Tambutté Michael Holcomb, Julien Laurent, Denis Allemand, and Sylvie Tambutté
海洋酸性化によって骨格と組織の間にある石灰化が起きる場所(subcalicoblastic medium; SCM)のpHが低下することで石灰化が阻害されることが予想されている。ショウガサンゴ(Stylophora pistillata)のpCO2を変化させた飼育実験から、SCMのpH低下が確認されたが、海水のpH低下よりもゆるやかな低下であることが分かった(ΔpHが大きくなっていく)。石灰化速度の低下はpHが7.16まで大きく低下した場合のみ確認された。サンゴは体内のpHを一定に保つ(homeostasis)ことで、海水のpHの変化に対してある程度耐性があると考えられる。
Marine Biology
Effects of feeding and light intensity on the response of the coral Porites rus to ocean acidification
Steeve Comeau, Robert C. Carpenter, Peter J. Edmunds
最近、サンゴの中には海洋酸性化に対しても耐性が強いものがいることが報告されている。パラオハマサンゴ(Porites rus)に対して温度一定で光量とpCO2を変えた海水で飼育実験を行った。3週間実験を行ってもpCO2による石灰化の阻害は確認されず、この種は短期間の高pCO2暴露には強いことが示された。
Biogeosciences
Spatiotemporal variability and long-term trends of ocean acidification in the California Current System
Hauri, C., Gruber, N., Vogt, M., Doney, S. C., Feely, R. A., Lachkar, Z., Leinweber, A., McDonnell, A. M. P., Munnich, M., and Plattner, G.-K.
モデルシミュレーション(Regional Oceanic Modeling System: ROMS)を用いてカリフォルニア海流系(California Current System: CCS)の1995-2050年と産業革命以降の海洋酸性化を再現。物理・生物学的な側面からCCSのpH変動は大きく、季節性も0.14ほどの(Ωだと0.2程度)変動幅を持っている。現在のpHとΩは既に産業革命前の自然変動から逸脱したレベルに達しており(ただし±1σ)、2030年代後半〜2040年中頃にはさらに現在の変動からも逸脱したレベルになることが示された。沿岸部ではもう少し早く起きると予想される。モデルはΩを大きく見積もる傾向があるため、実際にはもっと逸脱するのは早いかもしれない。
(以下はabstractからの引用文)
Overall, our study shows that the CCS joins the Arctic and Southern oceans as one of only a few known ocean regions presently approaching the dual threshold of widespread and near-permanent undersaturation with respect to aragonite and a departure from its variability envelope. In these regions, organisms may be forced to rapidly adjust to conditions that are both inherently chemically challenging and also substantially different from past conditions.
全体として、我々の研究は「CCSが北極海と南大洋のようなあまりよく分かっていない海域と同じ状態になりつつあること(アラゴナイトに関して不飽和な状態が広範囲かつほぼ絶えず起きつつある)」と、「自然変動の範囲から逸脱していること」を示している。これらの海域では、化学的に攻撃的であり過去の状態とは大きく異なる海水に対して、生物は早く適応することを余儀なくされるかもしれない。
☆8 January 2013; Vol. 110, No. 2
特になし
☆15 January 2013; Vol. 110, No. 3
Environmental Sciences
Recurrent jellyfish blooms are a consequence of global oscillations
Robert H. Condon et al.
定性的にクラゲの個体数の増加は海の環境悪化と捉えられることが多い。長期間にわたる沿岸部のモニタリングの結果からはクラゲの個体数が全球的に増加しているという傾向は認められない。一方でおよそ20年の周期で個体数が変動していることが認められた。長期傾向についてはまだ何も言えないが、数十年に一度訪れるクラゲの被害(漁業・観光・人への被害など)に対して対策を講じる必要がある。
☆early edition
Impact of seawater acidification on pH at the tissue–skeleton interface and calcification in reef corals
Alexander A. Venn, Eric Tambutté Michael Holcomb, Julien Laurent, Denis Allemand, and Sylvie Tambutté
海洋酸性化によって骨格と組織の間にある石灰化が起きる場所(subcalicoblastic medium; SCM)のpHが低下することで石灰化が阻害されることが予想されている。ショウガサンゴ(Stylophora pistillata)のpCO2を変化させた飼育実験から、SCMのpH低下が確認されたが、海水のpH低下よりもゆるやかな低下であることが分かった(ΔpHが大きくなっていく)。石灰化速度の低下はpHが7.16まで大きく低下した場合のみ確認された。サンゴは体内のpHを一定に保つ(homeostasis)ことで、海水のpHの変化に対してある程度耐性があると考えられる。
Marine Biology
Effects of feeding and light intensity on the response of the coral Porites rus to ocean acidification
Steeve Comeau, Robert C. Carpenter, Peter J. Edmunds
最近、サンゴの中には海洋酸性化に対しても耐性が強いものがいることが報告されている。パラオハマサンゴ(Porites rus)に対して温度一定で光量とpCO2を変えた海水で飼育実験を行った。3週間実験を行ってもpCO2による石灰化の阻害は確認されず、この種は短期間の高pCO2暴露には強いことが示された。
Biogeosciences
Spatiotemporal variability and long-term trends of ocean acidification in the California Current System
Hauri, C., Gruber, N., Vogt, M., Doney, S. C., Feely, R. A., Lachkar, Z., Leinweber, A., McDonnell, A. M. P., Munnich, M., and Plattner, G.-K.
モデルシミュレーション(Regional Oceanic Modeling System: ROMS)を用いてカリフォルニア海流系(California Current System: CCS)の1995-2050年と産業革命以降の海洋酸性化を再現。物理・生物学的な側面からCCSのpH変動は大きく、季節性も0.14ほどの(Ωだと0.2程度)変動幅を持っている。現在のpHとΩは既に産業革命前の自然変動から逸脱したレベルに達しており(ただし±1σ)、2030年代後半〜2040年中頃にはさらに現在の変動からも逸脱したレベルになることが示された。沿岸部ではもう少し早く起きると予想される。モデルはΩを大きく見積もる傾向があるため、実際にはもっと逸脱するのは早いかもしれない。
(以下はabstractからの引用文)
Overall, our study shows that the CCS joins the Arctic and Southern oceans as one of only a few known ocean regions presently approaching the dual threshold of widespread and near-permanent undersaturation with respect to aragonite and a departure from its variability envelope. In these regions, organisms may be forced to rapidly adjust to conditions that are both inherently chemically challenging and also substantially different from past conditions.
全体として、我々の研究は「CCSが北極海と南大洋のようなあまりよく分かっていない海域と同じ状態になりつつあること(アラゴナイトに関して不飽和な状態が広範囲かつほぼ絶えず起きつつある)」と、「自然変動の範囲から逸脱していること」を示している。これらの海域では、化学的に攻撃的であり過去の状態とは大きく異なる海水に対して、生物は早く適応することを余儀なくされるかもしれない。
2013年1月13日日曜日
新着論文(JGR, CP, BG, JC)
JGR-Oceans
Global teleconnections in the oceanic 1 phosphorus cycle: patterns, paths, and 2 timescales
Mark Holzer, François W. Primeau
シンプルな気候モデルを用いて南大洋の栄養塩(特にリン)サイクルが全球の海洋のリン濃度や生物生産に与える影響を評価。南大洋の栄養塩サイクルの影響が遠くは北大西洋まで及ぶ(南大洋のリン消費→深層水による輸送増大→北大西洋の生物生産減少)。
Oxygen decreases and variability in the eastern equatorial Pacific
Rena Czeschel, Lothar Stramma and Gregory C. Johnson
東赤道太平洋の酸素極小層(OMZ)が拡大しつつある。これまでに得られた記録とフロートを用いた記録を用いて、ここ34年間に200m と700mのOMZにおける酸素濃度が「年間 0.50 と 0.83 μmol/kgの割合」で低下していることを示す。大きな減少トレンドはPDOによるものであり、季節変動やENSOによるより短周期の変動はそれほど大きくないことが分かった。
Sensitivity of Nd isotopic composition in seawater to changes in Nd sources and paleoceanographic implications
J. Rempfer, Thomas F. Stocker, Fortunat Joos and Jean-Claude Dutay
εNdを子午面循環の強弱のプロキシとして使用する際には過去のεNdのソースとして可能性がある海域を特定する必要がある。モデルシミュレーションを通してソースの海域のεNdのフラックスや同位体比そのものを変化させることで全球の深層水のεNdにどのように影響するかを評価。深層水形成場の河川・ダスト源のεNdの変化は全球に影響を及ぼすが、それ以外の海域では浅い部分にしか影響しないことが示された。氷期-間氷期スケールの大きな変動を生むにはソースの影響は小さいが、より小さな変動を解釈する際には注意が必要である。
Climate of the Past
Stalagmite water content as a proxy for drip water supply in tropical and subtropical areas
N. Vogel, Y. Scheidegger, M. S. Brennwald, D. Fleitmann, S. Figura, R. Wieler, and R. Kipfer
イエメン(Yemen)から得られた2本の完新世の石筍と最終間氷期の1本の石筍の単位質量あたりの水分量がδ18Oとの相関が良く、降水量のプロキシになる可能性があることを示す。δ18Oの低下と滴下水の低下は陸上の降水量の低下と関係していると考えられる。逆に滴下水の増加は密なカルサイトを形成するため、水が入り込む余地を減らすと考えられる。特に乾燥地域では差が顕著になるため、プロキシになるかも?
Influence of orbital forcing and solar activity on water isotopes in precipitation during the mid- and late Holocene
S. Dietrich, M. Werner, T. Spangehl, and G. Lohmann
ドイツの鍾乳石δ18Oをもとに中期完新世以降の軌道要素と太陽活動が降水のδ18Oに与えた影響をモデルシミュレーションを用いて評価。両方のフォーシングが気温と降水δ18Oの両方に同程度の影響を与えていることが示された。
Long-term summer sunshine/moisture stress reconstruction from tree-ring widths from Bosnia and Herzegovina
S. Poljanšek, A. Ceglar, and T. Levanič
ボスニア・ヘルツェゴビナ(Bosnia and Herzegovina)で得られた7本のblack pineの木の年輪幅データを用いて夏の日射を復元。夏の日射は水ストレスを生み、それが年輪幅に影響すると考えられる。1660年以降の記録における異常に日射が低い夏は火山噴火があった年に対応している。
Biogeosciences
Nitrogen isotopes in bulk marine sediment: linking seafloor observations with subseafloor records
J.-E. Tesdal, E. D. Galbraith, and M. Kienast
δ15Nは窒素循環を復元するのに重要なプロキシとなっているが、窒素は堆積物中で様々な状態で存在し(不均質)、続成作用なども被る。Plioceneから現在までに相当する世界各地の堆積物中のバルクδ15Nが初期のδ15Nを正しく保持しているかどうかを評価。表層5000年程度の堆積物δ15Nは周辺の堆積物との相関が良いが、一方で深部ほど続成作用によって影響を被っていることが分かった。続成作用や適さない海域・深度などをより理解することで確かなプロキシとなる。
Rates of consumption of atmospheric CO2 through the weathering of loess during the next 100 yr of climate change
Y. Goddéris, S. L. Brantley, L. M. François, J. Schott, D. Pollard, M. Déqué, and M. Dury
Peoria loessが今後100年間(700ppmまで上昇すると仮定)にどれほど風化し、CO2を吸収し得るかをモデルシミュレーション。「温度」と「河川流出量」が重要な因子であることが示された。温度上昇で土壌呼吸も増加するが、総じてケイ質岩の風化は増加することが示された。逆に(CO2をよく吸収する)ドロマイトの風化は低下することが示された。ドロマイトの風化は地下の深度によっても異なる応答を示し、場所ごとに違った挙動をする(’陸上のリソクライン’)。
Temporal biomass dynamics of an Arctic plankton bloom in response to increasing levels of atmospheric carbon dioxide
K. G. Schulz, R. G. J. Bellerby, C. P. D. Brussaard, J. Büdenbender, J. Czerny, A. Engel, M. Fischer, S. Koch-Klavsen, S. A. Krug, S. Lischka, A. Ludwig, M. Meyerhöfer, G. Nondal, A. Silyakova, A. Stuhr, and U. Riebesell
ノルウェー沖で行われたEPOCAによる野外におけるCO2添加実験の結果について。CO2濃度を185から1420μatmまで人工的に上昇させ、プランクトンがどのように応答するかを調査。第一段階では栄養塩なしで行われ、CO2による大きな差は生まれなかった。第2段階では栄養塩が添加され、CO2濃度が高いほどバイオマスが増加することが示された。そしてその後の第3段階では傾向が逆転した。時間の経過とともに「栄養塩利用」「粒子状有機物量」「植物プランクトンの種組成」などに有為な変化が見られるようになった。様々な要因が絡み合って将来の有機物の流れや生産性を決定すると考えられる。
Effect of elevated CO2 on the dynamics of particle-attached and free-living bacterioplankton communities in an Arctic fjord
M. Sperling, J. Piontek, G. Gerdts, A. Wichels, H. Schunck, A.-S. Roy, J. La Roche, J. Gilbert, J. I. Nissimov, L. Bittner, S. Romac, U. Riebesell, and A. Engel
スバルバード(Svalbard)沖で行われたEPOCAによる野外におけるCO2添加実験の結果について。CO2濃度を185から1050μatmまで人工的に上昇させ、バクテリア・プランクトンがどのように応答するかを調査。比較的低いのCO2濃度(185 - 685μatm)の時にピコ植物プランクトンのブルーミングが崩壊し、粒子に付着する生物のband classの数が25%低下することが分かった。一方バクテリアによるタンパク質合成はCO2濃度が高いほど強化され、プラスの効果をもつことが示された。
Journal of Climate
Estimating Central Equatorial Pacific SST variability over the Past Millennium. Part 1: Methodology and Validation
Emile-Geay, J., K. Cobb, M. Mann, and A. Wittenberg
Part. 1は手法開発の話。古気候プロキシを用いて過去1,000年間のNINO3.4インデックスを復元。種々の問題はあるが、NINO3.4インデックスの低周波数の変動を捕らえることが可能であることを示す。
Estimating Central Equatorial Pacific SST variability over the Past Millennium. Part 2: Reconstructions and Implications
Emile-Geay, J., K. Cobb, M. Mann, and A. Wittenberg
Part. 2は古気候復元の話。年代モデル構築がきちんとなされた熱帯のサンゴ記録を用いてNINO3.4海域の過去1,000年間のSST変動を復元。得られた記録を他の熱帯域の古気候プロキシと比較した。十年〜数十年変動は地域ごとによく合ったが、一方で数世紀の変動はあまり良く合わない。太陽フォーシングは数世紀のSST変動に対して逆位相の関係があることが分かったが、短周期には影響していないことも示された。
Attribution of projected future changes in tropical cyclone passage frequency over the Western North Pacific
Yokoi, S., Y. Takayabu, and H. Murakami
7つのGCMを用いて西太平洋の台風が将来どのように変化するかを調査したところ、赤道域がよりEl Nino様になっていくにつれ、台風が生まれる海域が東へと移動し、軌道もより東へと変化することが示された。つまり、韓国や西日本よりも、東日本への台風の到来が増加することを意味する。
Southward Intertropical Convergence Zone shifts and implications for an atmospheric bipolar seesaw
Cvijanovic, I., P. Langen, E. Kaas, and P. Ditlevsen
シミュレーションを通して北半球の寒冷化と南半球の温暖化の両方のフォーシングが低緯度の降水などにどのように影響するかを評価したところ、前者は早く伝播し、後者は遅く伝播するという2つのフェーズの変動が確認された。特に南大洋の温暖化は低緯度のITCZの南下や北大西洋の中・高緯度の表層水温・風系にまで影響することが示された。
Global teleconnections in the oceanic 1 phosphorus cycle: patterns, paths, and 2 timescales
Mark Holzer, François W. Primeau
シンプルな気候モデルを用いて南大洋の栄養塩(特にリン)サイクルが全球の海洋のリン濃度や生物生産に与える影響を評価。南大洋の栄養塩サイクルの影響が遠くは北大西洋まで及ぶ(南大洋のリン消費→深層水による輸送増大→北大西洋の生物生産減少)。
Oxygen decreases and variability in the eastern equatorial Pacific
Rena Czeschel, Lothar Stramma and Gregory C. Johnson
東赤道太平洋の酸素極小層(OMZ)が拡大しつつある。これまでに得られた記録とフロートを用いた記録を用いて、ここ34年間に200m と700mのOMZにおける酸素濃度が「年間 0.50 と 0.83 μmol/kgの割合」で低下していることを示す。大きな減少トレンドはPDOによるものであり、季節変動やENSOによるより短周期の変動はそれほど大きくないことが分かった。
Sensitivity of Nd isotopic composition in seawater to changes in Nd sources and paleoceanographic implications
J. Rempfer, Thomas F. Stocker, Fortunat Joos and Jean-Claude Dutay
εNdを子午面循環の強弱のプロキシとして使用する際には過去のεNdのソースとして可能性がある海域を特定する必要がある。モデルシミュレーションを通してソースの海域のεNdのフラックスや同位体比そのものを変化させることで全球の深層水のεNdにどのように影響するかを評価。深層水形成場の河川・ダスト源のεNdの変化は全球に影響を及ぼすが、それ以外の海域では浅い部分にしか影響しないことが示された。氷期-間氷期スケールの大きな変動を生むにはソースの影響は小さいが、より小さな変動を解釈する際には注意が必要である。
Climate of the Past
Stalagmite water content as a proxy for drip water supply in tropical and subtropical areas
N. Vogel, Y. Scheidegger, M. S. Brennwald, D. Fleitmann, S. Figura, R. Wieler, and R. Kipfer
イエメン(Yemen)から得られた2本の完新世の石筍と最終間氷期の1本の石筍の単位質量あたりの水分量がδ18Oとの相関が良く、降水量のプロキシになる可能性があることを示す。δ18Oの低下と滴下水の低下は陸上の降水量の低下と関係していると考えられる。逆に滴下水の増加は密なカルサイトを形成するため、水が入り込む余地を減らすと考えられる。特に乾燥地域では差が顕著になるため、プロキシになるかも?
Influence of orbital forcing and solar activity on water isotopes in precipitation during the mid- and late Holocene
S. Dietrich, M. Werner, T. Spangehl, and G. Lohmann
ドイツの鍾乳石δ18Oをもとに中期完新世以降の軌道要素と太陽活動が降水のδ18Oに与えた影響をモデルシミュレーションを用いて評価。両方のフォーシングが気温と降水δ18Oの両方に同程度の影響を与えていることが示された。
Long-term summer sunshine/moisture stress reconstruction from tree-ring widths from Bosnia and Herzegovina
S. Poljanšek, A. Ceglar, and T. Levanič
ボスニア・ヘルツェゴビナ(Bosnia and Herzegovina)で得られた7本のblack pineの木の年輪幅データを用いて夏の日射を復元。夏の日射は水ストレスを生み、それが年輪幅に影響すると考えられる。1660年以降の記録における異常に日射が低い夏は火山噴火があった年に対応している。
Biogeosciences
Nitrogen isotopes in bulk marine sediment: linking seafloor observations with subseafloor records
J.-E. Tesdal, E. D. Galbraith, and M. Kienast
δ15Nは窒素循環を復元するのに重要なプロキシとなっているが、窒素は堆積物中で様々な状態で存在し(不均質)、続成作用なども被る。Plioceneから現在までに相当する世界各地の堆積物中のバルクδ15Nが初期のδ15Nを正しく保持しているかどうかを評価。表層5000年程度の堆積物δ15Nは周辺の堆積物との相関が良いが、一方で深部ほど続成作用によって影響を被っていることが分かった。続成作用や適さない海域・深度などをより理解することで確かなプロキシとなる。
Rates of consumption of atmospheric CO2 through the weathering of loess during the next 100 yr of climate change
Y. Goddéris, S. L. Brantley, L. M. François, J. Schott, D. Pollard, M. Déqué, and M. Dury
Peoria loessが今後100年間(700ppmまで上昇すると仮定)にどれほど風化し、CO2を吸収し得るかをモデルシミュレーション。「温度」と「河川流出量」が重要な因子であることが示された。温度上昇で土壌呼吸も増加するが、総じてケイ質岩の風化は増加することが示された。逆に(CO2をよく吸収する)ドロマイトの風化は低下することが示された。ドロマイトの風化は地下の深度によっても異なる応答を示し、場所ごとに違った挙動をする(’陸上のリソクライン’)。
Temporal biomass dynamics of an Arctic plankton bloom in response to increasing levels of atmospheric carbon dioxide
K. G. Schulz, R. G. J. Bellerby, C. P. D. Brussaard, J. Büdenbender, J. Czerny, A. Engel, M. Fischer, S. Koch-Klavsen, S. A. Krug, S. Lischka, A. Ludwig, M. Meyerhöfer, G. Nondal, A. Silyakova, A. Stuhr, and U. Riebesell
ノルウェー沖で行われたEPOCAによる野外におけるCO2添加実験の結果について。CO2濃度を185から1420μatmまで人工的に上昇させ、プランクトンがどのように応答するかを調査。第一段階では栄養塩なしで行われ、CO2による大きな差は生まれなかった。第2段階では栄養塩が添加され、CO2濃度が高いほどバイオマスが増加することが示された。そしてその後の第3段階では傾向が逆転した。時間の経過とともに「栄養塩利用」「粒子状有機物量」「植物プランクトンの種組成」などに有為な変化が見られるようになった。様々な要因が絡み合って将来の有機物の流れや生産性を決定すると考えられる。
Effect of elevated CO2 on the dynamics of particle-attached and free-living bacterioplankton communities in an Arctic fjord
M. Sperling, J. Piontek, G. Gerdts, A. Wichels, H. Schunck, A.-S. Roy, J. La Roche, J. Gilbert, J. I. Nissimov, L. Bittner, S. Romac, U. Riebesell, and A. Engel
スバルバード(Svalbard)沖で行われたEPOCAによる野外におけるCO2添加実験の結果について。CO2濃度を185から1050μatmまで人工的に上昇させ、バクテリア・プランクトンがどのように応答するかを調査。比較的低いのCO2濃度(185 - 685μatm)の時にピコ植物プランクトンのブルーミングが崩壊し、粒子に付着する生物のband classの数が25%低下することが分かった。一方バクテリアによるタンパク質合成はCO2濃度が高いほど強化され、プラスの効果をもつことが示された。
Journal of Climate
Estimating Central Equatorial Pacific SST variability over the Past Millennium. Part 1: Methodology and Validation
Emile-Geay, J., K. Cobb, M. Mann, and A. Wittenberg
Part. 1は手法開発の話。古気候プロキシを用いて過去1,000年間のNINO3.4インデックスを復元。種々の問題はあるが、NINO3.4インデックスの低周波数の変動を捕らえることが可能であることを示す。
Estimating Central Equatorial Pacific SST variability over the Past Millennium. Part 2: Reconstructions and Implications
Emile-Geay, J., K. Cobb, M. Mann, and A. Wittenberg
Part. 2は古気候復元の話。年代モデル構築がきちんとなされた熱帯のサンゴ記録を用いてNINO3.4海域の過去1,000年間のSST変動を復元。得られた記録を他の熱帯域の古気候プロキシと比較した。十年〜数十年変動は地域ごとによく合ったが、一方で数世紀の変動はあまり良く合わない。太陽フォーシングは数世紀のSST変動に対して逆位相の関係があることが分かったが、短周期には影響していないことも示された。
Attribution of projected future changes in tropical cyclone passage frequency over the Western North Pacific
Yokoi, S., Y. Takayabu, and H. Murakami
7つのGCMを用いて西太平洋の台風が将来どのように変化するかを調査したところ、赤道域がよりEl Nino様になっていくにつれ、台風が生まれる海域が東へと移動し、軌道もより東へと変化することが示された。つまり、韓国や西日本よりも、東日本への台風の到来が増加することを意味する。
Southward Intertropical Convergence Zone shifts and implications for an atmospheric bipolar seesaw
Cvijanovic, I., P. Langen, E. Kaas, and P. Ditlevsen
シミュレーションを通して北半球の寒冷化と南半球の温暖化の両方のフォーシングが低緯度の降水などにどのように影響するかを評価したところ、前者は早く伝播し、後者は遅く伝播するという2つのフェーズの変動が確認された。特に南大洋の温暖化は低緯度のITCZの南下や北大西洋の中・高緯度の表層水温・風系にまで影響することが示された。
2013年1月6日日曜日
新着論文(BG)
Biogeosciences
Scaled biotic disruption during early Eocene global warming events
S. J. Gibbs, P. R. Bown, B. H. Murphy, A. Sluijs, K. M. Edgar, H. Pälike, C. T. Bolton, and J. C. Zachos
PETMをまたぐ300万年間における温暖化とそれに伴う生態系への擾乱を調べるために、石灰質ナノプランクトンの種の変化に着目。5つの温暖化イベントのうち、PETM、ETM2、ETMⅠ1の3つにおいてのみ大量絶滅が起きており、ある程度の閾値が存在した可能性が示唆される。
Changes in column inventories of carbon and oxygen in the Atlantic Ocean
T. Tanhua and R. F. Keeling
人為起源のCO2の海水への取り込みは様々な仮定のもとになされてきたが、よりシンプルでより仮定がすくなくてすむ推定法を提示。「DICの貯留率」と「酸素消費補償」に基づいて大西洋におけるDICとO2の増加/減少率を求めたところ、それぞれ +0.86/-0.41 mol/m2/yrで変化していることが分かった。
Reconstructing skeletal fiber arrangement and growth mode in the coral Porites lutea (Cnidaria, Scleractinia): a confocal Raman microscopy study
M. Wall and G. Nehrke
Confocal Raman microscopy (CRM)を用いてPorites luteaの骨格中の微構造の並びや有機物マトリクスの分布などを調査。成長軸には2つの構造(「付加成長する層」と「指状の象牙質突起(denticle finger-like structures)」)が存在することが明らかになった。
Observed acidification trends in North Atlantic water masses
M. Vázquez-Rodríguez, F. F. Pérez, A. Velo, A. F. Ríos, and H. Mercier
北大西洋で測定された炭酸系の観測記録をもとに、1981 - 2008年の27年間の海洋酸性化の速度を各海盆ごとに求めたところ、亜北極中層水(SAIW)と亜北極モード水(SPMW)がそれぞれ年間「-0.0019 ± 0.0001」「-0.0012 ± 0.0002」の割合で酸性化していることが分かった。特に北大西洋亜寒帯循環(North Atlantic Subpolar Gyre)が人為起源のCO2を吸収した表層水を効果的に深層へと輸送しているため、ラブラドル海を起源とする海水がより酸性化しているこが示された(年間 -0.0016 ± 0.0002)。過去30年間のCO2濃度上昇率だと、CO2濃度が550ppmに達すればラブラドル海の海水はアラゴナイトに関する不飽和状態になることが予想される。
Oxygen isotope ratios in the shell of Mytilus edulis: archives of glacier meltwater in Greenland?
E. A. A. Versteegh, M. E. Blicher, J. Mortensen, S. Rysgaard, T. D. Als, and A. D. Wanamaker Jr.
グリーンランド氷床の融解は全球的な海水準上昇に寄与すると考えられる。しかしながらグリーンランドにおける氷床融解の観測はここ数十年間に限られている。グリーンランド西部に棲息するイガイ(Mytilus edulis)の殻のδ18Oは融水のプロキシになる可能性がある(融水のδ18Oは海水のそれに比べて非常に’軽い’ため)。2007年から2010年にわたる成長部分について測定を行ったところ、融水があったと思われる部分は成長が停止していることが分かった。
Scaled biotic disruption during early Eocene global warming events
S. J. Gibbs, P. R. Bown, B. H. Murphy, A. Sluijs, K. M. Edgar, H. Pälike, C. T. Bolton, and J. C. Zachos
PETMをまたぐ300万年間における温暖化とそれに伴う生態系への擾乱を調べるために、石灰質ナノプランクトンの種の変化に着目。5つの温暖化イベントのうち、PETM、ETM2、ETMⅠ1の3つにおいてのみ大量絶滅が起きており、ある程度の閾値が存在した可能性が示唆される。
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| Gibbs et al. (2012)を改変。 網かけの部分が温室効果ガスの増加と急激な温暖化があったと考えられている時代。 |
Changes in column inventories of carbon and oxygen in the Atlantic Ocean
T. Tanhua and R. F. Keeling
人為起源のCO2の海水への取り込みは様々な仮定のもとになされてきたが、よりシンプルでより仮定がすくなくてすむ推定法を提示。「DICの貯留率」と「酸素消費補償」に基づいて大西洋におけるDICとO2の増加/減少率を求めたところ、それぞれ +0.86/-0.41 mol/m2/yrで変化していることが分かった。
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| Tanhua & Keeling (2012)を改変。 観測点(左)と各海盆A~GにおけるDICの増加率(酸素消費の補正後) |
Reconstructing skeletal fiber arrangement and growth mode in the coral Porites lutea (Cnidaria, Scleractinia): a confocal Raman microscopy study
M. Wall and G. Nehrke
Confocal Raman microscopy (CRM)を用いてPorites luteaの骨格中の微構造の並びや有機物マトリクスの分布などを調査。成長軸には2つの構造(「付加成長する層」と「指状の象牙質突起(denticle finger-like structures)」)が存在することが明らかになった。
Observed acidification trends in North Atlantic water masses
M. Vázquez-Rodríguez, F. F. Pérez, A. Velo, A. F. Ríos, and H. Mercier
北大西洋で測定された炭酸系の観測記録をもとに、1981 - 2008年の27年間の海洋酸性化の速度を各海盆ごとに求めたところ、亜北極中層水(SAIW)と亜北極モード水(SPMW)がそれぞれ年間「-0.0019 ± 0.0001」「-0.0012 ± 0.0002」の割合で酸性化していることが分かった。特に北大西洋亜寒帯循環(North Atlantic Subpolar Gyre)が人為起源のCO2を吸収した表層水を効果的に深層へと輸送しているため、ラブラドル海を起源とする海水がより酸性化しているこが示された(年間 -0.0016 ± 0.0002)。過去30年間のCO2濃度上昇率だと、CO2濃度が550ppmに達すればラブラドル海の海水はアラゴナイトに関する不飽和状態になることが予想される。
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| Vázquez-Rodríguez et al. (2012)を改変。 サンプリングが行われた地点(上)と各水塊(下) |
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| Vázquez-Rodríguez et al. (2012)を改変。 各海盆ごとの酸性化の速度。色は水塊(深度)ごとの違い。深層水形成が起きる場所ほど酸性化が早く進行している。 |
Oxygen isotope ratios in the shell of Mytilus edulis: archives of glacier meltwater in Greenland?
E. A. A. Versteegh, M. E. Blicher, J. Mortensen, S. Rysgaard, T. D. Als, and A. D. Wanamaker Jr.
グリーンランド氷床の融解は全球的な海水準上昇に寄与すると考えられる。しかしながらグリーンランドにおける氷床融解の観測はここ数十年間に限られている。グリーンランド西部に棲息するイガイ(Mytilus edulis)の殻のδ18Oは融水のプロキシになる可能性がある(融水のδ18Oは海水のそれに比べて非常に’軽い’ため)。2007年から2010年にわたる成長部分について測定を行ったところ、融水があったと思われる部分は成長が停止していることが分かった。
2013年1月5日土曜日
新着論文(BG)
Biogeosciences
Spatial and temporal variability in nutrients and carbon uptake during 2004 and 2005 in the eastern equatorial Pacific Ocean
A. P. Palacz and F. Chai
Biogeosciences, 9, 4369-4383, 2012
赤道東太平洋の海洋表層水における一次生産は湧昇水を起源とする栄養塩によって他の地域よりも活発になっている。2004-2005年にかけて行われた航海のデータを用いて、その生物・物理作用を評価。熱帯不安定波(tropical instability waves; TIWs)が一次生産を励起していることがモデルと観測の双方から分かった。よりよく生物地球化学的な作用を理解・再現するためにも、
Variation in stable carbon and oxygen isotopes of individual benthic foraminifera: tracers for quantifying the magnitude of isotopic disequilibrium
T. Ishimura, U. Tsunogai, S. Hasegawa, F. Nakagawa, T. Oi, H. Kitazato, H. Suga, and T. Toyofuku
Biogeosciences, 9, 4353-4367, 2012
異なる種の底性有孔虫の1固体ごとの殻のδ18Oとδ13Cを測定し、同位体平衡からの差異(つまり海水のδ18OSWとδ13CDICからのずれ)を評価。この知見を用いれば古気候復元もより精度が増すと考えられる。
Modelling coral polyp calcification in relation to ocean acidification
S. Hohn and A. Merico
Biogeosciences, 9, 4441-4454, 2012
海洋酸性化によって石灰化生物が大きな打撃を被ることが予測されているものの、石灰化に対する影響の詳細なモデリングはほとんどなされていない。「海水」「ポリプ組織」「腔腸」「石灰化流体」を4つに分けたモデルシミュレーションによって、サンゴポリプの石灰化を再現。CO2の拡散だけでは石灰化の速度を維持できないため、重炭酸イオンが重要な役割を持っていると考えられる。pCO2の上昇とともに石灰化流体中のpCO2濃度も上昇し、アラゴナイトに対する飽和度が低下し、石灰化を阻害することも示されたが、石灰化プロセスが複雑であることも示された。
Light and temperature effects on δ11B and B / Ca ratios of the zooxanthellate coral Acropora sp.: results from culturing experiments
D. Dissard, E. Douville, S. Reynaud, A. Juillet-Leclerc, P. Montagna, P. Louvat, and M. McCulloch
Biogeosciences, 9, 4589-4605, 2012
δ11BとB/Caが海水pHの指標として報告されているが、その制御要因についてはよく分かっていない。Acropora spp.のサンゴを異なる温度・光条件下で飼育し、飼育期間中の成長部分のδ11BとB/Caを測定。光の強度が増すごとにδ11Bが低くなり、石灰化が阻害されている可能性がある(ほとんどのモデル研究では光による石灰化促進が報告されている)。また22 - 25℃の温度区間ではδ11Bが変化したが、25 - 28℃では変化しなかった。一方、B/Caもまた温度や光での変化が見られたが、その制御要因は未だにはっきりとは分からず、サンゴ骨格へのホウ素の取り込みについては未だに解明すべきことが多い。
Production, partitioning and stoichiometry of organic matter under variable nutrient supply during mesocosm experiments in the tropical Pacific and Atlantic Ocean
J. M. S. Franz, H. Hauss, U. Sommer, T. Dittmar, and U. Riebesell
Biogeosciences, 9, 4629-4643, 2012
海洋の中層水の酸素極小層が今世紀において広がることが予測されている。酸素濃度の低下は微生物による窒素生産を減少させ、堆積物からのリンの溶出を増加させるため、レッドフィールド比が窒素に欠乏した水塊が形成されると考えられる。そうした水塊が物理的に湧昇する海域において生物がどのように応答するかを評価するために、栄養塩の添加実験を太平洋と大西洋にて実施。溶存・非溶存の栄養塩の比はN/P比によって強く制御されており、酸素極小層から湧昇する水塊によって栄養塩サイクルと有機炭素プールに影響すると考えられる。
Spatial and temporal variability in nutrients and carbon uptake during 2004 and 2005 in the eastern equatorial Pacific Ocean
A. P. Palacz and F. Chai
Biogeosciences, 9, 4369-4383, 2012
赤道東太平洋の海洋表層水における一次生産は湧昇水を起源とする栄養塩によって他の地域よりも活発になっている。2004-2005年にかけて行われた航海のデータを用いて、その生物・物理作用を評価。熱帯不安定波(tropical instability waves; TIWs)が一次生産を励起していることがモデルと観測の双方から分かった。よりよく生物地球化学的な作用を理解・再現するためにも、
- より多くの植物プランクトン組成
- レッドフィールド比と炭素/クロロフィル比の変動
- 植物プランクトンに対する鉄・シリカの共制限
Variation in stable carbon and oxygen isotopes of individual benthic foraminifera: tracers for quantifying the magnitude of isotopic disequilibrium
T. Ishimura, U. Tsunogai, S. Hasegawa, F. Nakagawa, T. Oi, H. Kitazato, H. Suga, and T. Toyofuku
Biogeosciences, 9, 4353-4367, 2012
異なる種の底性有孔虫の1固体ごとの殻のδ18Oとδ13Cを測定し、同位体平衡からの差異(つまり海水のδ18OSWとδ13CDICからのずれ)を評価。この知見を用いれば古気候復元もより精度が増すと考えられる。
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| Ishimura et al. (2012)を改変。 それぞれの底性有孔虫の生息環境の海水の同位体平衡からのずれ。おおまかに-0.3の傾きに載る? |
Modelling coral polyp calcification in relation to ocean acidification
S. Hohn and A. Merico
Biogeosciences, 9, 4441-4454, 2012
海洋酸性化によって石灰化生物が大きな打撃を被ることが予測されているものの、石灰化に対する影響の詳細なモデリングはほとんどなされていない。「海水」「ポリプ組織」「腔腸」「石灰化流体」を4つに分けたモデルシミュレーションによって、サンゴポリプの石灰化を再現。CO2の拡散だけでは石灰化の速度を維持できないため、重炭酸イオンが重要な役割を持っていると考えられる。pCO2の上昇とともに石灰化流体中のpCO2濃度も上昇し、アラゴナイトに対する飽和度が低下し、石灰化を阻害することも示されたが、石灰化プロセスが複雑であることも示された。
Light and temperature effects on δ11B and B / Ca ratios of the zooxanthellate coral Acropora sp.: results from culturing experiments
D. Dissard, E. Douville, S. Reynaud, A. Juillet-Leclerc, P. Montagna, P. Louvat, and M. McCulloch
Biogeosciences, 9, 4589-4605, 2012
δ11BとB/Caが海水pHの指標として報告されているが、その制御要因についてはよく分かっていない。Acropora spp.のサンゴを異なる温度・光条件下で飼育し、飼育期間中の成長部分のδ11BとB/Caを測定。光の強度が増すごとにδ11Bが低くなり、石灰化が阻害されている可能性がある(ほとんどのモデル研究では光による石灰化促進が報告されている)。また22 - 25℃の温度区間ではδ11Bが変化したが、25 - 28℃では変化しなかった。一方、B/Caもまた温度や光での変化が見られたが、その制御要因は未だにはっきりとは分からず、サンゴ骨格へのホウ素の取り込みについては未だに解明すべきことが多い。
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| Dissald et al. (2012)を改変。 各温度区・光量でのホウ素同位体。 Recovery(回復)実験では思うような結果が得られなかった。ストレスが原因? |
Production, partitioning and stoichiometry of organic matter under variable nutrient supply during mesocosm experiments in the tropical Pacific and Atlantic Ocean
J. M. S. Franz, H. Hauss, U. Sommer, T. Dittmar, and U. Riebesell
Biogeosciences, 9, 4629-4643, 2012
海洋の中層水の酸素極小層が今世紀において広がることが予測されている。酸素濃度の低下は微生物による窒素生産を減少させ、堆積物からのリンの溶出を増加させるため、レッドフィールド比が窒素に欠乏した水塊が形成されると考えられる。そうした水塊が物理的に湧昇する海域において生物がどのように応答するかを評価するために、栄養塩の添加実験を太平洋と大西洋にて実施。溶存・非溶存の栄養塩の比はN/P比によって強く制御されており、酸素極小層から湧昇する水塊によって栄養塩サイクルと有機炭素プールに影響すると考えられる。
2012年12月15日土曜日
新着論文(CP, BG)
Marine productivity response to Heinrich events: a model-data comparison
V. Mariotti, L. Bopp, A. Tagliabue, M. Kageyama, and D. Swingedouw
Climate of the Past, 8, 1581-1598, 2012
ハインリッヒ・イベント(YD, HS1 - 6)における海洋の一次生産の変化を明らかにするために、これまでに得られている様々な地域の様々なプロキシを用いて復元された一次生産の記録をまとめ、モデルシミュレーションを組み合わせて考察を行った。一般にハインリッヒ・イベント時には海洋の一次生産が16%低下していた。北大西洋は主に減少、南大洋は増加した。赤道太平洋は有機物の輸送量の増加を示したが、一方で生物源シリカの輸送量は低下し、珪藻による炭素・ケイ酸の取り込みの比が変化した結果と考えられる。
Stable isotope and trace element investigation of two contemporaneous annually-laminated stalagmites from northeastern China surrounding the "8.2 ka event"
J. Y. Wu, Y. J. Wang, H. Cheng, X. G. Kong, and D. B. Liu
Climate of the Past, 8, 1497-1507, 2012
中国北東部から得られた鍾乳石のδ18O、δ13C、Ba/Caを測定。8.2kaに対応した夏モンスーンの指標として考えられるδ18OのシグナルはQunfやDongge洞窟のものと違い、顕著には見られない。しかしδ13CとBa/Caには変化が見られ、北大西洋の気候変動のシグナルが中緯度にも冬モンスーンの変化を介して伝播したと考えられる。
On the gas-ice depth difference (Δdepth) along the EPICA Dome C ice core
F. Parrenin, S. Barker, T. Blunier, J. Chappellaz, J. Jouzel, A. Landais, V. Masson-Delmotte, J. Schwander, and D. Veres
Climate of the Past, 8, 1239-1255, 2012
EPICA Dome C(EDC)アイスコアの過去140kaにわたる気体-氷年代モデルの構築に関して。
Enrichment in 13C of atmospheric CH4 during the Younger Dryas termination
J. R. Melton, H. Schaefer, and M. J. Whiticar
Climate of the Past, 8, 1177-1197, 2012
ヤンガー・ドリアス時には大気中のメタン濃度の大幅な変動が確認されているが、その放出源(湿地・ガスハイドレート・サーモカルストなど)は明らかになっていない。これまでに得られたアイスコアとPa ̊kitsoq(グリーンランド)メタンの濃度とδ13CH4、さらに14CとδDも併せて質量収支計算を行ったところ、森林火災(42 - 66 %)とサーモカルスト湖からの放出(27 - 59 %)が大半を担っていることが示された。
Influence of changing carbonate chemistry on morphology and weight of coccoliths formed by Emiliania huxleyi
L. T. Bach, C. Bauke, K. J. S. Meier, U. Riebesell, and K. G. Schulz
Biogeosciences, 9, 3449-3463, 2012
円石藻(Emiliania huxleyi)の殻重量は海水の炭酸塩の変化によって変化し、それを利用して過去の炭酸系の推定がなされているが、それがどの変数によって引き起こされているかの詳細は明らかになっていない。奇形の円石藻は主に[H+]によって引き起こされていることが分かった。サイズの変化は[HCO3-]、[H+]、[CO32-]のいずれか(或いはすべて)によってもたらされている。
Spatial linkages between coral proxies of terrestrial runoff across a large embayment in Madagascar
C. A. Grove, J. Zinke, T. Scheufen, J. Maina, E. Epping, W. Boer, B. Randriamanantsoa, and G.-J. A. Brummer
Biogeosciences, 9, 3063-3081, 2012
マダガスカルの河口付近で得られた3つのハマサンゴのδ18O、δ13C、Ba/Ca、ルミネ(G/B)を測定し、広域の河川流出量のプロキシとなるものがどれかを検討。フミン酸は保存量として振る舞うため、ルミネが最も使えるらしい。次いでBa/Caも有用。
V. Mariotti, L. Bopp, A. Tagliabue, M. Kageyama, and D. Swingedouw
Climate of the Past, 8, 1581-1598, 2012
ハインリッヒ・イベント(YD, HS1 - 6)における海洋の一次生産の変化を明らかにするために、これまでに得られている様々な地域の様々なプロキシを用いて復元された一次生産の記録をまとめ、モデルシミュレーションを組み合わせて考察を行った。一般にハインリッヒ・イベント時には海洋の一次生産が16%低下していた。北大西洋は主に減少、南大洋は増加した。赤道太平洋は有機物の輸送量の増加を示したが、一方で生物源シリカの輸送量は低下し、珪藻による炭素・ケイ酸の取り込みの比が変化した結果と考えられる。
Stable isotope and trace element investigation of two contemporaneous annually-laminated stalagmites from northeastern China surrounding the "8.2 ka event"
J. Y. Wu, Y. J. Wang, H. Cheng, X. G. Kong, and D. B. Liu
Climate of the Past, 8, 1497-1507, 2012
中国北東部から得られた鍾乳石のδ18O、δ13C、Ba/Caを測定。8.2kaに対応した夏モンスーンの指標として考えられるδ18OのシグナルはQunfやDongge洞窟のものと違い、顕著には見られない。しかしδ13CとBa/Caには変化が見られ、北大西洋の気候変動のシグナルが中緯度にも冬モンスーンの変化を介して伝播したと考えられる。
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| Wu et al. (2012)を改変。 鍾乳石から復元された8.2ka前後の様々なプロキシ。 |
On the gas-ice depth difference (Δdepth) along the EPICA Dome C ice core
F. Parrenin, S. Barker, T. Blunier, J. Chappellaz, J. Jouzel, A. Landais, V. Masson-Delmotte, J. Schwander, and D. Veres
Climate of the Past, 8, 1239-1255, 2012
EPICA Dome C(EDC)アイスコアの過去140kaにわたる気体-氷年代モデルの構築に関して。
Enrichment in 13C of atmospheric CH4 during the Younger Dryas termination
J. R. Melton, H. Schaefer, and M. J. Whiticar
Climate of the Past, 8, 1177-1197, 2012
ヤンガー・ドリアス時には大気中のメタン濃度の大幅な変動が確認されているが、その放出源(湿地・ガスハイドレート・サーモカルストなど)は明らかになっていない。これまでに得られたアイスコアとPa ̊kitsoq(グリーンランド)メタンの濃度とδ13CH4、さらに14CとδDも併せて質量収支計算を行ったところ、森林火災(42 - 66 %)とサーモカルスト湖からの放出(27 - 59 %)が大半を担っていることが示された。
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| Melton et al. (2012)を改変。 アイスコアに含まれている気泡から復元された様々なメタンの同位体。YDに焦点が当てられている。 |
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| Melton et al. (2012)を改変。 同位体によってメタンの放出源を分けることができるが、メタンには様々な放出源が存在する。 例えば、サーモカルスト・シロアリ・湿地・森林火災・ガスハイドレートなど。 |
Influence of changing carbonate chemistry on morphology and weight of coccoliths formed by Emiliania huxleyi
L. T. Bach, C. Bauke, K. J. S. Meier, U. Riebesell, and K. G. Schulz
Biogeosciences, 9, 3449-3463, 2012
円石藻(Emiliania huxleyi)の殻重量は海水の炭酸塩の変化によって変化し、それを利用して過去の炭酸系の推定がなされているが、それがどの変数によって引き起こされているかの詳細は明らかになっていない。奇形の円石藻は主に[H+]によって引き起こされていることが分かった。サイズの変化は[HCO3-]、[H+]、[CO32-]のいずれか(或いはすべて)によってもたらされている。
Spatial linkages between coral proxies of terrestrial runoff across a large embayment in Madagascar
C. A. Grove, J. Zinke, T. Scheufen, J. Maina, E. Epping, W. Boer, B. Randriamanantsoa, and G.-J. A. Brummer
Biogeosciences, 9, 3063-3081, 2012
マダガスカルの河口付近で得られた3つのハマサンゴのδ18O、δ13C、Ba/Ca、ルミネ(G/B)を測定し、広域の河川流出量のプロキシとなるものがどれかを検討。フミン酸は保存量として振る舞うため、ルミネが最も使えるらしい。次いでBa/Caも有用。
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| Grove et al. (2012)を改変。 3つのハマサンゴのG/BとBa/Caの変動の比較。明瞭な季節変動が見られる。 |
2012年12月11日火曜日
新着論文(CP, BG)
Climate of the Past
Vegetation dynamics in the Northeastern Mediterranean region during the past 23 000 yr: insights from a new pollen record from the Sea of Marmara
V. Valsecchi, M. F. Sanchez Goñi, and L. Londeix
地中海東部(Sea of Marmara)で得られた堆積物コア中の花粉分析から過去23kaの環境変動と植生変動を復元。HS1、B/A、YDに対応した変動パターンが見られた。また完新世の5.5ka、2.1kaには森林が大きく後退していた。地中海東部の森林は北大西洋やシベリア高気圧に強く影響されていると考えられる。
Biogeosciences
Ocean acidification limits temperature-induced poleward expansion of coral habitats around Japan
Y. Yara, M. Vogt, M. Fujii, H. Yamano, C. Hauri, M. Steinacher, N. Gruber, and Y. Yamanaka
4つの気候モデルを用いて日本周辺における熱帯-亜熱帯サンゴの生息域が将来の温暖化と海洋酸性化によってどのように変化するかを予測。IPCCのbusiness as usual排出シナリオでは、今世紀末には数百キロ北上すると考えられる。白化現象と炭酸塩の飽和度低下によってサンゴの生息できる環境は2020年〜2030年には半分ほどになり、2030-2040年には消失すると予想される。ただし、「サンゴの適応」や「生息地の早い移動」などを考慮できていないため、大げさに見積もっている可能性が高い。
Nitrous oxide dynamics in low oxygen regions of the Pacific: insights from the MEMENTO database
L. M. Zamora, A. Oschlies, H. W. Bange, K. B. Huebert, J. D. Craig, A. Kock, and C. R. Löscher
赤道太平洋は世界でも最大のN2Oの放出源の一つである。将来赤道東太平洋の酸素極小層は拡大すると予想されているが、それに伴って窒素循環がどのように変化するかはよく分かっていない。モデルシミュレーションから、N2OはO2の減少に対して指数関数的にではなく、線形的に増加すると予想される。そのため、従来の研究はN2Oの増加を過大評価している可能性があるという。
Vegetation dynamics in the Northeastern Mediterranean region during the past 23 000 yr: insights from a new pollen record from the Sea of Marmara
V. Valsecchi, M. F. Sanchez Goñi, and L. Londeix
地中海東部(Sea of Marmara)で得られた堆積物コア中の花粉分析から過去23kaの環境変動と植生変動を復元。HS1、B/A、YDに対応した変動パターンが見られた。また完新世の5.5ka、2.1kaには森林が大きく後退していた。地中海東部の森林は北大西洋やシベリア高気圧に強く影響されていると考えられる。
Biogeosciences
Ocean acidification limits temperature-induced poleward expansion of coral habitats around Japan
Y. Yara, M. Vogt, M. Fujii, H. Yamano, C. Hauri, M. Steinacher, N. Gruber, and Y. Yamanaka
4つの気候モデルを用いて日本周辺における熱帯-亜熱帯サンゴの生息域が将来の温暖化と海洋酸性化によってどのように変化するかを予測。IPCCのbusiness as usual排出シナリオでは、今世紀末には数百キロ北上すると考えられる。白化現象と炭酸塩の飽和度低下によってサンゴの生息できる環境は2020年〜2030年には半分ほどになり、2030-2040年には消失すると予想される。ただし、「サンゴの適応」や「生息地の早い移動」などを考慮できていないため、大げさに見積もっている可能性が高い。
Nitrous oxide dynamics in low oxygen regions of the Pacific: insights from the MEMENTO database
L. M. Zamora, A. Oschlies, H. W. Bange, K. B. Huebert, J. D. Craig, A. Kock, and C. R. Löscher
赤道太平洋は世界でも最大のN2Oの放出源の一つである。将来赤道東太平洋の酸素極小層は拡大すると予想されているが、それに伴って窒素循環がどのように変化するかはよく分かっていない。モデルシミュレーションから、N2OはO2の減少に対して指数関数的にではなく、線形的に増加すると予想される。そのため、従来の研究はN2Oの増加を過大評価している可能性があるという。
2012年11月6日火曜日
新着論文(GRL, JGR, PO, BG)
※横山研の新着論文担当箇所より
○G3
Dynamic process of turbidity generation triggered by the 2011 Tohoku-Oki earthquake
Noguchi, T., W. Tanikawa, T. Hirose, W. Lin, S. Kawagucci, Y. Yoshida-Takashima, M. C. Honda, K. Takai, H. Kitazato, and K. Okamura
東北沖地震の1ヶ月後に震源域の直上付近で非常に懸濁した底層水が確認され(地震前の10倍程度)、地震による地滑りによって生じたと考えられる。堆積物が薄くても非常に早い加速度を持った地震であれば海底地滑りが発生することを示している。
○GRL
Recent changes in the dynamic properties of declining Arctic sea ice: A model study
Zhang, J., R. Lindsay, A. Schweiger, and I. Rigor
1979-2006年平均と比べると、2007-2011年平均の北極の海氷量は体積が33%減少し、厚さも特に西部で薄くなっている。その結果、氷の流出速度と崩壊速度がそれぞれ13%、17%早まっている。海氷の物理特性は複雑で、海氷の端を正確に予測するのは難しいらしい。
Sea level trends, interannual and decadal variability in the Pacific Ocean
Zhang, X., and J. A. Church
1993年から行われているほぼ全球の海水面の高度計のデータを用いて、太平洋における海水準の経年変動・数十年変動を分けて議論。赤道西太平洋で海水準の上昇速度が特に早いのは、数十年スケールの気候変動の結果と考えられる。また東赤道太平洋やアメリカ西海岸の海水準の上昇率は無視できる程度である。変動の大部分はENSOとPDOによって説明可能らしい。
The fingerprint of human-induced changes in the ocean's salinity and temperature fields
Pierce, D. W., P. J. Gleckler, T. P. Barnett, B. D. Santer, and P. J. Durack
海洋の塩分分布は主に蒸発・降水・河川流入によってコントロールされているが、近年人間活動によって変化しつつある。1955-2004年の60ºS-60ºNに挟まれた地域で得られたデータをもとにモデルと観測データの解析を行ったところ、気候の内部変動(ENSOやPDOなど)や外部強制力(太陽活動や火山噴火など)では説明できない変動成分があることが分かった。
Sensitivity of equatorial mesopause temperatures to the 27-day solar cycle
von Savigny, C., K.-U. Eichmann, C. E. Robert, J. P. Burrows, and M. Weber
赤道域の中間圏のOHの回転温度(OH rotational temperatures)に27日の太陽周期が確認された。また11年周期の感度とも非常に良く一致するため、同様のメカニズムによって太陽の27日・11年周期が中間圏の温度の変動を駆動していると考えられる。
○JGR-Oceans
Improving sea level reconstructions using non-sea level measurements
Hamlington, B. D., R. R. Leben, and K.-Y. Kim
潮位計・人工衛星の高度計・水温データを併せて1900年から現在までの太平洋の海水準変動を復元。PDOや赤道太平洋のENSOの成分も海水準変動にはっきり現れており、特に水温変動を含めたほうがここ50年間の変動復元が改善するという。
Oxygen trends over five decades in the North Atlantic
Stendardo, I., and N. Gruber
CARINA、GLODAP、World Ocean Databaseの海水の酸素濃度の測定データから、1960年から2009年までの北大西洋の酸素濃度の長期トレンドを調査。表層水・モード水・中層水はすべて酸素濃度が低下しているのに対し、中層水下部・ラブラドル海水は酸素濃度が増加していた。大気交換や溶解度の変化が原因として考えられる。
○Paleoceanography
Vital effects in coccolith calcite: Cenozoic climate-pCO2 drove the diversity of carbon acquisition strategies in coccolithophores?
Bolton, C. T., H. M. Stoll, and A. Mendez-Vicente
円石藻のカルサイトの殻はサイズによって酸素・炭素同位体の値が異なることが報告されており、いわゆる生体効果と考えられている。しかし二酸化炭素濃度が高い状態で飼育を行うと生体効果が小さくなることが示されており、この事実はPaleoceneの温暖期(CO2濃度が高かったと考えられている)の円石藻の生体効果が小さかったこととも整合的である。Paleocene-Eocene thermal maximum (PETM)、last glacial maximum (LGM)、Plio-Pleistocene transition (PPT)の堆積物コアから産出する円石藻の殻をサイズごとに分け、同位体分析を行ったところ、PETMには生体効果が小さく、LGMとPPTには大きい(~2‰)ことが示された。円石藻の生体効果の殻サイズ依存性でpCO2を復元するのは難しそう。PETM後のpCO2の減少(新生代の寒冷化)に適応するための炭素取り込みの多様化が起こった結果かもしれない?
○Biogeosciences
Influence of CO2 and nitrogen limitation on the coccolith volume of Emiliania huxleyi (Haptophyta)
M. N. Müller, L. Beaufort, O. Bernard, M. L. Pedrotti, A. Talec, and A. Sciandra
栄養塩をふんだんに与え、窒素を制限した状態でpCO2を変えた水槽下で円石藻(Emiliania huxleyi)を飼育実験。pCO2が高いほど有機物の生産量は増えるが、一方で石灰化量は減少した。円石藻のサイズとpCO2との間に明瞭な相関は見られず、堆積物コアなどから得られた化石の円石藻のサイズの変化を解釈する際には注意が必要である。
N2O emissions from the global agricultural nitrogen cycle – current state and future scenarios
B. L. Bodirsky, A. Popp, I. Weindl, J. P. Dietrich, S. Rolinski, L. Scheiffele, C. Schmitz, and H. Lotze-Campen
反応性の高い窒素(Nr)は植物の生育に重要であるだけでなく、自然の生態系に大きな擾乱を与える。人為起源の汚染を抑制するためにも農業を起源とするNrの長期的な変動を理解することは重要である。モデルシミュレーションから、農業起源のNrのほとんどが自然へ流出していることが示され(人類に摂取されているのは10%以下に過ぎない)、将来の一酸化二窒素(N2O;温室効果ガスの一つ)排出量も2095年までに大きく増加することが予想される。
Silicon stable isotope distribution traces Southern Ocean export of Si to the eastern South Pacific thermocline
G. F. de Souza, B. C. Reynolds, G. C. Johnson, J. L. Bullister, and B. Bourdon
南太平洋の103ºW線に沿ってδ30Siを測定。冬期の混合層のδ30Siが高い値を示すのは珪藻の生物生産の強化が原因で、その高い値はさらにSAMW/AAIWの沈み込みに伴い中層水へ取り込まれる。中層水のδ30Siは保存されているため、南大洋の表層から低緯度へSiが輸送されていることを物語っている。一方で東赤道太平洋のδ30Siは低い値を示し、「北太平洋を起源とする中層水の混合」と「表層で生産されたSiの再鉱物化(remineralization)」を示唆している。また太平洋の深層水全体でδ30Siの値が均質なのは、Siの溶解プロセスのδ30Siに対する寄与が無視できる程度であることを暗示している。
○G3
Dynamic process of turbidity generation triggered by the 2011 Tohoku-Oki earthquake
Noguchi, T., W. Tanikawa, T. Hirose, W. Lin, S. Kawagucci, Y. Yoshida-Takashima, M. C. Honda, K. Takai, H. Kitazato, and K. Okamura
東北沖地震の1ヶ月後に震源域の直上付近で非常に懸濁した底層水が確認され(地震前の10倍程度)、地震による地滑りによって生じたと考えられる。堆積物が薄くても非常に早い加速度を持った地震であれば海底地滑りが発生することを示している。
○GRL
Recent changes in the dynamic properties of declining Arctic sea ice: A model study
Zhang, J., R. Lindsay, A. Schweiger, and I. Rigor
1979-2006年平均と比べると、2007-2011年平均の北極の海氷量は体積が33%減少し、厚さも特に西部で薄くなっている。その結果、氷の流出速度と崩壊速度がそれぞれ13%、17%早まっている。海氷の物理特性は複雑で、海氷の端を正確に予測するのは難しいらしい。
Sea level trends, interannual and decadal variability in the Pacific Ocean
Zhang, X., and J. A. Church
1993年から行われているほぼ全球の海水面の高度計のデータを用いて、太平洋における海水準の経年変動・数十年変動を分けて議論。赤道西太平洋で海水準の上昇速度が特に早いのは、数十年スケールの気候変動の結果と考えられる。また東赤道太平洋やアメリカ西海岸の海水準の上昇率は無視できる程度である。変動の大部分はENSOとPDOによって説明可能らしい。
The fingerprint of human-induced changes in the ocean's salinity and temperature fields
Pierce, D. W., P. J. Gleckler, T. P. Barnett, B. D. Santer, and P. J. Durack
海洋の塩分分布は主に蒸発・降水・河川流入によってコントロールされているが、近年人間活動によって変化しつつある。1955-2004年の60ºS-60ºNに挟まれた地域で得られたデータをもとにモデルと観測データの解析を行ったところ、気候の内部変動(ENSOやPDOなど)や外部強制力(太陽活動や火山噴火など)では説明できない変動成分があることが分かった。
Sensitivity of equatorial mesopause temperatures to the 27-day solar cycle
von Savigny, C., K.-U. Eichmann, C. E. Robert, J. P. Burrows, and M. Weber
赤道域の中間圏のOHの回転温度(OH rotational temperatures)に27日の太陽周期が確認された。また11年周期の感度とも非常に良く一致するため、同様のメカニズムによって太陽の27日・11年周期が中間圏の温度の変動を駆動していると考えられる。
○JGR-Oceans
Improving sea level reconstructions using non-sea level measurements
Hamlington, B. D., R. R. Leben, and K.-Y. Kim
潮位計・人工衛星の高度計・水温データを併せて1900年から現在までの太平洋の海水準変動を復元。PDOや赤道太平洋のENSOの成分も海水準変動にはっきり現れており、特に水温変動を含めたほうがここ50年間の変動復元が改善するという。
Oxygen trends over five decades in the North Atlantic
Stendardo, I., and N. Gruber
CARINA、GLODAP、World Ocean Databaseの海水の酸素濃度の測定データから、1960年から2009年までの北大西洋の酸素濃度の長期トレンドを調査。表層水・モード水・中層水はすべて酸素濃度が低下しているのに対し、中層水下部・ラブラドル海水は酸素濃度が増加していた。大気交換や溶解度の変化が原因として考えられる。
○Paleoceanography
Vital effects in coccolith calcite: Cenozoic climate-pCO2 drove the diversity of carbon acquisition strategies in coccolithophores?
Bolton, C. T., H. M. Stoll, and A. Mendez-Vicente
円石藻のカルサイトの殻はサイズによって酸素・炭素同位体の値が異なることが報告されており、いわゆる生体効果と考えられている。しかし二酸化炭素濃度が高い状態で飼育を行うと生体効果が小さくなることが示されており、この事実はPaleoceneの温暖期(CO2濃度が高かったと考えられている)の円石藻の生体効果が小さかったこととも整合的である。Paleocene-Eocene thermal maximum (PETM)、last glacial maximum (LGM)、Plio-Pleistocene transition (PPT)の堆積物コアから産出する円石藻の殻をサイズごとに分け、同位体分析を行ったところ、PETMには生体効果が小さく、LGMとPPTには大きい(~2‰)ことが示された。円石藻の生体効果の殻サイズ依存性でpCO2を復元するのは難しそう。PETM後のpCO2の減少(新生代の寒冷化)に適応するための炭素取り込みの多様化が起こった結果かもしれない?
○Biogeosciences
Influence of CO2 and nitrogen limitation on the coccolith volume of Emiliania huxleyi (Haptophyta)
M. N. Müller, L. Beaufort, O. Bernard, M. L. Pedrotti, A. Talec, and A. Sciandra
栄養塩をふんだんに与え、窒素を制限した状態でpCO2を変えた水槽下で円石藻(Emiliania huxleyi)を飼育実験。pCO2が高いほど有機物の生産量は増えるが、一方で石灰化量は減少した。円石藻のサイズとpCO2との間に明瞭な相関は見られず、堆積物コアなどから得られた化石の円石藻のサイズの変化を解釈する際には注意が必要である。
N2O emissions from the global agricultural nitrogen cycle – current state and future scenarios
B. L. Bodirsky, A. Popp, I. Weindl, J. P. Dietrich, S. Rolinski, L. Scheiffele, C. Schmitz, and H. Lotze-Campen
反応性の高い窒素(Nr)は植物の生育に重要であるだけでなく、自然の生態系に大きな擾乱を与える。人為起源の汚染を抑制するためにも農業を起源とするNrの長期的な変動を理解することは重要である。モデルシミュレーションから、農業起源のNrのほとんどが自然へ流出していることが示され(人類に摂取されているのは10%以下に過ぎない)、将来の一酸化二窒素(N2O;温室効果ガスの一つ)排出量も2095年までに大きく増加することが予想される。
Silicon stable isotope distribution traces Southern Ocean export of Si to the eastern South Pacific thermocline
G. F. de Souza, B. C. Reynolds, G. C. Johnson, J. L. Bullister, and B. Bourdon
南太平洋の103ºW線に沿ってδ30Siを測定。冬期の混合層のδ30Siが高い値を示すのは珪藻の生物生産の強化が原因で、その高い値はさらにSAMW/AAIWの沈み込みに伴い中層水へ取り込まれる。中層水のδ30Siは保存されているため、南大洋の表層から低緯度へSiが輸送されていることを物語っている。一方で東赤道太平洋のδ30Siは低い値を示し、「北太平洋を起源とする中層水の混合」と「表層で生産されたSiの再鉱物化(remineralization)」を示唆している。また太平洋の深層水全体でδ30Siの値が均質なのは、Siの溶解プロセスのδ30Siに対する寄与が無視できる程度であることを暗示している。
2012年10月30日火曜日
新着論文(PO, BG, CP)
BiogeosciencesHigh-resolution interpolar difference of atmospheric methane around the Last Glacial Maximum
Biogeosciences, 9, 3961-3977, 2012
M. Baumgartner, A. Schilt, O. Eicher, J. Schmitt, J. Schwander, R. Spahni, H. Fischer, and T. F. Stocker
メタンは温室効果ガスの一つであり、現在0.5W/m2の放射強制力を持っていると考えられている。メタンの濃度は北極・南極でわずかながら異なることが知られており、その差を生む原因はメタンの放出源が熱帯と北半球の湿地に偏っていることが一部考えられる。これらは自然のメタン放出の60-80%を担っていると考えられている。
NGRIP、EDMLアイスコアから過去32kaの両極の大気中メタン濃度を高解像度で復元。ほんのわずかな違いが捉えられた。LGM付近で両極のメタン濃度差が3.7%と最も小さい値を示し、このことは北半球の夏の湿地の放出源が完全にゼロとなっていなかったことを示唆している。最終退氷期には両極の差は6.5%で一定の値を示した。ITCZの緯度方向の変化による大気の体積や撹拌の仕方の変化が原因か?
Ocean acidification mediates photosynthetic response to UV radiation and temperature increase in the diatom Phaeodactylum tricornutum
Biogeosciences, 9, 3931-3942, 2012
Y. Li, K. Gao, V. E. Villafañe, and E. W. Helbling
大気中のCO2濃度上昇に伴い、海洋酸性化・温暖化・混合層の厚さの縮小が起きることが予測されており、有光層に生息する植物プランクトンは酸性化・温暖化のストレスに加えて、より強い紫外線に曝されることになる。20世代にわたる飼育実験によってそれらが珪藻(Phaeodactylum tricornutum)に与える影響を評価。特にUV-B(?)に曝した場合に害が大きいことが分かった。将来の珪藻の炭素固定に影響?
Climate of the Past
Timing and magnitude of equatorial Atlantic surface warming during the last glacial bipolar oscillation
S. Weldeab
Climate of the past, 8, 1705-1716, 2012
MIS3(75-25ka)における赤道東大西洋の温度復元。ハインリッヒイベントに対応した温暖化が確認された(AMOCへの擾乱が原因と考えられる、それまで高緯度に運ばれていた熱が低緯度に熱がこもる)。場合によっては温暖化はハインリッヒイベントが集結してからも2,300年間も及ぶ場合があり、継続期間と空間的なSST分布には風によって駆動される表層流が大きく寄与していると考えられる。
Paleoceanography
Sea surface temperature variability in the Pacific sector of the Southern Ocean over the past 700 kyr
Ho, S. L., G. Mollenhauer, F. Lamy, A. Martínez-Garcia, M. Mohtadi, R. Gersonde, D. Hebbeln, S. Nunez-Ricardo, A. Rosell-Melé, and R. Tiedemann
Paleoceanography, 27, PA4202, doi:10.1029/2012PA002317
南大洋の太平洋セクターの高緯度海域から得られた堆積物コアのアルケノンを用いて過去700kaの古水温を復元。Uk'よりもUkを使った方がいいらしい(?)。氷期間氷期の温度変化は亜寒帯で~8℃、亜熱帯で~4℃と推定される。南大洋の他の海域で得られている温度復元結果と整合的であるため、南極周回流全体で同程度に水温が低下したと考えられる。また氷期にはACCが低緯度側に大きく移動していたことも分かった。
Deciphering the role of southern gateways and carbon dioxide on the onset of the Antarctic Circumpolar Current
Lefebvre, V., Y. Donnadieu, P. Sepulchre, D. Swingedouw, and Z.-S. Zhang
Paleoceanography, 27, PA4201, doi:10.1029/2012PA002345
新生代の全球の寒冷化が始まる50Maののち、34Ma頃に南極氷床が成長し始めるが、その成長にはドレーク海峡とタスマニア海峡が開いたことが寄与していたと考えられている。しかし一方でCO2濃度の低下が原因とする説もあり、話題を呼んでいる。全球モデルを用いて地形が大気中CO2濃度と全球の寒冷化にどれほどするかを検証したところ、南極大陸周辺の海氷とbrineの形成が南北方向の密度差を生み出し、それが結果的に南極周回流の強化へとつながっていることが分かった。つまり、ACC自体が寒冷化の原因というよりは、ACCは寒冷化のフィードバックの一つと考えられる。
Biogeosciences, 9, 3961-3977, 2012
M. Baumgartner, A. Schilt, O. Eicher, J. Schmitt, J. Schwander, R. Spahni, H. Fischer, and T. F. Stocker
メタンは温室効果ガスの一つであり、現在0.5W/m2の放射強制力を持っていると考えられている。メタンの濃度は北極・南極でわずかながら異なることが知られており、その差を生む原因はメタンの放出源が熱帯と北半球の湿地に偏っていることが一部考えられる。これらは自然のメタン放出の60-80%を担っていると考えられている。
NGRIP、EDMLアイスコアから過去32kaの両極の大気中メタン濃度を高解像度で復元。ほんのわずかな違いが捉えられた。LGM付近で両極のメタン濃度差が3.7%と最も小さい値を示し、このことは北半球の夏の湿地の放出源が完全にゼロとなっていなかったことを示唆している。最終退氷期には両極の差は6.5%で一定の値を示した。ITCZの緯度方向の変化による大気の体積や撹拌の仕方の変化が原因か?
Ocean acidification mediates photosynthetic response to UV radiation and temperature increase in the diatom Phaeodactylum tricornutum
Biogeosciences, 9, 3931-3942, 2012
Y. Li, K. Gao, V. E. Villafañe, and E. W. Helbling
大気中のCO2濃度上昇に伴い、海洋酸性化・温暖化・混合層の厚さの縮小が起きることが予測されており、有光層に生息する植物プランクトンは酸性化・温暖化のストレスに加えて、より強い紫外線に曝されることになる。20世代にわたる飼育実験によってそれらが珪藻(Phaeodactylum tricornutum)に与える影響を評価。特にUV-B(?)に曝した場合に害が大きいことが分かった。将来の珪藻の炭素固定に影響?
Climate of the Past
Timing and magnitude of equatorial Atlantic surface warming during the last glacial bipolar oscillation
S. Weldeab
Climate of the past, 8, 1705-1716, 2012
MIS3(75-25ka)における赤道東大西洋の温度復元。ハインリッヒイベントに対応した温暖化が確認された(AMOCへの擾乱が原因と考えられる、それまで高緯度に運ばれていた熱が低緯度に熱がこもる)。場合によっては温暖化はハインリッヒイベントが集結してからも2,300年間も及ぶ場合があり、継続期間と空間的なSST分布には風によって駆動される表層流が大きく寄与していると考えられる。
Paleoceanography
Sea surface temperature variability in the Pacific sector of the Southern Ocean over the past 700 kyr
Ho, S. L., G. Mollenhauer, F. Lamy, A. Martínez-Garcia, M. Mohtadi, R. Gersonde, D. Hebbeln, S. Nunez-Ricardo, A. Rosell-Melé, and R. Tiedemann
Paleoceanography, 27, PA4202, doi:10.1029/2012PA002317
南大洋の太平洋セクターの高緯度海域から得られた堆積物コアのアルケノンを用いて過去700kaの古水温を復元。Uk'よりもUkを使った方がいいらしい(?)。氷期間氷期の温度変化は亜寒帯で~8℃、亜熱帯で~4℃と推定される。南大洋の他の海域で得られている温度復元結果と整合的であるため、南極周回流全体で同程度に水温が低下したと考えられる。また氷期にはACCが低緯度側に大きく移動していたことも分かった。
Deciphering the role of southern gateways and carbon dioxide on the onset of the Antarctic Circumpolar Current
Lefebvre, V., Y. Donnadieu, P. Sepulchre, D. Swingedouw, and Z.-S. Zhang
Paleoceanography, 27, PA4201, doi:10.1029/2012PA002345
新生代の全球の寒冷化が始まる50Maののち、34Ma頃に南極氷床が成長し始めるが、その成長にはドレーク海峡とタスマニア海峡が開いたことが寄与していたと考えられている。しかし一方でCO2濃度の低下が原因とする説もあり、話題を呼んでいる。全球モデルを用いて地形が大気中CO2濃度と全球の寒冷化にどれほどするかを検証したところ、南極大陸周辺の海氷とbrineの形成が南北方向の密度差を生み出し、それが結果的に南極周回流の強化へとつながっていることが分かった。つまり、ACC自体が寒冷化の原因というよりは、ACCは寒冷化のフィードバックの一つと考えられる。
2012年10月1日月曜日
新着論文(G3, GRL, PO, GBC, CP, BG)
横山研の新着論文担当箇所より。今回はAGU、EGU、GSA Bllutin。
G3
2012.9.24 - 30
Rapid post-mortem maturation of diatom silica oxygen isotope values
Dodd, J. P., Z. D. Sharp, P. J. Fawcett, A. J. Brearley, and F. M. McCubbin
珪藻が死んだ後にδ18Oがどのように変質するかについて。
ニューメキシコ北部の人口沼の珪藻のδ18Oは生前は平均して21.5‰だが、堆積後のδ18Oは平均して28.9‰と有意に高い。死後の同位体の上書きは半年以内に終了し、水(H2O)とケイ酸(SiO2)とが同位体平衡に達している。海洋・淡水で珪藻のδ18Oを古環境プロシキとして使用する際には注意しなければならない。
Improved determination of marine sedimentation rates using 230Thxs
Bourne, M. D., A. L. Thomas, C. Mac Niocaill, and G. M. Henderson
沈殿速度の見積もりに過剰の230Th(excess-230Th, 230Thxs)が用いられている。この手法を用いるためには初期状態の230Thを知る必要があり、つまり堆積後のウラン系列と230Thの壊変の補正が必要となる。砕屑物の238U/232Th使用率を推定する新手法を紹介。またMATLABで使えるタダの計算スクリプトも紹介。
Multiproxy characterization and budgeting of terrigenous end-members at the NW African continental margin
Just, J., D. Heslop, T. von Dobeneck, T. Bickert, M. J. Dekkers, T. Frederichs, I. Meyer, and M. Zabel
北西アフリカで採取された海洋底堆積物コアの粒度・陸源物質・残留磁気磁束から過去8万年間の陸源物質の供給源のエンドメンバー(1つは風成塵、2つは河川由来)を推定。河川性の堆積速度は後背地の降水量というよりは寧ろ海岸からの距離(つまり海水準)によって支配されている。LGMとハインリッヒイベント時に高いダストの沈着。特にH1には現在の80倍もの大量の風成塵が見られ、風化の促進と植生による被覆が失われたことが原因と考えられる。
Signatures and significance of aeolian, fluvial, bacterial and diagenetic magnetic mineral fractions in Late Quaternary marine sediments off Gambia, NW Africa
Just, J., M. J. Dekkers, T. von Dobeneck, A. van Hoesel, and T. Bickert
上の論文と同じコアの残留磁気を用いて生物が生成する磁性鉱物や堆積後の還元による続成作用などを評価。
GRL
2012.9.24 - 30
A sea ice free summer Arctic within 30 years: An update from CMIP5 models
Wang, M., and J. E. Overland
CMIP5による将来予測はCMIP3と同じく北極海の海氷が2030年代までに消失することを予測している。しかしながら、現在観測されている速度で海氷の後退を再現できているモデルは一つも存在しない。
Ocean heat uptake and its consequences for the magnitude of sea level rise and climate change
Kuhlbrodt, T., and J. M. Gregory
温暖化による海水の熱膨張によって海水準がどれほど上昇するかについてのGCMを用いた予測の比較(CMIP)。モデル間で熱吸収効率は最大で2倍異なった。また熱を最も吸収すると考えられるのは南大洋で、渦による拡散効果が効くらしい。
Aerosol contribution to the rapid warming of near-term climate under RCP 2.6
Chalmers, N., E. J. Highwood, E. Hawkins, R. Sutton, and L. J. Wilcox
エアロゾルの排出が近い将来(near term)の温暖化にどのように寄与するかを2つのシナリオに基づいてモデルシミュレーション。例えば石炭燃焼の減少によって硫酸塩エアロゾルの濃度が低下し、地球を冷やす直接効果と間接効果に影響する。特に亜熱帯太平洋の北東部においてはエアロゾルの間接効果が寄与する。全球的な・地域的な気候にエアロゾルが将来与える影響が大きいことが示唆される。
California heat waves in the present and future
Gershunov, A., and K. Guirguis
現在と将来のカリフォルニアの熱波をGCMを用いて調査。乾燥した昼間の熱波(1)と湿潤な夜間の熱波(2)との2つのタイプに大別することができ、将来後者のタイプが特に増えることが示された。カリフォルニア全体で見ると、砂漠地域の熱波は弱まり、沿岸部の熱波は強化されるらしい。沿岸部の高い人口密度と後者の熱波のタイプに社会が順応していないことを考えると、将来の健康被害やエネルギー需要へのストレスを招く可能性がある。
Spatial distribution of air-sea heat fluxes over the sub-polar North Atlantic Ocean
Moore, G. W. K., I. A. Renfrew, and R. S. Pickart
海洋と大気との熱交換は大気海洋循環を駆動しておりその理解は重要である。特に北太平洋の熱の交換はAMOCの形成にも重要な構成要素である。ラブラドル海とグリーンランド海の熱フラックスが特に冬に大きいことはよく認識されているが、アイスランド海ではフラックスが最も小さいにも関わらず深層水形成が起きている。熱フラックスは低気圧によっても影響を受けており、大気循環がAMOCに大きく影響する可能性がある。
Abrupt change in atmospheric CO2 during the last ice age
Ahn, J., E. J. Brook, A. Schmittner, and K. Kreutz
南極アイスコアからDO8とDO9の時の大気中CO2濃度を高時間解像度で復元。~20ppmの上昇と高緯度域の気候変動を考察。~10ppmのCO2濃度上昇が200年以内で起きていたことを指摘。南極の気温に比べてわずかに遅れている?
>論文概説
Paleoceanography
2012.9.24 - 30
Response of eastern tropical Atlantic central waters to Atlantic meridional overturning circulation changes during the Last Glacial Maximum and Heinrich Stadial 1
Huang, E., S. Mulitza, A. Paul, J. Groeneveld, S. Steinke, and M. Schulz
北西大西洋の堆積物コアの底性有孔虫のMg/Caとδ18Oを用いてLGMとH1の温度躍層の変化を復元。Planulina ariminensisのMg/Ca-SSTはコアトップでキャリブレーション。LGMとH1の温度躍層は現在と同じ温度。550-570m深は1.2-1.5℃高かった?モデルではAMOCの弱化と赤道大西洋の温暖化が示唆されていたが、それとは食い違う結果に。代わりに塩分はLGMとH1で高かった。南大洋起源ではなく、北大西洋起源?
Pleistocene equatorial Pacific dynamics inferred from the zonal asymmetry in sedimentary nitrogen isotopes
Rafter, P. A., and C. D. Charles
赤道太平洋の東と西で得られた2本の堆積物コアのバルク堆積物δ15Nを用いて過去1.2Maの海洋表層の生物活動及び物理循環を復元。東赤道太平洋の栄養塩の湧昇(窒素利用効率)は地域的な季節日射量の変動に強く支配されていることが分かった。また10万年周期は顕著には見られない。将来の熱帯太平洋の生物活動は割と予想できるかも?
A molybdenum isotope record of Eocene Thermal Maximum 2: Implications for global ocean redox during the early Eocene
Dickson, A. J., and A. S. Cohen
急激な炭素放出イベントによる温室効果の結果、始新世初期は温暖だったことが知られているが、この時の海洋の還元状態を復元するために、北極海から得られた堆積物コアのモリブデン同位体を測定した(δ98/95Mo)。ETM-2の最温暖期に最も高い同位体比が得られ、貧酸素状態であったことが分かる。またPETMに匹敵する程度の貧酸素状態であったことが示唆される。
Corals record persistent multidecadal SST variability in the Atlantic Warm Pool since 1775 AD
Vásquez-Bedoya, L. F., A. L. Cohen, D. W. Oppo, and P. Blanchon
赤道大西洋のユカタン半島で得られたサンゴ(Siderastrea siderea)の成長速度から過去225年間のSSTを復元。キャリブレーションには画像処理で復元した3Dのサンゴ骨格の成長速度とERSSTのデータを使用(r = -0.66)。復元されたSSTには大西洋数十年振動(Atlantic Multidecadal Oscillation; AMO)の約60-80年の周期性が見えた。過去225年間のSST変動は1℃の中に収まっていたと考えられ、Cariaco Basinの浮遊性有孔虫Mg/Caを用いたSST復元とも整合的。
Global Biogeochemical Cycles
2012.9.1 - 30
Global calcite cycling constrained by sediment preservation controls
Dunne, J. P., B. Hales, and J. R. Toggweiler
ボックスモデルで海洋のカルサイトの輸送・沈降。埋没フラックスを再現。さらに不飽和度・有機物分解や有機物の水平輸送・結石形成(lithogenic sedimentation)などがカルサイトの輸送速度に与える影響を定量化。得られたモデルをもとに将来の温暖化や海洋酸性化の影響を評価。また氷期-間氷期スケールのCCDやリソクラインの深度なども復元。間氷期から氷期への移行期にはカルサイト埋没が海洋のアルカリ度を少しずつ増加させていたことが分かった。
Nanoscale lignin particles as sources of dissolved iron to the ocean
Krachler, R., F. von der Kammer, F. Jirsa, A. Süphandag, R. F. Krachler, C. Plessl, M. Vogt, B. K. Keppler, and T. Hofmann
鉄の濃度は海洋の生物生産を制約しているが、鉄は河川を通して海へと運搬されているが、そのほとんどは河口における塩分変化によって沈殿してしまうため、外洋には運搬されないとこれまで考えられてきた。泥炭地を流れる河川水に含まれている鉄に富んだ微粒子が塩分変化による沈殿を受けずに外洋へと運搬されることが分かった。構成成分は主に被子植物と裸子植物のリグニンであることも分かった。リグニンフェノールは全海洋でわずかながら見られるため、十分に長い滞留時間でもって鉄を保持していると予想される。
Biogeosciences
2012.9.24 - 30
A reappraisal of the vital effect in cultured benthic foraminifer Bulimina marginata on Mg/Ca values: assessing temperature uncertainty relationships
J. C. Wit, L. J. de Nooijer, C. Barras, F. J. Jorissen, and G. J. Reichart
温度制御飼育実験による底性有孔虫(Bulimina marginata)のMg/Ca-SSTキャリブレーションの再評価。一応有為には相関がある(R2=0.28)が個体間の変動も大きく、実際に古気候学に応用するにはMg/Ca-SSTのキャリブレーションの評価を十分に行う必要がある。個体間の際が出る原因はおそらく生態学的な生息環境の違いで、より多くの個体を均質化して分析することでMg/Ca-SSTキャリブレーションの確度を上げる必要がある。
Climate of the Past
2012.9.24 - 30
Can we predict the duration of an interglacial?
P. C. Tzedakis, E. W. Wolff, L. C. Skinner, V. Brovkin, D. A. Hodell, J. F. McManus, and D. Raynaud
過去80万年間の記録をもとに過去の間氷期の継続期間について評価。間氷期の始まりは北半球の夏の日射量が極大を迎え、歳差(precession)が最低になってから2,000年以内に訪れる。これはミランコヴィッチ理論とも整合的である。逆に間氷期から氷期への以降(Glacial inception)は地軸形動(obliquity)が減少しつつある時期に訪れる(最低値になる前)。このとき、1回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:13,000年)と2回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:28,000年)とがあり、おおよそ温度と大気中CO2濃度が極大を迎えてから10,000年後に起きる。しかしながら予想することは難しい。間氷期が長いかどうかはフォーシングの強さではなく、寧ろ天文学的な軌道要素の位相関係によって決まっている?
G3
2012.9.24 - 30
Rapid post-mortem maturation of diatom silica oxygen isotope values
Dodd, J. P., Z. D. Sharp, P. J. Fawcett, A. J. Brearley, and F. M. McCubbin
珪藻が死んだ後にδ18Oがどのように変質するかについて。
ニューメキシコ北部の人口沼の珪藻のδ18Oは生前は平均して21.5‰だが、堆積後のδ18Oは平均して28.9‰と有意に高い。死後の同位体の上書きは半年以内に終了し、水(H2O)とケイ酸(SiO2)とが同位体平衡に達している。海洋・淡水で珪藻のδ18Oを古環境プロシキとして使用する際には注意しなければならない。
Improved determination of marine sedimentation rates using 230Thxs
Bourne, M. D., A. L. Thomas, C. Mac Niocaill, and G. M. Henderson
沈殿速度の見積もりに過剰の230Th(excess-230Th, 230Thxs)が用いられている。この手法を用いるためには初期状態の230Thを知る必要があり、つまり堆積後のウラン系列と230Thの壊変の補正が必要となる。砕屑物の238U/232Th使用率を推定する新手法を紹介。またMATLABで使えるタダの計算スクリプトも紹介。
Multiproxy characterization and budgeting of terrigenous end-members at the NW African continental margin
Just, J., D. Heslop, T. von Dobeneck, T. Bickert, M. J. Dekkers, T. Frederichs, I. Meyer, and M. Zabel
北西アフリカで採取された海洋底堆積物コアの粒度・陸源物質・残留磁気磁束から過去8万年間の陸源物質の供給源のエンドメンバー(1つは風成塵、2つは河川由来)を推定。河川性の堆積速度は後背地の降水量というよりは寧ろ海岸からの距離(つまり海水準)によって支配されている。LGMとハインリッヒイベント時に高いダストの沈着。特にH1には現在の80倍もの大量の風成塵が見られ、風化の促進と植生による被覆が失われたことが原因と考えられる。
Signatures and significance of aeolian, fluvial, bacterial and diagenetic magnetic mineral fractions in Late Quaternary marine sediments off Gambia, NW Africa
Just, J., M. J. Dekkers, T. von Dobeneck, A. van Hoesel, and T. Bickert
上の論文と同じコアの残留磁気を用いて生物が生成する磁性鉱物や堆積後の還元による続成作用などを評価。
GRL
2012.9.24 - 30
A sea ice free summer Arctic within 30 years: An update from CMIP5 models
Wang, M., and J. E. Overland
CMIP5による将来予測はCMIP3と同じく北極海の海氷が2030年代までに消失することを予測している。しかしながら、現在観測されている速度で海氷の後退を再現できているモデルは一つも存在しない。
Ocean heat uptake and its consequences for the magnitude of sea level rise and climate change
Kuhlbrodt, T., and J. M. Gregory
温暖化による海水の熱膨張によって海水準がどれほど上昇するかについてのGCMを用いた予測の比較(CMIP)。モデル間で熱吸収効率は最大で2倍異なった。また熱を最も吸収すると考えられるのは南大洋で、渦による拡散効果が効くらしい。
Aerosol contribution to the rapid warming of near-term climate under RCP 2.6
Chalmers, N., E. J. Highwood, E. Hawkins, R. Sutton, and L. J. Wilcox
エアロゾルの排出が近い将来(near term)の温暖化にどのように寄与するかを2つのシナリオに基づいてモデルシミュレーション。例えば石炭燃焼の減少によって硫酸塩エアロゾルの濃度が低下し、地球を冷やす直接効果と間接効果に影響する。特に亜熱帯太平洋の北東部においてはエアロゾルの間接効果が寄与する。全球的な・地域的な気候にエアロゾルが将来与える影響が大きいことが示唆される。
California heat waves in the present and future
Gershunov, A., and K. Guirguis
現在と将来のカリフォルニアの熱波をGCMを用いて調査。乾燥した昼間の熱波(1)と湿潤な夜間の熱波(2)との2つのタイプに大別することができ、将来後者のタイプが特に増えることが示された。カリフォルニア全体で見ると、砂漠地域の熱波は弱まり、沿岸部の熱波は強化されるらしい。沿岸部の高い人口密度と後者の熱波のタイプに社会が順応していないことを考えると、将来の健康被害やエネルギー需要へのストレスを招く可能性がある。
Spatial distribution of air-sea heat fluxes over the sub-polar North Atlantic Ocean
Moore, G. W. K., I. A. Renfrew, and R. S. Pickart
海洋と大気との熱交換は大気海洋循環を駆動しておりその理解は重要である。特に北太平洋の熱の交換はAMOCの形成にも重要な構成要素である。ラブラドル海とグリーンランド海の熱フラックスが特に冬に大きいことはよく認識されているが、アイスランド海ではフラックスが最も小さいにも関わらず深層水形成が起きている。熱フラックスは低気圧によっても影響を受けており、大気循環がAMOCに大きく影響する可能性がある。
Abrupt change in atmospheric CO2 during the last ice age
Ahn, J., E. J. Brook, A. Schmittner, and K. Kreutz
南極アイスコアからDO8とDO9の時の大気中CO2濃度を高時間解像度で復元。~20ppmの上昇と高緯度域の気候変動を考察。~10ppmのCO2濃度上昇が200年以内で起きていたことを指摘。南極の気温に比べてわずかに遅れている?
>論文概説
Paleoceanography
2012.9.24 - 30
Response of eastern tropical Atlantic central waters to Atlantic meridional overturning circulation changes during the Last Glacial Maximum and Heinrich Stadial 1
Huang, E., S. Mulitza, A. Paul, J. Groeneveld, S. Steinke, and M. Schulz
北西大西洋の堆積物コアの底性有孔虫のMg/Caとδ18Oを用いてLGMとH1の温度躍層の変化を復元。Planulina ariminensisのMg/Ca-SSTはコアトップでキャリブレーション。LGMとH1の温度躍層は現在と同じ温度。550-570m深は1.2-1.5℃高かった?モデルではAMOCの弱化と赤道大西洋の温暖化が示唆されていたが、それとは食い違う結果に。代わりに塩分はLGMとH1で高かった。南大洋起源ではなく、北大西洋起源?
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| Huang et al. (2012)を改変。 深さの異なる堆積物を採取し、その中に含まれている底性有孔虫の殻を化学分析することで、低層水の深度プロファイルが描ける。 |
Pleistocene equatorial Pacific dynamics inferred from the zonal asymmetry in sedimentary nitrogen isotopes
Rafter, P. A., and C. D. Charles
赤道太平洋の東と西で得られた2本の堆積物コアのバルク堆積物δ15Nを用いて過去1.2Maの海洋表層の生物活動及び物理循環を復元。東赤道太平洋の栄養塩の湧昇(窒素利用効率)は地域的な季節日射量の変動に強く支配されていることが分かった。また10万年周期は顕著には見られない。将来の熱帯太平洋の生物活動は割と予想できるかも?
A molybdenum isotope record of Eocene Thermal Maximum 2: Implications for global ocean redox during the early Eocene
Dickson, A. J., and A. S. Cohen
急激な炭素放出イベントによる温室効果の結果、始新世初期は温暖だったことが知られているが、この時の海洋の還元状態を復元するために、北極海から得られた堆積物コアのモリブデン同位体を測定した(δ98/95Mo)。ETM-2の最温暖期に最も高い同位体比が得られ、貧酸素状態であったことが分かる。またPETMに匹敵する程度の貧酸素状態であったことが示唆される。
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| Dickson & Cohen (2012)を改変。 ETM-2におけるd13Cの急激なエクスカージョン(大気への大量の炭素放出)とMo同位体(貧酸素水塊の存在)とが同時に観察される。またその程度はPETMに匹敵するらしい。 |
Corals record persistent multidecadal SST variability in the Atlantic Warm Pool since 1775 AD
Vásquez-Bedoya, L. F., A. L. Cohen, D. W. Oppo, and P. Blanchon
赤道大西洋のユカタン半島で得られたサンゴ(Siderastrea siderea)の成長速度から過去225年間のSSTを復元。キャリブレーションには画像処理で復元した3Dのサンゴ骨格の成長速度とERSSTのデータを使用(r = -0.66)。復元されたSSTには大西洋数十年振動(Atlantic Multidecadal Oscillation; AMO)の約60-80年の周期性が見えた。過去225年間のSST変動は1℃の中に収まっていたと考えられ、Cariaco Basinの浮遊性有孔虫Mg/Caを用いたSST復元とも整合的。
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| Vásquez-Bedoya et al. (2012)を改変。 サンゴ骨格の成長速度とSSTとの相関。想像していたよりは使えそう。 |
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| Vásquez-Bedoya et al. (2012)を改変。 上の関係をもとに復元された過去225年間のSST。他の海域のサンゴSr/Caで見られる近年の温暖化が見られないのは何故??成長速度に温度の閾値などは存在しないのか? |
Global Biogeochemical Cycles
2012.9.1 - 30
Global calcite cycling constrained by sediment preservation controls
Dunne, J. P., B. Hales, and J. R. Toggweiler
ボックスモデルで海洋のカルサイトの輸送・沈降。埋没フラックスを再現。さらに不飽和度・有機物分解や有機物の水平輸送・結石形成(lithogenic sedimentation)などがカルサイトの輸送速度に与える影響を定量化。得られたモデルをもとに将来の温暖化や海洋酸性化の影響を評価。また氷期-間氷期スケールのCCDやリソクラインの深度なども復元。間氷期から氷期への移行期にはカルサイト埋没が海洋のアルカリ度を少しずつ増加させていたことが分かった。
Nanoscale lignin particles as sources of dissolved iron to the ocean
Krachler, R., F. von der Kammer, F. Jirsa, A. Süphandag, R. F. Krachler, C. Plessl, M. Vogt, B. K. Keppler, and T. Hofmann
鉄の濃度は海洋の生物生産を制約しているが、鉄は河川を通して海へと運搬されているが、そのほとんどは河口における塩分変化によって沈殿してしまうため、外洋には運搬されないとこれまで考えられてきた。泥炭地を流れる河川水に含まれている鉄に富んだ微粒子が塩分変化による沈殿を受けずに外洋へと運搬されることが分かった。構成成分は主に被子植物と裸子植物のリグニンであることも分かった。リグニンフェノールは全海洋でわずかながら見られるため、十分に長い滞留時間でもって鉄を保持していると予想される。
Biogeosciences
2012.9.24 - 30
A reappraisal of the vital effect in cultured benthic foraminifer Bulimina marginata on Mg/Ca values: assessing temperature uncertainty relationships
J. C. Wit, L. J. de Nooijer, C. Barras, F. J. Jorissen, and G. J. Reichart
温度制御飼育実験による底性有孔虫(Bulimina marginata)のMg/Ca-SSTキャリブレーションの再評価。一応有為には相関がある(R2=0.28)が個体間の変動も大きく、実際に古気候学に応用するにはMg/Ca-SSTのキャリブレーションの評価を十分に行う必要がある。個体間の際が出る原因はおそらく生態学的な生息環境の違いで、より多くの個体を均質化して分析することでMg/Ca-SSTキャリブレーションの確度を上げる必要がある。
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| Wit et al. (2012)を改変。 各温度区で飼育実験した個々の底性有孔虫の殻のMg/Ca測定結果。個体間の変動が大きく、感度も悪いことが分かる。この関係式を使って古水温を推定するのは難しそう。 |
Climate of the Past
2012.9.24 - 30
Can we predict the duration of an interglacial?
P. C. Tzedakis, E. W. Wolff, L. C. Skinner, V. Brovkin, D. A. Hodell, J. F. McManus, and D. Raynaud
過去80万年間の記録をもとに過去の間氷期の継続期間について評価。間氷期の始まりは北半球の夏の日射量が極大を迎え、歳差(precession)が最低になってから2,000年以内に訪れる。これはミランコヴィッチ理論とも整合的である。逆に間氷期から氷期への以降(Glacial inception)は地軸形動(obliquity)が減少しつつある時期に訪れる(最低値になる前)。このとき、1回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:13,000年)と2回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:28,000年)とがあり、おおよそ温度と大気中CO2濃度が極大を迎えてから10,000年後に起きる。しかしながら予想することは難しい。間氷期が長いかどうかはフォーシングの強さではなく、寧ろ天文学的な軌道要素の位相関係によって決まっている?
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