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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2012年12月15日土曜日

新着論文(CP, BG)

Marine productivity response to Heinrich events: a model-data comparison
V. Mariotti, L. Bopp, A. Tagliabue, M. Kageyama, and D. Swingedouw
Climate of the Past, 8, 1581-1598, 2012
ハインリッヒ・イベント(YD, HS1 - 6)における海洋の一次生産の変化を明らかにするために、これまでに得られている様々な地域の様々なプロキシを用いて復元された一次生産の記録をまとめ、モデルシミュレーションを組み合わせて考察を行った。一般にハインリッヒ・イベント時には海洋の一次生産が16%低下していた。北大西洋は主に減少、南大洋は増加した。赤道太平洋は有機物の輸送量の増加を示したが、一方で生物源シリカの輸送量は低下し、珪藻による炭素・ケイ酸の取り込みの比が変化した結果と考えられる。

Stable isotope and trace element investigation of two contemporaneous annually-laminated stalagmites from northeastern China surrounding the "8.2 ka event"
J. Y. Wu, Y. J. Wang, H. Cheng, X. G. Kong, and D. B. Liu
Climate of the Past, 8, 1497-1507, 2012
中国北東部から得られた鍾乳石のδ18O、δ13C、Ba/Caを測定。8.2kaに対応した夏モンスーンの指標として考えられるδ18OのシグナルはQunfやDongge洞窟のものと違い、顕著には見られない。しかしδ13CとBa/Caには変化が見られ、北大西洋の気候変動のシグナルが中緯度にも冬モンスーンの変化を介して伝播したと考えられる。
Wu et al. (2012)を改変。
鍾乳石から復元された8.2ka前後の様々なプロキシ。

On the gas-ice depth difference (Δdepth) along the EPICA Dome C ice core
F. Parrenin, S. Barker, T. Blunier, J. Chappellaz, J. Jouzel, A. Landais, V. Masson-Delmotte, J. Schwander, and D. Veres
Climate of the Past, 8, 1239-1255, 2012
EPICA Dome C(EDC)アイスコアの過去140kaにわたる気体-氷年代モデルの構築に関して。

Enrichment in 13C of atmospheric CH4 during the Younger Dryas termination
J. R. Melton, H. Schaefer, and M. J. Whiticar
Climate of the Past, 8, 1177-1197, 2012
ヤンガー・ドリアス時には大気中のメタン濃度の大幅な変動が確認されているが、その放出源(湿地・ガスハイドレート・サーモカルストなど)は明らかになっていない。これまでに得られたアイスコアとPa ̊kitsoq(グリーンランド)メタンの濃度とδ13CH4、さらに14CとδDも併せて質量収支計算を行ったところ、森林火災(42 - 66 %)とサーモカルスト湖からの放出(27 - 59 %)が大半を担っていることが示された。
Melton et al. (2012)を改変。
アイスコアに含まれている気泡から復元された様々なメタンの同位体。YDに焦点が当てられている。

Melton et al. (2012)を改変。
同位体によってメタンの放出源を分けることができるが、メタンには様々な放出源が存在する。
例えば、サーモカルスト・シロアリ・湿地・森林火災・ガスハイドレートなど。

Influence of changing carbonate chemistry on morphology and weight of coccoliths formed by Emiliania huxleyi
 L. T. Bach, C. Bauke, K. J. S. Meier, U. Riebesell, and K. G. Schulz
Biogeosciences, 9, 3449-3463, 2012
円石藻(Emiliania huxleyi)の殻重量は海水の炭酸塩の変化によって変化し、それを利用して過去の炭酸系の推定がなされているが、それがどの変数によって引き起こされているかの詳細は明らかになっていない。奇形の円石藻は主に[H+]によって引き起こされていることが分かった。サイズの変化は[HCO3-]、[H+]、[CO32-]のいずれか(或いはすべて)によってもたらされている。

Spatial linkages between coral proxies of terrestrial runoff across a large embayment in Madagascar
C. A. Grove, J. Zinke, T. Scheufen, J. Maina, E. Epping, W. Boer, B. Randriamanantsoa, and G.-J. A. Brummer
Biogeosciences, 9, 3063-3081, 2012
マダガスカルの河口付近で得られた3つのハマサンゴのδ18O、δ13C、Ba/Ca、ルミネ(G/B)を測定し、広域の河川流出量のプロキシとなるものがどれかを検討。フミン酸は保存量として振る舞うため、ルミネが最も使えるらしい。次いでBa/Caも有用
Grove et al. (2012)を改変。
3つのハマサンゴのG/BとBa/Caの変動の比較。明瞭な季節変動が見られる。