Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年12月17日月曜日

新着論文(QSR)

Quaternary Science Reviews
☆Volume 56, Pages 1-172 (21 November 2012) Rapid sea-level rise
Thomas M. Cronin
海水準変動はそれぞれの海岸ごとに様々な全球的な/ローカルな要因で起きる。
◎全球的な要因
  1. 海洋の質量変化(氷床融水の流入)(glacio-eustasy)
  2. 海の体積変化(steric effect)
  3. マントルの流動に起因する大陸移動(glacioisostatic adjustment)
  4. 陸上の水資源量の変化
◎地域的な要因
  1. 海洋循環の変化
  2. 地域的な氷河の融解
  3. 地域的な大陸移動
  4. 沈降
それらの影響が相互作用し、年間 3 mmを超える速度で海水準が上昇することが古気候学的な記録から知られている。特にアメリカ東海岸を例にとって古気候記録を頼りにしながら、完新世後期の海水準の安定性、数千年スケールの海水準変動パターンを評価することの難しさについてレビューする。

Simulating atmospheric CO2, 13C and the marine carbon cycle during the Last Glacial–Interglacial cycle: possible role for a deepening of the mean remineralization depth and an increase in the oceanic nutrient inventory
L. Menviel, F. Joos, S.P. Ritz
EMICs(Bern3D)を用いて氷期-間氷期スケールの大気中CO2濃度の変動をシミュレーション。80-100ppmの変動の3分の1(30ppm)は「温度」「塩分」「AMOCの変動」「鉄肥沃」「陸域炭素リザーバーの変化」で説明ができる。海洋のリン酸の保存量が10%変化するだけで間氷期から氷期にかけて50ppmほどCO2濃度を低下させることが可能だが、逆に氷期から間氷期にかけては5ppmしか寄与しない。このメカニズムは氷期のexport productionやδ13CO2をうまく説明できる。有機物粒子が酸化分解される深度が深くなると深層水の[CO32-]が大きく増加、またexport productionが変化してしまい、間接指標とは符合しなくなる。氷期には堆積物との相互作用がpCO2の低下には重要だったと考えられる。

Evaluating Southern Ocean sea-ice for the Last Glacial Maximum and pre-industrial climates: PMIP-2 models and data evidence
D.M. Roche, X. Crosta, H. Renssen
南大洋の現在とLGMの海氷範囲について、PMIP-2のモデル間比較を行った。モデルは現在とLGMの両方において海氷の量を小さく見積もっており、南大洋の海-氷の力学がまだうまく再現できていないことを示唆している。

☆Volume 57, Pages 1-156 (4 December 2012) 
How did the hydrologic cycle respond to the two-phase mystery interval?
Wally Broecker, Aaron E. Putnam
Estancia湖の堆積物コアが物語っている、Mystery Interval(18.0 - 14.6ka)における乾燥→湿潤化は、全球的な気候変動と一致している。一連の気候変動の原因は北大西洋における海氷の張り出しが深層水の形成を遮断したことにあるが、MIのきっかけとなったHS1の際にもITCZの南下があったはずだというジレンマが存在する。

☆Volume 58, Pages 1-164 (14 December 2012) 
Younger Dryas and early Holocene age glacier advances in Patagonia
Neil F. Glasser, Stephan Harrison, Christoph Schnabel, Derek Fabel, Krister N. Jansson
10Beを用いて最終退氷期におけるパタゴニア氷床の範囲をマッピング、前進・後退の時間を決定。LGM以降、YD(12.9 - 11.7 ka)に最も拡大していたと考えられる。南半球の偏西風によって支配される気温と降水量の変動が原因?

Sahel megadrought during Heinrich Stadial 1: evidence for a three-phase evolution of the low- and mid-level West African wind system 
Ilham Bouimetarhan, Matthias Prange, Enno Schefuß, Lydie Dupont, Jörg Lippold, Stefan Mulitza, Karin Zonneveld
氷期におけるハインリッヒイベントの際には広くITCZが南下・AMOCが弱化・北東貿易風が強化していたことが知られている。アフリカ西海岸(セネガル)沖の堆積物コア中の花粉記録から、過去20kaの花粉の給源を推定し、そこから過去の風系の変化を試みた(特にHS1を3つの期間に分離)。サハラにおける干ばつは北東貿易風というよりはむしろアフリカ偏東風(African Easterly Jet; AEJ)にも影響されていると考えられる。モデルシミュレーションでAMOCを弱化させたところ、西アフリカにおいて湿気が散らされることが再現された。

Atmospheric changes in North America during the last deglaciation from dune-wetland records in the Midwestern United States
Hong Wang, Andrew J. Stumpf, Xiaodong Miao, Thomas V. Lowell
アメリカ中部のローレンタイド氷床がかつて存在し、後退した場所における古環境復元(堆積物の構成粒子の色や地球化学分析)から、過去の湿度状態を推定。HS1とYDにおいて北部は乾燥化する一方で南部は湿潤化していた。B/Aの時には全く逆のことが起きていた。HS1もさらに2つの期間に分けて考えることができるらしい。

☆Volume 59, Pages 1-116 (3 January 2013) 
Holocene temperature history at the western Greenland Ice Sheet margin reconstructed from lake sediments
Yarrow Axford, Shanna Losee, Jason P. Briner, Donna R. Francis, Peter G. Langdon, Ian R. Walker
グリーンランドの西部から得られた湖の堆積物コアから完新世における気候変動を復元。昆虫の群集組成は6 - 4 kaの間に夏の気温が最も高かった(2 - 3 ℃)ことを示している。またそのときに氷床量も最も小さくなっていた。いくつかの急激な気候変動も確認される(4.2kaイベントも?)。