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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年12月23日日曜日

新着論文(Ngeo#Jan2012)

Nature Geoscience
January 2013, Volume 6 No 1 pp1-76

Correspondence
Overestimated water storage
過大評価された水貯蔵量
Leonard F. Konikow
Pokhrel et al. (2012, Ngeo)は海水準上昇に対する陸域の水リザーバーの寄与率を見積もっているが、彼らの用いているモデルは非現実的であり、過大評価をしていることを指摘する。

Reply to 'Overestimated water storage'
’過大評価された水貯蔵量’に対する返答
Yadu N. Pokhrel, Naota Hanasaki, Pat J.-F. Yeh, Tomohito J. Yamada, Shinjiro Kanae & Taikan Oki

Water vapour affects both rain and aerosol optical depth
水蒸気は雨とエアロゾルの光学的深さの両方に影響する
Olivier Boucher & Johannes Quaas
Koren et al. (2012, Ngeo)はエアロゾル量と降水量との高い相関があることを確認した。しかし彼らも指摘するように、相関関係は因果関係を表しているわけではない。

Reply to 'Water vapour affects both rain and aerosol optical depth'
’水蒸気は雨とエアロゾルの光学的深さの両方に影響する’に対する返答
Ilan Koren, Orit Altaratz, Lorraine A. Remer, Graham Feingold, J. Vanderlei Martins & Reuven Heiblum

Research Highlights
Toxic sediments
有毒な堆積物
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/jzh (2012)
長江は大量の土砂と汚染物質を東シナ海に運搬しているが、河口付近の堆積物には多環の芳香族炭化水素(発がん性がある)が蓄積していることが分かった。毎年152トンもの量が海へと運ばれ、全体の38%は長江が担っているらしい。分子量が小さいことから、多くは石油が起源と推定されている。モンスーンの風などによって再懸濁することで東シナ海を二次汚染する可能性があるという。

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Research
News and Views
Canadian climate aberration
カナダの気候の異常
Gordon Bonan
気候変動によって生態系の大規模な擾乱が予想されているが、気候の擾乱を検出することは難しい。カナダのブリティッシュ・コロンビアの森における分析から、パインビートルの大量発生によって木が死に、蒸発・蒸散量が低下したことで地域的に夏の温暖化(約1℃)が生じたことが明らかになった。

Tropical Atlantic warm events
赤道太平洋の温暖化イベント
Joke F. Lübbecke
赤道東大西洋の表層水温は年々変動する。データの再解析とモデルシミュレーションから、赤道大西洋で確認されている温暖化イベントのいくつかは、赤道の北から暖水がもたらされることで起きていることが示唆される。

Letters
The impact of polar mesoscale storms on northeast Atlantic Ocean circulation
北極の中規模嵐が北東大西洋の海洋循環に与える影響
Alan Condron & Ian A. Renfrew
毎年、幾多の北極の中規模嵐(極低気圧)が気候的に敏感な北大西洋を通過する。高解像度のモデルシミュレーションから、極低気圧が全球の海洋循環にかなり影響していることが示唆される。極低気圧は短期間予測用の気候モデルに組み込む必要がある。また将来極低気圧の数が減少することが予想されており、深い対流とAMOCが弱化する可能性がある。

Increased water storage in North America and Scandinavia from GRACE gravity data
GRACEの重力データが明らかにする北米とスカンディナビアの水貯蔵量の増加
Hansheng Wang, Lulu Jia, Holger Steffen, Patrick Wu, Liming Jiang, Houtse Hsu, Longwei Xiang, Zhiyong Wang & Bo Hu
氷河の融解と氷床解放後の地殻変動の両方が起きているような地域においては、人工衛星の重力観測データから陸上の水貯蔵量の変化を推定することは難しいとされていた。それらをうまく分けることで、北米とスカンディナビアの両方で過去数十年間に水貯蔵量が増加していることが分かった。陸上の水位の観測とも整合的であるという。陸上の水貯蔵量の変化もまた全球の海水準予測に組み込む必要がある。

Multiple causes of interannual sea surface temperature variability in the equatorial Atlantic Ocean
赤道大西洋の表層水温の数年変動の複合要因
Ingo Richter, Swadhin K. Behera, Yukio Masumoto, Bunmei Taguchi, Hideharu Sasaki & Toshio Yamagata
赤道大西洋で確認されている表層水温の数年規模の変動はENSOに類似したものと考えられている。観測記録と再解析データとモデルシミュレーションから、そうした数年規模の変動をもたらす原因を評価したところ、いくつかの現象は風のストレスやENSOのような力学では説明できないことが分かった。赤道の北の亜熱帯から暖水がもたらされるような長期間持続する現象が確認された。

Routes to energy dissipation for geostrophic flows in the Southern Ocean
南大洋の地溝流に対するエネルギー消失のルート
Maxim Nikurashin, Geoffrey K. Vallis & Alistair Adcroft

Two pulses of extinction during the Permian–Triassic crisis
P/T危機の間の2つのパルスの絶滅
Haijun Song, Paul B. Wignall, Jinnan Tong & Hongfu Yin
P/T境界においてはシベリアにおける火山噴火か天体衝突がきっかけとなって海洋生物の90%が絶滅した。中国の地層中の化石記録は間に18万年間の回復期が存在する2度のパルス上のイベントであったことを物語っている。537種の生物についてP/T境界を挟む45万年間について調査を行ったところ、第一段階(ペルム紀の終わり)で57%が絶滅し、第二段階(三畳紀の始まり)で残った種の71%が絶滅していたことが分かった。2回の絶滅は異なる選択性をもっていたことから、異なる原因が背後にある可能性がある

Climatic and biotic upheavals following the end-Permian mass extinction
ペルム紀末の大量絶滅に続く気候と生物の大激変
Carlo Romano, Nicolas Goudemand, Torsten W. Vennemann, David Ware, Elke Schneebeli-Hermann, Peter A. Hochuli, Thomas Brühwiler, Winand Brinkmann & Hugo Bucher
ペルム紀の終わりの大量絶滅後の回復は非常に遅れ、三畳紀の中頃まで複雑な生物が現れなかったことが化石から明らかになっている。しかし三畳紀初期には海洋生物種の多様性が変動しており、それは炭素同位体の激減の最中に起きている(シベリアからの火山性ガスの注入)。パキスタンの地層から発掘されたコノドントのδ18Oから温度を復元したところ、三畳紀初期のSmithianははじめ寒冷で、その後温暖化し、Spathianには再び寒冷であったことが分かった。Smithian後期の温暖期に最も陸上植物の生態系と海洋生物の種が激変していた

Articles
Summertime climate response to mountain pine beetle disturbance in British Columbia
ブリティッシュ・コロンビアにおける山岳のパインビートルの擾乱に対する夏の気候の応答
H. Maness, P. J. Kushner & I. Fung
最近起きたカナダのブリティッシュ・コロンビアにおけるパインビートルの大増殖はカナダにおけるこれまでの生態系の擾乱のなかでは最大のものの一つであり、大規模な気候状態のシフトによってもたらされた可能性が高く、将来北米全体で起きることが予感される。大増殖に伴って木々が死滅しており、その結果蒸発散やアルベドに影響し、それらは地域的なエネルギーバランスにも影響するため、気温や気候にまで影響すると考えられる。影響を被った森林について調査を行ったところ、夏の蒸発散量が19%低下しており、夏の気温が1℃上昇していることが分かった。この規模は森林火災と同程度のものであり、虫がきっかけとして起きる生態系の擾乱が、気候に対する二次的な効果を持っていることが分かった。