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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年12月18日火曜日

新着論文(PNAS)

Proceedings of the National Academy of Sciences
☆20 November 2012; Vol. 109, No. 47
Commentaries
Climate change and marine ecosystems
気候変動と海洋生態系
Francisco P. Chavez
Taylor et al. (2012, PNAS)の紹介記事。ITCZの変化に伴う沿岸湧昇の変化とそれに対する生態系の応答、および炭素循環に与える影響について。
小氷期にはITCZは’南下’しており、それによって生態系が激変したことが確認されている。さらに温暖化した世界では逆にITCZが’北上’すると予想されており、そうした変化は既に起きつつある。

Environmental Sciences
Deep-sea record of impact apparently unrelated to mass extinction in the Late Triassic
Tetsuji Onoue, Honami Sato, Tomoki Nakamura, Takaaki Noguchi, Yoshihiro Hidaka, Naoki Shirai, Mitsuru Ebihara, Takahito Osawa, Yuichi Hatsukawa, Yosuke Toh, Mitsuo Koizumi, Hideo Harada, Michael J. Orchard, and Munetomo Nedachi
日本近辺の深海底に存在する三畳紀後期の堆積物には隕石衝突を思わせるイリジウムの濃集層が存在する。これはカナダのManicouagan衝突孔の形成年代とも一致している。全球的な放散虫の絶滅は確認されていないが、北米の一部の生物では確認されているため、衝突によって地域的な絶滅が起きたものと思われる。

Ecosystem responses in the southern Caribbean Sea to global climate change
Gordon T. Taylor, Frank E. Muller-Karger, Robert C. Thunell, Mary I. Scranton, Yrene Astor, Ramon Varela, Luis Troccoli Ghinaglia, Laura Lorenzoni, Kent A. Fanning, Sultan Hameed, and Owen Doherty
温暖化によってハドレー循環が変化しつつあり、ITCZやNAOに影響している。カリアコ海盆のCARIACO Ocean Time-Seriesによる1996 - 2010年の定点観測の結果は近年の様々な変化を示している。

  • 温度上昇:~ 1.0 ± 0.14 ℃
  • 成層化と湧昇による栄養塩供給量の低下
  • クロロフィル量の低下
  • 総一次生産量の低下

その結果、それまで珪藻・渦鞭毛藻・円石藻で占められていた群集組成はより小さなプランクトンへと変化し、現地のイワシ漁は崩壊している。Azores高気圧の北上とITCZの北(東)上が原因として考えられる(3月の位置が800km北上)。

☆27 November 2012; Vol. 109, No. 48
Commentaries
Hurricanes and rising global temperatures
ハリケーンと上昇する全球気温
Greg J. Holland
Grinsted et al. (2012, PNAS)の紹介記事。
大西洋においては温暖化とともにハリケーンの強度及び頻度が上昇することが予測されている(1℃の上昇ごとに年間の到来回数が50%増加するという予測も)。しかしながら、近年起きている巨大なハリケーンが温暖化によるものかどうかも未だに判断がついておらず、将来予測に対する不信感を生む源にもなっている。ハリケーンに関する観測記録は限られているが、Grinsted et al. は高潮による地滑り等の記録をもとに過去のハリケーンの強度などを間接的に再現し、それらは観測ともよく合うものであるらしい。彼らの作った高潮指数(surge index)は観測される近年の通う表層水温の温暖化ともよく合っている。この指数が本当にハリケーンの強度・頻度・被害を代表するものとして見なせるかどうかは今後議論がなされるだろう。

Environmental Sciences
Homogeneous record of Atlantic hurricane surge threat since 1923
Aslak Grinsted, John C. Moore, and Svetlana Jevrejeva
高潮指数(surge index)をもとにバイアスがかかっていない1923年以降のハリケーンの強度を復元。暖かい年には寒い年に比べて有意にハリケーンのサイズが増していることが示された(カトリーナ級のハリケーンは2倍程度)。

☆4 December 2012; Vol. 109, No. 49
Commentaries
Importance of freshwater injections into the Arctic Ocean in triggering the Younger Dryas cooling
ヤンガー・ドリアスを引き起こす上で大西洋に淡水を注入することの重要性
James T. Teller
Condron and Winsor (2012, PNAS)の紹介記事。
ヤンガー・ドリアスが北大西洋への淡水注入に伴う子午面循環の弱化であったとして、疑問点はいくつか挙げられる。

  • ローレンタイド氷床を起源とする融水はGreat LakesとSt. Lawrenceを通過したかどうか?
  • アガシ湖から流れ出た融水は1,000年間もの間子午面循環を弱化させるほどのインパクトがあったかどうか?
  • ローレンタイド氷床はもとから融解しつつあるという状況下で、その融水量の急激な増加が閾値を超すほどのものだったのか?

彼らは高解像度のモデルを採用し、異なる融水の流出を仮定して、現在の気候の背景場で1年間にわたって5 Sv の融水を流してAMOCの変化を観察した。すると、Mackenzie Valleyを経由した実験のみがAMOCに擾乱をきたすことができた。その原因としては、St. Lawrence Valleyを経由した淡水は北大西洋で南下する流れに乗り、うまく淡水キャップとして広範囲を覆わないためであるという。

Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Meltwater routing and the Younger Dryas
Alan Condron and Peter Winsor
高解像度の海洋循環・海氷モデルを用いてヤンガー・ドリアスが北大西洋への淡水注入であるという仮説を検証。St. Lawrence Valley経由だとAMOCを15%以下しか弱化させることができなかったが、Mackenzie Valley経由だと狭い沿岸境界流が淡水を効果的に北大西洋にもたらし、30%以上の弱化をもたらすことができた。北極海経由での融水の注入がヤンガー・ドリアスのきっかけとなったと考えられる。

Mapping Greenland’s mass loss in space and time
Christopher Harig and Frederik J. Simons
GRACEの重力観測記録から2002年から2011年にかけてのグリーンランド氷床の質量収支を計算。特に南東部と北西部の沿岸部における融解が顕著。中央部は徐々に質量を増している。全体としてはほぼ線形に質量は減少しつつある。

☆11 December 2012; Vol. 109, No. 50
特になし