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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2012年12月20日木曜日

新着論文(Nature#7429)

Nature
Volume 492 Number 7429 pp311-462 (20 December 2012)

RESEARCH HIGHLIGHTS
From the Kuiper Belt to comets
カイパー・ベルトから隕石に
Astrophys. J. 761, 150 (2012)
9年間に及ぶハッブル宇宙望遠鏡によるカイパー・ベルトの観測から、530mほどの大きさの新たな天体が見つかった。ふんだんに存在する氷の小天体が太陽系内部で観測される隕石の起源になりうることが分かった。

Teeth speak of dietary change
食事の変化を物語る歯
Biol. Lett. http://dx.doi.org/ 10.1098/rsbl.2012.0890 (2012)
エチオピアで発掘されたアンテロープ(Tragelaphus nakuae)や豚の一種(Kolpochoerus limnetes)の歯の化石のδ13C分析から、2.8Maにそれらが食べていた植物がC3植物からC4植物へと変化したことが分かった。この時期にアフリカにおいて気候が大きく変化していた可能性があるという。

Rivers’ antibiotic resistance threat
河川の抗生物質耐性の脅威
Environ. Sci. Technol. http:// dx.doi.org/10.1021/es302760s (2012)
中国の6つの河川水から、生物工学分野で使用されているプラスミド・ベクターの遺伝子を持った生物が見つかった。実験施設などの廃液が動物や人間の抗生物質耐性を作り出す原因となっていると考えられる。

When plants run the food chain
植物が食物連鎖を運営するとき
Ecol. Lett. http://dx.doi. org/10.1111/ele.12032 (2012)
植物の中には肉食昆虫に餌を与えることで自らを守ってもらうものがいる。一方、カリフォルニアの一年草(Madia elegans)は小型の昆虫を捕らえることでより大型の昆虫の餌とし、用心棒として有害な小型昆虫から守ってもらうという戦略をとっているらしい。

Scarce cetaceans catalogued
わずかしかいない鯨類が分類された
Curr. Biol. 22, R905–R906 (2012)
”世界で最も珍しい鯨類(The world’s rarest whale)”というタイトルで、ニュージーランドに打ち上げられた2頭の新種のクジラ(Mesoplodon traversii)が分類された。

Counting geoneutrinos
ジオ・ニュートリノを数える
Earth Planet. Sci. Lett. http://dx.doi.org/10.1016/ j.epsl.2012.11.001 (2012)
マントル内部における放射改変によって放出されるジオニュートリノ(geoneutrinos — electron antineutrino)を利用してマントルの温度推定ができる可能性がある。太平洋の2つ以上の地点で測定が試みられるという。

SEVEN DAYS
Moon smash
月の衝突事故
GRAILによる観測から、これまでにない精度で月の重力場のマッピングが行われた。

Ice plunge halted
氷への突進が一時中止
南極の氷床の下に存在するEllsworth湖を対象にした掘削が掘削機器の故障で中断した。12/10に温水ドリルのパワーを上げたところ、回路がショートしてしまったらしい。バーナーを使って一時温水を持ちこたえることはできたが、それも4〜5日後には機能しなくなった。12/21まで作業が再開する見込みは薄いらしい。

Ancient ice
古代の氷
オーストラリアは来年の夏から、過去2,000年間の気候復元に焦点を当てた南極の掘削をスタートさせることを12/15に公表した。Aurora Basin Northと呼ばれる降雪量が大きい地点で400mのアイスコアが得られる予定で、1年ごとの高解像度の記録が期待されている。

Safety for sharks
サメのための避難場所
Cook諸島は近隣のフレンチ・ポリネシア諸島などとともに世界最大のサメの保護区(オーストラリア大陸と同じ大きさ)を設けた。保護区内ではサメ漁、サメ製品の保有・販売などがすべて禁止されている

Troubled rocket
トラブルに遭っているロケット
北朝鮮は1998年以来5度目となる、地球を周回する軌道への物体の投入を成功させた。しかし投入された人工衛星はバランスを失い回転しており、電波も発していないことから、全く機能していないことがアメリカとカナダの防衛レーダーによる観測から明らかになっている。

NEWS IN FOCUS
366 days: Images of the year
366日;今年の画像
北極海の海氷、太陽コロナ質量放出、小型カメレオンなど。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Go with the lows
低気圧とともに進む
極低気圧(Polar low)は小さくかつ持続時間も1〜2日と短いため、天気予報に用いられるモデルに組み込むことが難しい。しかしながら、Condron and Renfrew(2012, Ngeo)はそうした極域の観測記録を気象モデルに組み込む必要があることを指摘している。極の循環は北大西洋の深層水形成場の海洋循環にも影響する

2012 Editors' choice
COLLISION COURSE
衝突への道
R. Brent Tully (Nature 488, 600–601; 2012)
今から40億年後、天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突することになるだろう。その時にもし人類の子孫が敏感な目を持っていれば、壮大な衝突の瞬間を目撃するだろう。

AEROSOLS AND ATLANTIC ABERRATIONS
エアロゾルと大西洋の異常
Amato Evan (Nature 484, 170–171; 2012)
北大西洋における数十年の時間スケールの変動(AMO)が大西洋の気候を支配している。大西洋のハリケーンの頻度が近年高いことや、1980年代のサハラ地域における干ばつはAMOが原因と考えられている。Booth et al.は最新の気候モデルから、エアロゾルがAMOに影響を与えていることを明らかにした。他のモデルなどを用いてさらに検証する必要があるが、人間活動が北大西洋の温度の数十年変動をもたらしている可能性が浮き彫りになった。

REMOTE RESPONSIBILITY
遠くの責任
Edgar Hertwich (Nature 486, 36-37; 2012)
象牙でできたチェスの駒を買えば象を殺したことを実感するかもしれないが、ソーセージを買って象の生息地が奪われたことを実感することはほとんどない(豚の餌となる大豆栽培用の土地開発などを通して)。Lenzen et al.は国際貿易が生物多様性に与える影響を評価したところ、アメリカ・日本・ヨーロッパは輸入によって、東南アジア諸国は輸出によって、レッドリストに載っている生物の絶滅の危険性の原因の30%を担っていることが示された。

ARTICLES
特になし

LETTERS
Laboratory measurements of the viscous anisotropy of olivine aggregates
カンラン石集合体の粘性異方性の室内測定
L. N. Hansen, M. E. Zimmerman & D. L. Kohlstedt
[Natureによる日本語要約]

Flickering gives early warning signals of a critical transition to a eutrophic lake state
フリッカー現象は湖沼の富栄養状態への臨界遷移の早期警告シグナルとなる
Rong Wang, John A. Dearing, Peter G. Langdon, Enlou Zhang, Xiangdong Yang, Vasilis Dakos & Marten Scheffer
[Natureによる日本語要約]