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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年12月24日月曜日

新着論文(Ncc#Jan2013)

Nature Climate Change
Volume 3 Number 1 (January 2013)

Correspondence
Lifting livestock's long shadow
家畜の長い影を増やす
Robert Goodland
発展途上国における家畜の肉製品の需要は増えつづけるかもしれない。我々の試算では人為起源のCO2排出の51%は家畜製品の製造が原因となっている。家畜の飼育と餌用の作物生産は全体でCO2を多く排出している。気候変動を打ち消すための新たなインフラ整備には20年間で18兆・米ドルが少なくとも必要であると試算されており、IPCCやIEAによれば「手遅れになる前に気候変動を打ち消すにはゆく5年間がカギ」ということらしい。そうした事情のもと、我々は現在の家畜生産の25%ほどを別のものに置き換える必要性を主張する。

Climate warming and Mediterranean seagrass
気候の温暖化と地中海の海草
Cristian R. Altaba
将来の温暖化で地中海の海草が失われ、生態系が根本から破壊されるとするJorda et al. (2012, Ncc)の統計的・実験的な誤りの指摘。

Climate warming and Mediterranean seagrass
気候の温暖化と地中海の海草
Gabriel Jordà, Núria Marbà & Carlos M. Duarte
Altabaに対する応答。

Commentary
The challenge to keep global warming below 2 °C
温暖化を2℃以下に抑える課題
Glen P. Peters, Robbie M. Andrew, Tom Boden, Josep G. Canadell, Philippe Ciais, Corinne Le Quéré, Gregg Marland, Michael R. Raupach & Charlie Wilson
最新のCO2排出量は排出シナリオのうち最も高いものの道筋をなぞっており、温暖化がもはや2℃以内には納まらない様相を呈している。2℃の温暖化という道に進むには世界的な迅速かつ持続した取り組みが必要であり、長期的に全体で排出が負になること(CO2大気捕獲技術の進展や海・陸による吸収を指す?)を信頼する必要がある。

News Feature
The muddled progressive
混乱した進歩主義者
Anna Petherick
ブラジルはこれまで発展途上国に対して影響力を示してきたが、それは今後も続くのだろうか?

Research Highlights
北極圏のメタンのコントロール
Glob. Change Biol. http://doi.org/jw8 (2012)
北極圏に眠るメタンは温暖化を倍加するほどの可能性を秘めているものの、その排出を支配する物理・環境要因はよく分かっていない。David Olefeldtらはこれまで北極圏で得られたデータをもとに要因を評価したところ、「湿度」「土壌温度」「植生」により関係があることが分かった。

Climate–conflict nexus
気候と紛争のつながり
Proc. Natl Acad. Sci. 109, 18344–18349 (2012)
気候変動(特に温度)がサハラ地域の紛争リスクに与える影響が示唆されたが、従来の研究は地理的な違いを完全に考慮できていなかった。John O’Loughlinらは1990 - 2009年までに起きた16,359回もの暴力沙汰のデータベースを用いて、社会経済・地理・政治などの要因を考慮して原因を探ったところ、降水がふんだんにある時には暴力沙汰は30.3%減少することが分かった。一方、乾燥・通常状態では何も影響がないことが分かった。さらに温度上昇は暴力リスクを29.6%も高めることも分かった。

Aragonite shell damage
アラゴナイトの殻のダメージ
Nature Geosci. 5, 881–885 (2012)
南大洋の表層水においては自然・人為起源の要因で2050年までにアラゴナイトに対する不飽和状態に陥ると推定されており、それは極域の生態系を支えるアラゴナイトの殻を作る生物に影響すると予想されている。Nina Bednaršekらは不飽和・未飽和の海域で翼足類を採取し、それらの殻をSEMで観察したところ、不飽和のものが既に重大な溶解を経験していることが分かった。従来考えられていたよりも、翼足類の個体数の減少は早く訪れるかもしれない

Reconstructing temperature
温度を復元する
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/jw9 (2012)
温度計による過去の気温の記録は時空間的に極めて限られたものである。NOAAのDavid Morrill Andersonらはサンゴ・アイスコア・石筍・海洋底堆積物・湖底堆積物・歴史文書などの温度に敏感な173個のプロキシを用いてAD1730年以降の気温を復元した。指標は「1880 - 1995年における有為な上昇傾向」と「1980年以降の温暖化の加速」を示している。
>問題の論文
Global warming in an independent record of the last 130 years
Anderson, D. M., E. M. Mauk, E. R. Wahl, C. Morrill, A. Wagner, D. R. Easterling, and T. Rutishauser

Stilling air
大気をかき混ぜる
Environ. Res. Lett. 7, 044034 (2012)
オゾンや粒子状物質は淀んだ空気には蓄積しやすく、健康被害をもたらすもととなる。気候変動は大気循環や降水にも影響し、それらは空気の淀みの頻度にも影響すると考えられる。Daniel Hortonらはモデルシミュレーションを通して今世紀末における大気の淀み指数(air-stagnation index)を求めたところ、人口密度が高く、工業化が進んだ地域(アメリカ東海岸・地中海周辺・中国東部など)で淀みが増すことが示された。

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Research
News and Views
Wetting the Arctic
北極を湿潤にする
Tara J. Troy
ユーラシア大陸北部から北極海に注ぐ川の流量は1930年代以降増加している。研究によって極域への水蒸気輸送量が増加していることが原因であることが分かった。

Perspectives
Interpreting trade-related CO2 emission transfers
貿易に関連したCO2排出の移動を解釈する
Michael Jakob & Robert Marschinski
ほとんどの工業国は自国製品を輸出するよりも他国から製品を輸入する際に炭素を放出している。そうした排出赤字(carbon trade-deficits)は全球的なCO2排出と炭素の貿易政策の点で何を暗示しているのだろう?

The impacts of climate change on terrestrial Earth surface systems
気候変動が陸域の地球表層システムに与える影響
Jasper Knight & Stephan Harrison
気候変動が地球の表層システム(氷河・河川・山岳・沿岸部など)に与える影響は国家的な・国際的な政策イニシアチブに無視されがちである。地球表層システムは水資源・土壌資源を提供し、生態系を支え、生物地球化学的な物質循環に影響するため、非常に重要である。

Review
Consequences of widespread tree mortality triggered by drought and temperature stress
干ばつと温度ストレスによって引き起こされる広範囲にわたる木の大量死の結果
William R. L. Anderegg, Jeffrey M. Kane & Leander D. L. Anderegg
ここ数十年間、森林が死に絶える出来事が頻発し、そうした現象が全球的な規模で起きていることが示唆される。しかし気候が「陸上の生態系」や「気候-生態系の相互作用」、「炭素循環フィードバック」などに与える影響についてはよく分かっていない。このレビュー論文では、森林が死ぬことで社会的・生態学的にどういった結果になるかについて考察を行う。

Letters
Summer-time climate impacts of projected megapolitan expansion in Arizona
アリゾナにおける予想される巨大都市の広がりが夏の気候に与える影響
M. Georgescu, M. Moustaoui, A. Mahalov & J. Dudhia
地域的な都市化は放射や水収支に影響するため気候にも影響を与える。アリゾナにおける巨大都市の広がりが気候に与える影響をモデルを通して評価したところ、都市化の発展の道筋にも依存するが、最大で4℃もの地域的な温暖化が予想される。大気を冷やす効果のある屋根の設置で50%の温暖化削減になることも分かったが、夏の蒸発散量の低下が温暖化に与える効果は依然として大きい。

All flavours of El Niño have similar early subsurface origins
すべてのエルニーニョの気配は同じ初期の水中の起源を持つ
Nandini Ramesh & Raghu Murtugudde
ENSOは2 - 7年ごとに赤道太平洋で起きるSSTと風の変化によって特徴付けられる現象であるが、最近の研究によってビヤクネス・フィードバック(赤道湧昇の強弱と風の変化を伴う大気海洋のカップリング)だけではエルニーニョの発展に不十分であることが指摘されている。さらにENSO自体が数十年で変化するレジームを持つことも分かってきた。いずれのレジームでもエルニーニョの始まる前の夏・秋(18ヶ月前以内)に水中の(subsurface)暖水の注入がエルニーニョの始まりを告げていることが再解析データの解析から明らかになった。気候変動に対してENSOがどのように応答するかを正しく予想するにはこうしたプロセスを正しく理解することが重要である。

Enhanced poleward moisture transport and amplified northern high-latitude wetting trend
強化される極向きの水蒸気輸送と増幅される北部高緯度地域の湿潤化の傾向
Xiangdong Zhang, Juanxiong He, Jing Zhang, Igor Polyakov, Rüdiger Gerdes, Jun Inoue & Peili Wu
気候変動ともに北極圏が湿潤化することはモデルと観測の両方によって示されている。例えば2007年の河川流量は前例にないほどのものであり、同時に北極海の海氷も多く失われた。しかし大量の淡水をもたらした原因についてはコンセンサスが得られていなかった。極に運ばれる大気の水蒸気輸送が河川流量の98%を担っていることを示す。水蒸気輸送量は10年間に2.6%の割合で増加しており、河川流量の10年間に1.8%の増加とも整合的である。

Increasing drought under global warming in observations and models
観測とモデルで再現される温暖化のもとで増加する干ばつ
Aiguo Dai
1950年以降様々な記録が干ばつの増加を示しているが、観測事実とモデルによる再現との間には大きな食い違いが見られる。特に大きな問題点は干ばつの原因とされる表層水温がモデルにうまく取り入られていないことにある。ENSOが陸の干ばつに与える影響だけでなく、観察される全球的な乾燥化の傾向もモデルがうまく再現できていることを示す。「今後30 - 90年はひどい干ばつが広い範囲で起きる」と予想するモデルは、2010年までの全球的な乾燥化の観測記録ともよく合っているため、予想結果は信頼に足るものである。

Anthropogenic influence on multidecadal changes in reconstructed global evapotranspiration
復元された全球の水蒸気輸送の数十年変動に対する人為的な影響
H. Douville, A. Ribes, B. Decharme, R. Alkama & J. Sheffield
温暖化によって全球の水循環(干ばつや降水など)は大きく影響を受けることが予想されるが、その規模や空間分布についてはよく分かっていない。既に起きつつある水蒸気輸送の変化も人為起源かどうかをはっきりさせることがこれまで困難であったが、モデルシミュレーションから人為起源の放射強制力(温室効果ガスとエアロゾル)を含めなければ近年の水蒸気輸送の変化を再現できないことを示す。特に水蒸気輸送が強化されることが期待される中緯度地域においては、ここ数十年間の楽観できる時代は終わり、変わりつつある気候(例えば干ばつの頻度の上昇)の中で水資源や食料確保の管理をしっかりとすることの重要性が浮き彫りになっている。

Global diversity of drought tolerance and grassland climate-change resilience
干ばつに対する耐性の全球的な多様性と草原の気候変動に対する強さ
Joseph M. Craine, Troy W. Ocheltree, Jesse B. Nippert, E. Gene Towne, Adam M. Skibbe, Steven W. Kembel & Joseph E. Fargione
草原地域はこれまで干ばつを常に経験する地域であったが、温暖化した世界では干ばつの頻度と規模がよりいっそう厳しいものになることが予想される。そうした中、植物の干ばつに対する耐性を評価することは草原の生態系の機能と気候変動に対する耐性を予想する上で重要である。その土地に昔から根付く植物種ほど耐性が強く、将来も大規模に移動することなしに生態系の機能を維持する可能性があることを示す。世界中で、干ばつに耐性のある種が草原に広がり、生態系としての機能を維持することが予想される。

Adaptation of US maize to temperature variations
温度変化に対するアメリカのトウモロコシの適応
Ethan E. Butler & Peter Huybers
温暖化した世界における食料確保が関心を集めている。しかし適応策が温暖化が原因で起きる作物の不作を打ち消すかどうかは不確かなままである。アメリカにおけるトウモロコシ生産は、2℃の温暖化が起きた場合でも、適切な管理政策が取られれば生産量の減少は半分に抑えることが可能であることが示された。

Emerging Vibrio risk at high latitudes in response to ocean warming
海の温暖化に応答する高緯度域のビブリオ感染リスクの出現
Craig Baker-Austin, Joaquin A. Trinanes, Nick G. H. Taylor, Rachel Hartnell, Anja Siitonen & Jaime Martinez-Urtaza
気候変動とともに病原菌が新たな地に蔓延する可能性が関心を集めている。バルト海は前例にないほどの速度で温暖化しつつあり、その結果ヨーロッパ北部におけるビブリオ病原菌の感染が、特にバルト海沿岸部を中心に広がっている。これは人為起源の気候変動が温帯域のビブリオ感染を引き起こした初めての証拠であり、全球的な規模で伝染病の分布が変化しつつあることを暗示している。

An extreme climatic event alters marine ecosystem structure in a global biodiversity hotspot
異常な気候イベントが世界的な生物多様性のホットスポットの海洋生態系の構造を変える
Thomas Wernberg, Dan A. Smale, Fernando Tuya, Mads S. Thomsen, Timothy J. Langlois, Thibaut de Bettignies, Scott Bennett & Cecile S. Rousseaux
2011年に世界的な生物多様性のホットスポットである西オーストラリア沿岸部の広い地域において、10週間以上も持続する海水温の異常昇温(2 - 4 ℃)が確認された。この温暖化イベントの後、海草に支えられていた温帯の生態系が熱帯型の生態系へと激変したことが分かった。現在の生態系モデルでは徐々に上昇する水温に基づいて生態系の応答の予測がなされているが、それ以上に急激な気候イベントが生物多様性のパターンを決定することを考慮し、モデルに組み込む必要がある。

Article
Climate-change impact assessment for inlet-interrupted coastlines
入り江に塞がれた沿岸部に対する気候変動の影響評価
Roshanka Ranasinghe, Trang Minh Duong, Stefan Uhlenbrook, Dano Roelvink & Marcel Stive
気候変動の結果生じる沿岸部の変化は「海岸線が内陸へと移動する効果(Brunn効果)」だけがこれまで評価されてきたものの、実際には「堆積物の埋没」や「降水量・河川流量の変化」もまた重要である。そうしたプロセスをすべて組み込んだモデルで4つの代表地域に対して海水準上昇の影響を評価したところ、Brunn効果は沿岸部の変化のうち25 - 50 %程度しか寄与していないことが示された。