Science
VOL 338, ISSUE 6111, PAGES 1117-1248 (30 NOVEMBER 2012)
Editors' Choice
Toba Timing
Tobaのタイミング
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 10.1073/pnas.1208178109 (2012)
スマトラ島のTobaの火山噴火は過去1,000万年間で最も大規模のものであったと考えられており、その噴火によって30×100 kmもの大きさの湖ができた。噴火の際のシグナルは南極やグリーンランドの氷床にさえも記録されていると考えられている。その噴火は初期人類の進化にも影響を与えたと考えられているものの、その年代決定は不確かなままである。マレーシアから新たに得られた40/39Ar法による年代測定結果はそれが「73.88 ± 0.32 ka」であったことを示しており、グリーンランドにおける10℃もの温度低下に対してわずかに先行している。
News of the Week
※今回は省略
News & Analysis
BP Criminal Case Generates Record Payout for Science and Restoration
BPの刑事事件は歴史に残るほどの科学と保全活動に対する支払額を作り出す
David Malakoff
2010年のDeepwater Horizen石油流出事故に対する賠償金40億ドルのうち、25億ドルほどはメキシコ湾沿岸の生態系のモニタリングや保全活動に利用される。
Experts Agree Global Warming Is Melting the World Rapidly
専門家は温暖化が世界を急速に融解させていることに同意している
Richard A. Kerr
今週号の研究による新たな分析から、グリーンランド氷床と西南極における氷床の融解は加速的に進行しており、氷床のいくつかは困惑するほど温暖化に対して敏感であることを示している。
News Focus
特になし
Letters
特になし
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Research
Perspectives
Integrating the Captive and the Wild
捕虜と野生を統合する
Kent H. Redford, Deborah B. Jensen, and James J. Breheny
近年の動物の個体数の保護策は動物園で発展した技術と野外調査で得られた技術とをうまく統合できつつある。
Embers of the Distant Past
遠い過去の残り火
Volker Bromm
古代の星の光を検出することで、宇宙の初期進化に対して制約を与えることができる。
Review
Ice-Sheet Response to Oceanic Forcing
海洋のフォーシングに対する氷床の応答
Ian Joughin, Richard B. Alley, and David M. Holland
南極とグリーンランドの氷床(特に棚氷)は海洋のフォーシングを受けて加速的に融解している。最近の研究から氷床縁辺部の融解と海洋からの熱輸送との間によい相関があることが示唆されている。南極ではそうしたプロセスは理解されているが、定量化はなされていない。一方のグリーンランドでは海洋の温度上昇が融解に寄与しているかどうかのプロセスの理解もまだ十分になされていない。将来の海水準上昇の予測に必要な物理プロセスの理解がまだ十分に得られていないのが現状である。
Research Articles
A Reconciled Estimate of Ice-Sheet Mass Balance
氷床量の質量収支の一致した推定
Andrew Shepherd et al.
グリーンランド・東南極・西南極・南極半島においてこれまで得られた人工衛星の観測記録(高度計・干渉法・重力観測)を統合し、極域の氷床の質量収支とアイソスタティックな調整を推定した。特にグリーンランドと西南極で異なる手法に基づく推定値がよく一致した。また一方で異なる手法を組み合わせることで不確実性が増すことも分かった。1992-2011年の間に、それぞれの質量収支は年間 「–142 ± 49」、 「+14 ± 43」、「–65 ± 26」、「–20 ± 14」Gtで変化していると推定される。総合すると、1992年以来平均して極域の氷床の質量の変化が年間 0.59 ± 0.20 mmの海水準上昇に寄与していると推定される。
Reports
The Imprint of the Extragalactic Background Light in the Gamma-Ray Spectra of Blazars
ブレーザーのガンマ線スペクトルの中の銀河外の背景光の痕跡
M. Ackermann et al.
フェルミー宇宙望遠鏡によって得られたガンマ線のスペクトルは星の形成や銀河の進化などの古い時代を制約することができる。
Formation of Regular Satellites from Ancient Massive Rings in the Solar System
太陽系の古代の大規模円盤からの規則的な衛星形成
A. Crida and S. Charnoz
analytical modelは太陽系のガス惑星も岩石惑星も似たようなプロセスでそれぞれの衛星を形成したことを示唆している。
Chemically and Geographically Distinct Solid-Phase Iron Pools in the Southern Ocean
南大洋における化学的・地理的に際立った固相の鉄プール
B. P. von der Heyden, A. N. Roychoudhury, T. N. Mtshali, T. Tyliszczak, and S. C. B. Myneni
鉄は海洋の多くの部分で生物活動の制限要素となっている。海洋の鉄プールの大部分は固体粒子として存在するものの、その化学的な分化(chemical speciation)や鉱物組成を特定することは難しい。南アフリカ〜南極における航海によって得られた南大洋の海水中の粒子状の鉄(直径20 - 700 nm)を記載したところ、異なる前線において異なる鉄プールが存在することが分かった。こうした分化の多様性が溶解度の違い(生物が利用可能な溶存鉄の生産に影響する?)を生み出していると考えられる。