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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年1月17日木曜日

新着論文(Nature#7432)

Nature
Volume 493 Number 7432 pp271-446 (17 January 2013)

EDITORIALS
Troubling thoughts
厄介な考え
フクシマの避難者の精神治療を安定的に実行することが未来の自然災害を生き伸びた人の手助けとなるかもしれない。

WORLD VIEW
China has the capacity to lead in carbon trading
中国は炭素トレーディングをリードする能力を有する

RESEARCH HIGHLIGHTS
Migration from India to Australia
インドからオーストラリアへの移動
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1211927110 (2013)
アボリジニーやインド・東南アジアに住む人々の遺伝子分析から、36,000年前と4,000年前に人類がインドからオーストラリアへと移ったことが示唆されている。これは18世紀後半までオーストラリアが外界との接触を断っていたという従来の考えと反している。特に4,000年前の移動の際には技術が大きく進展したことが知られている。
>問題の論文
Genome-wide data substantiate Holocene gene flow from India to Australia
Irina Pugach, Frederick Delfin, Ellen Gunnarsdóttir, Manfred Kayser, and Mark Stoneking

Cicadas emerge when predators decline
セミは捕食者の数が減ったときに現れる
Am. Nat. 181, 145–149 (2013)
セミが何故13-17年もの間地中で生活するのかが謎とされている。アメリカのウェスト・バージニア州において1966年から2010年にかけての15種の鳥の個体数の変動からセミに対する補食圧を求めたところ、鳥の補食圧が減少するときに合わせてセミが地上に出てきていることが分かった。

Mothers call for parenting help
母親が子育ての手助けを要求する
Nature Commun. 4, 1346 (2013)
オスのマウスは積極的に子育てを手伝わないが、メスが鳴き声とフェロモンでオスに対して手助けを要求するとオスもメスのように子供の世話をすることが分かった。オスの聴覚と嗅覚をブロックすると、そうした行動は見られなくなったという。

Wasp parasites keep hosts clean
ハチの寄生幼虫は宿主をきれいに保つ
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1213384110 (2013)
ハチの一種(emerald cockroach wasp; Ampulex compressa)は、アメリカゴキブリ(American cockroach; Periplaneta americana)に卵を産みつけるが、生まれた幼虫はゴキブリの内蔵を食べることができる一方、体内のバクテリアに対処する必要がある。ハチの幼虫が口から透明の液体を出していることが観察から分かり、それはバクテリアの成長を阻害する物質であることが分かった。

Warming matches predictions
温暖化が予測に合う
Environ. Res. Lett . 7, 044035 (2012)
1990年以降の観測と、IPCC TAR(2001年)とAR4(2007年)によって予測された温暖化の予測とは火山噴火や経年変動などのノイズを除去すると良く合うことが示された。しかし一方で海水準上昇は予想よりも60%早く進行している。2100年までの海水準上昇予測はIPCC AR4によれば最大で60cmであるが、それも上回る可能性がある
>問題の論文
Comparing climate projections to observations up to 2011
Stefan Rahmstorf, Grant Foster and Anny Cazenave
Rahmstorf et al. (2012)を改変。赤が観測、影のついた青線が予測。

SEVEN DAYS
Antarctic lakes
南極の湖
イギリス主導で西南極氷床の800m下に存在するWhillans湖の掘削が予定されている。一方でロシアの科学者たちは南極最大の湖であるVostok湖の掘削に昨年2月に成功した。しかし今年1月になって湖の水が掘削孔を上昇し、ドリルビットを凍らせてしまった。

US climate audit
アメリカの気候の検査
アメリカの気候アセスメントのアドバイス委員会は1/11に「温暖化が国内に与えている影響の範囲とその将来予測に関する報告書」の草案をまとめた。文書は4/12まで一般に公開され、最終版は年末か来年の初めに発表される予定。
>より詳細な記事
Draft US climate assessment released for review
Jeff Tollefson

Warmest year
最も暖かかった年
昨年アメリカは観測史上最も暖かかった年であった(それまでは1998年が最も暖かかった)。平均気温は「12.9℃」で、21世紀の平均よりも1.8℃高かった。全球の観測記録はまだ出そろっていないが、NOAAによれば2012年1-11月は観測史上8番目に暖かかったという。

Japanese windfall
日本の棚ぼた
昨年12月に政権を奪取した自民党の予算編成の結果、日本の科学者たちは10.3兆円を手にする。文部科学省が要求する5700億円のうち、大学などが技術移転を行うために1800億円、iPS細胞研究に2000億円が分配される予定。
>より詳細な記事
Japan’s new leadership to boost science
David Cyranoski

Red–Dead link
紅海と死海のリンク
イスラエル・ヨルダン・パレスチナは2005年に世界銀行に「180kmのパイプで紅海と死海を繋ぐ」計画を持ちかけ、それは実行の見込みがあるという。紅海から死海へと海水を輸送し、徐々に淡水化・縮小する死海を救済するとともに、水力発電で塩分除去プラントを動かし、淡水を確保するという計画。
>より詳細な記事
$10 billion pipeline linking Red Sea to Dead Sea is ‘feasible’, says World Bank
Richard Van Noorden

Open-access tribute
オープン・アクセス税
オープン・アクセスへの活動家でプログラマーのAaron Swartzが自宅で首つり自殺をした。享年26歳。彼は非営利団体のJSOTR(MITが管理する学術文献アーカイブ)から400万部の記事をダウンロードした罪に問われ裁判にかけられていた。結果として彼は「35年の実刑と100万ドルの賠償金」を命じられていた。それが自殺の原因とも考えられている。
>他の記事
Tech Crunch
Lifehacking

POOR HEALTH IN THE UNITED STATES
アメリカ合衆国の悪い健康
ほかの先進国と比べて、アメリカの死亡率は悪い。特に乳児の死亡率と肥満症に関連した死亡が多いという。

NEWS IN FOCUS
特になし

FEATURES
Fallout of fear
恐怖のフォールアウト
Geoff Brumfiel
フクシマ原子力発電所事故のあと、日本政府は放射からは物理的に住民を守ったが、精神的には守れていない。

COMMENT
Time to model all life on Earth
地球上のすべての生命をモデル化するとき
生物圏の理解を深めるためにも、生態学者は(気候学者のように)生態系全体をシミュレーションすべきだと、Drew Purvesほかは訴える。

CORRESPONDENCE
Toe-clipping vital to amphibian research
両生類研究に必要不可欠なToe-clipping
Décio T. Corrêa
両生類の個体数が全球的にますます減少しつつあるが、ブラジル政府は両生類にタグを付ける’toe-clipping’を科学目的だけに制限しており、世界でも有数の両生類の多様性を有するブラジルの両生類研究・保全活動は遅れている。両生類学では一般的な方法らしく、個体数をモニタリングするのに有効な方法であるという。

Tie carbon emissions to consumers
炭素放出と炭素消費者とを結ぶ
Zhu Liu, Fengming Xi & Dabo Guan
20年間削減目標が謳われたにも拘らず、全球の炭素放出量は1990年に227億トンであったものが、昨年は339億トンと増加した。国家間の気候変動緩和に関する交渉が行き詰まっている証拠であり、新たなアプローチが必要とされている。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
A history of give and take
ギブ&テイクの歴史
Steven M. Holland
過去170Maにわたる堆積物コアの浮遊性有孔虫を用いた研究から、絶滅は環境が原因で起きているが、一方で種分化(origination)は主として生物間の相互作用の結果として起きていることが示された。

Plumbing nickel from the core
コアから突き上がるニッケル
Michael J. Walter
地上に噴き出すマグマの研究から、ニッケルに富み、始源的なヘリウムの同位体を有するマントルは、非常に深い場所からもたらされたものであることを物語っている。

ARTICLES
特になし

LETTERS
Pulsed accretion in a variable protostar
変動する原始星のパルス状の降着
James Muzerolle, Elise Furlan, Kevin Flaherty, Zoltan Balog & Robert Gutermuth

Planetary system disruption by Galactic perturbations to wide binary stars
広い連星に対する銀河摂動による惑星系の分裂
Nathan A. Kaib, Sean N. Raymond & Martin Duncan

Multidecadal variability in East African hydroclimate controlled by the Indian Ocean
インド洋によってコントロールされる東アフリカの水文気候の数十年変動
Jessica E. Tierney, Jason E. Smerdon, Kevin J. Anchukaitis & Richard Seager
 ここ数十年間東アフリカの降水量は低下しており、そうした数十年変動はインド洋や太平洋の水温変動と関係していると示唆されていたが、観測記録の短さからその物理メカニズムはよく分かっていない。
 湖の堆積物記録などから得られた過去の水蒸気量のプロキシと気候モデルとを組み合わせて過去700年間の物理メカニズムを考察。太平洋のSST変動はほとんど影響を与えておらず、インド洋が地域的なウォーカー循環を変えることで降水に影響していることが示された。1680年から1765年にかけて降水量が大きかった時期はインド洋のSSTが過去700年間に最大であった時期と一致している。より長い時間スケールでも、東アフリカの降水はインド洋によって駆動されている可能性がある。

Nickel and helium evidence for melt above the core–mantle boundary
核・マントル境界上部のメルトに対するニッケルとヘリウムの証拠
Claude Herzberg, Paul D. Asimow, Dmitri A. Ionov, Chris Vidito, Matthew G. Jackson & Dennis Geist

Oceanographic controls on the diversity and extinction of planktonic foraminifera
浮遊性有孔虫の多様性と絶滅に対する海洋的なコントロール
Shanan E. Peters, Daniel C. Kelly & Andrew J. Fraass
 地球史上の大気-海洋システム、プレートテクトニクスと生物進化の繋がりを理解することは地球科学の重要課題の一つである。生物進化には様々な環境要因が関係しているとされるが、絶滅速度と種分化における「物理的な環境要因」と「生物的な相互作用」とが相対的にどれほど重要であったかはよく分かっていない。
 太平洋から得られた堆積物コア中の浮遊性有孔虫の化石を用いた研究から、ジュラ紀以降の生物の絶滅と多様性の変化が海洋循環・海洋化学とプレートテクトニクスと密接に関わっていることが分かった。一方で新たな生物種の出現(origination)の速度は環境要因と生物要因との複雑な相互作用の結果として決定されていることが分かった。