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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年1月5日土曜日

新着論文(BG)

Biogeosciences
Spatial and temporal variability in nutrients and carbon uptake during 2004 and 2005 in the eastern equatorial Pacific Ocean
A. P. Palacz and F. Chai
Biogeosciences, 9, 4369-4383, 2012
赤道東太平洋の海洋表層水における一次生産は湧昇水を起源とする栄養塩によって他の地域よりも活発になっている。2004-2005年にかけて行われた航海のデータを用いて、その生物・物理作用を評価。熱帯不安定波(tropical instability waves; TIWs)が一次生産を励起していることがモデルと観測の双方から分かった。よりよく生物地球化学的な作用を理解・再現するためにも、
  • より多くの植物プランクトン組成
  • レッドフィールド比と炭素/クロロフィル比の変動
  • 植物プランクトンに対する鉄・シリカの共制限
などを現行のモデルに組み込む必要性を主張する。

Variation in stable carbon and oxygen isotopes of individual benthic foraminifera: tracers for quantifying the magnitude of isotopic disequilibrium
T. Ishimura, U. Tsunogai, S. Hasegawa, F. Nakagawa, T. Oi, H. Kitazato, H. Suga, and T. Toyofuku
Biogeosciences, 9, 4353-4367, 2012
異なる種の底性有孔虫の1固体ごとの殻のδ18Oとδ13Cを測定し、同位体平衡からの差異(つまり海水のδ18OSWとδ13CDICからのずれ)を評価。この知見を用いれば古気候復元もより精度が増すと考えられる。
Ishimura et al. (2012)を改変。
それぞれの底性有孔虫の生息環境の海水の同位体平衡からのずれ。おおまかに-0.3の傾きに載る?

Modelling coral polyp calcification in relation to ocean acidification
S. Hohn and A. Merico
Biogeosciences, 9, 4441-4454, 2012
海洋酸性化によって石灰化生物が大きな打撃を被ることが予測されているものの、石灰化に対する影響の詳細なモデリングはほとんどなされていない。「海水」「ポリプ組織」「腔腸」「石灰化流体」を4つに分けたモデルシミュレーションによって、サンゴポリプの石灰化を再現。CO2の拡散だけでは石灰化の速度を維持できないため、重炭酸イオンが重要な役割を持っていると考えられる。pCO2の上昇とともに石灰化流体中のpCO2濃度も上昇し、アラゴナイトに対する飽和度が低下し、石灰化を阻害することも示されたが、石灰化プロセスが複雑であることも示された。

Light and temperature effects on δ11B and B / Ca ratios of the zooxanthellate coral Acropora sp.: results from culturing experiments
D. Dissard, E. Douville, S. Reynaud, A. Juillet-Leclerc, P. Montagna, P. Louvat, and M. McCulloch
Biogeosciences, 9, 4589-4605, 2012
δ11BとB/Caが海水pHの指標として報告されているが、その制御要因についてはよく分かっていない。Acropora spp.のサンゴを異なる温度・光条件下で飼育し、飼育期間中の成長部分のδ11BとB/Caを測定。光の強度が増すごとにδ11Bが低くなり、石灰化が阻害されている可能性がある(ほとんどのモデル研究では光による石灰化促進が報告されている)。また22 - 25℃の温度区間ではδ11Bが変化したが、25 - 28℃では変化しなかった。一方、B/Caもまた温度や光での変化が見られたが、その制御要因は未だにはっきりとは分からず、サンゴ骨格へのホウ素の取り込みについては未だに解明すべきことが多い。
Dissald et al. (2012)を改変。
各温度区・光量でのホウ素同位体。
Recovery(回復)実験では思うような結果が得られなかった。ストレスが原因?

Production, partitioning and stoichiometry of organic matter under variable nutrient supply during mesocosm experiments in the tropical Pacific and Atlantic Ocean
J. M. S. Franz, H. Hauss, U. Sommer, T. Dittmar, and U. Riebesell
Biogeosciences, 9, 4629-4643, 2012
海洋の中層水の酸素極小層が今世紀において広がることが予測されている。酸素濃度の低下は微生物による窒素生産を減少させ、堆積物からのリンの溶出を増加させるため、レッドフィールド比が窒素に欠乏した水塊が形成されると考えられる。そうした水塊が物理的に湧昇する海域において生物がどのように応答するかを評価するために、栄養塩の添加実験を太平洋と大西洋にて実施。溶存・非溶存の栄養塩の比はN/P比によって強く制御されており、酸素極小層から湧昇する水塊によって栄養塩サイクルと有機炭素プールに影響すると考えられる。