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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年1月24日木曜日

新着論文(Nature#7433)

Nature
Volume 493 Number 7433 pp451-570 (24 January 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Black carbon a warming culprit
ブラック・カーボン:温暖化の原因の疑い
J. Geophys. Res. http://dx.doi. org/10.1002/jgrd.50171 (2013)
NASAによるエアロゾル観測と人工衛星観測から、スス(ブラック・カーボン)が温暖化に寄与している割合は従来の想定値の2倍ほどある可能性が指摘されている。二酸化炭素の次にリストアップされることになる。ブラック・カーボンを減らすことは温暖化の緩和に有効かもしれないが、エアロゾルが気候にどのような影響を与えているかについてはまだ不確かな部分が多い。
[より詳細な記事]
Soot a major contributor to climate change
ススが気候変動の主たる要因
Jeff Tollefson

Irrigation brings more rain
灌漑がより多くの雨をもたらす
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi.org/10.1002/grl.50108 (2013)
農業用の灌漑によってカリフォルニアにおける降水量が増加している。気候モデルを用いて検証を行ったところ、夏の降水が15%増加すること、それに伴いコロラド川の流量が28%増加することが示された。

Arctic rain brings animal pain
北極圏の雨が動物を痛める
Science 339, 313–315 (2013)
北極圏の冬はめったに雨が降らないが、異常な冬の降水イベントがあると、ノルウェー・スバルバード島のトナカイ(Svalbard reindeer; Rangifer tarandus platyrhynchus)、ライチョウ(rock ptarmigan; Lagopus muta hyperborea)、げっ歯類の一種(sibling voles; Microtus levis)の個体数が減少することが示された。地面を覆う氷が餌へのアクセスを妨げることが原因と考えられる。またその結果、上位捕食者のキツネ(Arctic fox; Vulpes lagopus)の個体数にも影響を与える。気候変動の影響が起きる可能性が指摘されている。

SEVEN DAYS
※今回は省略

NEWS IN FOCUS
Greenland defied ancient warming
グリーンランドは古代の温暖化を拒む
Quirin Schiermeier
 Dorthe Dahl-Jensenを中心とするNorth Greenland Eemian Ice Drilling (NEEM) 計画によってEemian最終間氷期の気候温暖期(130 - 115 ka)の記録を有するアイスコアがグリーンランド北西部から採取された。酸素と窒素同位体から、最終間氷期の開始から6,000年後にグリーンランドの気温は現在よりも8℃高かったことが示された。しかしこうした極端な温暖化にも関わらず、グリーンランド氷床はわずかしか融けていなかったことが示された(それでも2mは海水準を上昇させたと推定されている)。最終間氷期には海水準が現在よりも6〜8mほど高かったと考えられており、その半分程度にグリーンランド氷床の融解が寄与していたと推定されていた。現在南極氷床よりもグリーンランド氷床が急速に縮小しているが、NEEMの得た結果から、グリーンランド氷床が思っていたよりも安定で、逆に南極氷床が温暖化に脆弱である可能性が示唆された
 グリーンランド氷床と南極氷床は現在の海水準上昇に併せて年間0.6mmの割合で寄与していると考えられており、科学者の中には今世紀末には0.5 - 1.2 m海水準が上昇すると考えるものもいる。また最終間氷期の海水準上昇はゆっくり起きたというよりは急速に進行した様相を呈している。

Researchers debate oil-spill remedy
研究者が石油流出の回復法を議論する
Mark Schrope
石油流出のブローアウトに対抗するには溶剤を注入することをルーチンにすべきだと石油業界は主張する。

Fresh bid to see exo-Earths
太陽系外の地球を見る新たな手法
Ron Cowen
明るく輝く恒星の周りを周回する惑星を検出するのは燃え盛る火の周りにおいてあるランタンを10km先から見るのが難しいのと同じくらい困難である。改良された機器類と望遠鏡が系外惑星の生命を探索するのに役に立つ可能性がある。

Japan’s stimulus package showers science with cash
日本の刺激的な抱き合わせが科学に現金を浴びせる
David Cyranoski
新たな日本のリーダーの寛大さによって、早く商業的な利益が出ることへの見込みが広がる。

COMMENT
The rebound effect is overplayed
リバウンド効果が誇張される
エネルギー効率が上がることで排出量は抑えられるはずだが、気の緩みが裏目に出る可能性が指摘されている。

CORRESPONDENCE
特になし

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Biofuel production on the margins
道草からのバイオ燃料の生産
Klaus Butterbach-Bahl & Ralf Kiese
作物を育てるには適さない土地に自生する野生の植物を用いて燃料を製造することが、アメリカにおけるバイオ燃料の生産目標を達成するのにかなり寄与するかもしれない。

Towards ever smaller length scales
従来よりももっと小さな長さスケールへ
Peter Cargill
太陽コロナの真のスケールを決定することは空間解像度が限られているため難しい。新たな高空間解像度の撮像から150kmスケールのコロナの力学構造が観測可能になった。

Gritting their teeth
歯を食いしばる
Bernard Wood
植物源のシリカや砂漠の砂が歯のエナメルの摩耗にどのような影響を与えるかを評価した研究から、人類祖先の歯の極端な摩耗は食べ物が原因ではないことが示された。この知見が人類祖先の食事に関する知見を変えるかもしれない

ARTICLES
Eemian interglacial reconstructed from a Greenland folded ice core
グリーンランドの折り畳まれたアイスコアから復元されたEemean間氷期
NEEM community members
グリーンランドから最終間氷期に相当するアイスコアを完璧に採取することはこれまで実現しておらず、現在よりも暖かかったEemian最終間氷期のグリーンランド氷床の応答については不確かなままである。North Greenland Eemian Ice Drilling (NEEM) 計画の際に得られたアイスコアを用いて最終間氷期の気温と当時の氷床の標高を求めたとこ、12.6kaの最温暖期に気温は現在と比較して8 ± 4 ℃高かったものの、標高は現在と比較して130 ± 300 m低いだけであった。強烈な温暖化に対してもグリーンランド氷床がそれほど応答しなかったことを示している。

LETTERS
Energy release in the solar corona from spatially resolved magnetic braids
空間的に解像された時期的なbraidから示された太陽コロナ中のエネルギー放出
J. W. Cirtain, L. Golub, A. R. Winebarger, B. De Pontieu, K. Kobayashi, R. L. Moore, R. W. Walsh, K. E. Korreck, M. Weber, P. McCauley, A. Title, S. Kuzin & C. E. DeForest

Sustainable bioenergy production from marginal lands in the US Midwest
アメリカ中西部の辺境地からの持続可能なバイオエネルギー生産
Ilya Gelfand, Ritvik Sahajpal, Xuesong Zhang, R. César Izaurralde, Katherine L. Gross & G. Philip Robertson
20年間にわたる6つの作物生産システムの比較研究から、辺境地に自生する植物からうまくバイオ燃料を生産する設備が整えば、気候変動緩和を目的として育てられた作物に匹敵するほどの削減効果があることが示された。

Earliest evidence for cheese making in the sixth millennium bc in northern Europe
ヨーロッパ北部で6,000年前に作られた最古のチーズの証拠
Mélanie Salque, Peter I. Bogucki, Joanna Pyzel, Iwona Sobkowiak-Tabaka, Ryszard Grygiel, Marzena Szmyt & Richard P. Evershed
ヨーロッパの遺跡から発掘された陶器に付着した脂肪分の残渣のバイオマーカーと同位体分析から、これらの陶器がチーズを作るのに用いられていたことが分かった。こうした加工によって先史時代初期の農耕民は、腐敗せず輸送可能な形で乳製品を保存できただけでなく、乳をより消化しやすい形(低乳糖製品)にできたと考えられる。