Science
VOL 339, ISSUE 6117, PAGES 245-364 (18 JANUARY 2013)
Editors' Choice
Pulsing Populations of Jellies
パルス状に変動するクラゲの個体数
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 10.1073/pnas.1210920110 (2012).
海の健康状態の悪化はクラゲの大量発生などで特徴付けられることがある。しかし、クラゲの全球的な個体数についてはよく分かっていない。過去のデータは最近のものに集中しており、空間的にも北大西洋に集中しているが、分析から1790-2011年の個体数に20年の強い周期を持った変動があることが分かり、また1970年以降個体数が上昇傾向にあることも分かった。
No Stellar Explosion Needed
星の爆発は必要ない
Earth Planet. Sci. Lett. 359-360, 248 (2012).
我々の太陽系を形成する物質が何を起源とするかを調べるのに放射性の60Feが役に立つ。なぜなら60Feは星の爆発の際にしか生成されず、半減期も262万年と長いからである。60Feの崩壊によって生成する60Niを調べればだいたいの生成年代が分かることになるが、我々の太陽系の天体はどれも60Feの濃度が低いことが分かり、近傍の星が爆発したことで物質がもたらされたというよりは、もとから星間にある物質が素になってできていることが分かった。
Bombs Below
地下の爆発
Geophys. Res. Lett. 10.1029/2012GL053885 (2012).
内密に行われる核爆弾の地下実験は時として重大な事態を起こす。そのため、いつ実験が行われたのかを明らかにすることは重要である。核実験のトレーサーとして放射性キセノン(Xe)が役に立つが、1992年3月26にネバダ州で行われた地下核実験については検出することは難しいという。
News of the Week
Russian Team Retrieves First Sample From Lake Vostok
ロシアのチームがVostok湖のサンプルを初めて得た
およそ2000万年前から存在する南極氷床の4,000m下に存在する湖、Vostok湖の掘削にロシアの研究グループが成功した。昨年2月に掘削がスタートし、コンタミを防ぐために湖の直上で掘削を停止し、圧力によって吹き上がる湖の水を採取する予定であったが、沸き上がった水によって掘削孔が塞がってしまった。今年1月(南極の夏)に再び同地を訪れ、掘削に成功した。湖の水の中に住む生命の証拠がこれから明らかにされる予定。
NOAA: 2012 Hottest Year On Record for U.S.
アメリカによっては2012年は観測史上最も暖かかった
NOAAが先週報告したところによると、昨年は観測史上アメリカは最も暖かかったらしい。20世紀の平均値と比較しても1.8℃高かった。1/11に提出された4年ごとのU.S. Global Change Research ProgramによるNational Climate Assessment on the impact of global warmingによれば、人間活動の結果として気候が急速に変化しつつあり、作物や淡水供給に対する将来の影響がますます大きくなるとの予測を行っている。
Denizen of the Deep, Caught on Film
フィルムに収められた深海の居住者
2004年にはダイオウイカの連続写真が世界を驚かせたが、今年ついに動画が撮影された。国立博物館の動物学者である窪寺恒己を中心とする研究チームの成果で、撮影にはDiscovery ChannelやNHKが携わっている。研究者らは化学物質や生体発光などで誘い、ダイオウイカがやってくるのを小笠原諸島の900m深でひたすら待った。そしてついに2012年6月におよそ3メートルほどのダイオウイカが現れたところを動画に収めた。
[NHKの特集ページ]
Rethinking Barnacle Reproduction
フジツボの繁殖を見直す
フジツボのペニスは体長の8倍もの大きさがあり、それが動くことのできない固着性の生物の繁殖を助けていると考えられていたが、太平洋に生息する少なくとも1種(Pollicipes polymerus)は非常に短いペニスを持っていることが分かった。彼らは隣人にペニスを直接伸ばす代わりに、途中で精子を放出し、メスのもとに精子がたどり着くのを運に任せるという手段を取っていることが分かり、科学者を大いに驚かせている。
News & Analysis
Performance of Nanowire Solar Cells on the Rise
ナノワイヤ太陽電池の効率が上昇しつつある
Robert F. Service
ナノワイヤ太陽電池の開発が大きく前進し、効率の点で他の数十年の歴史を有する古い手法を追い越した。
News Focus
特になし
Letters
Exploitation in Northeast India
北東インドの開発
Shashank Dalvi, Ramki Sreenivasan, and Trevor Price
Sharing Future Conservation Costs
将来の生態保全のコストをシェアする
Douglas Sheil et al.
Sharing Future Conservation Costs—Response
将来の生態保全のコストをシェアするに対する返答
Stuart H. M et al.
Policy Forum
Essential Biodiversity Variables
必要不可欠な生物多様性の変数
H. M. Pereira et al.
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Research
Perspectives
The Closing Door of Climate Targets
気候変動緩和目標に対する閉じつつあるドア
Thomas F. Stocker
炭素排出量の蓄積と全球の温度上昇との間に線形関係が見られることは、排出量削減が遅れるにつれて、気候変動緩和目標が実行不可能なものになることを暗示している。
種々の地球システムモデルによってこの線形関係(温度上昇=β×蓄積炭素量)が示されたが、実際に将来どれほど温暖化するかは主として3つの要因によって支配される。「現在の排出速度」「国際的な削減目標の開始時期」「排出削減の速度」である。
<政治的な側面>開始時期が遅れれば遅れるほど、将来の温暖化は大きくなり、温度上昇を本当に低く保つつもりなら非常にアグレッシブな削減を直ちに開始しなければならない。例えば温度上昇を2℃に抑えるには2010年までにCO2排出量を3.2%抑えなければならない。開始時期が2032年まで先延ばしになれば必要な削減量は2倍の6.4%になる。しかしながら現実にはまだ削減目標は開始されていないので、温度上昇を低く保つという未来は既に閉ざされている。
<科学的な側面>温度上昇を決める’β’は依然として誤差が大きく、それは気候感度や炭素循環フィードバックの理解がまだ不足していることによる。
いずれにせよ、削減目標の開始時期の遅れ、不十分な削減目標(CO2排出量が十分に低下しないこと)の両方が全球の温暖化を安定化させる未来を閉ざしてしまうのである。(Both delay and insufficient mitigation efforts close the door on limiting global mean warming permanently.)
A Wet and Volatile Mercury
湿った、揮発性の水星
Paul G. Lucey
MESSENGERによる観測から、水星の大気の詳細が明らかに。
Reports
Evidence for Water Ice Near Mercury’s North Pole from MESSENGER Neutron Spectrometer Measurements
MESSENGERの中性子スペクトル観測から明らかにされた水星の北極の近くの氷の証拠
David J. Lawrence et al.
探査機MESSENGERによる観測とモデル研究から、水星の北極に氷と揮発性の有機物があることが分かった。
Bright and Dark Polar Deposits on Mercury: Evidence for Surface Volatiles
水星の上の明暗をもった堆積物:表面の揮発性物質の証拠
Gregory A. Neumann et al.
探査機MESSENGERによる観測とモデル研究から、水星の北極に氷と揮発性の有機物があることが分かった。
Thermal Stability of Volatiles in the North Polar Region of Mercury
水星の北極域における揮発性物質の熱的な安定性
David A. Paige et al.
探査機MESSENGERによる観測とモデル研究から、水星の北極に氷と揮発性の有機物があることが分かった。
Climate Events Synchronize the Dynamics of a Resident Vertebrate Community in the High Arctic
北極高緯度域における脊椎動物コミュニティーの力学と同期した気候イベント
Brage B. Hansen, Vidar Grøtan, Ronny Aanes, Bernt-Erik Sæther, Audun Stien, Eva Fuglei, Rolf A. Ims, Nigel G. Yoccoz, and Åshild Ø. Pedersen
Svalbardにおけるトナカイ・ライチョウ・ハタネズミ・キツネの個体数は異常気象と一緒に変動していることが分かった。
Invasive Plants Have Scale-Dependent Effects on Diversity by Altering Species-Area Relationships
外来植物は種-範囲関係を変えることでスケールに依存した影響を生物多様性に与える
Kristin I. Powell, Jonathan M. Chase, and Tiffany M. Knight
外来植物が珍しい種よりもむしろ一般的な種の個体数を減少させることが3つの種について明らかになった。
Technical Comments
Comment on "Extinction Debt and Windows of Conservation Opportunity in the Brazilian Amazon"
John M. Halley, Yoh Iwasa, and Despoina Vokou
Response to Comment on "Extinction Debt and Windows of Conservation Opportunity in the Brazilian Amazon"
Oliver R. Wearn, Daniel C. Reuman, and Robert M. Ewers