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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年1月21日月曜日

新着論文(PO, PALAEO3)

◎Paleoceanography
El Niño–Southern Oscillation extrema in the Holocene and Last Glacial Maximum
Athanasios Koutavas and Stephan Joanides
ENSOは全球のヒートエンジンとして役割を負っているが、過去の復元と将来予測はともに不足している。東赤道太平洋で得られた堆積物コアの個々の浮遊性有孔虫のδ18Oをもとに完新世とLGMのENSOを復元。LGMには東西の傾斜がゆるく、中期完新世は逆に強化されていたと考えられる。軌道要素の変化(特に歳差)がスイッチとなって2つの状態を変化してきたと考えられる。

Early mid-Holocene SST variability and surface-ocean water balance in the southwest Pacific
N. Duprey, C. E. Lazareth, T. Corrège, F. Le Cornec, C. Maes, N. Pujol, M. Madeng-Yogo, S. Caquineau, C. Soares Derome, G. Cabioch
Vanuatuで得られたハマサンゴとオオジャコガイのSr/Caとδ18Oから中期完新世(6.7-6.0ka)の北西太平洋の古環境を復元。ともに現在と同じSSTを示し、WPWPがこの時期には既に現在のようになっていたことを示唆している。一方で塩分には変動が見られ、原因として(1)SPCZの位置の変化か(2)熱帯の外からハドレー循環によって運ばれる水蒸気輸送が変化したことが考えられる。またこの頃ENSOは20-30%弱まっていたと考えられる。

Deep time foraminifera Mg/Ca paleothermometry: Nonlinear correction for secular change in seawater Mg/Ca
David Evans, Wolfgang Müller
浮遊性有孔虫殻のMg/CaがSST指標として広く用いられるようになったが、新生代を通して海水のMg/Caも変動したため、解釈には注意が必要である。そうした補正の仕方について新たな(正しい)方法を示す。過去の復元例も注意して見なければならないが、短い時間スケール(~1Ma)の変動については信頼できると言える。

Deglacial development of (sub) sea surface temperature and salinity in the subarctic northwest Pacific: Implications for upper-ocean stratification
Jan-Rainer Riethdorf, Lars Max, Dirk Nürnberg, Lester Lembke-Jene, Ralf Tiedemann
モデル研究とプロキシ記録から最終退氷期には北太平洋の塩分による成層化が弱まっており、それが大気中CO2の上昇に寄与した可能性が指摘されている。堆積物コアのN. Pacyderma (sin.)のMg/Caとδ18Oから、HS1とYDに成層化が崩れており、海氷形成に伴うbrine除去とアラスカ海流による低塩分水の輸送が起きていたと考えられる。一方B/A時には成層化は強化され、海氷が溶け、アラスカ海流が弱まったと考えられる。


◎PALAEO3
Evaluation of the effect of diagenetic cements on element/Ca ratios in aragonitic Early Miocene (~ 16 Ma) Caribbean corals: Implications for ‘deep-time’ palaeo-environmental reconstructions
Naomi Griffiths, Wolfgang Müller, Kenneth G. Johnson, Orangel A. Aguilera
バミューダの現生サンゴ(Siderastrea radians)とベネズエラの化石サンゴ(Siderastrea conferta, Montastraea limbata)を用いてアラゴナイト・カルサイトのセメントが元素/Ca比プロキシに与える影響を評価。化石サンゴの年代はSr同位体からMicene初期(~16.5Ma)に相当。現生・化石ともにセメントが確認され、しかも骨格中に不均質に存在している。LA-ICPMSで種々のプロキシが深度方向に変化することも示された。特にセメントのSr/CaとMg/Caはセメントの方がアラゴナイト骨格よりもそれぞれ増加・減少していた。またB/Caはともにセメントの方が低い値を示した。アラゴナイト/カルサイト・セメントが1%混入するだけで古水温復元がSr/Caの場合でも-1.2℃/+1.7℃変化し得ることが示された。またBa/Caも変化するため、河川流量や湧昇の解釈には注意が必要。

Atmospheric CO2 from the late Oligocene to early Miocene based on photosynthesis data and fossil leaf characteristics
Michaela Grein, Christoph Oehm, Wilfried Konrad, Torsten Utescher, Lutz Kunzmann, Anita Roth-Nebelsick
ヨーロッパの6種類の被子植物の葉の化石の気孔指数(stomatal index)を用いてOligocene/Eoceneの大気中CO2濃度を復元。クスノキ(Lauraceae)以外の指数はどれもOligocene/Eoceneを通して400ppmほどを示し、他の独立した指標とも整合的である。

Coupled CO2-climate response during the Early Eocene Climatic Optimum
Ethan G. Hyland, Nathan D. Sheldon
The Early Eocene Climatic Optimum (EECO)は大気中のCO2濃度の増加と長引いた温暖期で特徴付けられる時代の一つである。アメリカのGreen Riverの堆積物からEECOにおける気候変動・環境変動を復元。古土壌のδ13C分析から過去のpCO2はおよそ1,700ppm(※過去の降水量・土壌呼吸量・大気δ13CO2などの種々の推定を含む)であったと推測される。また有孔虫のδ13Cと古土壌のδ13Cがよく一致することから、海洋を起源とするCO2が大気にもたらされたことが示唆される。

Vegetation and climate changes during the last 22,000 yr from a marine core near Taitao Peninsula, southern Chile
Vincent Montade, Nathalie Combourieu Nebout, Catherine Kissel, Simon G. Haberle, Giuseppe Siani, Elisabeth Michel
チリ沖で取られた堆積物コアを用いて過去22kaの古環境を復元。17.6ka頃からこの地域の氷が融け始めた。ACRの際に一度温暖化が停止し、降水が増加したことが花粉分析から明らかになった。その原因としては南半球の偏西風の強化が考えられる。その後12.8kaから温暖化が再開。5ka以降に現在と同じような状態になった。最終退氷期には南半球の偏西風の位置がCO2濃度の変化ともに変動していたと考えられる。