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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年1月10日木曜日

新着論文(Nature#7431)

Nature
Volume 493 Number 7431 pp133-264 (10 January 2013)

EDITORIALS
Realities of risk
危機の現実
Natureに関連する編集者やジャーナリストが挙げる5つの最も危険な’X-factor’について。
1、「認知力を上げる薬」「記憶力を増加させる薬」などのニーズの増加と副作用。
2、地球工学の中でもとりわけ「成層圏にエアロゾルを注入する技術」それによって温暖化を打ち消し地球を寒冷化させることが可能である可能性があるが、ならず者国家や企業がリスク評価を厳密にしないで行動に移してしまう危険性。
3、医療技術の向上によってもたらされた人口増加。
4、急激な気候変動(海水準上昇など)
5、地球外生命とのコンタクト
他にも「サイバー空間における個人の攻撃」や「生態系の崩壊や感染症パンデミックの予測がほとんどできていないこと」「巨大噴火・津波・太陽フレアなどのいつかは必ず起きる破滅的な自然災害」など。

RESEARCH HIGHLIGHTS
West Antarctic warming hotspot
西南極の温暖化のホットスポット
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1671 (2012)
西南極は1958年から2010年の間に約2.4℃温暖化し、地球で最も早く温暖化している地域の一つとなっている。Bromwich et al.は散在する気温の観測データ(Byrd基地で得られたもの)をもとにモデリングも組み合わせて西南極の気温データを作成した。1年を通じて気温が上昇していることが分かり、融解を招いていることが予想されている。
>問題の論文
Central West Antarctica among the most rapidly warming regions on Earth
David H. Bromwich, Julien P. Nicolas, Andrew J. Monaghan, Matthew A. Lazzara, Linda M. Keller, George A. Weidner & Aaron B. Wilson
西南極中央部に位置するByrd基地における記録は、1958年から2010年にかけて同地の気温が「2.4 ± 1.2 ℃」上昇したことを示している。南半球の夏にも有意に温暖化している(特に12月から1月にかけて)ことが初めて示され、融解が起きる季節と一致している。西南極氷床の融解は海水準上昇に大きく寄与すると考えられているため、しっかりと監視しなければならず、観測をより強化する必要がある。

Bisexuality boosts attractiveness
同性愛であることが魅力を急増させる
Biol. Lett. 9, 20121038 (2013)
グッピーの近縁であるスリコギモーリー(Atlantic mollies; Poecilia mexicana)はオスがオス同士で交尾をしている場合でも、相手の性別が何であれ、メスの興味を引くことができるらしい。メスにオスの交尾ビデオ(相手はオスまたはメス)を見せたところ、交尾をしているオスに注意が引きつけられた(メスはオスを正しく認識していることが他の実験から確かめられている)。オス同士が交尾を真似ることは、メスの注意を引くために(メスに相手にされない)小型のオスが取っている適応戦略の一種と考えられている。
>他の日本語の記事(AFPBB News)

A galaxy far, far away
遠くの、遠くの銀河
Astrophys J. 762, 32 (2013)
ハッブル宇宙望遠鏡によって宇宙が誕生してからわずか4.2億年後の若い銀河が発見された。これまで見つかった中でもっとも若い(つまり遠い)銀河。

Direct images of DNA
DNAの直接撮像
Nano Lett. 12, 6453–6458 (2012)
DNAの発見から60年経って、ようやくDNAの撮影がTEMを用いて可能になった。イタリアのEnzo di Fabrizioらは約 2.7 nm 間隔で繰り返される螺旋状の構造を観測した。

SEVEN DAYS
NUMBER CRUNCH
17 bn
170億
天の川銀河に存在する地球と同程度の大きさを持ち、恒星から同程度の距離を公転する惑星の推定数。

Spill settlement
石油漏れの調停
スイスに籍を置く掘削企業のTransoceanは2010年のDeepwater Horizon石油流出事故に対する賠償として「140億米ドル」を支払うこととなった。この額は先日決定された石油会社BPに対する「450億米ドル」に次ぐ。

TREND WATCH
COUNTING CATASTROPHES
大災害を数える
昨年自然の大災害で命を落とした人は「約9,500人」と推定されている。また損害は「1600億米ドル」であった(ハリケーン・Sandyだけで3分の1を占める)。両方ともここ10年の平均よりは低い数値となっているらしい。

NEWS IN FOCUS
Europe’s untamed carbon
ヨーロッパの制御されていない炭素
Richard Van Noorden
ヨーロッパにおいては研究資金と政治とが炭素貯留技術の進展を妨げている。

Electron beams set nanostructures aglow
電子ビームがナノ構造を輝かせる
Eugenie Samuel Reich
物理学者は人工物質(メタマテリアル:metamaterial)の内部層を調べるのに地質学の古い道具を借りている。

Tough talk over mercury treaty
水銀条約をめぐる困難な議論
水銀汚染(金鉱山や石炭の燃焼から出てくる)の緩和にかかるコストを国家間でどのように負担するかの議論が難航している。

FEATURES
It could happen one night
それは一晩で起きる可能性がある
Nicola Jones
地質学時代に起きていたことが分かっており、いつ起きてもおかしくない自然の大災害について。
1. Death by volcano
火山による死
世界各地に存在する火山の中には、74kaのToba火山の噴火のように全球に影響を与える規模で大噴火を起こすようなものも存在し、それはいつ噴火してもおかしくない状況にある。
2. Death by fungus
真菌類による死
ウイルスやバクテリアよりも、真菌類の方がより多くの死を招いている。例えば1840年代のジャガイモへの感染症は耕地の75%をダメにし、100万人ものアイルランド人が死んだ。真菌類の中で特定されているものはほんのわずかで、1995年以来、新種の真菌類の感染症の報告は約10倍に膨れ上がっている。
3. Death from above
上空からの死
太陽フレアは直接的に人命を奪うとは考えにくいが、現在の電力網や人工衛星に対する被害などを通して間接的に大きな災害となると考えられる(一説には数億人とも)。また大量絶滅をもたらすほどの巨大隕石衝突もいつかはまた起きるかもしれないが、天文学者はその早期発見に目を光らせている。また起こるのは極めて稀だと考えられているが、近隣のブラックホールから発せられるγ線バーストが地球のオゾン層を破壊する可能性などが挙げられる。
4. Death by water
水による死
8,000年前には水面下の地滑りによって20mの津波がイギリスで発生していた。

CORRESPONDENCE
A shortage of fertilizer resources?
肥料資源の不足?
Tim Worstall
「リンとカリウムを原料とする肥料が不足する危険が差し迫っている」とJeremy Granthamは先日Natureにて警告を発したが、リソスフェア中のそれぞれの存在比は0.1%と2.5%で、おそらく人類の寿命や地球そのものの寿命においても使い尽くせないほどの量がある。彼は鉱山の埋蔵量に基づいて我々が使用可能な量を推定したが、それと現実に存在し、利用可能な埋蔵量とは別物である。'Resource(地球上に元素として存在する量)'と'Reserve(人類が採掘・利用可能な量)'とは全く別の代物である。

Jeremy Grantham replies:
Jeremy Granthamの返答
確かにリンは地殻中に豊富にあるが、将来の90億人の世界人口を養うには豊富にあるとは言いがたい。わずかに0.5%だけがリン酸を含む鉱物に存在する。我々はそれを採掘しているが、豊かな埋蔵量を誇る鉱山の資源量は減少しつつある。アメリカをはじめとする大量生産型の農業のせいでここ10年間で価格は4.3倍に増加している。これを変えなければ、貧しい人たちは肥料や作物を得ることができなくなってしまう。

China's new leaders offer green hope
中国の新たな指導者達はグリーンな希望を与える
Hong Yang, Roger J. Flower & Julian R. Thompson

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Older but less wise
年は取っているが賢くはない
Peter F. Sale
禁漁域に生息する魚は他と比べると年を取っており、大型で多産だが、脅威から逃れるのは遅い。
[Natureの日本語版要約]

How glaciers grow
どのように氷河が成長するか
Simon H. Brocklehurst
最新鋭の数値モデリングから、氷河の前進はその時の地形に強く依存し、将来の氷河の前進は既に起きている氷河浸食によって助けられることが示された。
[Natureの日本語版要約]

ARTICLES
Craniofacial development of hagfishes and the evolution of vertebrates
ヌタウナギの頭蓋顔面の発生と脊椎動物の進化
Yasuhiro Oisi, Kinya G. Ota, Shigehiro Kuraku, Satoko Fujimoto & Shigeru Kuratani
[Natureの日本語版要約]

LETTERS
Bright radio emission from an ultraluminous stellar-mass microquasar in M 31
M 31の超高光度の恒星質量マイクロクェーサーからの明るい電波放射
Matthew J. Middleton et al.
[Natureの日本語版要約]

Flows of gas through a protoplanetary gap
原始惑星の間隙を通過するガスの流れ
Simon Casassus et al.
[Natureの日本語版要約]

Glaciations in response to climate variations preconditioned by evolving topography
進化する地形により前もって調整された氷河の気候変動に対する応答
Vivi Kathrine Pedersen & David Lundbek Egholm
第四紀の氷河作用とも関連。
[Natureの日本語版要約]

Carbon-dioxide-rich silicate melt in the Earth’s upper mantle
地球上部マントルにおける二酸化炭素に富むケイ酸塩メルト
Rajdeep Dasgupta et al.
[Natureの日本語版要約]