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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年1月3日木曜日

新着論文(PNAS)

Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
☆18 December 2012; Vol. 109, No. 51
特になし

☆26 December 2012; Vol. 109, No. 52
Letters (Online Only)
No geologic evidence that seismicity causes fault leakage that would render large-scale carbon capture and storage unsuccessful
Ruben Juanes, Bradford H. Hager, and Howard J. Herzog

Reply to Juanes et al.: Evidence that earthquake triggering could render long-term carbon storage unsuccessful in many regions
Mark D. Zoback and Steven M. Gorelick

Capillary tension and imbibition sequester frack fluid in Marcellus gas shale
Terry Engelder

Reply to Engelder: Potential for fluid migration from the Marcellus Formation remains possible
Nathaniel R. Warner, Robert B. Jackson, Thomas H. Darrah, Stephen G. Osborn, Adrian Down, Kaiguang Zhao, Alissa White, and Avner Vengosh

Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Equatorial decline of reef corals during the last Pleistocene interglacial
後期更新世の間氷期における赤道域の造礁サンゴの衰退
Wolfgang Kiessling, Carl Simpson, Brian Beck, Heike Mewis, and John M. Pandolfi
125kaの最終間氷期は現在よりも地表温度が高かったことが知られており、将来のアナログになり得る時代の一つである。また温度上昇に対する生態系の応答を調べる上でも適している。当時の生物多様性は亜熱帯域が最も大きく、赤道域はやや多様性が小さかった。その原因として、温度が高かったことが考えられる。現在、サンゴは極側へと移動しつつあるが、徐々に赤道域のサンゴ礁は衰退することが予想される

Mass extinction of lizards and snakes at the Cretaceous–Paleogene boundary
白亜紀-古第三紀境界におけるトカゲとヘビの大量絶滅
Nicholas R. Longrich, Bhart-Anjan S. Bhullar, and Jacques A. Gauthier
隕石衝突による大規模な絶滅で知られるK/T(K/Pg)境界においては爬虫類の大量絶滅は起きなかったとされるが、北米の地層の化石記録の見直しから、トカゲとヘビ類が大量絶滅を起こしていたことが分かった。体が小さく、広い範囲に分布していたものほど生き残ることができたらしい。また回復には1000万年ほどの長い時間を要した。

Environmental Sciences
Copper aerosols inhibit phytoplankton growth in the Mediterranean Sea
銅エアロゾルが地中海における光合成植物プランクトンの成長を阻害する
Antoni Jordi, Gotzon Basterretxea, Antonio Tovar-Sánchez, Andrés Alastuey, and Xavier Querol
エアロゾルの海洋表層への沈着は海洋一次生産や炭素輸送を刺激する。エアロゾル中の微量元素(例えば銅など)は植物プランクトンの必須元素である一方、高濃度だと毒性がある地中海西部においてはエアロゾル中の銅の濃度が植物プランクトンの生育を阻害していることが初めて野外における観測から示された。特に夏期のナノ渦鞭毛藻が卓越し、成層化と貧栄養が起きている際の阻害が顕著である。世界中の海洋で銅エアロゾルによる生育阻害が起きている可能性と、生物が銅に対して脆弱であることが示唆される。現在、人為起源の銅に富んだエアロゾルの排出量は増加傾向にあるため、将来大規模に海洋の生態系が影響を受ける可能性がある

☆2 January 2013; Vol. 110, No. 1
(ついに2013年に突入…)
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Identifying human influences on atmospheric temperature
人類が気温に与えている影響を特定する
Benjamin D. Santer, Jeffrey F. Painter, Carl A. Mears, Charles Doutriaux, Peter Caldwell, Julie M. Arblaster, Philip J. Cameron-Smith, Nathan P. Gillett, Peter J. Gleckler, John Lanzante, Judith Perlwitz, Susan Solomon, Peter A. Stott, Karl E. Taylor, Laurent Terray, Peter W. Thorne, Michael F. Wehner, Frank J. Wentz, Tom M. L. Wigley, Laura J. Wilcox, and Cheng-Zhi Zou
CMIP5の気候モデルのシミュレーション結果を用いて、成層圏と対流圏の最近の気温変化におけるシグナル・ノイズ比(人為起源温暖化と自然変動との比;S/N ratio)を求めたところ、1979年から2011年にかけて成層圏の気温変化のS/N比が26から36へと増加していることが分かった。一方で対流圏のそれは3から8へと増加していることが分かった。一般にモデル結果は実際に観測されたものに比べて、成層圏の寒冷化を小さく、対流圏の温暖化を大きく見積もっている傾向がある。成層圏のオゾンの低下や火山性のエアロゾルフォーシングをうまく取り込むことでモデル間のバイアスは軽減されると考えられる。

Response of vegetation to drought time-scales across global land biomes
全球の陸上植物にわたる乾燥化の時間スケールに対する植生の応答
Sergio M. Vicente-Serrano, Célia Gouveia, Jesús Julio Camarero, Santiago Beguería, Ricardo Trigo, Juan I. López-Moreno, César Azorín-Molina, Edmond Pasho, Jorge Lorenzo-Lacruz, Jesús Revuelto, Enrique Morán-Tejeda, and Arturo Sanchez-Lorenzo
植物の生育の3つの指標(人工衛星観測、年輪幅、地上総一次生産量)と乾燥化に対する応答の仕方を評価。一般に乾燥地域の植物は乾燥化に対しても速やかに適応することができ、湿潤地域の植物も比較的速やかに適応することが示された。しかし一方で、半乾燥地域や半湿潤域の植物は適応に時間を要することが分かった。植物ごとに乾燥化に対する応答時間が異なるため、将来の干ばつの時間スケールを特定することが植物の応答や脆弱性を評価・予測する上で必要不可欠であることが示される。