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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年7月15日月曜日

新着論文(BG, PALAEO3, QR)

Biogeosciences
Photosynthate translocation increases in response to low seawater pH in a coral–dinoflagellate symbiosis
P. Tremblay, M. Fine, J. F. Maguer, R. Grover, and C. Ferrier-Pagès
海洋酸性化が温帯サンゴ(Stylophora pistillata)の光合成に与える影響を6ヶ月の酸性化実験から評価。pH=7.2では共生藻密度が低下し、光合成・炭素取り込み量が低下した。しかし、ホストと共生藻1つあたりの炭素の輸送量は増加しており、pHが低下した状態でもサンゴが共生藻から受け取る炭素量自体には変化がないことが示された。ただし必要な炭素量は不足しているため、こうした状態が長期間持続すると悪影響が生じると思われる。観測期間が短く長期的なトレンドははっきりとは見えないが、生物地球化学モデルは10年間に-0.05 PgC/yrの割合でCO2取り込みが増加していることを示唆している(大気pCO2が増加しているため)。

Seasonality of CO2 in coastal oceans altered by increasing anthropogenic nutrient delivery from large rivers: evidence from the Changjiang–East China Sea system
W.-C. Chou, G.-C. Gong, W.-J. Cai, and C.-M. Tseng
 モデル研究から沿岸部のCO2の取り込み量は栄養流入量が増えたことによって増加している可能性が指摘されている。長江-東シナ海流域における表層・底層水のpCO2を2008年から2011年にかけて測定した。
 pCO2の季節変動は長江の河口付近で最大で、沖に行くにつれて小さくなった。夏には長江からもたらされる栄養に富んだ軽い水のプルームが成層化を促し、また生物生産も盛んになるため表層水のDICは低下し、逆に大陸棚の底層水のDICは増加している。冬には混合が盛んになるため、低層の濃いDICが表層にもたらされている。1990年代の記録と比較すると、pCO2の鉛直構造が変化しており、表層のpCO2は減少傾向、底層のpCO2は増加傾向にある。原因としては富栄養化が考えられ、生物ポンプによるDICの下方輸送が増加していることが考えられる。従って、富栄養化によって沿岸部のCO2の取り込みは必ずしも増加しているわけではなく、「季節ごとのpCO2の差」や「沿岸から沖への輸送」まで含めて総合的に評価する必要があることを物語っている。

Sea–air CO2 fluxes in the Southern Ocean for the period 1990–2009
A. Lenton, B. Tilbrook, R. M. Law, D. Bakker, S. C. Doney, N. Gruber, M. Ishii, M. Hoppema, N. S. Lovenduski, R. J. Matear, B. I. McNeil, N. Metzl, S. E. Mikaloff Fletcher, P. M. S. Monteiro, C. Rödenbeck, C. Sweeney, and T. Takahashi
南大洋における限られたpCO2観測記録、生物地球化学モデル、大気海洋逆解析モデルを用いて1990-2009年における大気-海洋間のフラックスの大きさや変動を推定。44-75ºSではシンクとなっており、pCO2観測からは−0.27 ± 0.13 PgC/yr、モデルからは−0.42 ± 0.07 PgC/yrと推定される。一方、南極周辺の58ºSでは正味のフラックスはゼロに近く、44-58ºSがもっとも大きなシンクであった。58ºS以南ではどのモデルも観測されたpCO2変動(特に南半球の冬)を再現できていなかった。

A novel method for diagnosing seasonal to inter-annual surface ocean carbon dynamics from bottle data using neural networks
T. P. Sasse, B. I. McNeil, and G. Abramowitz
全球の混合層の水温・塩分・溶存酸素・栄養塩から経験的に炭酸系(DOCとTA)を制約できるかどうかを評価。self-organizing multiple linear output (SOMLO)と名付けられたこの手法では、非線形的な炭酸塩の挙動のうち、DICに対して19%の予測精度が実現しているそう(10.9 μmol/Kg以下)。

Air–sea exchange of CO2 at a Northern California coastal site along the California Current upwelling system
H. Ikawa, I. Faloona, J. Kochendorfer, K. T. Paw U, and W. C. Oechel
沿岸湧昇帯ではDICに富んだ深層水がCO2を大気に放出する一方で活発な生物ポンプがCO2を大気から取り込んでおり、正味でCO2のソースになっているか/シンクになっているかがはっきりと分かっていない。2011-2011年においてカリフォルニアのBodega湾で行われたpCO2の測定から、夏の湧昇期にはCO2の大きなソースになっており、秋には弱いソースとなっていたことが示された。水温と塩分変動と関連が大きいことが分かった。

PALAEO3
Mid-late Holocene monsoonal variations from mainland Gujarat, India: A multi-proxy study for evaluating climate culture relationship
Vandana Prasad , Anjum Farooqui , Anupam Sharma , Binita Phartiyal , Supriyo Chakraborty , Subhash Bhandari , Rachna Raj , Abha Singh
インド北西部のWadhwana湖で得られた堆積物コアのプラント・オパール(phytolith)、粘土鉱物、δ13C、残留磁気を測定し、過去8kaの気候変動とインダス文明との関係性を考察。4.2kaにおける環境悪化(乾燥化)とハラッパー文明の後退には関連性があったかも?

Quantification of climate change for the last 20,000 years from Wonderkrater, South Africa: implications for the long-term dynamics of the Intertropical Convergence Zone
Loïc Truc , Manuel Chevalier , Charly Favier , Rachid Cheddadi , Michael E. Meadows , Louis Scott , Andrew S. Carr , Gideon F. Smith , Brian M. Chase
アフリカ南東部のspring moundから得られた花粉を用いて21ka以降の気温・降水量を復元。LGMは降水量が50%低下しており、気温は6℃ほど低かったと考えられる。最終退氷期の気候変動はITCZよりもむしろ水温変動によって支配されていた。

Quaternary Research
100,000-year-long terrestrial record of millennial-scale linkage between eastern North American mid-latitude paleovegetation shifts and Greenland ice-core oxygen isotope trends
Ronald J. Litwin, Joseph P. Smoot , Milan J. Pavich, Helaine W. Markewich, George Brook, Nancy J. Durika
アメリカ北東部のHybla Valleyで得られた堆積物コア記録から過去100kaの陸域の記録を復元。花粉記録から復元される植生の変動は氷期において北半球全体で確認されている千年スケールの気候変動(D/Oサイクル)との同期を示している。