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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年7月19日金曜日

新着論文(Science#6143)

Science
VOL 341, ISSUE 6143, PAGES 209-308 (19 JULY 2013)

EDITORIAL:
Pathways for Conservation
保全への道
Susan M. Haig, Thomas E. Martin, Charles van Riper III, and T. Douglas Beard Jr.
増え続ける人口のニーズに応えると同時に、地球の自然システムを保全する必要がある。それを達成するには、各生物種が環境の変化に対してどれほど耐性があり、適応できるのかを理解する必要がある。また外来種の影響の大きさも見過ごせない。
生態系をモニタリングする新たな技術も開発され、コンピューター・無線・無人飛行機・人工衛星などが活躍している。
[以下は引用文]
Successful strategies for maximizing biodiversity while supporting human needs depend on understanding how species differ in their resilience and adaptability to broad environmental change.
「人々のニーズを満たしながら生物多様性を最大にする」という戦略が成功するかどうかは、様々な環境の変化に対する各生物の脆弱性・適応度の違いをどれほど理解できるかにかかっている。

Climate change may lead to completely new species assemblages, and conservation decision-makers must understand species responses so that responsible actions can be implemented.
気候変化は完全に新しい種の集団を作り出すかもしれず、保全の政策決定を行うものは責任ある行動がとれるように生物種の応答を理解しなければならない。

Editors' Choice
Merger Relics
合併した残存物
Astron. Astrophys. 554, A122 (2013)
巨大な銀河(Massive galaxies)は小さい銀河の名残が集まってできたと考えられている。その形成メカニズムについて。

Heating the Deep Ocean
深海を暖める
Geophys. Res. Lett. 40, 1754 (2013).
 温暖化による熱は大気と海の両方に取り込まれている。2000年代から海洋上層(~700m)の温暖化は停止しているが、700-2,000mの深層水に主として取り込まれていることが示された。貿易風の強化による表層風の変化が熱の分布を変えたことが原因として考えられている。1997-1998年のエルニーニョの際には全球的に寒冷化が起きていた。また大きな火山噴火の直後にも寒冷化が起きている。
>話題の論文(※Science, 12 April 2013でも一度取り上げられているが…)
Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

Oxidation Before Oxygen
酸素の前に酸化
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 11238 (2013).
地球史において光合成生物が酸素を表層にもたらしたことで、地球の表層プロセスに劇的な変化が生じ、好気性生物が出現した。南アフリカで掘削された24億年前の岩石にはマンガン酸化物が多く含まれるが、他の地球化学プロキシは当時酸素がない還元的な環境であったことを示唆している。また岩石の年代から少なくとも2億年先まで酸素を生産するシアノバクテリアが出現していない。Mn2+を電子供与体とするような始源的な光合成が起きていたかも?
>話題の論文
Manganese-oxidizing photosynthesis before the rise of cyanobacteria
Jena E. Johnson, Samuel M. Webb, Katherine Thomas, Shuhei Ono, Joseph L. Kirschvink, and Woodward W. Fischer

News of the Week
Contaminated Water Likely Polluting Ocean From Reactors
反応炉からの汚染水が海を汚染している可能性が高い
福島第一原発の沖で海水中の放射性セシウムをモニタリングしている国際研究グループの調査によると、希釈と放射改変の効果を考えても、従来想定していたよりもセシウムの濃度が高いことが示された。冷却水が炉から漏れている可能性が指摘されているが、東京電力はその可能性を否定し続けてきた。先週、4つの日本の電力会社が10基の原発の再稼働を求める申請を提出し、原子力規制委員会は新たな安全基準に基づいてその申請書を審査する予定となっている。

Meet ‘Big-Nose Horned-Face’
’大きな鼻と角のある顔’に出くわす
ユタ州にて発掘された新種の恐竜はその風変わりな風貌からNasutoceratopsと名付けられた。ラテン語で大きな鼻と角のある顔という意味らしい。Pros Bに論文。
>関連した記事(ナショナル・ジオグラフィック)
大きな鼻の角竜、ユタ州で発見

Shedding Light on Microbial ‘Dark Matter’
微生物の’ダークマター’に光を当てる
 10年ほど前、環境中の試料に対してDNA分析(メタゲノム解析)を行ったところ、非常に多くの微生物が発見された。しかし多くが実験室で飼育できないことから、記載できておらず、生命の樹における位置づけもよく分かっていない。
 Department of Energy Joint Genome InstituteのTanja Woykeらは個々の細胞からDNAを抽出することに成功し、200種の新種の微生物を記載した。
>より詳細な記事(Science NOW)
How Many Microbes Are Hiding Among Us?
Elizabeth Pennisi

>話題の論文(オープン・アクセス)
Insights into the phylogeny and coding potential of microbial dark matter
Christian Rinke et al.
Nature (2013) 

BY THE NUMBERS
8000 years ago
8000年前
ヨーロッパの農民によって初めて肥やし(manure)が肥料として使われた年代。
>話題の論文
Crop manuring and intensive land management by Europe’s first farmers
Amy Bogaard et al.
PNAS early edition
アジア西部からヨーロッパへと耕作が伝わったとき、大きな社会的・生態的な変化が生じた。焦げた穀物類のδ13C・δ15N分析から、ヨーロッパの農民が7.9-4.4kaにかけて家畜の肥やしの利用と水の管理によって作物の生産性を高めていたことが示唆される。

News & Analysis
Latest Skirmish Over Ancestral Violence Strikes Blow for Peace
祖先の暴力を巡る最近の小競り合いが平和のために拳をぶつける
Elizabeth Culotta
「狩猟採集者は闘いを好んだ社会だったのだろうか?」という疑問を巡って科学者同士が闘いを繰り広げている。

Ever-Bigger Viruses Shake Tree of Life
従来より大きなウイルスが生命の樹を揺さぶる
Elizabeth Pennisi
寄生する真核生物と同程度のゲノムのサイズを持ったウイルスが発見され、生命の樹の中の位置づけを巡って議論を呼んでいる。

Mars Rover Plans Roll While Asteroid Acrimony Continues
小惑星に対する厳しさは続く一方で火星の探査機計画は動き出す
Yudhijit Bhattacharjee
NASAによる次の火星探査機計画が進行するにつれて、小惑星捕獲計画に対する批判が強まる。

News Focus
Battle for the Americas
アメリカ同士の闘い
Richard Stone
パナマ地峡が閉鎖されたことによって、アメリカの南北大陸の生物種が混合し、生物地理が一変した。従来考えられていたよりも陸橋の形成は数百万年早かったとする新たな仮説が提唱された。

Salvage Paleontology on the Seaway
航路で古生物学をサルベージする
Richard Stone
パナマ運河が拡大したことで、古生物学のサルベージの道が開けた。化石記録は生物多様性が収束したことを示している。

The Amazon in 4D
4次元のアマゾン
Lizzie Wade
学術横断的な研究チームはアマゾンの時空間的な進化をマッピングするために、得られた調査記録をもとに総合的なデジタル記録を作ろうとしている。

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Research
Perspectives
Multiscale Design and Integration of Sustainable Building Functions
持続的なビル機能のマルチスケールのデザインと統合
Maria Paz Gutierrez and Luke P. Lee
ナノスケールからマクロスケールのシステムデザインによって、ビルにおける持続可能なエネルギー利用とゴミ処理との相乗的な統合の最適化が可能となる。

Reports
Bright Hot Impacts by Erupted Fragments Falling Back on the Sun: A Template for Stellar Accretion
太陽に落ちゆく破片の爆発による明るく熱い衝撃:星の集積のテンプレート
Fabio Reale, Salvatore Orlando, Paola Testa, Giovanni Peres, Enrico Landi, and Carolus J. Schrijver
太陽の爆発のあとのプラズマ下降流(plasma downflow)の分析から、こうしたイベントが星の形成をよりよく理解するのに使える可能性が示唆されている。

Isotope Ratios of H, C, and O in CO2 and H2O of the Martian Atmosphere
火星の大気のCO2とH2Oの水素・炭素・酸素同位体比
Chris R. Webster, Paul R. Mahaffy, Gregory J. Flesch, Paul B. Niles, John H. Jones, Laurie A. Leshin, Sushil K. Atreya, Jennifer C. Stern, Lance E. Christensen, Tobias Owen, Heather Franz, Robert O. Pepin, Andrew Steele, and the MSL Science Team
キュリオシティーがGaleクレーターにてtunable laser spectrometerを用いて行った水蒸気中の水素・酸素同位体、二酸化炭素中の炭素・酸素同位体測定の結果について。火星隕石の同位体との比較から、火星のCO2とH2Oリザーバーは40億年前に形成されたことが示唆される。大気の損失と表層との相互作用はいまなお続いていると思われる。

Abundance and Isotopic Composition of Gases in the Martian Atmosphere from the Curiosity Rover
キュリオシティー探査機がもたらした火星大気のガスの濃度と同位体組成
Paul R. Mahaffy, Christopher R. Webster, Sushil K. Atreya, Heather Franz, Michael Wong, Pamela G. Conrad, Dan Harpold, John J. Jones, Laurie A. Leshin, Heidi Manning, Tobias Owen, Robert O. Pepin, Steven Squyres, Melissa Trainer, and MSL Science Team
キュリオシティーが行った火星大気の組成と同位体比の分析結果は、
CO2:0.960
40Ar:0.0193
N2:0.0189
O2:1.45*10-3
CO:<1.0*10-3
40Ar/36Ar:1.9*103
であった。1976年におけるVikingの測定結果や地上からの観測と概ね一致している(40Ar/N240Ar/36Ar比には食い違いが見られた)。また大気中CO2のδ13Cの値としておおよそ45‰という値が得られ、独立した機器からも再現された。重い同位体の集積はかなりの大気が失われたことと整合的である。

Ice-Shelf Melting Around Antarctica
南極周辺の棚氷の融解
E. Rignot, S. Jacobs, J. Mouginot, and B. Scheuchl
南極における全地域の棚氷の氷のフラックスを求めたところ、基底部の融解量が1325 ± 235 Gt/yrであり、氷山分離の1089 ± 139 Gt/yrを上回っていることが示された。したがって棚氷の融解が南極における消耗(ablation)プロセスにおいて最大の部分を担っていると考えられる。Ross・Filchner・Ronne棚氷で全体の3分の2を占めるが、融解自体は15%だけであった。融水の大半は大西洋南東部の温かい海水に面する10の小規模な棚氷におけるものであった。また6つの東南極棚氷でも高い融解/面積比が得られ、まだ確認されていない海による熱フォーシングが深部の接地面に働いている可能性を示唆している。

Lethal Aggression in Mobile Forager Bands and Implications for the Origins of War
移動性狩猟採集民族の攻撃性と戦争の起源に対する示唆
Douglas P. Fry and Patrik Söderberg
放浪して食料を探す人々(狩猟採集民)は従来考えられていたよりは好戦的でなかったかもしれない。そのため、’戦争’は人の原始的な行動様式ではないことを示唆している。

Pandoraviruses: Amoeba Viruses with Genomes Up to 2.5 Mb Reaching That of Parasitic Eukaryotes
パンドラ・ウイルス:寄生的真核生物と同等の2.5Mbに達するゲノムを持つアメーバウイルス
Nadège Philippe, Matthieu Legendre, Gabriel Doutre, Yohann Couté, Olivier Poirot, Magali Lescot, Defne Arslan, Virginie Seltzer, Lionel Bertaux, Christophe Bruley, Jérome Garin, Jean-Michel Claverie, and Chantal Abergel
南半球のアカントアメーバに寄生する巨大ウイルスが発見された。光学顕微鏡下でも見ることができるほどの大きさである。

Exceptional Convergence on the Macroevolutionary Landscape in Island Lizard Radiations
D. Luke Mahler, Travis Ingram, Liam J. Revell, and Jonathan B. Losos
大アンティル諸島に棲息する全てのアメリカ・カメレオン(グリーンアノール)の形態的な進化が記述された。

Technical Comments
Comment on “Can We Name Earth’s Species Before They Go Extinct?”
Camilo Mora, Audrey Rollo, and Derek P. Tittensor
彼らの推定はかなり楽観的である。生物の記載の数は過大評価されており、地球上の生物種の数とその絶滅速度を過小評価している。

Response to Comments on “Can We Name Earth’s Species Before They Go Extinct?”
Mark J. Costello, Robert M. May, and Nigel E. Stork

>話題の論文
Can We Name Earth's Species Before They Go Extinct?
我々は地球上の生物が絶滅する前に彼らに名前を与えることができるだろうか?
Mark J. Costello, Robert M. May, and Nigel E. Stork
Science 339, 413-416 (2013)
「ほとんどの生物は発見される前に絶滅してしまうだろう」と悲観的に考える人がいるが、それはまだ記載されていない生物が大量に残っていると想定しているからである。現在地球上には500 ± 300万種類の生物が存在し、そのうち150万種が記載されている。新たなデータベースによれば、分類学者の数はますます増え続けており、その増加速度は論文に記載される種数の増加速度よりも大きいらしい。

>関連した記事(Science#6125; 15 March 2013; "Letters")
The Race to Name Earth's Species
地球の生物に名前を与えるレース
William F. Laurance
M. J. Costelloらは「絶滅よりも早く人類は生物に名前を与えられる」とレビューの中で主張しているが、あまりそうは思えない。真核生物の大半は昆虫類であるが、他の動物群(線虫、菌類、無脊椎動物など)もまた多様であり、中には限られた地域にしかいないもの、隠れるのが上手いもの、顕微鏡の下でしか確認できない小さいもの、など多くのものがある。また生物多様性が高い途上国などで将来十分な資金が得られ、生物に名前を与えることができるかどうかも怪しい。さらに外来種の侵入や環境変化・気候変動ストレスの影響、人間活動の影響などが生物多様性を減少させていることは事実であり、現在の生物多様性の理解だけでなく、それが将来どうなるかの予測にも大きな不確実性があることに注意しなければならない。