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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年7月18日木曜日

新着論文(Nature#7458)

Nature
Volume 499 Number 7458 pp253-374 (18 July 2013)

EDITORIALS
Light show
光のショー
レーザーがいつの日か宇宙船からのデータ輸送を改善するかもしれない。しかし、解決すべきハードルは高い。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Conserved coasts curb storm damage
保全された沿岸が嵐の被害を抑制する
Nature Clim. Change http://dx.doi.org/10.1038/ nclimate1944 (2013)
スタンフォード大の研究グループによる調査から、沿岸生態系を保全することによってアメリカ沿岸部に住む人々に対する海水準上昇や嵐の被害が半減する可能性が示された。特にフロリダ・ニューヨーク・カリフォルニアで効果が大きいという。
>より詳細な記事
Natural defences can sharply limit coastal damage
自然の防護が沿岸部の被害を大きく制限する
Virginia Gewin
>話題の論文
Coastal habitats shield people and property from sea-level rise and storms
沿岸部の生態系が人々と財産を海水準上昇と嵐から守る
Katie K. Arkema, Greg Guannel, Gregory Verutes, Spencer A. Wood, Anne Guerry, Mary Ruckelshaus, Peter Kareiva, Martin Lacayo & Jessica M. Silver
 沿岸部はサンゴ礁や沿岸植生によって守られている。異常気象や海水準上昇、沿岸生態系の劣化が沿岸部に住む人々やその財産を脅かしている。
 5つの海水準上昇シナリオに基づいて、アメリカ沿岸部の災害指数を1km2ごとに求めて評価したところ、災害にさらされる人々や財産は、もし既存の沿岸生態系が手つかずのまま維持されれば半減できることが示された。

Old origins for New World dogs
新世界のイヌに対する古い起源
Proc. R. Soc. B 280, 20131142 (2013)
チワワやカナディアン・エスキモー・ドッグといったアメリカ産のイヌは海を渡ったというよりは、15ka頃に人の祖先とともにベーリング陸橋を歩いて渡ってきたらしいことがミトコンドリアDNAの分析から分かった。その後ヨーロッパからの移民がもたらしたヨーロッパ産のイヌと交配したらしい。

Cricket winners show off
コオロギの勝者は一目を引くようなことをする
Biol. Lett. 9, 20130449 (2013)
オスの野生のコオロギ(spring field cricket)を戦わせたところ、第3者のオスが見ている状態ではより激しく戦い、派手な勝利のアピールをすることが分かった。実験室で生まれたコオロギにはそのような行動が見られないことから、社会で学ぶものらしい。脊椎動物ではよく見られる行動であるが、無脊椎動物としては初の観察例であるという。

SEVEN DAYS
Climate partners
気候パートナー
アメリカと中国は気候変化緩和に向けて大型自動車からの排出を削減することに協力することを公表した。他にも炭素捕獲貯留・ビル効率の向上・温室効果ガスモニタリングの強化・より効率の良い電力網の創設などを刺激する目的もある。

Biofuels brake
バイオ燃料のブレーキ
ヨーロッパ議会における投票結果を受けて、ヨーロッパにおいて食料用の作物から生産されるバイオ燃料は削減される模様。作物生産用の土地開発がさらなる温室効果ガス排出に繋がりかねないという科学者の警告を受けて、2020年までには食料作物が原料のバイオ燃料の生産は全体の5.5%以下に制限されると思われる。
>関連した記事(Nature "NEWS IN FOCUS")
EU debates U-turn on biofuels policy
EUがバイオ燃料政策に関するUターンを議論している
Richard Van Noorden

Indian power
インドの電力
福島第一原発事故を受けた公の反対を振り切って、インドの原子力発電計画は拡大するようである。初号機はロシア製でTamil Naduでうまく核反応が成功した。2号機も8ヶ月以内に稼働を開始する見込み。

Giant iceberg cut adrift
巨大氷山が流れ出す
先週、南極のPine Island氷河から巨大な氷山が割れて流れ始めた。割れ目は2011年から研究者によってモニタリングされていた。720km3の氷山がAmunden海に向けて流れている。Pine Island氷河は南極で最も流れが速い氷河で知られ、2001年と2007年にも大きな氷山が流出した。

Red rover
赤い探査機
NASAが2020年の打ち上げを計画している次の火星探査機はキュリオシティーに比べてよりコンパクトで性能は劣るものになるかもしれない、と7/9にNASAが公表した。大きな改善点としては、地球に岩石や土壌試料を持ち帰ることができることだという。
>より詳細な記事
NASA's 2020 Mars rover would search for signs of past life
Maggie McKee

True blue planet
まさに青い惑星
ハッブル宇宙望遠鏡によって系外惑星(HD 189733 b)の色が初めて検出された。惑星の色と恒星の色をうまく分けたところ、惑星の色は青色であることが分かった。
>より詳細な記事
First distant planet to be seen in colour is blue
Devin Powell
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック)
惑星の色を初確認、地球のような青色

Economy rocket
エコノミー・ロケット
ヨーロッパ宇宙局が次に打ち上げる次世代ロケット(Ariane 6)は、現行のモデルに比べて運搬能力が劣り、1つの人工衛星しか搭載できないという。1回の打ち上げのコストは7,000万ユーロとなっている。

TREND WATCH
GLOBAL NUCLEAR SLOWDOWN
全球的な原子力の減速
2012年の原子力発電量は2,346TWであったが、2011年比で7% 、2006年比で12%の低下となっている。減少の大部分は福島第一原発事故を受けての日本の原発の閉鎖が担っている。産業界は古い原発を維持或いは新たな原発を建設することを望んでいるが、それよりも閉鎖される原発の数が勝っている。

NEWS IN FOCUS
Asteroid plan looks rocky
小惑星計画が成功しそうにないようだ
Alexandra Witze
小惑星を月の軌道に運ぶというNASAの計画はそれに適した候補がないという問題でつまづくだろう。

Hunt for mystery GM wheat hots up
謎の遺伝子組換え小麦探しがより熱くなる
Heidi Ledford
調査員は遺伝子組み換え作物の起源が追跡できることを望んでいる。
>関連した記事(Science "News of the Week")
Furor Over U.S. GM Wheat
アメリカの遺伝子組み換え小麦に対する大騒ぎ
アメリカ・オレゴン州にて発見された、認可されていない遺伝子組み換え小麦が世界中に大きな話題を呼んでいる。日本はオレゴン州からの小麦の輸入を停止し、韓国やEUは検査を強化した。1998-2005年にかけて他の州で行われた野外実験の小麦が混入していた。実験を手がけたMonsanto社はアメリカでは遺伝子組み換え小麦の需要が小さいとして既に事業から撤退しており、さらにEUでも認可を求める書類を提出しないことにしている。
>関連した記事(Nature "Seven days")
Wandering wheat
さまよう小麦
アメリカ・オレゴン州において認可されていないはずの遺伝子組み換え小麦が発見された。1998年から2005年に野外実験されたものが紛れ込んだ可能性がある。食の安全には影響はないと伝えられている。

Fukushima offers real-time ecolab
フクシマがリアルタイムでのエコラボを提供する
Ewen Callaway
しかし、生態学者はもっと資金援助が必要だと言っている。

Lasers boost space communications
レーザーが宇宙コミュニケーションを加速させる
Devin Powell
光学システムが惑星科学の巨大データの処理に着手し始めた。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Biogeochemistry: Carbon dioxide and water use in forests
生物地球化学:二酸化炭素と森の水利用
Belinda Medlyn & Martin De Kauwe
Keenan et al.の解説記事。
大気中のCO2の上昇に対して、植物はより効率良く水を使うことで応答すると期待されている。森林からその直接的な証拠が得られたが、その効果の大きさに関しては議論を呼ぶだろう。

LETTERS
Sequential deposition as a route to high-performance perovskite-sensitized solar cells
高性能ペロブスカイト増感太陽電池を得る手段としての逐次析出
Julian Burschka, Norman Pellet, Soo-Jin Moon, Robin Humphry-Baker, Peng Gao, Mohammad K. Nazeeruddin & Michael Grätzel
有機無機ハイブリッドペロブスカイトの構成成分をナノ多孔質二酸化チタンに析出させることで、太陽電池の電力変換効率を15%まで高めることに成功。

Increase in forest water-use efficiency as atmospheric carbon dioxide concentrations rise
大気中の二酸化炭素濃度が上昇するとともに森林の水利用効率が上昇する
Trevor F. Keenan, David Y. Hollinger, Gil Bohrer, Danilo Dragoni, J. William Munger, Hans Peter Schmid & Andrew D. Richardson
 植物は光合成のために葉からCO2を取り込むが、同時に水蒸気を失っている。炭素を得る代わりに失う水の割合(水利用効率)は、全球の水・エネルギー・炭素循環においても重要である。
 過去20年間に及ぶ北半球の森林におけるCO2・水交換の観測記録から、温帯・高緯度域の森林において水利用効率が大きく増加していることが分かった。CO2による肥沃効果と考えるともっともよく説明できるという。上昇し続ける大気中のCO2濃度に対して植物内部のCO2濃度を制限するために閉じた気孔の割合が増加しており、それが水蒸気交換も制限していると思われる。その結果、光合成量や正味の炭素取り込み量は増加している一方で、蒸発散量は低下している。森林と気候変化の相互作用を制限する上で気孔が果たす役割や植生-気候モデルを再評価する必要がある。

Ratios of S, Se and Te in the silicate Earth require a volatile-rich late veneer
ケイ酸塩地球のS、Se、Te比が必要とする揮発性物質に富むレイトベニア
Zaicong Wang & Harry Becker
かんらん岩の硫黄、セレニウム・テルリウムの測定結果と地球内部組成について。