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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年7月9日火曜日

新着論文(Geology, PNAS)

Geology
1 July 2013; Vol. 41, No. 7
Profiles of ocean island coral reefs controlled by sea-level history and carbonate accumulation rates
Michael Toomey, Andrew D. Ashton, and J. Taylor Perron
太平洋に広がる海洋島周辺のサンゴ礁は様々な形態をとる(e.g. fringing reef, barrier reef, terraces)。ダーウィンがかつて火山島の形成とその後の沈降がサンゴ礁の地形発達パターンを説明することを発見したが、現在見られているサンゴ礁は必ずしもその学説に従っていない。沈降だけでなく、サンゴの成長や第四紀の海水準変動も地形形成に重要な役割を負っていることを示す。モデルシミュレーションでバリエーションをよく再現できることが分かった。

The Miocene elevation of Mount Everest
Aude Gébelin, Andreas Mulch, Christian Teyssier, Micah J. Jessup, Richard D. Law, and Maurice Brunel
新第三紀におけるエベレスト山の隆起を復元することは全球・アジアの気候復元においても非常に重要である。チベット南部のdetachment shear zoneの水和鉱物のδDを用いて古高度を復元。中新世初期には5,000mを超していたと思われ、δ18Oの古土壌記録とも整合的。この頃から高地が降水をはじめとする気候に影響し始めたと考えられる。

Evidence for extensive methane venting on the southeastern U.S. Atlantic margin
L.L. Brothers, C.L. Van Dover, C.R. German, C.L. Kaiser, D.R. Yoerger, C.D. Ruppel, E. Lobecker, A.D. Skarke, and J.K.S. Wagner
北米大陸沖のBlake Ridgeにおけるdiapir seepからメタンが漏れ出ていることがAUVを用いた観測から明らかに。ローカルな流体移動によって起きていると考えられる。まだ知られていないフラックスがあるかもしれない。

GSA-Bulletin
1 July 2013; Vol. 125, No. 7-8 
Terrestrial paleoenvironmental reconstructions indicate transient peak warming during the early Eocene climatic optimum
Ethan Hyland, Nathan D. Sheldon, and Majie Fan
始新世初期の気候温暖期(Early Eocene Climatic Optimum)について。アメリカワイオミング州の河川性堆積物の地球化学分析から、当時のpCO2は高く、気温は8℃、降水量は500mm/yr高かったと考えられる。CO2のソースは海か堆積盆におけるメタン生成と推測される。

PNAS
25 June 2013; Vol. 110, No. 26
Letters (Online Only)
Caution needed when linking weather extremes to amplified planetary waves
James A. Screen and Ian Simmonds

Reply to Screen and Simmonds: From means to mechanisms
Vladimir Petoukhov, Stefan Rahmstorf, Stefan Petri, and Hans Joachim Schellnhuber

No evidence of continuously advanced green-up dates in the Tibetan Plateau over the last decade
Miaogen Shen, Zhenzhong Sun, Shiping Wang, Gengxin Zhang, Weidong Kong, Anping Chen, and Shilong Piao

Reply to Shen et al.: No evidence to show nongrowing season NDVI affects spring phenology trend in the Tibetan Plateau over the last decade
Geli Zhang, Jinwei Dong, Yangjian Zhang, and Xiangming Xiao

Environmental Sciences
Evaluation of radiation doses and associated risk from the Fukushima nuclear accident to marine biota and human consumers of seafood
Nicholas S. Fisher, Karine Beaugelin-Seiller, Thomas G. Hinton, Zofia Baumann, Daniel J. Madigan, and Jacqueline Garnier-Laplace
福島第一原発から放出された放射性物質が、太平洋を回遊するマグロにも取り込まれ、カリフォルニア沖で採取されたマグロにも検出されたことで大きな話題と不安を呼んだ。原発由来と自然由来の放射線量が海洋生物やそれを食べるヒトに与える影響を評価した。自然由来の放射線は210Poによるもので、福島由来の線量はその1,000〜10,000倍であった。ただし、その量でも環境基準の100倍以上下で、それによってヒトに取り込まれる放射線量は0.9-4.7μSv程度で、普通に暮らしていても浴びる量である(食事・医療・航空輸送など)。ただし、低線量被爆に対するガンのリスクの評価にはまだ不確実性が伴う(被爆量の多い漁師1,000万人に2人の割合で増える?)。

2 July 2013; Vol. 110, No. 27
Anthropology
Archaeological shellfish size and later human evolution in Africa
Richard G. Klein and Teresa E. Steele
>関連した記事(Nature#7455 "Research Highlights")
Shells show rise of Homo sapiens
殻がホモ・サピエンスの出現を物語る
南アフリカの考古学遺跡から発掘されたカサガイの殻(limpet shell)のサイズを計測したところ、中期石器時代(200-50ka)のサイズが後期石器時代のものよりも大きかったことが分かった。これは人類の数が急増し、漁獲量が増えた可能性を物語っている。ホモ・サピエンスは100kaには貝のビーズの装飾品を作っていたことが分かっているが、当時はまだ人口は少なかったと考えられている。従って、人口が増えたのはそれからかなり後になってからだということになる。これは「文化的な発展は人口が増え、技術が広まりやすくなってからだ」とする従来の仮説と大きく食い違っている。

Environmental Sciences
Reduced calcification and lack of acclimatization by coral colonies growing in areas of persistent natural acidification
Elizabeth D. Crook, Anne L. Cohen, Mario Rebolledo-Vieyra, Laura Hernandez, and Adina Paytan
ユカタン半島に生息するPorites astreoidesの石灰化速度が酸性度が増すごとに低下していることがCTスキャンを用いた高精度の分析から明らかに。また穿孔動物による骨格浸食の影響も酸性化するほどに増加することが示された。室内の酸性化実験の結果と整合的であることから、Porites astreoidesは生まれたときから常に酸性化した海水に曝されていながら、低いΩargの海水に適応できていないことが示された。
>関連した記事(Nature#7454 "Research Highlights")
Acidic waters do not toughen corals
酸性化した水はサンゴを堅くしない
海洋酸性化によって石灰化生物に負の影響が生じると考えられている。メキシコ・ユカタン半島における天然の酸性化した海水に生息するハマサンゴの一種(Porites astreoides)に対する調査から、周囲の酸性化海水に侵されていないサンゴに比べると、成長速度が低く、穿孔動物による浸食度が大きいことが示された。酸性化した海水に生息していながら、2100年に訪れるであろう海洋酸性化の規模には適応できないだろうと推測されている。
>関連した記事(EPOCA Ocean Acidification)
Coral reefs can survive ocean acidity – report
※この研究はメディアでも広く取り上げられているようです。
論文中では酸性化海水でサンゴは生きてはいるが石灰化速度は低下しているということが報告されているものの、メディアでは酸性化海水に適応できているということが全面に押し出されているという印象です。