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2013年7月1日月曜日

新着論文(Ngeo_focus#July 2013)

Nature Geoscience
July 2013, Volume 6 No 7 pp505-584

※掲載されている論文・記事の一部は以前の号ですでに公表されているみたいです。

Focus issue 'Bombardment of the early Solar System'
初期太陽系の爆撃
太陽系が形成されてからも長い間、破滅的な天体衝突は継続していた。その最も激しかったのは40億年前で、後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment; LHB)と呼ばれる。この現象は月や地球の大気組成の決定から生命誕生にまで関係していたと考えられている。

Editorial
Shaped by collisions
衝突によって形成される
月から持ち帰られたメルト岩石の年代は、それが約40億年前の月の爆撃期にできたものであることを物語っている。近年、LHBは太陽系全体に及んでいた証拠が提示されている。

Commentaries
The overprotection of Mars
火星の過保護
Alberto G. Fairén & Dirk Schulze-Makuch
惑星保護ポリシー(Planetary protection policies)は太陽系の惑星に対する、生物によるコンタミを防ぐことを目的としている。火星探査機を殺菌消毒する努力はコストが高いため、見直す必要がある。それは火星の生命探査という重要課題を不必要に妨げているからである。

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Research
News & Views
Planetary science: Go and catch a falling star
惑星科学:行って落ち行く星を捕まえる
Erik Asphaug
月の巨大な隕石孔の周辺には通常考えられないほど苦鉄質の鉱物を含んだ堆積物が散り散りに分布している。数値シミュレーションから、そうした隕石孔のうちもっとも遅い(衝突エネルギーが小さいということ?)ものの中には、月とは異質の天体物質が残されている可能性があるという。

Planetary science: Earth's ancient catastrophes
惑星科学:地球の古代の大災害
Tamara Goldin
LHBは37億年前に急激に終了したと考えられているものの、地質学記録からはそれよりもまだ後にもあった可能性が指摘されている。衝突によってできたと思われるスフェリュールは35億年前の海洋底堆積物に記録されている。しかしその時のクレーターはまだ見つかっていない。LHBが35〜25億年前まで長引いた要因としては、巨大惑星の軌道変化によって小惑星がはじき出された可能性が数値実験から提案されている。また別のシミュレーションからは、チチュルブ・クレーターを作ったのと同程度の隕石が37〜17億年前までに70回は地球に衝突したという結果も示されている。そうした巨大隕石は「有機物を宇宙から運んだ」、「クレーターにできた熱水系が生命を育んだ」など、様々な仮説の対象となり、その検証が進んでいる。

Planetary science: Kick for the cosmic clockwork
惑星科学:宇宙のゼンマイ仕掛けを蹴る
Matija Ćuk
水星の公転と自転は非常にユニークな動きをしている(3:2の共鳴関係にある)。計算から、小惑星がランダムに衝突したことが、こうした周回パターンを生み出したのではないかと提案されている。

Planetary science: Titan's nitrogenesis
惑星科学:タイタンの窒素の起源
Catherine Neish
Sekine et al.の解説記事。
土星の衛星であるタイタンは太陽系の衛星でもっとも厚い大気を持っている。カッシーニ・ホイヘンス・ミッションはタイタンの大気についての相反する制約をもたらした。実験と単純な数値モデリングから、大気が後半になって形成されたという新たなメカニズムがもっともらしいことが実証された。

Progress Article
Impact bombardment of the terrestrial planets and the early history of the Solar System
岩石型惑星の重爆撃と太陽系の初期の歴史
Caleb I. Fassett & David A. Minton
40億年前、太陽系の外側の惑星の軌道変化による揺らぎによって、岩石型惑星は小惑星に爆撃された。月の試料・惑星のクレーター史・力学モデルから、重爆撃機におけるパズルのピースが徐々に組み合わさりつつある。

Letter
Compositional evidence for an impact origin of the Moon's Procellarum basin
月の嵐の大洋が衝突起源であることの組成的な証拠
Ryosuke Nakamura, Satoru Yamamoto, Tsuneo Matsunaga, Yoshiaki Ishihara, Tomokatsu Morota, Takahiro Hiroi, Hiroshi Takeda, Yoshiko Ogawa, Yasuhiro Yokota, Naru Hirata, Makiko Ohtake & Kazuto Saiki
月の表と裏側は組成がかけ離れている。月の’嵐の大洋’にカルシウム輝石(calcium pyroxene)がわずかに存在することは、それが古代の隕石衝突構造であることを示唆している。

Mercury's spin—orbit resonance explained by initial retrograde and subsequent synchronous rotation
初期の逆行とその後の同期した回転によって説明される水星の自転-公転共鳴
Mark A. Wieczorek, Alexandre C. M. Correia, Mathieu Le Feuvre, Jacques Laskar & Nicolas Rambaux
水星は2回公転する間に3回自転している。数値モデリングから、この変わったパターンは、初期の逆回転とその後の巨大衝突による擾乱の結果である可能性が示唆されている。

Replacement and late formation of atmospheric N2 on undifferentiated Titan by impacts
未分化のタイタンにおける衝突による大気N2の置き換えと遅れた形成
Yasuhito Sekine, Hidenori Genda, Seiji Sugita, Toshihiko Kadono & Takafumi Matsui
土星の衛星であるタイタンが厚い窒素の大気を持つ理由についてはよく分かっていない。レーザーガンを用いた実験と数値計算から、LHBの際にアンモニアから窒素が形成された可能性が示唆される。

Origin of the Ganymede–Callisto dichotomy by impacts during the late heavy bombardment
後期重爆撃期の衝突を起源とするガニメデとカリストの違い
Amy C. Barr & Robin M. Canup
木星の衛星であるガニメデとカリストはサイズと組成は類似しているものの、表面と内部の特徴は異なっている。コア形成の数値シミュレーションから、LHBの際に2つの衛星が受けたエネルギーの違いによって、それぞれの違いが説明できる可能性が示唆される。

Article
High-velocity collisions from the lunar cataclysm recorded in asteroidal meteorites
小惑星隕石に記録された月の激動によって分かる高速衝突
S. Marchi, W. F. Bottke, B. A. Cohen, K. W¨nnemann, D. A. Kring, H. Y. McSween, M. C. De Sanctis, D. P. O'Brien, P. Schenk, C. A. Raymond & C. T. Russell
月の試料は、太陽系の内側が40億年前に小惑星による激しい爆撃を経験したことを示唆している。隕石の放射年代から、当時高速の隕石がかなりの数存在したことが分かった。さらにその結果は、太陽系の外側の惑星の移動が小惑星を大きな離心率の軌道へと押しやった際の爆撃を起源としていると考えると整合的である。