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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年7月26日金曜日

新着論文(Science#6144)

Science
VOL 341, ISSUE 6144, PAGES 309-424 (26 JULY 2013)

Editors' Choice
Unintended Consequences
意図せぬ結果
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1300018110 (2013).
中国の淮河(River Haui)の南北で空気中の微小粒子の量が激変することが示された。発展が遅れた北側で600 mg/m3、南側で400 mg/m3となった。さらに悪いことに、北側の寿命は南側に比べて約5年短くなると推定されている。呼吸器系の疾患が原因。
>話題の論文
Evidence on the impact of sustained exposure to air pollution on life expectancy from China’s Huai River policy
Yuyu Chen, Avraham Ebenstein, Michael Greenstone, and Hongbin Li
>関連した記事(朝日新聞)
中国の大気汚染、南北差くっきり 淮河を境に寿命にも差

A Captured Black Hole?
捉えられたブラックホール?
Astrophys. J. 772, L5 (2013).
ペルセウス座銀河団のレンズ型銀河(NGC 1277)の中央部には太陽の170億倍の質量を持ったブラックホールが存在する。ほとんどの銀河が中央部にブラックホールを有すると考えられているものの、通常は銀河質量のほんの0.1%に過ぎない。しかしNGC 1277の場合は59%という大質量である。新たな仮説では、こうした超巨大質量は他の巨大銀河で形成されたのち、捕獲された可能性が指摘されている。楕円形の2つの銀河の作用で片方がはじき出された?

News of the Week
Monsanto Withdraws E.U. Patent Applications
モンサントがEUでの特許申請を取り下げる
ヨーロッパで広がる遺伝子組換え作物への反対運動を受けて、バイオテクノロジー巨大企業であるモンサントが複数の遺伝子組み換え作物(トウモロコシ・大豆・テンサイなど)に関する特許の申請を取り下げた。

Scientists: Freeze GM Trials
科学者:遺伝子組み換えの試験を凍結
インドの最高裁判において、遺伝子組み換え作物栽培を禁止するモラトリアム期間の設定が準備中となっている。「もし認められれば、それはインドにおける遺伝子組み換え研究の終焉を意味する」Swapan Duttaは言う。

Copycat Dogs
真似をする犬
犬は少なくとも10分後までは人が行った行動を真似ることができるらしいことが、ブダペストの研究者によって明らかに。こうした特性はこれまでヒトとサルにおいてのみしか確認されていなかった。
>より詳細な記事
Your Dog Is a Copycat

East Antarctic Ice Sheet Not So Stable?
東南極氷床はそれほど安定でない?
 グリーンランド・南極氷床の融解は海水準上昇へと繋がる。科学者らはこれらの氷床の安定性を評価するために、地球が現在よりも温暖であったPliocene(鮮新世;5.3-2.6Ma)に着目している。当時、海水準は22m高かったと推定されており、氷床が現在よりも大規模に縮小していた可能性を物語っている。
 一般に西南極氷床は不安定で、現在も融解が確認されているが、東南極氷床は安定だと考えられていた。しかしながら、ロンドンのImperial Collegeの学生Carys Cookらの研究グループが東南極氷床沖で採取された堆積物コア中のPlioceneのSr・Nd同位体記録を調べたところ、氷河が大きく後退していたと思われる記録が見つかった。
>より詳細な記事
East Antarctica's Ice Sheet Not as Stable as Thought
 長く’安定’だと思われていた東南極氷床が温暖化に対して敏感かもしれないことを示唆する研究結果が得られた。British Antarctic SurveyのClaus-Dieter Hillenbrandによれば、「Plioceneは大気中CO2濃度が高く、温暖であった時期のため、地球温暖化の最も最近のアナログとなる」という。
 IODP318が2009年に東南極沖で採取した堆積物コアのSr・Nd同位体記録には、現在は氷で覆われているWilkes Subglacial Basinが浸食を受け、沖まで運ばれていた期間が複数あることが記録されている。これはいくつかのモデルが示唆するような、東南極氷床が安定であることを否定する結果となった。ただし、堆積物コア記録の時間解像度は荒く、現時点では数百年・数千年といった時間スケールで東南極氷床が融解するかは判断がつけられないという。また氷河が前進・後退を繰り返したのか、或いはしばらくの間露出していたのかもまだ分かっていない。より多くの堆積物コアが必要とされている。
>話題の論文
Dynamic behaviour of the East Antarctic ice sheet during Pliocene warmth
鮮新世の温暖期における東南極氷床の動的な振る舞い
Carys P. Cook et al.
Nature Geoscience (2013)
IODP318が東南極のAdélie Landで採取した堆積物コアから、5.3-3.3Maに南大洋のSSTが上昇し、高い生物生産を伴っていたことが示された。また同時にWilkes Subglacial Basinの浸食が強化されており、氷床が数百m内陸に後退していた可能性が示唆される。鮮新世の温暖期には東南極氷床は温暖化に対して敏感であったと考えられる。

Modern Trackers Decipher Ancient Footsteps
現代の狩猟者が古代の足跡を読み解く
 ナミビアのサン族は著名な狩猟民族である。考古学者は彼らの知識と経験を借りて、考古学遺跡に残された足跡を解釈しようとしている。
 ドイツのネアンデルタール博物館のAndreas Pastoorsは、サン族の手を借りて、フランスのピレネー山の遺跡の足跡が、従来17ka頃の靴跡と考えられていたが、実際には裸足ものであった可能性が高いことを示した。他にも宗教的なダンスの跡と考えられていたものが、重い荷物を運んだ跡であったことが示されるなど、サン族の驚くべき能力によって、多くの新事実が浮かび上がっている。

News & Analysis
Biologists Tell Dueling Stories of How Turtles Get Their Shells
生物学者がどのようにしてカメが甲羅を獲得したかを巡る対立した物語を語る
Naomi Lubick
柔らかい甲羅をもつカメの研究から、甲羅の発展のための別の方法が示された。
>関連した記事(理化学研究所のプレスリリース)
胚発生過程と化石記録から解き明かされたカメの甲羅の初期進化
-カメの背中の甲羅は肋骨成分のみから進化してきたことが明らかに-

The Savage Radiation of the Van Allen Belts Is Homegrown
バンアレン帯の容赦ない放射は国産
Richard A. Kerr
10年間にわたって宇宙の謎とされていたバンアレン帯の高い線量に対する解決策によって、人工衛星を守ることができるかもしれない。

Fragile Wetland Will Test Turkey's Resolve in Protecting Biodiversity
壊れやすい湿地がトルコが生物多様性を守るという決意を揺るがすだろう
John Bohannon
科学者達は、ダム建設によって湿地が水に沈んでしまう前に、アラス川の鳥の楽園における生物多様性を評価しようとしている。

Letters
Silver Lining of Singapore's Haze
シンガポールの靄に対する希望の光
Luis Roman Carrasco

Policy Forum
ENVIRONMENTAL ECONOMICS:Determining Benefits and Costs for Future Generations
環境経済学:未来の世代の恩恵とコストを決定する
K. Arrow, M. Cropper, C. Gollier, B. Groom, G. Heal, R. Newell, W. Nordhaus, R. Pindyck, W. Pizer, P. Portney, T. Sterner, R. S. J. Tol, and M. Weitzman
アメリカをはじめとする各国は、不確実性を考慮した上でコストと恩恵とを推定する別の手法を採用することを考えるべきだ。

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Research
Perspectives
How Nitrogen Is Lost
どのように窒素が失われるか
Bess B. Ward
有機物の供給量と組成とが、海洋から固定窒素が失われるプロセスをコントロールしている。

Genome Mosaicism—One Human, Multiple Genomes
ゲノムモザイク—1人の人間に複数のゲノム
James R. Lupski
我々の身体を形作る細胞一つ一つは必ずしも同一のゲノムを持っているわけではない。そのことは健康や病気に対する示唆を与えている。

Reports
I-Love-Q: Unexpected Universal Relations for Neutron Stars and Quark Stars
I-Love-Q: 中性子星とクォーク星との予期せぬ普遍関係
Kent Yagi and Nicolás Yunes
慣性(Inertia)・ラブ数(Love number)・四極子モーメント(Quadrupole moment)は中性子星とクォーク星の内部構造とは独立している。

Technical Comments
Comment on “An Update of Wallace’s Zoogeographic Regions of the World”
Holger Kreft and Walter Jetz

Response to Comment on “An Update of Wallace’s Zoogeographic Regions of the World”
Ben G. Holt, Jean-Philippe Lessard, Michael K. Borregaard, Susanne A. Fritz, Miguel B. Araújo, Dimitar Dimitrov, Pierre-Henri Fabre, Catherine H. Graham, Gary R. Graves, Knud A. Jønsson, David Nogués-Bravo, Zhiheng Wang, Robert J. Whittaker, Jon Fjeldså, and Carsten Rahbek

>話題の論文
An Update of Wallace’s Zoogeographic Regions of the World
Wallaceの世界の動物地理学のアップデート
Ben G. Holt
Science 339, 74-78 (2013).