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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年7月10日水曜日

新着論文(Radiocarbon, PO, CG)

Radiocarbon
Allocation of Terrestrial Carbon Sources Using 14CO2: Methods, Measurement, and Modeling
Scott J Lehman, John B Miller, Chad Wolak, John Southon, Pieter P Tans, Stephen A Montzka, Colm Sweeney, Arlyn Andrews, Brian LaFranchi, Thomas P Guilderson, Jocelyn C Turnbull
大気中のCO2中のΔ14Cの測定によって、人為起源の化石燃料燃焼由来の炭素や陸上生物圏と大気との炭素交換量を推定することができる。NOAAでは大気Δ14CO2の測定ネットワークを展開している。測定精度と境界層バイアスが不確実性のもととなっている。
Lehman et al.を改変。
大気中のΔ14CO2の変化。色の違いは場所の違い。

Early Bomb Radiocarbon Detected in Palau Archipelago Corals
Danielle Glynn, Ellen Druffel, Sheila Griffin, Robert Dunbar, Michael Osborne, Joan Albert Sanchez-Cabeza
パラオから採取されたハマサンゴのAD1945-2008年のΔ14C記録について(AD1953-57のみは季節レベル)。AD1954のはじめ頃から上昇し始め、AD1976に最大値に達する(途中、1955にも小さなピークが見られる)。最初のピークは大気と海とのCO2の交換(ENSOなど)では説明できないため、マーシャル諸島で行われた核実験によって放出されたbomb-14CがNECやNECCによって輸送されたことを示唆している。
Glynn et al.を改変。
bomb-peakの立ち上がりに2つのピークが確認できる。

Measuring 14C Concentration in Wine to Monitor Global Distribution of 14C
Hirohisa Sakurai, Saori Namai, Emiko Inui, Fuyuki Tokanai, Kazuhiro Kato, Yui Takahashi, Taichi Sato, Satoshi Kikuchi, Yumi Arai, Kimiaki Masuda, Katsumasa Shibata, Yasunao Kuriyama
世界中の7カ国のワイナリーで作られたワインのΔ14Cを測定。南北両半球で有為な差が見られた。しかし混合ぶどうの場合、収穫の時期が醸造年よりも7-12年古いことが示された。つまりワインから大気の14C濃度を推定するのは難しいということになる。

Paleoceanography
Comparison of organic (UK’37, TEXH86, LDI) and faunal proxies (foraminiferal assemblages) for reconstruction of late Quaternary sea-surface temperature variability from offshore southeastern Australia
Raquel A. Lopes dos Santos, Michelle I. Spooner, Timothy T. Barrows, Patrick De Deckker, Jaap S. Sinninghe Damsté, Stefan Schouten
オーストラリア南東部で得られた堆積物コアを用いて過去135kaのSSTを復元。TEX86・アルケノン・有孔虫群集組成を組み合わせてより確度の高い推定を行った。間氷期に高く、氷期に低いという傾向はすべてのプロキシで一致したが、絶対値に大きな食い違いが見られた。TEX86は冬期のSSTを記録していると思われ、退氷期には冬の温暖化が顕著で、Leeuwin Currentが強化されたことが原因かもしれない。或いはTEX86を生成するThaumarchaeotaの棲息時期が変化したのかもしれない。

Impact of sea ice variability on the oxygen isotope content of seawater under glacial and interglacial conditions
C. E. Brennan, K. J. Meissner, M. Eby, C. Hillaire-Marcel, A. J. Weaver
海洋堆積物中の底性有孔虫δ18Oの解釈は氷床と深層水の温度の2つだけが考慮され、その他の変動要因は一般に無視されている。海氷の形成が深層水δ18Owに与える影響をモデルで評価したところ、氷期-間氷期の海氷変動が深層水・底層水のδ18Oに与える影響は少ないことが示された。ラブラドル海などの表層海水では変動が見られた。

Chemical Geology
Stable Sr-isotope, Sr/Ca, Mg/Ca, Li/Ca and Mg/Li ratios in the scleractinian cold-water coral Lophelia pertusa
J. Raddatz , V. Liebetrau , A. Rüggeberg , E. Hathorne , A. Krabbenhöft , A. Eisenhauer , F. Böhm , H. Vollstaedt , J. Fietzke , M. López Correa , A. Freiwald , W.-Chr. Dullo
深海サンゴLophelia pertusa88/86Sr・Sr/Ca・Mg/Ca・Li/Ca・Mg/Liが中層水の指標として使えるかどうかを評価。δ88/86Srは温度指標になると報告されていたが、むしろ海水のSr同位体組成を反映していると思われる。Sr/Caは温度指標になるものの、誤差が大きい。Li/CaとMg/Caは温度以外の要因によっても変動していると思われる。しかし、Li/Mgはその要因を打ち消し、いい温度指標になることが示された。現在の測定精度を考えると、2SDで1.5℃よりも大きい温度変化しか捉えることができないと思われる。

Growth-rate induced disequilibrium of oxygen isotopes in aragonite: An in situ study
Rinat I. Gabitov
生物・非生物源の炭酸塩のδ18Oが海と陸の温度指標として使われているが、非平衡の同位体分別による温度以外の変動要因が存在することも分かっている。aragoniteの沈殿実験を通して、結晶と溶液を時々刻々と同位体分析した。溶液にREEを添加し、結晶への取り込み過程をモニタリングした(成長速度が求まる)。晶出した結晶はSIMSでδ18Oを測定した。結晶の晶出(成長)速度と同位体分別係数の間に負の相関が見られた。