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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年7月4日木曜日

新着論文(Nature#7456)

Nature
Volume 499 Number 7456 pp5-120 (4 July 2013)

EDITORIALS
More than hot air
暑い空気以上のもの
オバマ大統領は地球温暖化に関するうまいスピーチをしたが、彼は石炭発電に対する規制や、より良い燃料経済を実行しなければならない。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Familiar nest sites beat better lakes
馴染みのある巣の場所が良い湖に勝る
Proc. R. Soc. B 280, 20130979 (2013)
アメリカ北部の湖に生息するハシグロアビ(common loons; Gavia immer)にタグをつけて調査したところ、酸性度の高い湖で生まれたハシグロアビは、より広くて酸性度が低い子育てに優れた環境よりも、自分が生まれたところに似た場所を子育ての場所に選択することが示された。馴染みがある場所の方がエサに精通しており、生存の可能性が高まることが原因ではないかと推察されている。こうした「繁殖の成功」と「生存率」のトレードオフは他の生物にも当てはまるかもしれない。

Ancient ‘starfish’ had a helix
古代の’ヒトデ’は螺旋を持っていた
Proc. R. Soc. B 280, 20131197 (2013)
ヒトデやウニなどの棘皮動物は対称な形状をしており、5つに分解することができる。しかし彼らの祖先は非対称あるいは左右対称の形状をしていたと考えられている。モロッコで発掘されたカンブリア紀の最古の棘皮動物の化石(Helicocystis moroccoensis)は、現在のボディプランの途中のような形状をしている。身体をねじって海底下に埋め込み、海底から突き出すように口を上に開けて棲息していたらしい。

Hot sex for jawless fish
アゴのない魚の熱いセックス
J. Exp. Biol. 216, 2702–2712 (2013)
ウミヤツメ(sea lamprey; Petromyzon marinus)のオスはメスを誘惑する時、背中にある油で詰まった細胞から熱を発することが分かった。交尾が可能なメスの前では0.3℃温度が上昇するらしい。セックス・アピールに熱を用いるものとしては最初の例だという。

Earthquakes sink volcanoes
地震が火山を沈ませる
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1857; http:// dx.doi.org/10.1038/ngeo1855 (2013)
京都大学の研究グループは2011年の東北沖地震(M9.0)の際に東北の火山帯が15cm沈降したことを、また別の海外の研究グループは2010年のチリ沖の地震(M8.8)の際に火山帯が15cm沈んだことを人工衛星の高度観測記録から突き止めた。前者の場合はマグマがプレートとともに沈んだこと、後者は熱水の貯蔵庫が減少したことが原因と考えられている。
>話題の論文
Volcanic subsidence triggered by the 2011 Tohoku earthquake in Japan
Youichiro Takada & Yo Fukushima

Subsidence at southern Andes volcanoes induced by the 2010 Maule, Chile earthquake
M. E. Pritchard, J. A. Jay, F. Aron, S. T. Henderson & L. E. Lara

Super-broccoli secret solved
スーパーブロッコリーの謎が解けた
New Phytol. 198, 1085–1095 (2013)
ブロッコリーやカリフラワーに含まれる、健康にプラスの効果が知られているglucoraphaninの生成にはMyb28と名付けられた遺伝子が関与していることが分かった。2種(Brassica oleraceaB. villosa)の交配によって高い濃度のglucoraphaninを持つハイブリッドができるらしい。

SEVEN DAYS
Solar mission
太陽ミッション
NASAの新たな太陽観測衛星Interface Region Imaging Spectrographが無事軌道に投入された。太陽の表面と外側の大気との間を観測する。

Obama on climate
気候に関するオバマ
オバマ大統領は、環境保護機関(Environmental Protection Agency; EPA)に対して発電所からのCO2排出を規制するよう命令した。さらに新たな発電所建設に対する規制に対しても仕事をするように要請している。Clean Air Actに基づいて今後数年間の気候戦略が取られる。

Alaskan volcano eruption escalates
アラスカの火山噴火がエスカレートしている
アラスカで最も活発なパブロフ(Pavlof)火山の噴火活動が6/25により活発になり、火山灰は上空8.5kmまで舞い上がった。アラスカの火山観測所が現在も活動を注視しているが、予算削減の関係で最近9つの観測所のうち4つが閉鎖されている。
>より詳細な記事
Financial blow for Alaskan volcano monitoring
Alexandra Witze

Conservation aid
保全の援助
資金が足りずに生物多様性の保全が遅れている40の国に対する国際的援助を行うことで、世界の危機に瀕したほ乳類の3分の1は保護できるという報告がなされた。GDP・国土面積などが関連しているという。資金が足りていない国として、イラク・セネガル・フランスなどが挙げられている。
>話題の論文
Targeting global conservation funding to limit immediate biodiversity declines
Anthony Waldron, Arne O. Mooers, Daniel C. Miller, Nate Nibbelink, David Redding, Tyler S. Kuhn, J. Timmons Roberts, and John L. Gittleman
PNAS, early edition

NEWS IN FOCUS
EU debates U-turn on biofuels policy
EUがバイオ燃料政策に関するUターンを議論している
Richard Van Noorden
バイオ燃料は種類によっては化石燃料よりも多くのCO2を排出する。

China gears up to tackle tainted water
中国が汚染水に立ち向かうためのギアを上げる
Jiao Li
中国政府は5億人民元を投入して、工業・農業によって汚染された地下水の浄化計画を行う。

Evolution makes the grade
進化が成功する
Lauren Morello
進化論を教育課程から外したカンザス州、ケンタッキー州などの州が、気候変化の科学を教育するように。

COMMENT
Agriculture: Feeding the future
農業:未来を養う
「我々は将来の食料不足に立ち向かうためにも、シードバンク(seed bank)の中から多様性を掘り出さなければならない」と、Susan McCouchらは主張する。

CORRESPONDENCE
Emissions: Will China expand on its carbon trading?
排出:中国は炭素トレーディングを拡大するのだろうか?
Xi Liang, Francisco Ascui & David Reiner

Conservation: Protection for trade of precious rosewood
保全:貴重な紫壇を貿易から保護する
Meredith A. Barrett, Jason L. Brown & Anne D. Yoder

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Planetary science: The robustness of planet formation
惑星科学:惑星形成の厳密さ
William F. Welsh
散開星団(open star cluster)の中にある2つの惑星の観測から、惑星系は散開星団のまだ密度が高い若い時期には、超新星爆発などの破壊的なイベントを生き延びることができることが実証された。

Ancient DNA: Towards a million-year-old genome
古代のDNA:100万年前のゲノムに向けて
Craig D. Millar & David M. Lambert
Orlando et al.の解説記事。
約70万年前のウマの骨から得られた完全なゲノムの塩基配列が解読された。ウマ属の進化について手がかりが得られただけでなく、従来考えられていたDNAの保存期間の限界も大幅に延長されることになった。

Earth science: Hot and deep
地球科学:熱くて深い
Andrew Mitchinson
Ferguson et al.の解説記事。
エチオピアの大地溝帯アファール(Afar)のマグマの地球化学分析データを用いたモデリングから、メルトは80km以深で形成されており、マントルの極めて熱い部分でできていることが示された。また別のモデルから、想像していたよりも過去30Maにプレートの厚さが薄くなっておらず、大陸地殻が割れて海が入るには、最終段階にプレートが急激に薄くなることが必要であると考えられる。

LETTERS
The same frequency of planets inside and outside open clusters of stars
散開星団の内と外での惑星の同じ周波数
Søren Meibom et al.
散開星団の太陽に似た2つの星の前を横切る小さな惑星の観測結果について。

Global resurfacing of Mercury 4.0–4.1 billion years ago by heavy bombardment and volcanism
重爆撃と火山活動による40-41億年前の水星の全球的な再舗装
Simone Marchi, Clark R. Chapman, Caleb I. Fassett, James W. Head, W. F. Bottke & Robert G. Strom
 水星の地表の中にはクレーターの密度が月に比べて低い部分があることが知られており、それは地表の再舗装が起きたことを物語っている。
 水星の最古の巨大クレーターに対する分析から、それが40-41億年前に形成されたこと、それ以前の地質構造がかき消されていることが示された。おそらく当時の激しい後期重爆撃によって駆動された火山活動が原因と思われる。

Melting during late-stage rifting in Afar is hot and deep
アファールの地溝形成後期の融解は熱くそして深い
D. J. Ferguson, J. Maclennan, I. D. Bastow, D. M. Pyle, S. M. Jones, D. Keir, J. D. Blundy, T. Plank & G. Yirgu
 火山性地溝における大量のメルト生成の主な原因が、「マントル温度の上昇」なのか「プレートが薄くなること」なのかは明らかになっていない。
 アファール地溝帯におけるモデル研究から、広範な火成活動が、通常よりも温度の高いアセノスフェアの深部融解により駆動されていることが示された。深さ80 kmよりも深い所でメルトが主に生成されているらしい。もし大陸地殻分裂の際に広範でプレートが薄くなる必要があるならば、末期に急速に起きる可能性が高い。

Recalibrating Equus evolution using the genome sequence of an early Middle Pleistocene horse
更新世中期初期のウマのゲノム・シーケンスを用いたウマの属進化の再検討
Ludovic Orlando et al.
ウマ科動物は化石記録が豊富なため、進化の良いモデルとなっている。56-78万年前の永久凍土に保存されたウマの脚の骨から抽出されたゲノムが解読された。現代のウマ、シマウマおよびロバの全ての起源となるウマ属(Equus)系統が生じたのは450万~400万年前であることが示唆された。また、ウマ集団のサイズが過去200万年の間にたびたび変動し、特に過酷な気候変動のあった期間に顕著であることが示された。
>関連する記事(ナショナル・ジオグラフィック)
最古、70万年前のウマのゲノム解読