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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年10月1日月曜日

新着論文(G3, GRL, PO, GBC, CP, BG)

横山研の新着論文担当箇所より。今回はAGU、EGU、GSA Bllutin。

G3
2012.9.24 - 30
Rapid post-mortem maturation of diatom silica oxygen isotope values
Dodd, J. P., Z. D. Sharp, P. J. Fawcett, A. J. Brearley, and F. M. McCubbin
珪藻が死んだ後にδ18Oがどのように変質するかについて。
ニューメキシコ北部の人口沼の珪藻のδ18Oは生前は平均して21.5‰だが、堆積後のδ18Oは平均して28.9‰と有意に高い。死後の同位体の上書きは半年以内に終了し、水(H2O)とケイ酸(SiO2)とが同位体平衡に達している。海洋・淡水で珪藻のδ18Oを古環境プロシキとして使用する際には注意しなければならない。

Improved determination of marine sedimentation rates using 230Thxs
Bourne, M. D., A. L. Thomas, C. Mac Niocaill, and G. M. Henderson
沈殿速度の見積もりに過剰の230Th(excess-230Th, 230Thxs)が用いられている。この手法を用いるためには初期状態の230Thを知る必要があり、つまり堆積後のウラン系列と230Thの壊変の補正が必要となる。砕屑物の238U/232Th使用率を推定する新手法を紹介。またMATLABで使えるタダの計算スクリプトも紹介。

Multiproxy characterization and budgeting of terrigenous end-members at the NW African continental margin
Just, J., D. Heslop, T. von Dobeneck, T. Bickert, M. J. Dekkers, T. Frederichs, I. Meyer, and M. Zabel
北西アフリカで採取された海洋底堆積物コアの粒度・陸源物質・残留磁気磁束から過去8万年間の陸源物質の供給源のエンドメンバー(1つは風成塵、2つは河川由来)を推定。河川性の堆積速度は後背地の降水量というよりは寧ろ海岸からの距離(つまり海水準)によって支配されている。LGMとハインリッヒイベント時に高いダストの沈着。特にH1には現在の80倍もの大量の風成塵が見られ、風化の促進と植生による被覆が失われたことが原因と考えられる。

Signatures and significance of aeolian, fluvial, bacterial and diagenetic magnetic mineral fractions in Late Quaternary marine sediments off Gambia, NW Africa
Just, J., M. J. Dekkers, T. von Dobeneck, A. van Hoesel, and T. Bickert
上の論文と同じコアの残留磁気を用いて生物が生成する磁性鉱物や堆積後の還元による続成作用などを評価。

GRL
2012.9.24 - 30
A sea ice free summer Arctic within 30 years: An update from CMIP5 models
Wang, M., and J. E. Overland
CMIP5による将来予測はCMIP3と同じく北極海の海氷が2030年代までに消失することを予測している。しかしながら、現在観測されている速度で海氷の後退を再現できているモデルは一つも存在しない。

Ocean heat uptake and its consequences for the magnitude of sea level rise and climate change
Kuhlbrodt, T., and J. M. Gregory
温暖化による海水の熱膨張によって海水準がどれほど上昇するかについてのGCMを用いた予測の比較(CMIP)。モデル間で熱吸収効率は最大で2倍異なった。また熱を最も吸収すると考えられるのは南大洋で、渦による拡散効果が効くらしい。

Aerosol contribution to the rapid warming of near-term climate under RCP 2.6
Chalmers, N., E. J. Highwood, E. Hawkins, R. Sutton, and L. J. Wilcox
エアロゾルの排出が近い将来(near term)の温暖化にどのように寄与するかを2つのシナリオに基づいてモデルシミュレーション。例えば石炭燃焼の減少によって硫酸塩エアロゾルの濃度が低下し、地球を冷やす直接効果と間接効果に影響する。特に亜熱帯太平洋の北東部においてはエアロゾルの間接効果が寄与する。全球的な・地域的な気候にエアロゾルが将来与える影響が大きいことが示唆される。

California heat waves in the present and future
Gershunov, A., and K. Guirguis
現在と将来のカリフォルニアの熱波をGCMを用いて調査。乾燥した昼間の熱波(1)と湿潤な夜間の熱波(2)との2つのタイプに大別することができ、将来後者のタイプが特に増えることが示された。カリフォルニア全体で見ると、砂漠地域の熱波は弱まり、沿岸部の熱波は強化されるらしい。沿岸部の高い人口密度と後者の熱波のタイプに社会が順応していないことを考えると、将来の健康被害やエネルギー需要へのストレスを招く可能性がある。

Spatial distribution of air-sea heat fluxes over the sub-polar North Atlantic Ocean
Moore, G. W. K., I. A. Renfrew, and R. S. Pickart
海洋と大気との熱交換は大気海洋循環を駆動しておりその理解は重要である。特に北太平洋の熱の交換はAMOCの形成にも重要な構成要素である。ラブラドル海とグリーンランド海の熱フラックスが特に冬に大きいことはよく認識されているが、アイスランド海ではフラックスが最も小さいにも関わらず深層水形成が起きている。熱フラックスは低気圧によっても影響を受けており、大気循環がAMOCに大きく影響する可能性がある。

Abrupt change in atmospheric CO2 during the last ice age
Ahn, J., E. J. Brook, A. Schmittner, and K. Kreutz
南極アイスコアからDO8とDO9の時の大気中CO2濃度を高時間解像度で復元。~20ppmの上昇と高緯度域の気候変動を考察。~10ppmのCO2濃度上昇が200年以内で起きていたことを指摘。南極の気温に比べてわずかに遅れている?
論文概説

Paleoceanography
2012.9.24 - 30
Response of eastern tropical Atlantic central waters to Atlantic meridional overturning circulation changes during the Last Glacial Maximum and Heinrich Stadial 1
Huang, E., S. Mulitza, A. Paul, J. Groeneveld, S. Steinke, and M. Schulz
北西大西洋の堆積物コアの底性有孔虫のMg/Caとδ18Oを用いてLGMとH1の温度躍層の変化を復元。Planulina ariminensisのMg/Ca-SSTはコアトップでキャリブレーション。LGMとH1の温度躍層は現在と同じ温度。550-570m深は1.2-1.5℃高かった?モデルではAMOCの弱化と赤道大西洋の温暖化が示唆されていたが、それとは食い違う結果に。代わりに塩分はLGMとH1で高かった。南大洋起源ではなく、北大西洋起源?
Huang et al. (2012)を改変。
深さの異なる堆積物を採取し、その中に含まれている底性有孔虫の殻を化学分析することで、低層水の深度プロファイルが描ける。

Pleistocene equatorial Pacific dynamics inferred from the zonal asymmetry in sedimentary nitrogen isotopes
Rafter, P. A., and C. D. Charles
赤道太平洋の東と西で得られた2本の堆積物コアのバルク堆積物δ15Nを用いて過去1.2Maの海洋表層の生物活動及び物理循環を復元。東赤道太平洋の栄養塩の湧昇(窒素利用効率)は地域的な季節日射量の変動に強く支配されていることが分かった。また10万年周期は顕著には見られない。将来の熱帯太平洋の生物活動は割と予想できるかも?

A molybdenum isotope record of Eocene Thermal Maximum 2: Implications for global ocean redox during the early Eocene
Dickson, A. J., and A. S. Cohen
急激な炭素放出イベントによる温室効果の結果、始新世初期は温暖だったことが知られているが、この時の海洋の還元状態を復元するために、北極海から得られた堆積物コアのモリブデン同位体を測定した(δ98/95Mo)。ETM-2の最温暖期に最も高い同位体比が得られ、貧酸素状態であったことが分かる。またPETMに匹敵する程度の貧酸素状態であったことが示唆される。
Dickson & Cohen (2012)を改変。
ETM-2におけるd13Cの急激なエクスカージョン(大気への大量の炭素放出)とMo同位体(貧酸素水塊の存在)とが同時に観察される。またその程度はPETMに匹敵するらしい。

Corals record persistent multidecadal SST variability in the Atlantic Warm Pool since 1775 AD
Vásquez-Bedoya, L. F., A. L. Cohen, D. W. Oppo, and P. Blanchon
赤道大西洋のユカタン半島で得られたサンゴ(Siderastrea siderea)の成長速度から過去225年間のSSTを復元。キャリブレーションには画像処理で復元した3Dのサンゴ骨格の成長速度とERSSTのデータを使用(r = -0.66)。復元されたSSTには大西洋数十年振動(Atlantic Multidecadal Oscillation; AMO)の約60-80年の周期性が見えた。過去225年間のSST変動は1℃の中に収まっていたと考えられ、Cariaco Basinの浮遊性有孔虫Mg/Caを用いたSST復元とも整合的
Vásquez-Bedoya et al. (2012)を改変。
サンゴ骨格の成長速度とSSTとの相関。想像していたよりは使えそう。
Vásquez-Bedoya et al. (2012)を改変。
上の関係をもとに復元された過去225年間のSST。他の海域のサンゴSr/Caで見られる近年の温暖化が見られないのは何故??成長速度に温度の閾値などは存在しないのか?

Global Biogeochemical Cycles
2012.9.1 - 30
Global calcite cycling constrained by sediment preservation controls
Dunne, J. P., B. Hales, and J. R. Toggweiler
ボックスモデルで海洋のカルサイトの輸送・沈降。埋没フラックスを再現。さらに不飽和度・有機物分解や有機物の水平輸送・結石形成(lithogenic sedimentation)などがカルサイトの輸送速度に与える影響を定量化。得られたモデルをもとに将来の温暖化や海洋酸性化の影響を評価。また氷期-間氷期スケールのCCDやリソクラインの深度なども復元。間氷期から氷期への移行期にはカルサイト埋没が海洋のアルカリ度を少しずつ増加させていたことが分かった。

Nanoscale lignin particles as sources of dissolved iron to the ocean
Krachler, R., F. von der Kammer, F. Jirsa, A. Süphandag, R. F. Krachler, C. Plessl, M. Vogt, B. K. Keppler, and T. Hofmann
鉄の濃度は海洋の生物生産を制約しているが、鉄は河川を通して海へと運搬されているが、そのほとんどは河口における塩分変化によって沈殿してしまうため、外洋には運搬されないとこれまで考えられてきた。泥炭地を流れる河川水に含まれている鉄に富んだ微粒子が塩分変化による沈殿を受けずに外洋へと運搬されることが分かった。構成成分は主に被子植物と裸子植物のリグニンであることも分かった。リグニンフェノールは全海洋でわずかながら見られるため、十分に長い滞留時間でもって鉄を保持していると予想される。

Biogeosciences
2012.9.24 - 30
A reappraisal of the vital effect in cultured benthic foraminifer Bulimina marginata on Mg/Ca values: assessing temperature uncertainty relationships
J. C. Wit, L. J. de Nooijer, C. Barras, F. J. Jorissen, and G. J. Reichart
温度制御飼育実験による底性有孔虫(Bulimina marginata)のMg/Ca-SSTキャリブレーションの再評価。一応有為には相関がある(R2=0.28)が個体間の変動も大きく、実際に古気候学に応用するにはMg/Ca-SSTのキャリブレーションの評価を十分に行う必要がある。個体間の際が出る原因はおそらく生態学的な生息環境の違いで、より多くの個体を均質化して分析することでMg/Ca-SSTキャリブレーションの確度を上げる必要がある。
Wit et al. (2012)を改変。
各温度区で飼育実験した個々の底性有孔虫の殻のMg/Ca測定結果。個体間の変動が大きく、感度も悪いことが分かる。この関係式を使って古水温を推定するのは難しそう。

Climate of the Past
2012.9.24 - 30
Can we predict the duration of an interglacial?
P. C. Tzedakis, E. W. Wolff, L. C. Skinner, V. Brovkin, D. A. Hodell, J. F. McManus, and D. Raynaud
過去80万年間の記録をもとに過去の間氷期の継続期間について評価。間氷期の始まりは北半球の夏の日射量が極大を迎え、歳差(precession)が最低になってから2,000年以内に訪れる。これはミランコヴィッチ理論とも整合的である。逆に間氷期から氷期への以降(Glacial inception)は地軸形動(obliquity)が減少しつつある時期に訪れる(最低値になる前)。このとき、1回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:13,000年)と2回目の減少の時に氷期に突入する場合(間氷期の継続期間:28,000年)とがあり、おおよそ温度と大気中CO2濃度が極大を迎えてから10,000年後に起きる。しかしながら予想することは難しい。間氷期が長いかどうかはフォーシングの強さではなく、寧ろ天文学的な軌道要素の位相関係によって決まっている?