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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年10月6日土曜日

新着論文(Science#6103)

Science
VOL 338, ISSUE 6103, PAGES 1-160 (5 OCTOBER 2012)

Editors' Choice
A Sea of Difference
異なる海
Sci. Rep. 2, 10.1038/srep00582 (2012).
黒海の環境は人間活動によって大きく変動しているが、環境悪化はより長期間にも起きていたらしい。黒海の堆積物から復元された過去7,500年間の環境記録はこの2,000年間に黒海に流入する河川による堆積物の輸送量が増加していること、ここ500-600年間に東ヨーロッパの森林破壊によって栄養塩の流入量が増加し、珪藻や渦鞭毛藻の大増殖を招いており、食物連鎖が激変していることを示している。

News of the Week
Prison Terms Sought for Italian Earthquake Experts
イタリアの地震の専門家に刑期が求められる

National Commission for the Forecast and Prevention of Major Risksのメンバーでもある科学者4人とエンジニア2人は3ヶ月間継続していた微動に対するリスクを評価するために集まり、「エネルギーを消化するので微動は大きな地震のリスクは低減される」などの信用できない引用などを含む報告書を提出していた。その誤った報告が人命が失われた原因になったという指摘がある。

Element 113 Clinched?
113番元素が確定的に?
日本とロシアはどちらが先に113番目の重元素を観測したかについて揉めていたが、理化学研究所の研究チームが3回目の生成に成功した。

Polar Bear Biologist Cleared Of Misconduct Charges
ホッキョクグマの生物学者が誤った行いの告訴を解消した
Charles Monnettは研究における誤った行いで告訴されていたが、それを解消し仕事に復帰した。しかしながら彼は内部公文書を複数の公共機関や教育機関e-mailしたことで懲戒免職を受けている。事の発端はShellの北極における掘削に反対するために、彼がデータを改ざんし公表したことだという。

Concrete Evidence for Water On Ancient Mars
古代の火星に水があった事の確固たる証拠
数十億年前には十分な水流がゲールクレーターの中央付近まで礫を運んでいたらしい。15cmの厚さの地層中の礫は十分に円摩されており、クレーターの縁を起源とする岩石が水で流された証拠と考えられている。以前のSpritとOppotunityの調査で塩分に富んだ地下水・すぐに消える塩水だまり・古代に流れていた河川の跡などが発見されていたが、今回の発見はより多くの情報を与えてくれた。しかしこうした地層は生物の痕跡を残すには最悪のもので期待は薄い。そうした証拠は湖の底などで静かに堆積した地層などに残っていると推測される。

BY THE NUMBERS
数字から
$1.2 trillion
1,200,000,000,000ドル(約100兆円)
気候変動の推定コスト。地球全体のGDPの1.6%。

50%
グレートバリアリーフにおけるサンゴ被覆の1985年から2012年にかけての減少率。PNAS (1 October)の研究より。

News & Analysis
Utility Sacrificed for Speed, Supercomputer Critics Say
スピードのために利便性が犠牲になっているとスーパーコンピューターの批判は言っている
Dennis Normile
日本の「京(K)」スーパーコンピューターがついに現実世界の問題を解決するために稼働を開始したが、利用者の中にはその設計がスピードに傾倒しすぎていると指摘するものもいる。

Researchers Struggle to Assess Responses to Ocean Acidification
海洋酸性化に対する応答を評価するために研究者が苦戦している
David Malakoff
 先日カリフォルニア・モンテレーで行われた海洋酸性化の将来予測に関する会議’the Ocean in a High-CO2 World’には40カ国から550名もの研究者が参加した。8年前にはわずか125名であった。海洋酸性化研究は拡大し、そして競争力が増している
 これまで海洋酸性化に対する生態系の応答を調べる研究は単に酸性化させた海水中で生物を飼育するものがほとんどであったが、この手法は複雑な関係性を持つ・広がりを持つ生態系を完全に再現することにはならない。
 それを解決するためのアプローチの1つは地質学時代に起きた似た海洋酸性化をアナログにすることである。その候補の一つが’PETM’で、温暖化と海洋底層水の酸性化が起き、特に底性生物の多くが絶滅したと知られている。一方で海洋表層で起きたことはあまりよく分かっていない。多くの植物プランクトンが絶滅したが、代わりに繁栄した種によって全体としての多様性は維持されたらしい。石灰藻の作る殻一つ一つを丹念に数えた研究ではPETMにおける顕著な数の減少は確認されなかったものの、PETMと現在の海洋酸性化の速度は全く異なるため、「海洋酸性化は円石藻には問題ない」という意見を持つのは危険だと指摘している。
 また地中海やパプアニューギニアに存在する天然にpHが低下した海域(地底からCO2が吹き出している場所;seeps)における現地調査や飼育実験も行われている。
 第3のアプローチはより長期間・より広範囲の飼育実験を行うことである。4年間の600世代にわたって行われた飼育実験では窒素固定を担うシアノバクテリアの一種(Trichodesmium)は酸性化海水に適応することができたという報告もある。さらに既に起きている酸性化に適応している種も多く存在する。カリフォルニア沿岸では湧昇によって常にpHが低い状態にあるが、そうした地域で進化してきた種は遺伝的な多様性も大きく、海洋酸性化に対する耐性も強いと考えられる。
 
Perspectives
How Insect Herbivores Drive the Evolution of Plants
どのように昆虫が草をはむかが植物の進化を駆動する
J. Daniel Hare
特定の草食動物の有無がどの植物の遺伝形が自然淘汰されるかに影響する。

Earthquakes in the Lab
研究室内での地震
Toshihiko Shimamoto and Tetsuhiro Togo
はずみ車ベースの機器を用いた摩擦実験は現実の地震を再現するのに用いることができる。

Reports
The Shortest-Known–Period Star Orbiting Our Galaxy’s Supermassive Black Hole
我々の銀河の超巨大ブラックホールを周回する、知られている中で最も短い周期を持つ星
L. Meyer, A. M. Ghez, R. Schödel, S. Yelda, A. Boehle, J. R. Lu, T. Do, M. R. Morris, E. E. Becklin, and K. Matthews
我々の銀河の中心を短い周期で周回する星の存在は超巨大ブラックホールがあることの確たる証拠である。ケック望遠鏡による17年間の観測記録から「S0-102」と名付けられた星がブラックホールの周りをたった11.5年で周回していることが分かった。まだ調べられていない領域でのアインシュタインの一般相対性理論を検証するのに使える可能性がある。

Complex Dental Structure and Wear Biomechanics in Hadrosaurid Dinosaurs
ハドロサウルスの複雑な歯の構造とすり潰しの生体機能
Gregory M. Erickson, Brandon A. Krick, Matthew Hamilton, Gerald R. Bourne, Mark A. Norell, Erica Lilleodden, and W. Gregory Sawyer
哺乳類の臼歯は4つの組織によって構成されており、それらは別々に植物を噛み砕き、中から栄養を得るための機能を持っている。似た機構はカモノハシ恐竜(duck-billed dinosaur; Hadrosauridae)にも見られる。しかしながら爬虫類の歯の構造は一般的には2つの組織でできており、なぜそうした複雑性を獲得できたかについてはよく分かっていない。ハドロサウルスが常識を破り’6つ’の組織の歯の構造へと進化していたことが分かった。

Rapid Acceleration Leads to Rapid Weakening in Earthquake-Like Laboratory Experiments
地震を模した室内実験で確認された急な加速が急な脆弱化につながる証拠
J. C. Chang, D. A. Lockner, and Z. Reches

Insect Herbivores Drive Real-Time Ecological and Evolutionary Change in Plant Populations
昆虫が葉を食むことがリアルタイムで植物の群集組成に生態学的な・進化学的な変化を駆動する
Anurag A. Agrawal, Amy P. Hastings, Marc T. J. Johnson, John L. Maron, and Juha-Pekka Salminen
たった5回の成長シーズンでも月見草(common evening primrose)を昆虫から守るだけでその遺伝子形が変化することが分かった。

Natural Enemies Drive Geographic Variation in Plant Defenses
自然の敵が植物の身の守り方における地理的な変動を駆動する
Tobias Züst, Christian Heichinger, Ueli Grossniklaus, Richard Harrington, Daniel J. Kliebenstein, and Lindsay A. Turnbull