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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年10月21日日曜日

新着論文(Science#6105)

Science
VOL 338, ISSUE 6105, PAGES 293-428 (19 OCTOBER 2012)

Editors' Choice
When the Sun Erupts
太陽が爆発するとき
Nat. Phys. 10.1038/nphys2427; 10.1038/nphys2440 (2012).
コロナ質量放出(Coronal mass ejections; CMEs)は太陽大気から宇宙空間に向けて大規模なプラズマ塊が放出されるイベントのことを指す。人工衛星や地上の送電網、飛行中(特に極の上空)の人体にも影響を与えることが知られている。人工衛星が打ち上げられ、太陽の観測が始まった1970年代初頭以降40年が経過したものの、その物理的なメカニズムの理解は不足している。2008年11月2日に観測されたCMEsをコンピューターシミュレーションによって再現(太陽内部から大気まで)し、そのメカニズムを考察したところ、2つのこく増はまるで固体同士がぶつかるように衝突する様が確認された。

Wild Textile
野生の布地
Sci. Rep. 2, 664 (2012).
人類が布を使用し始めたのははるか氷期まで遡るが、亜麻や麻、羊毛などの栽培・飼育が始まったのは農業が始まってからと考えられている。Denmarkから発見された2,800年前の布地には’イラクサ’が広く使われていたらしい。ストロンチウム同位体分析から、それがヨーロッパ中部からデンマークへともたらされたらしいことも分かっている。当時のヨーロッパ中部では亜麻が盛んに栽培されており、このことは亜麻や麻が栽培され出してからも野生の草を使った繊維が広く用いられていたことを指している。

News of the Week
Advisory Panel Defends GM Research
顧問のパネルが遺伝子組み換え研究を守る
10/9にインドの科学顧問から出された報告書においては、遺伝子組み換え食品の使用に前向きな姿勢が見られる。一方でインド議会はこれまで遺伝子組み換え食品に対して後ろ向きな姿勢を見せていた。インド国内においては意見が大きく分かれている状態にある。科学顧問から出された報告書の中では科学庁からは独立した組織を創設して遺伝子組み換え食品を監視する必要があると要請している。

The View From Beneath
下からの眺め
高緯度域の海氷の範囲は人工衛星を用いて観測されているものの、上空からは氷の厚さを見積もることはできない。東南極の南大洋において、通常海底のマッピングに用いているマルチビーム・ソナーを上向きに搭載した自律式潜水艇(AUV)を用いて、南大洋に浮かぶ氷の下からの起伏のマッピングが行われた。Australian Antarctic DivisionとAntarctic Climate and Ecosystems Cooperative Research Centreによる国際プロジェクトの一環として行われたらしい。

Climate Change a Priority For World Bank
世界銀行の優先事項、気候変動
初めて科学者から世界銀行の頭首になったJim Yong Kimは世界銀行の最優先事項は気候変動に対する対策だと主張している。彼はもともとは途上国の公衆衛生を扱う専門家であった。「各企業と各国が新たな技術開発により気候変動を緩和し、それによって経済的に成長することが必要だ」と述べている。

Ancient Canals Transported Building Blocks to Angkor Wat
建材をアンコールワットに運んでいた古代の運河
アンコールワットの建築材は近くの聖なる山から切り出されたものでできていることが知られていたが、時には1,500kgを超えるような大きな・大量の石をどのように運んだのかについては知られていなかった。Google Earthを用いた観察と現地調査から、どうやら37kmの道のりを運河を使って資材を運んでいたらしいことが分かった。

Perspectives
Galactic Archaeology
銀河の考古学
Rok Roškar and Victor P. Debattista
星の密度と理論的な洞察を組み合わせることで、渦巻き銀河の進化をよりよく理解することができるだろう。

Life in the Early Triassic Ocean
三畳紀初期の海の生命
David J. Bottjer
来る100年間は地球は温暖化し、さらに海洋は酸性化や貧酸素の状態も同時に起きることが予想されている。PETMが温暖化した世界のアナログになるとして盛んに研究がなされているが、それでも温暖化の速度や規模、その厳しさは足りないと考える科学者もおり、顕世代史上最大の大量絶滅が起きたP/T境界の温暖期にも注目が集まっている。それはおよそ2億5千万年前に相当し、シベリアの洪水玄武岩が地下の石炭や有機物に富んだ堆積物を燃焼させ、発生したCO2による温室効果によって地表温度は極めて高かったと考えられている。熱帯地域での表層水温は約40℃で、それによって生じた海洋無酸素、緑色硫黄バクテリアによる硫化水素生成による毒によって回復におよそ1億年を要するほどの大量絶滅が起きたと想像されている。海洋酸性化、貧酸素、浅海域の硫黄濃度上昇は短い時間スケールで、温暖化はより長い時間スケールで生物に対して致命傷を与えたと考えられる(特にサンゴなど)。当時の大陸は集合していて超大陸パンゲアを形成しており、また炭酸塩骨格を持つプランクトンも登場していなかったため、海洋のアルカリ度や堆積物によるバッファーもうまく効かなかったと考えられる。そのため現在とは全く異なるセッティングで温暖化が進行したことも指摘されている。しかし炭素循環や生物の大量絶滅、温暖化に対する知見を深めてくれることが期待されている。

Refining the Radiocarbon Time Scale
放射性炭素時間スケールの改訂
Paula J. Reimer
日本の水月湖から得られた高時間解像度の堆積物記録を用いて、12.6 - 50kaの間の放射性炭素年代-暦年代の確度が飛躍的に向上する。
>近いうちに解説記事書きます。

Unconventional Chemistry for Unconventional Natural Gas
非従来型の天然ガスに対する非従来法の化学
Eric McFarland
将来経済社会は燃料や化学合成製品を生成するのに従来の石油から天然ガスへと転換するため、新たな化学プロセスが必要とされている。

Reports
Jet-Launching Structure Resolved Near the Supermassive Black Hole in M87
M87の超巨大ブラックホール近傍から判明したジェット噴射構造
Sheperd S. Doeleman

Lethally Hot Temperatures During the Early Triassic Greenhouse
三畳紀初期の温室効果による致命的に高かった温度
Yadong Sun, Michael M. Joachimski, Paul B. Wignall, Chunbo Yan, Yanlong Chen, Haishui Jiang, Lina Wang, and Xulong Lai
過去に起きた生物の危機には温暖化が非常に重要な位置を占めていた。コノドントのd18O分析と海成炭酸塩岩のd13C分析などから、ペルム紀後期の大量絶滅(P/T境界)は急激な温暖化を伴っており、三畳紀の初期においては特に熱帯域の温暖化が激しかったことが分かった。石灰藻類は絶滅し、テチス海の赤道付近は魚類がほとんど姿を消し、代わりに小型の無脊椎動物が卓越した。温暖化が熱帯から動植物の姿を消させたと考えられ、Smithianの終わりの危機の主要因であったと考えられる。

A Complete Terrestrial Radiocarbon Record for 11.2 to 52.8 kyr B.P.
11.2 - 52.8 kyrの間の完全な陸域の放射性炭素の記録
Christopher Bronk Ramsey, Richard A. Staff, Charlotte L. Bryant, Fiona Brock, Hiroyuki Kitagawa, Johannes van der Plicht, Gordon Schlolaut, Michael H. Marshall, Achim Brauer, Henry F. Lamb, Rebecca L. Payne, Pavel E. Tarasov, Tsuyoshi Haraguchi, Katsuya Gotanda, Hitoshi Yonenobu, Yusuke Yokoyama, Ryuji Tada, and Takeshi Nakagawa
放射性炭素は過去5万年間の地質学試料・考古学試料などに年代を与えるだけでなく、炭素循環におけるトレーサーとしても重要である。しかしながら12.5kaよりも前の大気の14Cを反映する記録はこれまで不足しており、氷期に相当する試料の高精度の年代測定は限られていた。日本の水月湖から得られた年縞堆積物を用いて過去52.8kaから11.2kaの大気の14Cを高精度に復元。これによって放射性炭素年代の測定限界までの総括的な記録が完成することになる。水月湖から得られた時間スケールを用いることで他の陸上の古環境記録との直接対比も可能になり、さらに大気-海洋の海洋の放射性炭素に関する関係性(海洋のローカルなリザーバー年代など)を求めることが可能になる。
>近いうちに解説記事書きます。

Genomic Variation in Seven Khoe-San Groups Reveals Adaptation and Complex African History
7つのKho-Sanグループの遺伝的多様性が適応やアフリカの複雑な歴史を明らかにする
Carina M. Schlebusch, Pontus Skoglund, Per Sjödin, Lucie M. Gattepaille, Dena Hernandez, Flora Jay, Sen Li, Michael De Jongh, Andrew Singleton, Michael G. B. Blum, Himla Soodyall, and Mattias Jakobsson