Science
VOL 339, ISSUE 6126, PAGES 1349-1476 (22 MARCH 2013)
Editors' Choice
The Effects of Land-Use Change
土地利用変化の影響
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50206; 10.1002/grl.50159 (2013).
土地利用の変化は地域的・全球的なスケールで気候に影響するが、そうした変化のパターンについてはよく分かっていない。
ブラジル中部・南部のサトウキビ栽培が現在盛んで、今後もますます盛んになると考えられる地域で水気候がどのように変化するかをモデルを用いて評価した。他の作物栽培地やサバンナがサトウキビ畑に変わった場合、収穫期には1℃寒冷化し、収穫後には1℃温暖化すること、土壌からの蒸発散量が低下して降水量が減少することが示された。
また別の研究からは、土地利用形態が全球的な気候変動(熱波など)に与える影響は他の人間活動の影響に比べると小さいことも示された。
News of the Week
Japanese Draw Methane From Sea Floor
日本の海底からのメタンの引き上げ
世界で初めて、渥美半島沖80kmの1,000m深の海底下のメタンハイドレートから天然ガスが採取された。堆積物を330m掘削し、60mの厚さの砂岩層から水を抜くことで減圧することで得られた。JOGMECによると、試験掘削地には日本が現在輸入している天然ガスの11年分に相当する量が眠っているという。しかし、一方で環境保護主義者はメタンの漏れや海洋環境への影響を懸念している。
Obama Touts Energy Research Plan at Argonne
アルゴンヌにてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
Energy Security Trustと呼ばれるエネルギ研究基金を設立するよう、オバマ大統領はエネルギー局のArgonne National Laboratoryにて声高に主張した。海岸沖の石油掘削に充てられていた予算を分配し、エネルギー研究と技術発展に年間20億ドルを10年間にわたって充てる計画となっている。
>より詳細な記事(OPEN)
Obama Touts Energy Research at Argonne National Laboratory
アルゴンヌ国立研究所にてオバマ大統領はエネルギー研究についてうるさく勧誘する
David Malakoff
Intel Top Prize to Algae Biofuel Study
インテルのトップが藻バイオ燃料研究に賞金を与える
1位の賞:バイオ燃料に有望な油を生産する藻類のうち、より多くの油を生産する藻類の飼育を行った17歳の少女に10万ドル(!)
2位の賞:薬の治療の際にタンパク質がどのように結合するかを予測するバイオインフォーマティクス研究を行った17歳の少年に7万5千ドル
3位の賞:低価格・低エネルギーのプラズマ発生装置を考案し作成した17歳の少年に5万ドル
News & Analysis
A Rescue Mission for Amphibians at the Brink of Extinction
絶滅の瀬戸際の両生類を救済するミッション
Richard Stone
両生類研究センターがパナマに設立される予定となっており、研究者は絶滅した種の組織から胚を作成している。
A More Modest Climate Agenda for Obama's Second Term?
オバマの第二期の気候変動の課題はより控えめ?
Eli Kintisch
ホワイトハウスの科学評議会が、オバマ大統領が地球温暖化の原因と結果を評価する上で必要な道筋を示してきた。
Life Could Have Thrived on Mars, but Did It? Curiosity Still Has No Clue
生命は火星にいたに違いないが、本当にいたのだろうか?キュリオシティーはまだ証拠を得ていない
Richard A. Kerr
初めて、科学者は火星に生命がいたかもしれない証拠を示したが、火星の生命はまだ完全には見つかっていない。
News Focus
Battle for the Barrel
バレルのための闘い
Robert F. Service
政府が自動車用燃料としてどちらにより権限を与えるかを巡って、石油会社とエタノール業界が議論を繰り広げているが、今年はトウモロコシの茎や農業廃棄物を原料にしたセルロース・エタノールが決定的になりつつある。
Letters
China's Food Security Soiled by Contamination
汚染された中国の食品安全
Yaolin Liu, Cheng Wen, and Xingjian Liu
中国においては、作物用の土地が急速に失われているだけでなく、土壌の汚染もまた食品安全の上で重大な問題となっている。耕作地の8.3%が鉱業やゴミの埋め立て、殺虫剤などによってひどく汚染されている。カドミウムや鉛などの重金属が食卓に並ぶ食品に混入しており、汚染による健康被害は鉱業地帯で顕著である。
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Resesarch
Perspectives
Probing an Extrasolar Planet
系外惑星を検出する
Mark S. Marley
系外惑星の大気の高解像度のスペクトル観測によって、その起源を制約することができる。
Characterizing Giant Landslides
巨大地滑りを特徴付ける
David N. Petley
全球の地震データを分析することで、岩石なだれを分類し、どのようにしてそれらが起きるのかを理解できるかもしれない。
Reports
Detection of Carbon Monoxide and Water Absorption Lines in an Exoplanet Atmosphere
系外惑星の大気の一酸化炭素と水の吸収帯の検出
Quinn M. Konopacky, Travis S. Barman, Bruce A. Macintosh, and Christian Marois
HR8799から40AUのところを公転する系外惑星の大気中の一酸化炭素と水の吸収バンドをスペクトル分析した。惑星の大気の構造や表面の重力などが分かり、若い星であることが分かった。
Simple Scaling of Catastrophic Landslide Dynamics
破滅的な地滑りの力学の単純なスケーリング
Göran Ekström and Colin P. Stark
地震波データの逆解析から破滅的な地滑りに繋がる力が明らかに。
Two Modes of Change in Southern Ocean Productivity Over the Past Million Years
過去数百万年間の南大洋の生物生産性の変化の2つのモード
S. L. Jaccard, C. T. Hayes, A. Martínez-García, D. A. Hodell, R. F. Anderson, D. M. Sigman, and G. H. Haug
氷期には南大洋のAntarctic Zoneの有機物輸送量は低下しており、大気中のCO2濃度の低下期に一致していた。逆にSubantarctic Zoneの粒子状有機物量は氷期へと向かう際に増加しており、ダストフラックスが増加する時期と一致しており、鉄肥沃が起きていた可能性が示唆される。南大洋の高時間解像度の堆積物コアを新たにまとめたところ、南大洋におけるこれら2つのモードが大気中のCO2濃度の変動を決定していたことが示唆される。
Export of Algal Biomass from the Melting Arctic Sea Ice
融解する北極の海氷から運ばれる藻類バイオマス
Antje Boetius, Sebastian Albrecht, Karel Bakker, Christina Bienhold, Janine Felden, Mar Fernández-Méndez, Stefan Hendricks, Christian Katlein, Catherine Lalande, Thomas Krumpen, Marcel Nicolaus, Ilka Peeken, Benjamin Rabe, Antonina Rogacheva, Elena Rybakova, Raquel Somavilla, Frank Wenzhöfer, and RV Polarstern ARK27-3-Shipboard Science Party
北極においては夏の間氷の下の一次生産は抑えられているが、それは氷や雪によって覆われているからだけでなく、成層化が栄養塩の混合を抑えているからでもある。2012年夏の北極の海氷が史上最低となったときに行われた観測航海の際のデータから、北極海中央部の海底に平均して1m2あたり9gの藻類バイオマスが堆積していることが分かった。この航海で得られたデータは気候変化が北極の一次生産、生物多様性、生態機能にどのように影響するかを評価するのに役に立つかもしれない。