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2013年3月20日水曜日

「南極・北極の気象と気候」(山内恭、2009年)


南極・北極の気象と気候
山内恭
気象ブックス(成山堂書店)2009年

著者は国立極地研究所・教授の山内恭 氏。

あまり一般向けではないけれど、極域の気候変動や気象を網羅的に書き記した半・教科書。
とても勉強になったので、そのうち購入しようと思っています(今回は図書館でレンタル)。

普段温帯に住んでいるだけに、馴染みのない気象現象の紹介がほとんどですが、「強烈な接地逆転層」「カタバ風」「ダイヤモンド・ダスト」「オゾンホール」など、非常に興味深く感じました。

本人自体が本の中で断っていますが、アイスコアには研究者としてほとんど携わっていなかったようです。僕自身一番知りたかったのはアイスコアに関することだったので、また別の本にあたろうと思います。

以下はピックアップした引用文。個人的なメモの色が強いです。

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「南極は気候変動のカナリアである」(pp. 13)

二酸化炭素濃度そのものの絶対値は、南極は北極に比べ4ppmvほど低めになっており、人為起源の発生源が北半球にあることを語っている。(pp. 56)

オゾンホールは長い目では解消に向かっており、自然環境を改変してしまうフロンを発生させたという人類の失敗を訂正することができた、地球環境問題を解決することができた、貴重な例として誇れる事象になりそうである。(pp. 149)

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第10章 氷床コアと古気候

時間軸の設定は各コア解析において周到に評価されてはいるが、なかなか統一的に共通にはならず、独自の時間軸となってしまう。(pp. 171)

南北両極でのメタン濃度変動の相似性に驚くが、こうして時間を合わせ同期された両コアからの酸素同位体比のグラフは、両極における気候の恐ろしいまでのつながりを語っている。(pp. 172)

ヨーロッパグループ(EPICA: European Project for Ice Coring in Antarctica)によるもので、より目的を鮮明に、グリーンランドのコアとの対比を容易にすべく、時間分解能を上げた、必ずしも長い年代をねらわない、年層の厚い、すなわち年涵養量の多いコア掘削を海に近いドローニング・モードランド(DML:南緯75度、東経0度、標高2829m:現在の年涵養量6.4cm)にて、また、時間分解能は犠牲にしても、より長い時間記録を求めて、涵養量の少ない場所での掘削としてドームC(南緯75度、東経123度、標高3233m:現年涵養量2.5cm)での掘削を、ちょうど日本のドームふじコアの前後に実現した。(pp. 174)

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第11章 温暖化と極域

温暖化の影響をみるモデル計算でも海氷域の減少は計算されているが、それをはるかに上回る早さで、2040年頃に実現すると予測されている面積に既に減少しているのである。北極がまさに温暖化していることを示しているが、現在いわれている(例えばIPCC第4次報告書)地球温暖化だけでは説明しきれない急激な変化が現れている。(pp. 177-178)

地球温暖化に伴う南極域での変化として、棚氷の崩壊がしばしばニュースになっている。最大の話題は、人工衛星Terraに搭載されたMODIS画像により捉えられた南極半島東側のラーセン棚氷の崩壊で、2002年ラーセンB棚氷の大部分が崩れて崩壊してしまった。(pp. 184)

最大の温暖化は、観測のある1951〜2000年の全期間では半島西側のファラデー/ベルナルツキー基地での、10年間で0.56℃が最大である。(pp. 188)
南極の気象データ集(READER)より

成層圏の寒冷化はオゾンホールの形成に陰に陽に影響を与えている。元々、南極上空の気温が低いために極成層圏雲が発達し成層圏のオゾンが破壊されオゾンホールが形成されているところ、さらに温度低下がおこるとオゾン破壊はさらに促進されることになるからである。(pp. 189)

極域における地球規模の循環場にはさまざまな偏差パターン、気候モードが言われている。あらゆる気候変動にこれらのモードが原因になっているような議論もみられるが、気候モードとの関連づけができたことで必ずしも問題が解決するわけではなく、ある種の記述ができたというだけに過ぎないことも多い。(pp. 195)

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あとがき

学問は、科学は裾野が広いことがまず大事である。広い裾野があって初めて山も高くなる。(pp. 198)

本書のもとになった研究は、50次にわたる南極観測隊員の、そして目に見えない北極観測に携わってきた面々の努力、汗と油の、いや寒さと凍傷の結晶である。(pp. 199)