Geology
1 April 2013; Vol. 41, No. 4
Articles
CO2 sequestration in a UK North Sea analogue for geological carbon storage
Niklas Heinemann, Mark Wilkinson, R. Stuart Haszeldine, Anthony E. Fallick, and Gillian E. Pickup
Man-made versus natural CO2 leakage: A 400 k.y. history of an analogue for engineered geological storage of CO2
Neil M. Burnside, Zoe K. Shipton, Ben Dockrill, and Rob M. Ellam
CO2捕獲貯留を実現するには、地質構造に注入されたCO2がどのように固定され、或いは動くのかを正確に予測する必要がある。アメリカ西部のUtahは自然にCO2が漏れ出している地域の一つであるが、過去400kaにわたってその漏出の位置がkmというスケールで繰り返し変化し続けていたことが示された。また不完全に開発された掘削井からの漏出量が極めて多く、断層や流体から放出される量を遥かに凌ぐことが分かった。
Establishment of euxinic conditions in the Holocene Black Sea
Sebastian Eckert, Hans-Jürgen Brumsack, Silke Severmann, Bernhard Schnetger, Christian März, and Henning Fröllje
Research Focus (OPEN)
Reconstructing the history of euxinia in a coastal sea
Caroline P. Slomp
Lessons in carbon storage from geological analogues
Mike Bickle and Niko Kampman
Paleoceanography
Assessing spatial variability in El Niño–Southern Oscillation event detection skill using coral geochemistry
Kelly A. Hereid, Terrence M. Quinn, Yuko M. Okumura
サンゴ骨格δ18OがENSOの指標になるかどうかを評価。WPWPのサンゴはエルニーニョにより感度が高く、SPCZ域のサンゴはラニーニャにより感度が高いことが示された。逆に東太平洋のサンゴの感度は極めて低いことが示された。
Response of Iberian Margin sediments to orbital and suborbital forcing over the past 420 ka
David Hodell, Simon Crowhurst, Luke Skinner, Polychronis C. Tzedakis, Vasiliki Margari, James E. T. Channell, George Kamenov, Suzanne Maclachlan, Guy Rothwell
Iberian Margin南西部で得られた堆積物コアの色の変化や地球化学プロキシから過去420kaにわたる古環境と軌道要素との位相関係を評価。歳差運動が支配的であり、低緯度への影響が風成循環を通して堆積物に変動を記録していると考えられる(風成塵、湧昇、降水など)。地軸傾動に対しては7-8ka遅れて変動している。
The dynamics of the marine nitrogen cycle across the last deglaciation
Olivier Eugster, Nicolas Gruber, Curtis Deutsch, Samuel L. Jaccard, Mark R. Payne
地球化学ボックスモデルを用いて過去30kaに確認されている海洋堆積物中のδ15Nの変化をもたらす窒素固定・脱窒の変動を評価した。最終退氷期の初期にダスト起源の鉄の供給が低下し、窒素固定が抑制されると、よく観測事実を説明できることが示された。15ka頃のδ15Nの戻りは貧酸素水塊の広がりによる脱窒の増加と考えると説明できる。
Testing hypotheses about glacial cycles against the observational record
Robert K. Kaufmann, Katarina Juselius
identified cointegrated vector autoregression model(?)を用いて氷期・間氷期サイクルをもたらす物理メカニズムを考察。大気中のCO2濃度の変動には「南大洋の温度」、「海氷」、「生物活動」が重要であることが示された。生物活動は鉄の供給によってコントロールされ、さらに生物活動は大気中のCO2濃度を変動させる。氷床量変動は「大気中CO2濃度の変化」「日射量の変化」「日射の緯度方向の強度変化」で説明される。
A new mechanism for Dansgaard-Oeschger cycles
S. V. Petersen, D. P. Schrag, P. U. Clark
北半球高緯度域で顕著に確認されるDOサイクル(氷期に急速な温暖化とゆるやかな寒冷化が何度も繰り返されたこと)を説明する新たな仮説を提唱。棚氷と海氷の変動がDOサイクルの遅い・早い変動において重要であると考えられる。この仮説は北大西洋とNordic Seaの間接指標によって支持される。
Calibration and application of B/Ca, Cd/Ca and δ11B in Neogloboquadrina pachyderma (sinistral) to constrain CO2 uptake in the subpolar North Atlantic during the last deglaciation
Jimin Yu, David J.R. Thornalley, James W.B. Rae, I. Nick McCave
北大西洋の堆積物コア中のN. PacydermaのB/Caとδ11Bから海洋表層水のpHとpCO2を復元。最終退氷期においてはおおまかに大気のpCO2の変化に従っていることが示された。Cd/Caを栄養塩の指標とすると、北大西洋の表層水のpCO2は現在と同じく栄養塩によって強く支配されていることも示された。N. pacydermaが石灰化を行う時期においては、北大西洋は常にCO2のシンクとして振る舞っていたと考えられる。
Millennial-scale climate change and intermediate water circulation in the Bering Sea from 90 ka: A high-resolution record from IODP Site U1340
Shiloh A. Schlung, A. Christina Ravelo, Ivano W. Aiello, Dyke H. Andreasen, Mea S. Cook, Michelle Drake, Kelsey A. Dyez, Thomas P. Guilderson, Jonathan P. LaRiviere, Zuzanna Stroynowski, Kozo Takahashi
北太平洋における千年スケールの気候変動は主にNPIWの変動によって支配されている。IODP U1340堆積物コアの密度変化などから、過去90kaの環境復元を行ったところ、D/Oサイクルに類似した変動が見られ、3-5℃の温度上昇、湧昇強化に伴う一次生産の強化、底層水の酸素濃度の上昇などが亜間氷期に起きていたことが示唆される。60-20ka頃には現在よりも酸素濃度が高く、低塩分のNPIWが存在していた。またB/Aには酸素濃度が最低値に達していた。
Lithium in the aragonite skeletons of massive Porites corals: A new tool to reconstruct tropical sea surface temperatures
Ed C. Hathorne, Thomas Felis, Atsushi Suzuki, Hodaka Kawahata, Guy Cabioch
ハマサンゴ骨格中のLi/CaはSST指標になる可能性があることが小笠原諸島とタヒチで採取された2つの現生ハマサンゴの分析から明らかに。しかし最近25年間のうち、1979-1980の間だけはSST依存性が消えており、同時にMg/Caも変な変動を示すことから、何かしらの生体効果が及んでいたものと考えられる。より多くのキャリブレーション研究が必要。
Warming of surface waters in the mid-latitude North Atlantic during Heinrich events
B. D. A. Naafs, J. Hefter, J. Grützner, R. Stein
ハインリッヒ・イベント時には北大西洋を中心に急激な寒冷化が起きていたことが知られているが、大西洋中緯度域の温度変化についてはよく分かっていない。IODP U1313堆積物コアのアルケノン分析からSSTを復元したところ、IRDが到達する南限においては数千年間にわたって表層温度が2-4℃上昇していたことが分かった。中緯度と高緯度では逆の変化が起きていた可能性がある。