北極圏のサイエンス〜オーロラ、地球温暖化の謎にせまる
赤祖父 俊一
誠文堂 新光社 2006年12月
もっとも大切なことは、地球は人間のためにあるのではなく、人間の存在とは無関係に地球は変動を続けているということなのだ。(pp. 58)
北極海を中心として約半分の領域は依然、海氷に覆われている。この海氷の話は、どこか遠い国の物語でなく、地球の将来に重要な関係を持っている。(pp. 69)
北半球を鍋に例えれば、赤道は鍋の底に相当し、北極海の海氷は鍋のふたに当たる。湯の沸き具合がふたの有無で異なるように、海は赤道付近で受けた太陽熱を北極圏まで運ぶが、海氷はその太陽熱が北極の大気に逃げるのをコントロールしている。(pp. 69)
氷河は、文字通り氷の河のことである。氷河は日本にはない。しかし、極地の氷河は中緯度帯の日本はもちろん、世界中の人間のあらゆる生活、経済に大きな影響を及ぼす。(pp. 88)
気候変動は北極圏に最も重大な影響を持っていると同時に、それは北極圏を越えて地球全体に影響を及ぼす。氷河の崩壊、それに伴う海水準の上昇、森林線の変化に伴う農作地帯の移動、永久凍土が融けることによる数多くの問題がその例である。(pp. 97)
一般に科学の真理とは、複雑な形をした物体のようなもので、科学者一人一人は、その物体の一部分しか見ることができない。(pp. 102)
地球では植物がすばらしい「炭酸同化作用」という過程をつくりだし、炭酸ガスと水から炭水化物(我々の食糧)を作った。その「遺骨」が石炭と石油である。(pp. 104)
黒点とは別に、太陽の上層大気(コロナ)で暗い所(コロナホールと呼ぶ)からも強い太陽風が吹き出しており、太陽は地球から見て27日間に1回自転するので、オーロラが27日ごとに活発になる。これは黒点の最盛期を過ぎてから数年後に起きやすい。(pp. 124)
もし、太陽系外の惑星に植物があれば、その惑星の光は乳白色のはずである。したがってオーロラの研究は宇宙の生命探査にも役立つはずである。(pp. 125)
私にとって全く専門外の極地探検史をひもとくことは楽しみの一つである。(pp. 132)
熱帯に入る太陽エネルギーは第一近似として一定であるので、対流は北極圏の大気の状態に強くコントロールされる。日本での日常生活に北極圏がいかに重要な役割を果たしているかが、これで分かる。(pp. 156)
例えば北極の氷が完全に融けると、これまで大気と隔絶されていた’暖かい’海との間に熱のやり取りが生じ、北極圏はさらに温暖化する。それは中緯度の大気海洋循環(黒潮や低気圧など)にも影響すると予想される。
気温1度の変化は日常生活はもとより、日本全体のエネルギー消費(電力、石油、天然ガス)、経済(衣類、電気器具)、ひいては社会問題にも関係している。(pp. 158)
北極圏研究は経済的にも日本にとって重要である。(pp. 160)
スエズ運河を通るよりも、北極圏を通ったほうが航路がはるかに短く、それだけ重油を節約できるからである。ただし、現在は海氷が大きな障壁となっている。
先進国である日本が、自分たちの日常生活に直結する問題を他人、他国まかせにはできない。(pp. 160)