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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年3月25日月曜日

新着論文(QSR, EPSL, GCA, PALAEO3)


QSR
Southern Hemisphere westerly wind changes during the Last Glacial Maximum: paleo-data synthesis
K.E. Kohfeld, R.M. Graham, A.M. de Boer, L.C. Sime, E.W. Wolff, C. Le Quéré, L. Bopp
氷期-間氷期という時間スケールで南半球の偏西風は変動していたと考えられるが、プロキシやモデル間で一致した見解(強度や位置など)はLGMというよく研究されている時代でも得られていない。LGMの風の指標と考えられているプロキシをコンパイルし、陸の湿度、ダスト沈着、SST、海洋前線、海洋一次生産などの変化を考察。偏西風が「赤道側にシフトし強化されていた」、「何も変化していなかった」のいずれでも観測に対して整合的な結果が得られた。前者の説明が観測により整合的とも言えなくはないが、海氷範囲・浮力フラックスの変化などがプロキシの解釈に影響してしまうことを考えると、断定できない。従って、データ復元だけでは偏西風の位置や強さについて制約を与えることは難しい。

EPSL
Is the marine osmium isotope record a probe for CO2 release from sedimentary rocks?
R.B. Georg, A.J. West, D. Vance, K. Newman, A.N. Halliday
海洋のオスミウムの同位体が氷期-間氷期スケールの陸の風化を反映して変動するかについて、モデルシミュレーションを用いて検証。オスミウムを多く含むような、有機物や硫黄に富んだ堆積岩の風化速度を変えてシミュレーションを行うことにより、海洋のオスミウム同位体の変動をうまく説明できることが示された。さらに風化速度は大気中のCO2濃度にも影響するため、海洋のオスミウム同位体が長期的な大気CO2-大陸風化プロセスの指標になる可能性がある。

GCA
Sr/Ca profile of long-lived Tridacna gigas bivalves from South China Sea: a new high-resolution SST proxy
Hong Yan, Da Shao, Yuhong Wang, Liguang Sun
南シナ海から得られたオオジャコガイ(Tridacna gigas)の殻のSr/CaがSSTの指標になる可能性を提案。δ18Oや現場のSST変動などと照合して検証。Srはサンゴのように結晶格子に入っているわけではなく、有機物に入っており、結晶/有機物の割合の変化が季節変動を生むもとになっていると考えられる。そのためICP-OESでは測定可能だが、LA-ICPMSでは明瞭な季節変化は見られなかった。

PALAEO3
Comparison and implication of TEX86 and U37K ′ temperature records over the last 356 kyr of ODP Site 1147 from the northern South China Sea
Dawei Li, Meixun Zhao, Jun Tian, Li Li
南シナ海においてはSSTのより長期的な復元が得られていない。TEX86は熱帯域ではよく応用されるが、南シナ海でそれが利用可能かどうかはよく分かっていない。過去356kaのTEX86とアルケノンの測定結果は、どちらの指標も氷期-間氷期の気候変動に似た変動を示している。2つの指標の温度差は混合層の深さを反映していると考えられているが、間氷期には温度差が大きくなり、氷期には小さくなるという変動を示している。

Organic Geochemistry
Alkenone and tetraether lipids reflect different seasonal seawater temperatures in the coastal northern South China Sea
Jie Zhang, Yang Bai, Shendong Xu, Fei Lei, Guodong Jia
南シナ海北部の大陸棚で得られた堆積物コアを用いて、アルケノンとTEX86温度計がSSTを反映するかを評価。アルケノンは春・夏の南西モンスーンの時期の有光層内のSSTを反映し、一方でTEX86は冬の北東モンスーンの時期の深い混合層のSSTを反映していることが示された。2つの指標から復元されるSSTの違いはそれぞれのバイオマーカーを生産する生物が成長する時期の違いによる。