JGR-O (Journal of Geophysical Research, Oceans)
Subantarctic mode water in the southeast Pacific: Effect of exchange across the Subantarctic Front
J. W. Holte, L. D. Talley, T. K. Chereskin, B. M. Sloyan
太平洋南東部のSAFにおけるSAMWの形成メカニズムについて。混合層の下部で形成されており、大気-海間の力はあまり受けてなさそう。渦や貫入によってSAFの北にもPFZの水がエクマン輸送によって混入している。
Assessment of Southern Ocean water mass circulation and characteristics in CMIP5 models: Historical bias and forcing response
J.-B. Sallée, E. Shuckburgh, N. Bruneau, A. J. S. Meijers, T. J. Bracegirdle, Z. Wang, T. Roy
CMIP5のモデルのバイアスを南大洋の水塊に焦点を当てて評価。特に暖かく・密度を小さく見積もる傾向がある。特にモード水・中層水の気体交換層(ventilated layers)に最大のバイアスが見られる。この層はCO2や温暖化による熱の吸収という点でも非常に重要な層である。観測よりもやや強く子午面循環が再現されている。
Enhanced gas fluxes in small sea ice leads and cracks: Effects on CO2 exchange and ocean acidification
N. S. Steiner, W. G. Lee, J. R. Christian
地球システムモデルでは、海氷に覆われた海域のCO2フラックスはゼロと見なされるが、実際には小さな割れ目などを通して大気と海のCO2交換が起きていることが観測されている。そのため荒い解像度のモデルでは、将来の海氷後退と、それに続く海洋酸性化の進行を過小評価してしまう可能性がある。カナダの地球システムモデル(CanESM2)を用いて海氷後退とCO2交換を評価。北極海の中心部ではフラックスの見積もり方で21%も年間のCO2吸収量が変化し、その結果、海洋酸性化によるアラゴナイト不飽和も10-20年早く起きると考えられる。逆にCO2が放出される南極周辺では、海氷の後退は海洋酸性化を和らげる働きをすると予想される。
Variations in the Pacific Decadal Oscillation since 1853 in a coral record from the northern South China Sea
Wenfeng Deng, Gangjian Wei, Luhua Xie, Ting Ke, Zhibing Wang, Ti Zeng, Ying Liu
南シナ海のサンゴ骨格中の地球化学分析(Sr/Ca・δ13C・δ18O)を用いて初めて1853年以降のPDO記録を得た。特にPDOは降水パターンの変化として現れているらしい。またδ13CにはSuess効果も見られた。
Coral Reefs
Light availability determines susceptibility of reef building corals to ocean acidification
D. J. Suggett • L. F. Dong • T. Lawson • E. Lawrenz • L. Torres • D. J. Smith
気候変化とともに温度や濁度が変化することで、光量も変化すると思われるが、それが海洋酸性化とともにサンゴ骨格の成長にどのような影響を与えるかについてはよく分かっていない。飼育実験からヤセミドリイシ(Acropora horrida)とユビエダハマサンゴ(Porites cylindrica)に対する影響を評価したところ、特に前者の場合、強い光の下では海洋酸性化による骨格成長阻害の影響が弱まることが分かった。これまでの研究を総括すると、ミドリイシ類への光の影響は大きいが、ハマサンゴ類にはそうでもないことが分かった。光が弱い海域は温度・光に弱いサンゴの避難場所になると考えられてきたが、我々の研究は光が弱いと海洋酸性化の影響が増幅される可能性があることを示している。
Calcification by juvenile corals under heterotrophy and elevated CO2
E. J. Drenkard • A. L. Cohen • D. C. McCorkle • S. J. de Putron • V. R. Starczak • A. E. Zicht
溶存無機栄養塩の濃度が増加することで、海洋酸性化によるサンゴ骨格の溶解が抑えられることを示す研究もある。ゴルフボールサンゴ(golf ball coral, Favia fragum)の幼生の飼育実験を通して栄養塩の有無が石灰化阻害に与える影響を評価したところ、餌を与えたサンゴの方が与えられていないサンゴよりもよく成長した。将来海洋酸性化の進行とともに骨格成長は阻害されるが、栄養が不足した海域と比較すると、栄養がある海域のほうが耐性は強いかもしれない。
Marine Ecology Progress Series (MEPS)
Temperature affects the early life history stages of corals more than near future ocean acidification
Chia Miin Chua, William Leggat, Aurelie Moya, Andrew H. Baird
今世紀末には少なくとも海水温は2℃上昇(地球温暖化)、pHは0.2ほど低下する(海洋酸性化)と考えられている。これらは別々にはよく研究されているが、両方が同時に生物に与える影響はよく分かっていない。グレートバリアリーフのハイマツミドリイシ(Acropora millepora)とウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)の幼生について「+2℃」と「+300μatm」の環境下で飼育実験を行い、サンゴの生存や変態に与える影響を評価。pCO2の上昇が受精・発達・生存・変態に与える影響は明確には見られなかったが、温度上昇は発達速度に大きく影響した。これらのサンゴの初期の生育段階においては海洋酸性化は大きな脅威にはならないが、温度がサンゴの種力学に影響する可能性が示唆される。
New Phytologist
Dissecting the impact of CO2 and pH on the mechanisms of photosynthesis and calcification in the coccolithophore Emiliania huxleyi
Lennart T. Bach, Luke C. M. Mackinder, Kai G. Schulz, Glen Wheeler, Declan C. Schroeder, Colin Brownlee and Ulf Riebesell
円石藻は海洋一次生産を担う重要な植物プランクトンであるが、それが海洋酸性化に伴う海水炭酸系の変化によって、生理学的にどのような影響を被るかについてはよく分かっていない。炭酸系を変えた実験から、Emiliania huxleyiは低いCO2濃度(光合成による有機物生成を阻害)、低い重炭酸イオン濃度(石灰化阻害)、低いpH(殻の溶解)に対して敏感であることが分かった。上昇したCO2というよりもむしろ低いCO2に適応してきた結果、必要な遺伝子を獲得してきたものと思われる。細胞レベルで炭素蓄積機能(carbon-concentrating mechanism; CCM)が作用していると思われる。