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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年5月23日木曜日

新着論文(Nature#7450)

Nature
Volume 497 Number 7450 pp409-530 (23 May 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Invasive insect’s inner weapon
外来昆虫の内部の兵器
Science 340, 862–863 (2013)
外来昆虫のナミテントウ(harlequin ladybird beetles; Harmonia axyridis)は、その身体の中に微胞子虫(microsporidia)を有しており、それが耐性のない土着の甲虫類を殺すことが(生物兵器)、競合者の個体数を減らすのに寄与していたらしい。
>より詳細な記事
Invasive ladybird has biological weapon
Ed Yong

Minoans came from Europe
ミノア人はヨーロッパから来た
Nature Commun. 4, 1871 (2013)
ギリシャのクレタ島の洞窟から得られた、4.4-3.7kaのミノア人(クレタ人)の歯と骨のミトコンドリアDNA分析から、従来エジプトから流れてきたと考えられていたが、ヨーロッパから来た人であることが示された。
>より詳細な記事
Minoan civilization was made in Europe
Ewen Callaway

‘Ghost’ reptile lived late
'幽霊'爬虫類は遅くまで生きていた
Biol. Lett. http://dx.doi.org/ 10.1098/rsbl.2013.0021 (2013)
145-66Maの白亜紀に生きていたとされる魚竜(ichthyosaurs)は多様性の低下から最終的に絶滅したと考えられているが、新たな化石記録から、白亜紀後期に逆に多様性が増加していたことが示された。

Cosmic rays show how boulders move
宇宙線がどのように巨石が動くかを示す
J. Geophys. Res. Earth Surf. 118, 184–197 (2013)
宇宙線照射年代とモデルとを組み合わせて、どのようにして巨石が洪水や土石流で浸食・運搬されるかが示された。通常巨石は地形の年代決定に用いられるため、この新たな知見は地質学的なイベントや氷河・海岸などの土地変化の理解の助けとなる可能性がある。

SEVEN DAYS
Arctic group grows
北極圏グループが成長する
北極圏の観測を行う観測ネットワークが強化された。原因としては環境的・資源的な関心の高まりが考えられる。海洋石油流出事故が起きた際の対応についても協力体制を敷くことが責任づけられている。

Impact-factor abuse
インパクト・ファクターの乱用
480人を超える研究者によって、科学雑誌のインパクト・ファクターを用いて科学者の評価を行わない、という声明がなされた。
>より詳細な記事
Scientists join journal editors to fight impact-factor abuse
Richard Van Noorden

Distant particles
遠くの粒子
地球の大気圏外からやってきたと考えられる28個のニュートリノが南極にて観測された。ブラックホールやガンマ線バーストなどの高エネルギー現象の理解に繋がる可能性があるとして期待が寄せられている。
>より詳細な記事
Antarctic neutrino observatory detects unexplained high-energy particles
John Matson

NEWS IN FOCUS
The wheels come off Kepler
車輪がケプラーから外れる
Ron Cowen

US budget cuts hit Earth monitoring
アメリカの予算削減が地球モニタリングに打撃を与える
Alexandra Witze
財産の差し押さえが西アメリカの雪や河川流量の観測記録を脅かしている。

A network to track Caribbean hazards
カリブ海の災害を追跡するためのネットワーク
Alexandra Witze
多国間の努力は科学的外交の例になる。カリブ海の地震モニタリングの例などの紹介。

FEATURES
Outward bound
限界をより遠くへ
Alexandra Witze
Ed Stoneは36年間を2機のボイジャー宇宙探査機に費やしてきた。太陽系内から、今後は星間物質の探査となる。

COMMENT
Arctic sea ice needs better forecasts
北極海はより良い予報を必要としている
「パートナーシップを育み、データをシェアすることで急速に変化する北極海の災害を軽減することができる」、とHajo Eickenは言う。

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RESEARCH
LETTERS
Shear-driven dynamo waves at high magnetic Reynolds number
高い磁気レイノルズ数におけるシアに駆動されるダイナモ波
S. M. Tobias & F. Cattaneo

Weakened stratospheric quasibiennial oscillation driven by increased tropical mean upwelling
熱帯域の平均的上昇流の増加による弱まった成層圏準2年周期振動
Yoshio Kawatani & Kevin Hamilton
熱帯域の成層圏における’準2年周期振動(quasibiennial oscillation; QBO)’とは約2年の周期で成層圏の東西風が逆転する現象を指す。ラジオゾンデを用いた観測記録から、地球温暖化の進行とともに過去60年間に振動が弱化しつつあることが示され(33%)、CMIP5のモデル予測結果とも整合的である。おそらく原因として下部成層圏の上昇流の増加が考えられる。今後も長期間にわたって強化されると思われる。