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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年5月9日木曜日

新着論文(Nature#7448)

Nature
Volume 497 Number 7448 pp157-282 (9 May 2013)

EDITORIALS
The cleaner state
よりクリーンな州へ
連邦監督機関はカリフォルニア州の低炭素燃料プログラムから多くのことを学ぶことができる。

WORLD VIEW
China's citizens must act to save their environment
中国市民は自らの環境を保護するために行動しなければならない
「中国の空気汚染危機は市民組織(civil society)の力における教訓を与えてくれる」、とQiang Wangは語る。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Small eruptions get their due
小さな噴火が正当な評価を得る
Geology http://dx.doi.org/10.1130/G34146.1 (2013)
ハワイのキラウエア火山の2008年の噴火はカテゴリー0という最も危険度が低いものとされていたが、噴出物の調査から、1回の噴火で310m3もの噴出物が爆発とともに放出されていたことが示された。研究者らは指標を見直す必要を訴えている。火山の近くに住む人や、火山観光客に対してより危険性を伝えるのに役に立つかもしれない。

Baby star wind travels far
子供の星の風が遠くまで旅する
Astrophys. J. 768, 18 (2013)
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて最近1億年間の間に星の形成を経験した若い銀河を20点観測したところ、銀河中心から200キロpersec(※1 persec = 3.26光年)も離れた地点にも、新しくできた星が噴き出すイオン風が見られることが初めて分かった。そうした質量放出が、次の星の形成に影響していると思われる。

Fish match human search strategy
探査戦略において魚が人間に肩を並べる
J. Exp. Biol. http://dx.doi. org/10.1242/jeb.087734 (2013)
テッポウウオ(Archerfish; Toxotes spp.)は水面下からジェットを吹き出し1m上の獲物を撃ち落とすことができる。訓練したさかなと人間とで、背景に獲物を紛らわすものを起き、的を狙うのを難しくした実験から、どちらも同程度の能力を示した。視覚を用いた探査能力においては、人間もシンプルな脳を持った生物も似たメカニズムを持っているのかもしれない。

Tiny, winged machines
小さく、羽の生えた機械
Science 340, 603–607 (2013)
ハーバード大学の研究グループが、特殊なレーザー加工技術を駆使して、昆虫ほど小さく飛行機械を開発した。重さは80mgで、ハエと同じ周波数で羽ばたくことができ、さらにエネルギー効率もハエのそれに匹敵するという。この技術が小さな機械の分野を大きく切り開くことになるかもしれない。
>問題の論文
Controlled Flight of a Biologically Inspired, Insect-Scale Robot
生物にインスピレーションを受けた虫サイズのロボットの制御された飛行
Kevin Y. Ma, Pakpong Chirarattananon, Sawyer B. Fuller, and Robert J. Wood
ハエの大きさの羽を羽ばたかせて飛ぶロボットが開発された。

SEVEN DAYS
Somali famine death toll
ソマリアの飢饉による犠牲者数
干ばつがきっかけとなって、2010年10月から2012年4月にかけてソマリアでは25万8千人が死亡した。そのうち半数は5歳以下の子供であるという。

Oil estimates
石油の推定
北米中部(ノースダコタ、サウスダコタ、モンタナ)における原油の採掘可能資源量が従来の推定の2倍(37.3億バレル)あることをアメリカ地質調査所が4/30に公表した。

Hidden emissions
隠された排出
800の大企業のうちたった37%だけしか自社のCO2排出を公表していないことがイギリスに籍を置くEnvironmental Investment Organisationの調査から分かった。イタリアとスペインの企業は比較的公表しているという。「CO2排出の大部分がまだ説明できていないため、これが各企業の目覚ましになれば」と代表のSam Gillは語っている。

TREND WATCH
WOMEN IN SCIENCE
科学における女性
アメリカとイギリスの科学財団(それぞれNSF、Royal Society)における新任の女性フェローは全体のそれぞれ26%、20%でほんのわずかずつ増加している。Royal Societyの場合、メンバー全体に占める女性の割合が増加していることを反映しているのではないかと考えられている。

NEWS IN FOCUS
Oceans under surveillance
監視下の海
Quirin Schiermeier
 ブロッカー(or ストンメル)のコンベヤーベルトとしても知られる大西洋子午面循環(AMOC)は熱帯から北大西洋へ暖かい海水を運び、逆に冷たい水を南へと深層水を通して運んでいるが、その流れはある場所では細く、ある場所では太く、そして時間とともに変動している。海洋学者はそれが気象・気候へともたらす影響やその将来の変化を予測しようとしている。AMOCをモニタリングするために、2004年頃から国際的な連続観測が始まった。さらに今後いくつかの国際観測計画がスタートしようとしている。
 例えばGulf StreamもAMOCの一部であるが、それが運ぶ熱がヨーロッパの気候を温暖に保っている。気候モデルでは温暖化とともにAMOCも弱化すると予測しているが、当然その変化は大西洋各地の気候に影響する。2009年4月には30%の低下が観測されたが、それは発電所10万個に相当するほど大きなエネルギーである。ただしその原因についてはまだ完全には理解されていないという。

[以下は引用]
Climate models suggest that the rate of this formation of deep water will decrease by the end of the century. That is problematic not only because deep-water formation drives the ocean circulation, but also because it carries vast amounts of carbon dioxide to the depths, sequestering it from the atmosphere.
気候モデルはこの深層水形成の速度が今世紀末には減少することを示唆している。それはただ深層水形成が海洋循環を駆動しているという点だけでなく、それが大量の二酸化炭素をより深くへと輸送しているし、大気から隔離しているという点でも問題である。

Most scientists regard the idea that global warming will trigger a collapse of ocean circulation — the apocalyptic scenario that inspired the 2004 action film The Day After Tomorrow — to be exceedingly unlikely. But Bryden says that the 2009 Atlantic circulation glitch is an indication of just how surprising ocean behaviour can be. “The next one,” he says, “may be twice as big.”
ほとんどの科学者は地球温暖化が海洋循環の崩壊(2004年の映画「デイ・アフター・トゥモロー」にインスピレーションを与えた、世界の終末のようなシナリオ)に繋がるというアイデアにほとんど現実味がないと思っている。しかし、2009年の大西洋循環の故障は、どれほど海洋の振る舞いが驚くべきものになり得るかを物語っていると、Harry Bryden(Southhampton大の海洋学者)は言う。"次は2倍の規模かもしれない"と彼は言う。

COMMENT
Global warming: A call for peace on climate and conflict
地球温暖化:気候と争いにおける平和の要請
「地球温暖化がより多くの戦争を招くかどうかを巡って言い争いをしている研究者たちは、喧嘩をやめ、協力する必要がある」と、Andrew R. Solowは主張する。

[以下は引用]
Among the most worrying of the mooted impacts of climate change is an increase in civil conflict as people compete for diminishing resources, such as arable land and water. Recent statistical studies reporting a connection between climate and civil violence have attracted attention from the press and policy-makers, including US President Barack Obama.
気候変化が投げかける最も心配な議論の中には、耕作に適した土地や水といった失われつつある資源を巡って人類が争うことによって生じる、内戦の増加が挙げられる。統計学的に気候と市民の暴動との関係性を報告した最近の研究は報道機関、オバマ大統領を含む政策決定者の注意を引いた。

Sustainable mobility: A vision of our transport future
持続可能な交通:我々の輸送の未来の見通し
Lawrence D. Burnsがドライバー不要の輸送ネットワークやカーシェアが交通に革命を起こすことを説明する。

Palaeontology: Free digital scans of human fossils
古生物学:人類の化石の無料のデジタルスキャン
「厳しいアクセス申請が古人類学の進展における撮像技術のポテンシャルを妨げている」、とJean-Jacques Hublinは注意する。

CORRESPONDENCE
Environment: Overhaul pesticide testing on bees
環境:ハチに対する殺虫剤テストを抜本的に改革せよ
Axel Decourtye, Mickaël Henry & Nicolas Desneux

Climate mitigation: An open dialogue on solar engineering
気候変化緩和:太陽操作に関するオープンな対話
John Shepherd, Berhanu Abegaz & Jane Long
地球工学には幅広い、オープンな、納得できる、客観的な議論が必要である。それはもっとも効率が大きく低価格だが、リスクが大きい’太陽放射操作(solar radiation management; SRM)’技術についても同じことが言える。だからこそ、SRM Governance Initiativeが創設されたのである。科学者や政策決定者をはじめとして、様々な機関がSRMの技術・道徳・政治を議論している。

Forests: Oil-palm concerns in Brazilian Amazon
森林:ブラジル熱帯雨林におけるオイルパーム問題
Alexander C. Lees & Ima C. G. Vieira

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Galaxy formation: The cosmic web in focus
Robert Braun
Wolfe et al.の解説記事。

LETTERS
Discrete clouds of neutral gas between the galaxies M31 and M33
銀河M31とM33の間の中性ガスの分離した雲
Spencer A. Wolfe, D. J. Pisano, Felix J. Lockman, Stacy S. McGaugh & Edward J. Shaya

Future sea-level rise from Greenland’s main outlet glaciers in a warming climate
温暖化した気候におけるグリーンランドの主要氷河河口が招く将来の海水準上昇
Faezeh M. Nick, Andreas Vieli, Morten Langer Andersen, Ian Joughin, Antony Payne, Tamsin L. Edwards, Frank Pattyn & Roderik S. W. van de Wal
ここ数十年間、主として表面の融解と氷河流出が原因となってグリーンランド氷床の氷が失われている。将来の海水準上昇におけるグリーンランド氷床の寄与を見積もるのは、氷河流出のメカニズムがまだあまり理解できていないことから、大きな課題となっている。4つの主要な氷河(全体の22%を担う)を対象としたモデルシミュレーションから、「2100年に2.8℃温暖化するシナリオ」ではグリーンランド氷床の融解が2200年までに海水準を19-30mm上昇させることが示された。「4.5℃温暖化するシナリオ」では海水準を29-49mm上昇させると考えられる。