アイスコア〜地球環境のタイムカプセル
藤井理行、本山秀明 編著
成山堂書店 2011年3月 ¥2,400-
アイスコアをテーマに扱ったものとしては’初’の書籍。
白の砂漠、南極。
降雪量が極端に少ないことから、グリーンランド氷床よりも古い時代の記録が厚さ3〜4kmに及ぶ巨大な氷の塊に残されている。
アイスコアはまさしく古環境研究における第一級のアーカイブである。
日本の気鋭の雪氷圏の科学者がおおよそ30年の歳月を費やして掘削した、ドームふじコアの最近の研究動向を網羅的に紹介している。
話題は古気候から宇宙まで…
最新のドームふじ2期コアについては残念ながらまだ多くは記述されていないものの、かなり多くのことを学ぶことができる。
アイスコアを扱う科学論文は世の中にごまんとあるが、それらすべてに目を通すことはもはや不可能なので、この本一冊を熟読することをオススメしたい。エッセンスが凝縮されていると思う。
最後に、本書では記述されていないアイスコアの弱みを挙げさせてもらうと、
・氷にトラップされた気体の年代を正確に決定する方法がいまだないこと(隣接する氷の年代は求まる)
・過去80万年間については超一級の記録を提供できるものの、より長い時間の記録は他の堆積物記録・岩石記録に頼らざるを得ないこと
・木の年輪・サンゴ骨格・貝などに比べるとやや時間解像度が落ちること
・寒冷地域の記録しか得られない(至極当たり前だが)
などだろうか。
古環境研究でもっとも大切なのは、独立した指標から得られる観察を積み上げ、地球の真の姿を理解することだと思っている。