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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年5月3日金曜日

新着論文(Science#6132)

Science
VOL 340, ISSUE 6132, PAGES 517-652 (3 MAY 2013)

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Special Issue 'Exoplanets'
特集:系外惑星

INTRODUCTION
Alien Worlds Galore
エイリアンの世界がいっぱい
Maria Cruz and Robert Coontz
系外惑星の存在は太陽系やその他の星が発見されてから予想されていたものの、その証明は1990年代に入ってからである。星が無数にあるように、その周りを回る惑星も無数にあることが分かってきたが、太陽系は宇宙においてさほど一般的でないらしい。’生命存在可能領域(habitable zone)’の定義を巡っても議論が巻き起こっている。我々がまだ知らない世界の世紀の大発見はもう目前に迫っている。

News
A Gallery of Planet Hunters
惑星ハンターのギャラリー
Yudhijit Bhattacharjee and Daniel Clery
系外惑星探査に使われている手法・機器類の紹介。1992年に最初の系外惑星が発見されて以来、この20年間で900ほどが特定され、いまや月に数百個もの候補が挙がる。

And a Glossary of Their Quarry
そしてその獲物の用語辞典
Lizzie Wade
これまでに発見された系外惑星の簡単な紹介。ホット・ジュピター、スーパー・アースなど。

Reviews
Observed Properties of Extrasolar Planets
系外惑星の観測された特性
Andrew W. Howard
系外惑星には木星のように巨大なものよりは、地球と海王星の中間くらいの小さな惑星のほうが多いようである。様々な系外惑星を特定し、その大きさ、質量、ホストの星の組成などを観測することで、宇宙における星や惑星の形成プロセスの理解が深まると考えられる。そうした中、太陽系の形成は全体の可能性の中の一つに過ぎない

Exoplanet Habitability
系外惑星の生命存在可能性
Sara Seager
これまでに特定された系外惑星のサイズ・質量・公転軌道・ホストの星のタイプなどは非常にバリエーションに富み、その中で生命存在が可能な星が探られている。太陽系の惑星とは全く異なるものも多数発見されている。「液体の水の存在」や「地球と同程度のサイズ」というのは可能性の一つに過ぎないかもしれず、生命存在可能性の定義を広げることで、生命発見の可能性は広がるかもしれない。

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Editors' Choice
Supernova Grains Identified in the Lab
実験室にて特定された超新星爆発の粒子
Astrophys. J. 768, L17 (2013).
2つの始源隕石(LaPaz 031117Grove Mountains 021710)の中からnano-SIMSによってプレソーラー粒子が見つかった。酸素同位体が極めて際立っており、星のコアの超新星爆発が起源と考えられる。

Palm Monoculture Bad for Birds
パームの単一栽培は鳥にとって害悪
Ibis 155, 297; 313 (2013).
特に東南アジアにおいて、熱帯雨林からパーム油用のプランテーションへの開発がここ数十年のうちに広がった。マレーシアにおける研究では、周囲の切り開かれた森林よりもプランテーションのほうが猛禽類の数が多いことが示された。さらにボルネオ島における研究では、機能的な多様性(functional diversity)がプランテーションほど小さいことが示された。

News of the Week
Will ‘Volcanic Winter’ Debate Now Cool Down?
'火山の冬'の議論は終息するのだろうか?
75kaにインドネシアのToba火山が過去2Maに例を見ない大噴火を起こした。それはアジアだけではなくアフリカにも影響を及ぼし、研究者の中にはアフリカにいたホモ・サピエンスを絶滅間近にまで追い込んだと主張するものもおり、'火山の冬'仮説は大きな話題を呼んだ。
 Toba火山から7,000km西に位置するアフリカのMalawi湖の堆積物から、火山性のガラスの欠片が特定されたものの、初期人類に脅威をもたらすほどの規模ではなかった可能性が新たに示された。堆積物中の藻類の組成や有機物から復元された火山噴火前後の環境は、特に温度などに大きな変化が起きていなかったことを示唆している。
>問題の論文
Ash from the Toba supereruption in Lake Malawi shows no volcanic winter in East Africa at 75 ka
Malawi湖のTobaの超噴火起源の火山灰は東アフリカに置いて75kaに火山の冬がなかったことを物語っている
Christine S. Lane, Ben T. Chorn, and Thomas C. Johnson
75kaにおけるTobaの超噴火はインド洋・インドア大陸・南シナ海にまで影響を及ぼし、さらにはグリーンランド・アイスコアにも全球的な寒冷化が起きた可能性が記録されている。それはアフリカの初期人類にも影響し、絶滅間近にまで追い込んだという仮説が存在する(火山の冬 'volcanic winter')。
 Malawi湖の堆積物中のテフラ層の前後には大きな温度変動がなかったことが、堆積物の構成成分から示唆される。従って、噴火に伴う気候変化が人類の遺伝的ボトルネックの原因でなかったことを物語っている。

News & Analysis
Scientists Clash Swords Over Future of GM Food Crops in India
インドにおける遺伝子組み換え食品の未来を巡って科学者が剣を激しく交える
Pallava Bagla and Richard Stone
インドにおける遺伝子組み換え食品の未来について2人の専門家に話を聞く。

Hansen's Retirement From NASA Spurs Look at His Legacy
ハンセンのNASA引退が彼の伝説への注目を集める
Eli Kintisch
NASAのGoddard Institute for Space Studies (GISS)に所属するJames Hansenは気候変化に関する研究の重要人物で、これまでにアメリカ政府や気候変化を否定するロビー活動家などと激しい戦いを繰り広げ、さらにはアメリカの気候変化への姿勢を批判する運動で5回逮捕された経歴を持つ。もともとは火星を研究していたが、その後地球の温室効果に焦点を当てるように。

[以下は引用文]
“He’s sui generis—that’s for sure,” says marine biologist James McCarthy of Harvard. “He’s been ahead on the science for decades and has played a very important role in communicating the science of climate change to the public. ... I’ve disagreed with him on some of his views on policy, ... but let’s be clear: The world needs Jim Hansen.”
”彼は独特な人間だったことは確かだ”ハーバードの海洋生物学者James McCarthyは語る。”彼は数十年間にわたって科学を牽引し、気候変化の科学を一般に伝えることにおいて非常に重要な役割を負っていた...政策に対する彼の考え方の中には同意できないものがあったが、...これだけは明らかだ:世界はJim Hansenを必要としている”

News Focus
Mr. Borucki's Lonely Road to the Light
Borucki氏の光への孤独な道
Yudhijit Bhattacharjee
ケプラー・ミッションによる系外惑星探査の父の紹介

Taking the Pulse of a Ravaged Ocean
破壊された海の脈をとる
Dennis Normile
2011年3月11日の地震と津波は日本の沿岸部の漁業と海洋環境を破壊した。研究者はそれを記述し、その回復を手助けしようとしている。

The Pacific Swallows Fukushima's Fallout
太平洋はフクシマのフォールアウト核種を飲み込む
Dennis Normile
東北沖地震は前例にない衝撃をもたらした:莫大な量の放射性核種が海へともたらされた。

Letters
Geoengineering: Guidance Exists
地球工学:ガイドラインが存在する
Pierce S. Corden
End the deadlock on governance of geoengineering research” (Science, 15 March 2013)の中で、E. A. ParsonとD. W. Keithは地球工学は国際法ではコントロールできず、国際的なガバナンスは存在しないと主張するが、それは実際には存在することを指摘する。1977年に策定されたENMOD協定(Convention on the Prohibition of Military or Any Other Hostile Use of Environmental Modification Techniques)は地球工学に対する規制も含意している

Geoengineering: Perilous Particles
地球工学:危険な粒子
Bengt Fadeel, Hanna L. Karlsson, and Kunal Bhattacharya
End the deadlock on governance of geoengineering research” (Science, 15 March 2013)の中で触れられる地球工学技術の中には金属の微粒子(アルミニウムや酸化アルミニウムなど)を大気上層に注入し、太陽光を反射する技術も含まれる。E. A. ParsonとD. W. Keithは大規模な実験は禁止すべきだが、小規模なものはモデルシミュレーションや室内実験で試す価値はあると主張するが、我々は小さな規模の実験でもリスクが大きいことを指摘する。例えば、金属酸化物の微粒子は肺炎の原因にもなり、さらに環境中で分解されにくい物質は生物にとって有害となる可能性もある。

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Perspectives
Seeing Gravitational Waves
重力波を見る
Mansi M. Kasliwal
重力波に相当する可視電磁波を検出するための観測網が必要とされている。

Tracking Marine Pollution
海洋汚染を追跡する
John E. Elliott and Kyle H. Elliott
海鳥のモニタリング研究によって、ますます増加する海洋汚染の全体像が見えつつある。

Reports
Kepler-62: A Five-Planet System with Planets of 1.4 and 1.6 Earth Radii in the Habitable Zone
Kepler-62:生命存在可能帯に存在する地球半径の1.4倍と1.6倍の惑星を持つ5つの惑星システム
William J. Borucki et al.
ケプラー・ミッションが太陽よりも小さい星(K2V star)の周りを周回する5つの惑星システム(Kepler-62b, c, d, e, f)を特定した。そのうちの2つの小惑星はいわゆる’生命存在可能帯(habitable zone)’に存在する。地球が太陽から受け取る日射の1.2 ± 0.2倍、0.41 ± 0.05倍の日射を受け取っていると考えられる。モデルシミュレーションからおよそ誕生から70億年が経過した惑星と考えられる。おそらく岩石型惑星で、水はほとんどが固体で存在すると思われる。

Controlled Flight of a Biologically Inspired, Insect-Scale Robot
生物にインスピレーションを受けた虫サイズのロボットの制御された飛行
Kevin Y. Ma, Pakpong Chirarattananon, Sawyer B. Fuller, and Robert J. Wood
ハエの大きさの羽を羽ばたかせて飛ぶロボットが開発された。

3D Reconstruction of the Source and Scale of Buried Young Flood Channels on Mars
火星の埋没した若い放水路の起源と規模の3次元復元
Gareth A. Morgan, Bruce A. Campbell, Lynn M. Carter, Jeffrey J. Plaut, and Roger J. Phillips
火星を周回する衛星のレーダー観測から、火星の中でも若い時代の地形に埋没した放水路の複雑な形態が明らかに。

Neural Decoding of Visual Imagery During Sleep
睡眠中の画像の神経の解読
T. Horikawa, M. Tamaki, Y. Miyawaki, and Y. Kamitani
脳波測定だけで、睡眠中に見ている画像を予想することが可能に。