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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年5月16日木曜日

新着論文(Nature#7449)

Nature
Volume 497 Number 7449 pp287-402 (16 May 2013)

EDITORIALS
Together we stand
一緒に立ち上がる
持続可能な将来に向かうためにも、経済的・環境的な課題を融合させなければならない。中国でさえ、最近では経済発展だけでなく環境にも関心を向けるべきだという声が上がってきている。国連の「千年発展目標(Millennium Development Goals)」は2015年には失効するが、それを引き継ぐ「持続可能な発展に向けた解決策ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)」が最近ウェブサイトを公開した。今後15年間の発展計画の草案が現在公開中で、コメントを受け付けている。

[以下は引用]
Carbon emissions are a hallmark of energy use — and it is cheap and available energy that has made the modern world.
炭素排出はエネルギー使用の証明であり、それは安く、今の世界を作るのに必要であった利用可能なエネルギーであったのである。

The antagonism between protection of profit and protection of the environment will continue for as long as the two are seen as separate pursuits.
「利益の保護」と「環境保全」の間の対立は、それらが別々の追求と見なされる限り続くだろう。

The economic currency of gross domestic product, for so long used as a benchmark of a country’s performance, could be tweaked to include social indicators and how well a country respects environmental criteria, such as the concept of planetary boundaries that should not be exceeded.
国内総生産(長い間国家の出来映えの基準として使われてきた)といった経済指標は、社会的な指数を含めるように、国家が環境的な分類をどれほど尊重しているか(超えてはならない’惑星の限界’のコンセプトなど)を含めるように、微調整されるだろう。

RESEARCH HIGHLIGHTS
More cyclones for Hawaiian Islands
ハワイ島により多くのサイクロン
Nature Clim. Change http://dx.doi.org/10.1038/ nclimate1890 (2013)
気象研(+SOEST)の村上裕之らの研究グリープは、地球温暖化によって海水温上昇とハワイに到達するサイクロンの数が2075-2100年に現在の2倍に増加することをモデルシミュレーションから示した。ハワイのサイクロンはメキシコ湾を起源とするが、地球温暖化とともにサイクロンの進路が変化することが原因と考えられる。発生するサイクロンの数自体は減少するものの、ハワイに到達するほどに勢力を増すことが予想されている。
>問題の論文
Projected increase in tropical cyclones near Hawaii
予想されるハワイ近くの熱帯低気圧の増加
Hiroyuki Murakami, Bin Wang, Tim Li & Akio Kitoh
気候変化とそれに伴う熱帯低気圧の変化を正確に予想するには、複数のモデルを用いて物理的な設計を変えたり、複数の海水温変化のシナリオを用いたりする必要がある。大循環モデルを用いて2075-2100年の気候変化予測を行ったところ、ハワイ島に到達するサイクロンの数が増加することが予想された。ハワイの南東部の外洋によりサイクロンが進行できる通路が形成されることが原因と考えられる。また亜熱帯太平洋中央部の環境も台風を成長させるのに適した状態へと変化すると考えられる。ハワイ島において社会経済的・生態学的ダメージをもたらすと思われる。

Unappreciated toll of toxic sites
毒された場所の不適切な犠牲者
Environ. Health Perspect. http://dx.doi.org/10.1289/ ehp.1206127 (2013)
インド・インドネシア・フィリピンにおいて廃棄物の毒物汚染(鉛や6価クロムなど)が招く健康被害を評価した研究から、2010年に860万人もの人が産業廃棄物による毒のリスクに曝されていることが分かった。

Tree-loving lemur digs hole in winter
木を愛するキツネザルは冬には穴を掘る
Sci. Rep. 3, 1768 (2013)
マダガスカルの高地に生息するコビトキツネザル(dwarf lemur; Cheirogaleus sibreei & C. crossleyi)は4月から9月の冬の間、地面に穴を掘って冬眠していることが分かった。落ち葉層と根の間は体温を一定に保つのにちょうどいい空間らしい。

Flow sorting for fossil pollen
花粉化石の流れによる選別
J. Quart. Sci. 28, 229–236 (2013)
湖の堆積物を用いて放射性炭素年代測定を行う場合、使える炭素は花粉のみである場合がある。しかし花粉を堆積物から仕分けることは困難で、花粉を用いた年代測定は非実用的である。イギリスの研究グループは生体医学で用いられている技術(flow cytometry)を応用することで、花粉をサイズと形で選別することに成功した。たった4時間で275万個もの花粉(放射性炭素年代測定に十分な量)を採取することができるらしい。
>問題の論文
A new flow cytometry method enabling rapid purification of fossil pollen from terrestrial sediments for AMS radiocarbon dating
RICHARD K. TENNANT RICHARD T. JONES, FIONA BROCK, CHARLOTTE COOK, CHRIS S. M. TURNEY, JOHN LOVE1 and ROB LEE

SEVEN DAYS
Shale-gas exit
シェールガスの出口
石油ガス会社のTalisman EnergyMarathon Oilはポーランドにおけるシェールガス採掘から手を引くことを発表した。2011年のレビューでは埋蔵量は5.3兆m3と推定されていたが、2012年の研究では8千億(0.8兆)m3以下と推定された。

Endangered ecosystems get listed
危険に曝される生態系がリストアップされた
国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature; IUCN)は、レッドリストを5/8にアップデートした(PloS ONEに論文)。論文の中では例としてアラル海の生態系の崩壊が取り上げられており、河川開発によって世界で4番目に大きな淡水を誇っていた湖が50年間で90%もの水を失い、固有種の数が減ったことなどを記述している。
>問題の論文
Scientific Foundations for an IUCN Red List of Ecosystems
生態系のIUCNレッドリストに対する科学的な基盤
David A. Keith et al.

NEWS IN FOCUS
Magnetar found at giant black hole
巨大ブラックホールの中心で発見されたマグネター
Eugenie Samuel Reich
磁性化した中性子星(マグネター)はアインシュタイン理論を検証するのに使えるかもしれない。

FEATURES
Neanderthal culture: Old masters
ネアンデルタール人の文化:古いマスター達
Tim Appenzeller
最も初期の洞窟絵画がネアンデルタール人と現代人の知能が同程度であったかどうかの議論を巻き起こしている。

Invasive species: The 18-km2 rat trap
外来種:18平方キロメートルのねずみ取り
Henry Nicholls
エクアドルはガラパゴス島からの外来種である豚や羊を根絶することに成功したが、次はネズミの番である。

CORRESPONDENCE
Pollution: An innovation prize for clean cookstoves
汚染:綺麗な料理ストーブに対する発明賞
Ambuj D. Sagar & Kirk R. Smith

Whales: No mass strandings since sonar ban
クジラ:ソナーの禁止以降大量の打ち上げが無くなった
Antonio Fernández, Manuel Arbelo & Vidal Martín

Astronomy: Japan's work on ALMA telescope
天文学:ALMA宇宙望遠鏡における日本の仕事
Masahiko Hayashi & Satoru Iguchi

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Fisheries: Climate change at the dinner table
漁業:気候変化と食卓
Mark R. Payne
漁獲量の革命的な統計解析から、気候変化の影響が既に世界中の漁業の種の組成に影響し、我々の食卓にも影響していることが明らかに。Cheung et al.の解説記事。

Microbiology: Bacterial communities as capitalist economies
微生物学:資本主義的経済原理によって構築されている細菌集合体
Ute Römling
細菌が固体表面上で集団を作る挙動を追跡することで、「金持ちはさらに金持ちに」式のメカニズムが働くことがわかった。Allanore et al.の解説記事。

Planetary science: Plumbing the depths of Uranus and Neptune
惑星科学:天王星と海王星の測深
Peter Read
宇宙探査機ボイジャー2号および望遠鏡によって収集されたデータの解析から、天王星と海王星で風が吹き込む深さを絞り込むことが可能になり、これらの惑星の内部構造についての論争に関係する情報が得られた。Kaspi et al.の解説記事。

Evolution: Stuck between the teeth
進化:歯の間にものが挟まったような結果
P. David Polly
自然選択への発生動態の影響を評価するために設計された、歯の進化のコンピューターモデルで、複雑さが最大適応度の獲得可能性を低下させることが明らかになった。Salazar-Ciudad & Marín-Rieraの解説記事。

ARTICLES
Inferring ancient divergences requires genes with strong phylogenetic signals
系統樹の古代の分岐を推定するには、強力な系統発生シグナルを持つ遺伝子が必要である
Leonidas Salichos & Antonis Rokas

LETTERS
Atmospheric confinement of jet streams on Uranus and Neptune
天王星と海王星のジェット気流の大気の監禁
Yohai Kaspi, Adam P. Showman, William B. Hubbard, Oded Aharonson & Ravit Helled

Deep fracture fluids isolated in the crust since the Precambrian era
プレカンブリア時代から地殻に隔離されていた深部破砕流体
G. Holland, B. Sherwood Lollar, L. Li, G. Lacrampe-Couloume, G. F. Slater & C. J. Ballentine
カナダのTimmins鉱床から見つかった深部流体のポケットのキセノン同位体は、流体の滞留時間が少なくとも15億年であることを物語っている。

Adaptive dynamics under development-based genotype–phenotype maps
発生に基づく遺伝子型–表現型マップの下での適応動態
Isaac Salazar-Ciudad & Miquel Marín-Riera
自然淘汰の結果どういった表現型がもっとも最適化されるかが歯の発展をモデルとして評価された。遺伝子型-表現型の複雑な相互作用が適応に影響することを示している。

Signature of ocean warming in global fisheries catch
全球の漁獲量に見られる海洋の温暖化の兆し
William W. L. Cheung, Reg Watson & Daniel Pauly
 魚介類は温暖化とともに生息域をより高緯度側に・より深場へシフトさせるように応答すると考えられている。そのため、暖水に生息する魚がより捕獲されるようになることが期待される。しかし気候変化が漁獲に与える影響についてはよく分かっていない。
 漁獲の平均水温指数(mean temperature of the catch; MTC)を用いて、それが1970-2006年にかけて10年間に0.19℃ずつ上昇しつつあることを示す。その中でも非熱帯種は0.23℃ずつ上昇している。世界の52の主要な沿岸生態系では表層水温との有為な正相関が確認されている。つまり、温暖化の影響は既に出始めており、特に熱帯域において、「それが経済・食の安全性に与える影響を最小限に抑えること」や「沿岸生態系の保護」のために迅速な適応プランが必要とされている。
>関連した論文
Shrinking of fishes exacerbates impacts of global ocean changes on marine ecosystems
魚が小さくなることが気候変動が海洋生態系に与える影響を悪化させる
William W. L. Cheung, Jorge L. Sarmiento, John Dunne, Thomas L. Frölicher, Vicky W. Y. Lam, M. L. Deng Palomares, Reg Watson & Daniel Pauly
Nature Climate Change, Vol. 3 (March 2013)
気候変動の結果起きる、海水の酸素濃度や温度の変化が魚の生理学にも影響すると考えられている。600種の魚に対する数値モデルを用いた研究から、温室効果ガス排出が大きいシナリオの下では、魚の重量が2050年までに次第に小さくなること(14 - 24 %)が示された。半分は生息地や個体数の変化、他には生理学的な変化が原因とされている。