GRL (Geophysical Research Letters)
High emission of carbon dioxide and methane during ice thaw in high latitude lakes
Jan Karlsson, Reiner Giesler, Jenny Persson, Erik Lundin
北極圏の湖沼においては冬期にCO2やメタンが蓄積し、春の雪解けとともに放出される。水深が大きいほどCO2のフラックスは増加し、メタンのフラックスは泥濘に囲まれているほど大きい。
Iron speciation in aerosol dust influences iron bioavailability over glacial-interglacial timescales
A. Spolaor, P. Vallelonga, G. Cozzi, J. Gabrieli, C. Varin, N. Kehrwald, P. Zennaro, C. Boutron, C. Barbante
鉄は生物一次生産に重要であると考えられている。鉄は2つの価数(Fe2+とFe3+)で海水中に存在する。Fe2+はより水によけやすく、海洋植物プランクトンにとって利用しやすい形態である。南極Talos Domeアイスコアから、過去55kaの風成塵起源の鉄の供給量を推定。Fe2+の生成には細粒のダスト上の光学還元(photoreduction)が重要であると考えられる。LGMにはFe2+は7倍に増加していたが、Fe3+は2倍程度であったと考えられる。おそらく生物生産に重要なFe2+が南極周辺の南大洋の一次生産に影響し、大気中CO2濃度の低下にも重要であったと思われる。
Carbonate dissolution rates at the deep ocean floor
Bernard P. Boudreau
堆積物においてCaCO3の溶解と底層水の飽和度との間に線形関係があるかどうかを実験から評価。溶解は飽和深度の下では堆積物中の境界輸送(boundary layer transfer)によって支配されていると考えられる。
Further observations of a decreasing atmospheric CO2 uptake capacity in the Canada Basin (Arctic Ocean) due to sea ice loss
Brent G.T. Else, R.J. Galley, B. Lansard, D.G. Barber, K. Brown, L.A. Miller, A. Mucci, T.N. Papakyriakou, J.-É. Tremblay, S. Rysgaard
2009年の観測から、Canada Basinの南東部における海氷後退がCO2の吸収に寄与するかどうかを評価。海氷は著しい速度で後退しており、驚くことにpCO2が非常に高かった(290-320μatm)。簡単な数値計算から、CO2の吸収能力はわずかに-2.4mmol/m2/dで、原因としては混合層の温暖化が考えられる。今後更なる海氷後退は吸収源としての能力を低下させると考えられる。
Mass loss of Greenland's glaciers and ice caps 2003–2008 revealed from ICESat laser altimetry data
T. Bolch, L. Sandberg Sørensen, S. B. Simonsen, N. Mölg, H. Machguth, P. Rastner, F. Paul
人工衛星によるレーザー高度計(ICESat)の観測記録から、グリーンランド氷床の質量収支を計算。陸上の気候状態に基づいたフィルンの圧縮度や密度を考慮している。2003年10月から2008年3月にかけて、グリーンランドの氷河と氷帽は年間「27.9 ± 10.7 Gt」で質量を失っており、海水準にして年間「0.08 ± 0.03mm」の上昇率に相当する。地球全体で氷河と氷帽の融解が海水準に与える影響のうち1割ほどを占め、極めて大きい数値である。融解はグリーンランドの南東部で大きく、北部で小さい。
Irreversible mass loss of Canadian Arctic Archipelago glaciers
Jan T. M. Lenaerts, Jan H. Angelen, Michiel R. Broeke, Alex S. Gardner, Bert Wouters, Erik Meijgaard
カナダ北極圏群島(Canadian Arctic Archipelago)には地球上で最も多く氷河が存在する。降雪と融水流出で質量収支がバランスしている。現在質量が失われつつあるCAAの氷河に対してモデルシミュレーションから質量収支を予測したところ、RCP4.5のシナリオにおいては、融水の増加に比べて降雪が増加しないことで、すべての温度状態で氷河が失われることが示された。
When will the summer arctic be nearly sea ice free?
James E. Overland, Muyin Wang
近年観測されている急速な北極海の多年氷の後退や2012年9月の1979-2000年比で49%もの減少はこれまでの数値シミュレーションでは全く予測されていないものである。3つの異なるアプローチによる将来予測は早ければ2020年以前、遅ければ2040年以降に夏の海氷が無くなることを示している。気候モデルと観測に基づいたそれぞれの予測のどちらに重きを置くかは難しい問題であるが、少なくともCMIP5のモデルを用いた予測はかなり過小評価をしている。近年の観測記録と専門家の意見がモデルの予測以外にも考慮されるべきである。
High biolability of ancient permafrost carbon upon thaw
Jorien E. Vonk, Paul J. Mann, Sergey Davydov, Anna Davydova, Robert G. M. Spencer, John Schade, William V. Sobczak, Nikita Zimov, Sergei Zimov, Ekaterina Bulygina, Timothy I. Eglinton, Robert M. Holmes
地球温暖化は北極圏の永久凍土を融かし、さらに大量の陸上炭素を不安定化させると考えられている。シベリアのYedoma層には北半球の永久凍土性有機物の4分の1が保存されているが、こうした沿岸部・河川環境の有機物が分解される過程についてはよく分かっていない。年代値が21,000年以上古い溶存有機炭素が小川に流出しており、さらに生物にかなりの割合(~34%)が利用されていることが観測と実験から分かった。北極海に河川を通して流れ込む溶存有機炭素としては、こうした極めて古い溶存有機炭素が最も生物に利用されると考えられる。