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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年5月31日金曜日

新着論文(Science#6136)

Science
VOL 340, ISSUE 6136, PAGES 1005-1132 (31 MAY 2013)

Editors' Choice
A New River in the Sky
空に新たな川
Astrophys. J. 769, L23 (2013).
我々の銀河の端には星の川があるが、天の川とは別に、Alpheusと名付けられた6,200光年離れた川が見つかった。

Mysterious Rise
謎めいた上昇
Paleoceanography 10.1002/palo.20026 (2013).
最終氷期から完新世にかけて大気中のCO2濃度は180ppmから280ppmへと増加した。アイスコアや海洋堆積物の記録から広く言われているのは、南大洋の深層に古く、CO2に富んだ水があり、それが最終退氷期に大気と気体交換したことがCO2濃度上昇の原因と考えられている。ブラジル沖で採取された堆積物コアから、CO2濃度が30ppm上昇した17-16kaにかけて、底層水のDICのδ13Cが急激に減少していることが示された。単純な2つの深層水(NADW v.s. AABW)の混合では説明できず、13Cに枯渇した深層水の混合などが可能性として考えられる。
>問題の論文
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。
※自分の研究とも深く関連しているのですが、氷期-間氷期スケールの炭素循環研究にとって非常に重要な記録です。

News of the Week
Earliest Birdie?
最も初期の鳥さん?
鳥が恐竜から進化したことは多くの同意を得ているが、その進化的な変遷プロセスについてはよく分かっていない。というのも、鳥となったのは羽の生えた恐竜で、そのどちらが飛べたのかが不明瞭だからである。中国のLiaoningで発掘された170Maの保存状態の良い化石(Aurornis xuiと名付けられた)は、最も初期の鳥のものである可能性がある。もしそれが本当なら、有名な始祖鳥(Archaeopteryx)を巡る最近の議論に終止符を打つことができるかもしれない。

News & Analysis
Radiation Will Make Astronauts' Trip to Mars Even Riskier
放射が宇宙飛行士が火星に旅するのをより一層危険にするだろう
Richard A. Kerr
将来、火星へと送り出される宇宙飛行士は、深部宇宙の放射という予想以上の困難に直面するだろう。

News Focus
Science for All
すべての人のための科学
Pallava Bagla and Richard Stone
4億人もの人が一日に1.25ドル以下しか稼ぐことができない。特にインドには世界の貧困層の3分の1が暮らしている。貧困を解決するために科学者がもっとできることはあるだろうか?

A Role for Science in Poverty Alleviation?
貧困の軽減における科学の役割
Pallava Bagla and Richard Stone
貧困の軽減における科学の役割について、Science誌と地域発展の代表のJairam Rameshが対談した。

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Research
Perspectives
What Are Climate Models Missing?
気候モデルは何を見落としているのだろうか?
Bjorn Stevens and Sandrine Bony
Joseph Smagorinskyが先駆けとなった流体力学・熱力学の細かい方程式に基づく大循環モデル(General Circulation Model; GCM)から、よりシンプルな全球気候モデル(Global Climate Models)やさらに栄養塩循環・生物圏などを組み込んだ地球システムモデル(Earth System Models)などが派生した。GCMは雲形成や水蒸気輸送などといった素過程を多く含むが、その素過程がモデル内でどのように組み込まれているかが大きな不確実性を生む原因となっている。GCMの出力結果の比較から、特に熱帯域の降水や雲の再現に大きな食い違いが確認されている。
[以下は引用文]
A deeper understanding and better representation of the coupling between water and circulation, rather than a more expansive representation of the Earth System, is thus necessary to reduce the uncertainty in estimates of the climate sensitivity and to guide adaptation to climate change at the regional level. This knowledge should help focus efforts and lead to progress in reducing the imprecision of climate models in the next 50 years.
より開放的な地球システムの再現というよりは、水と循環(雲形成・水蒸気輸送プロセスなど)をより深く理解し、より良く再現することが、気候感度推定の不確実性を軽減し、地域レベルでの気候変化への適応の道筋を与える上で必要だと考えられる。この知識が、努力が集中する助けとなり、将来50年間の気候モデルの(予測結果の)不正確さを軽減する上での改善へと繋がるだろう。

Pebbles on Mars
火星に小石
Douglas J. Jerolmack
火星の礫岩の観察から、’古代の河川の存在’に対するこれまでに得られている中で最も確たる証拠が得られた。

Research Articles
Martian Fluvial Conglomerates at Gale Crater
ゲール・クレーターにおける火星の河川性礫岩
R. M. E. Williams, J. P. Grotzinger, W. E. Dietrich, S. Gupta, D. Y. Sumner, R. C. Wiens, N. Mangold, M. C. Malin, K. S. Edgett, S. Maurice, O. Forni, O. Gasnault, A. Ollila, H. E. Newsom, G. Dromart, M. C. Palucis, R. A. Yingst, R. B. Anderson, K. E. Herkenhoff, S. Le Mouélic, W. Goetz, M. B. Madsen, A. Koefoed, J. K. Jensen, J. C. Bridges, S. P. Schwenzer, K. W. Lewis, K. M. Stack, D. Rubin, L. C. Kah, J. F. Bell III, J. D. Farmer, R. Sullivan, T. Van Beek, D. L. Blaney, O. Pariser, R. G. Deen, and MSL Science Team
Mastcamを用いた観察から、ゲール・クレーターにおいて河川性の礫堆積物の存在が明らかに。円摩された小石が砂粒とともに礫堆積物に含まれていることは河川水による摩耗が起きていたことを示唆している。スペクトル分析から、堆積物は長石を多く含み、水による変質はあまり被っていないと思われる。小石の運搬には閾値(水深 0.03 - 0.9 m、流速 0.20 - 0.75 m/s)を超えていた必要があったと推測される。当時の火星は、現在の冷たく乾燥した状態とは異なり、数kmにわたって河川が流れていたような気候状態であったと思われる。

Reports
Measurements of Energetic Particle Radiation in Transit to Mars on the Mars Science Laboratory
Mars Science Laboratoryによる火星への輸送における高エネルギー粒子の放射測定
C. Zeitlin, D. M. Hassler, F. A. Cucinotta, B. Ehresmann, R. F. Wimmer-Schweingruber, D. E. Brinza, S. Kang, G. Weigle, S. Böttcher, E. Böhm, S. Burmeister, J. Guo, J. Köhler, C. Martin, A. Posner, S. Rafkin, and G. Reitz
キュリオシティーを火星へと送り届けた輸送船(Mars Science Laboratory spacecraft)は放射検出器を搭載していたが、それは今後火星へ宇宙飛行士を送り出す際に想定される被爆に対する新たな知見を与えてくれる。データを解析したところ、現在の推進力システムとシールドの性能では、最短の火星周回で浴びると思われる放射線量は0.66 ± 0.12 Svに相当すると考えられる。

Functional Extinction of Birds Drives Rapid Evolutionary Changes in Seed Size
鳥の機能的な絶滅が種のサイズの急速な進化的変化をもたらす
Mauro Galetti, Roger Guevara, Marina C. Côrtes, Rodrigo Fadini, Sandro Von Matter, Abraão B. Leite, Fábio Labecca, Thiago Ribeiro, Carolina S. Carvalho, Rosane G. Collevatti, Mathias M. Pires, Paulo R. Guimarães Jr., Pedro H. Brancalion, Milton C. Ribeiro, and Pedro Jordano
ある生物種の絶滅によってそれが連鎖反応的に生態系に大きな影響を与えることが考えられるが、人類が招いた絶滅がどのような進化的変化をもたらすかはよく分かっていない。ブラジルの森林に生息する、植物の種をばらまく鳥の絶滅が、キーストーン種であるヤシの種のサイズの低下を招いていることが分かった。おそらく種のサイズの低下は過去100年間に起きていると思われる。大型脊椎動物の絶滅は熱帯雨林生態系全体に波及効果があると考えられる。