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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年5月25日土曜日

新着論文(GRL, JGR, GBC, Radiocarbon)

GRL
The influence of sea level rise and changes in fringing reef morphology on gradients in alongshore sediment transport
A.E. Grady, L.J. Moore, C.D. Storlazzi, E. Elias, M.A. Reidenbach
海水準上昇とサンゴ礁の悪化がローカルな地形に与える影響をハワイのMolokaiをモデルケースにして評価。岸に沿った方向に広がったサンゴ礁ほど影響を被りやすいことがモデルから示された。

Variability in the width of the tropics and the annular modes
J. Kidston, C. W. Cairns, P. Paga
ハドレーセルの縁と偏西風の関係をGCMで評価。

Can natural variability explain observed Antarctic sea ice trends? New modeling evidence from CMIP5
Lorenzo M. Polvani, Karen L. Smith
近年南極周辺の海氷範囲は’拡大’しており、温暖化によって海氷が融けるという予想に反する。さらに悪いことに、気候モデルは「温室効果ガスの増加と成層圏のオゾンの減少は海氷を後退させる」と予想している。4つのモデルを用いて食い違いの原因を検証。現在見られている南極の海氷の変動は自然変動の範疇にあり、人為起源と結論づけることは難しい。

JGR-Oceans
Integrating satellite observations and modern climate measurements with the recent sedimentary record: An example from Southeast Alaska
Jason A. Addison, Bruce P. Finney, John M. Jaeger, Joseph S. Stoner, Richard D. Norris, Alexandra Hangsterfer
アラスカ南東部のフィヨルドで得られた堆積物コアから過去100年間の環境復元。Br/Cl比がPDOの指標になるらしい。

GBC
Processes affecting greenhouse gas production in experimental boreal reservoirs
Jason J. Venkiteswaran, Sherry L. Schiff, Vincent L. St. Louis, Cory J. D. Matthews, Natalie M. Boudreau, Elizabeth M. Joyce, Kenneth G. Beaty, R. Andrew Bodaly
陸が浸水することでCO2やCH4をはじめとする温室効果ガスを放出する。5年間にわたって行われたFlooded Upland Dynamics Experiment (FLUDEX)の結果について。

Global trends in surface ocean pCO2 from in situ data
A. R. Fay, G.A. McKinley
海洋は人為起源のCO2を吸収するため、間接的に気候変化を緩和している。1981-2010年にかけての全球スケールの海洋表層水のpCO2のトレンドを評価。熱帯・亜熱帯域の表層水pCO2は大気のpCO2上昇にほぼ並行している。赤道大西洋の場合、温暖化によって海洋表層pCO2は大気pCO2よりも早く上昇しており、吸収能力が低下している。高緯度の海はデータが著しく不足しているが、南大洋周辺の海洋表層pCO2は Southern Annular Mode(SAM)などの気候変動によって大きく影響を受けている。

JGR-Atmosphere
A model-based test of accuracy of seawater oxygen isotope ratio record derived from a coral dual proxy method at southeastern Luzon Island, the Philippines
Gang Liu, Keitaro Kojima, Kei Yoshimura, Takashi Okai, Atsushi Suzuki, Taikan Oki, Fernando P. Siringan, Minoru Yoneda, Hodaka Kawahata
フィリピン・ルソン島から得られたハマサンゴのSr/Ca・δ18Oから1979-2001年の海水δ18Oの変動を復元。1次元ボックスモデルからうまく再現することができた。一部見られる季節変動の食い違いは、サンゴの生息場所における混合層の深さや湧昇などが原因と考えられる。

Radiocarbon
Comparison of 14C and U-Th Ages in Corals from IODP #310 Cores Offshore Tahiti
Nicolas Durand, Pierre Deschamps, Edouard Bard, Bruno Hamelin, Gilbert Camoin, Alexander L Thomas, Gideon M Henderson, Yusuke Yokoyama, Hiroyuki Matsuzaki
IODP310のタヒチにおいて得られた化石サンゴからINTCAL較正曲線に多数データを追加(特にMWP-1aが起きた付近の16-14ka)。これまでタヒチの礁嶺において得られた陸上掘削よりもはるかに古いデータが得られた(例えばBard et al., 1998)。
※僕も研究に使っている試料です。

Integration of the Old and New Lake Suigetsu (Japan) Terrestrial Radiocarbon Calibration Data Sets
Richard Andrew Staff, Gordon Schlolaut, Christopher Bronk Ramsey, Fiona Brock, Charlotte L Bryant, Hiroyuki Kitagawa, Johannes van der Plicht, Michael H Marshall, Achim Brauer, Henry F Lamb, Rebecca L Payne, Pavel E Tarasov, Tsuyoshi Haraguchi, Katsuya Gotanda, Hitoshi Yonenobu, Yusuke Yokoyama, Takeshi Nakagawa, Suigetsu 2006 Project Members
水月湖において掘削された年縞堆積物コア(SG06)中の植物片から、INTCAL較正曲線に多数データを追加。ほぼ大気と同等に見なせる550点の放射性炭素のデータが新たに追加された。SG93の243点のデータも加えて、過去52.8kaの808点にわたる、リザーバー効果に影響されない放射性炭素のデータを報告。
>関連する論文
A Complete Terrestrial Radiocarbon Record for 11.2 to 52.8 kyr B.P.
11.2 - 52.8 kyrの間の完全な陸域の放射性炭素の記録

Christopher Bronk Ramsey, Richard A. Staff, Charlotte L. Bryant, Fiona Brock, Hiroyuki Kitagawa, Johannes van der Plicht, Gordon Schlolaut, Michael H. Marshall, Achim Brauer, Henry F. Lamb, Rebecca L. Payne, Pavel E. Tarasov, Tsuyoshi Haraguchi, Katsuya Gotanda, Hitoshi Yonenobu, Yusuke Yokoyama, Ryuji Tada, and Takeshi Nakagawa
Science (19 Oct 2012)
放射性炭素は過去5万年間の地質学試料・考古学試料などに年代を与えるだけでなく、炭素循環におけるトレーサーとしても重要である。しかしながら12.5kaよりも前の大気の14Cを反映する記録はこれまで不足しており、氷期に相当する試料の高精度の年代測定は限られていた。日本の水月湖から得られた年縞堆積物を用いて過去52.8kaから11.2kaの大気の14Cを高精度に復元。これによって放射性炭素年代の測定限界までの総括的な記録が完成することになる。水月湖から得られた時間スケールを用いることで他の陸上の古環境記録との直接対比も可能になり、さらに大気-海洋の海洋の放射性炭素に関する関係性(海洋のローカルなリザーバー年代など)を求めることが可能になる。
>論文概説「湖の堆積物から大気の放射性炭素を復元することの意義

Atmospheric Radiocarbon for the Period 1950–2010
Quan Hua, Mike Barbetti, Andrzej Z Rakowski
木の年輪から得られた、1950-2010年にかけての季節レベルの大気14CO2記録を報告。北半球を3つ、南半球を2つに分けている。

Decadal Changes in Bomb-Produced Radiocarbon in the Pacific Ocean from the 1990s to 2000s
Yuichiro Kumamoto, Akihiko Murata, Takeshi Kawano, Shuichi Watanabe, Masao Fukasawa
1990年代のWOCEの際に広く海洋表層水の核実験由来の14Cが測定された。その後2000年代に再度同じ測線で測定された(CLIVAR)。太平洋の7本の測線の時間変化を報告。亜寒帯・赤道域の鉛直構造には大きな変化は確認されなかった。亜熱帯域では、太平洋の北西部と南部とでは大きな違いがあり、前者はbomb-14C濃度が著しく低下しているのに対し、後者は逆に温度躍層の下部で増加していた(SAMWによる取り込み?)。温度躍層水の気体交換の時間の違いが原因と考えられる。

Simulated Last Glacial Maximum ∆14Catm and the Deep Glacial Ocean Carbon Reservoir
Véronique Mariotti, D Paillard, D M Roche, N Bouttes, L Bopp
氷期の大気中のΔ14Cは420 ± 80 ‰だと報告されている(産業革命以前は0‰)が、’大気上層の生成率’と’炭素循環による分配’がその原因を担っていると考えられている。アイスコア10Beからは磁場変動だけでは200 ± 200 ‰しか説明できないと考えられており、残り220‰が炭素循環によるものと思われる。
 一つの案としては、'南大洋の成層化の強化'だけで「大気中のCO2濃度の低下(~180ppm)」および「δ13Cの変化」を大部分説明できると考えられている。そうした深層水はΔ14Cが非常に低く、それが大気に放出された時に大気Δ14Cを低下させたと考えられている。
 大気上層の14C生成率と14Cリザーバー間の相互作用を考慮し、CLIMBER-2モデルを用いて南大洋の'鉄肥沃(iron fertilization)効果'、'brine'、'生成率'の3つの作用を評価した。brineでかなりの部分を説明することが可能で、さらにモデルで初めてpCO2、δ13C、Δ14Cのすべての変化をうまく再現することができた。
>関連する論文
Impact of brine-induced stratification on the glacial carbon cycle
N. Bouttes, D. Paillard, and D. M. Roche
Clim. Past, 6, 575-589, 2010

Last Glacial Maximum CO2 and δ13C successfully reconciled
N. Bouttes, D. Paillard, D. M. Roche, V. Brovkin, L. Bopp
Geophysical Research Letters DOI: 10.1029/2010GL044499 (2011)

Systematic study of the impact of fresh water fluxes on the glacial carbon cycle
N. Bouttes, D. M. Roche, and D. Paillard
Clim. Past, 8, 589-607, 2012

Impact of oceanic processes on the carbon cycle during the last termination
N. Bouttes, D. Paillard, D. M. Roche, C. Waelbroeck, M. Kageyama, A. Lourantou, E. Michel, and L. Bopp
Clim. Past, 8, 149-170, 2012